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第10話 マンハッタン夜想
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妙土が襲撃の衝撃と精神的疲労で寝ている間に用意されたであろうブルーのワンピースや靴は妙土のサイズにピッタリであった。
バッグの中もハンカチや化粧ポーチをはじめ、長財布や携帯電話もそろっていた。
長財布には現金やクレジットカードが入っているし、化粧ポーチにも細々したコスメ系グッズがそろっていて、カイルの心遣いと女子力の高さに妙土は少々ビビった。
カイルにしてみれば、妙土を日本に帰す気は毛頭なかったので、服やバッグどころか、妙土が居住する家まで用意していたのだが、この時はまだ妙土がそのことを知る由もない。
妙土の準備ができたところで、見計らったかのようにカイルが部屋に入ってきた。
カイルの服装は、黒いタートルネックとパンツにストライプのジャケットをスタイリッシュに着こなしていた。ファッション誌のモデルでもおかしくないほど絵になる男である。
妙土のルックスは日本人としては悪くないほうではあるが、手足の長さや顔の造りなど、カイルと並べばどうしても見劣る。
カイルを見て日本人の容姿って不利だよな、と妙土は密かにため息をついた。
カイルにエスコートされ、エレベーターを利用するにあたり、ここがホテルだということがわかった。
妙土たちが使用している部屋は59階であり、こんな高層階の部屋は、地震国の日本では、まずお目にかかれない。
ホテルのインテリアやたたずまいなどからも高級感が漂い、一歩進むごとに場違いな自分がこそばゆかった。
エンパイアステートビルを真ん前に見ることができるマンハッタンのど真ん中にあるホテル。
一体、一泊いくらするのだろうか。
二人はハイセンスなレセプションやエントランスホールを通り抜けて入り口付近に待機していたイエローキャブに乗り込んだ。
カイルとイエローキャブの運転手とのやりとりを日本語として妙土は理解することができたのでソロモンの指輪の威力を実感した。
英語の同時通訳を自分でこなしているようなものである。
言葉の壁というストレスがないのは、いいものだ。
イエローキャブの運転手は夜のきらびやかなマンハッタンの街を抜けてニューヨーク郊外のブルックリンへ一路向かう。
車窓から通り過ぎていく華やかなネオンの海をぼんやり見ながら、妙土は今日の盛りだくさんすぎる出来事を思い返してみる。
毎日のように見たリーザと魔王ラディリオンの夢。
フリーホール状態の電車から空中戦にさらされたこと。
カイルとの出会い。
ニューヨークや宇宙空間への移動。
そして、夢物語のような神々の闘いにリーネ族や魔界の話。
生まれ変わりの話。
たまたま、妙土が読書好きで、神話や転生などに免疫があったから良かったものの、普通の女子校生には土台理解できないものばかりである。
自分の好きなものや興味があるものは意味があり、やがては役に立つののだな、としみじみと思う妙土であった。
ふと横に座るカイルを見る。
金髪やアクアマリンの瞳が通り過ぎるネオンの光に照らされてキラキラ光っている。
横顔は大理石の彫像のように整っていて綺麗だ。
「どうしたの?」
カイルはニコニコしながら尋ねる。
「いやあ、カイルが前世の息子という実感が沸かなくて・・・」
お互いにしばらく真面目な顔でじっと見つめ合っていたが、共通点のないそれぞれの顔にしかめっ面になり、やがて同時に吹き出した。
ひどい状況だと思うのに落ち着いていられるのは何でだろう。
いつのまにかカイルの手が妙土の手に重ねられていて、その体温がさらなる安心感を妙土にもたらした。
カイルに対する妙土の意識は「私を守ってくれるお兄ちゃん」ぐらいであった。
男に慣れていない妙土が手を重ねてきたカイルの不穏な意図に気づくことはなかった。
バッグの中もハンカチや化粧ポーチをはじめ、長財布や携帯電話もそろっていた。
長財布には現金やクレジットカードが入っているし、化粧ポーチにも細々したコスメ系グッズがそろっていて、カイルの心遣いと女子力の高さに妙土は少々ビビった。
カイルにしてみれば、妙土を日本に帰す気は毛頭なかったので、服やバッグどころか、妙土が居住する家まで用意していたのだが、この時はまだ妙土がそのことを知る由もない。
妙土の準備ができたところで、見計らったかのようにカイルが部屋に入ってきた。
カイルの服装は、黒いタートルネックとパンツにストライプのジャケットをスタイリッシュに着こなしていた。ファッション誌のモデルでもおかしくないほど絵になる男である。
妙土のルックスは日本人としては悪くないほうではあるが、手足の長さや顔の造りなど、カイルと並べばどうしても見劣る。
カイルを見て日本人の容姿って不利だよな、と妙土は密かにため息をついた。
カイルにエスコートされ、エレベーターを利用するにあたり、ここがホテルだということがわかった。
妙土たちが使用している部屋は59階であり、こんな高層階の部屋は、地震国の日本では、まずお目にかかれない。
ホテルのインテリアやたたずまいなどからも高級感が漂い、一歩進むごとに場違いな自分がこそばゆかった。
エンパイアステートビルを真ん前に見ることができるマンハッタンのど真ん中にあるホテル。
一体、一泊いくらするのだろうか。
二人はハイセンスなレセプションやエントランスホールを通り抜けて入り口付近に待機していたイエローキャブに乗り込んだ。
カイルとイエローキャブの運転手とのやりとりを日本語として妙土は理解することができたのでソロモンの指輪の威力を実感した。
英語の同時通訳を自分でこなしているようなものである。
言葉の壁というストレスがないのは、いいものだ。
イエローキャブの運転手は夜のきらびやかなマンハッタンの街を抜けてニューヨーク郊外のブルックリンへ一路向かう。
車窓から通り過ぎていく華やかなネオンの海をぼんやり見ながら、妙土は今日の盛りだくさんすぎる出来事を思い返してみる。
毎日のように見たリーザと魔王ラディリオンの夢。
フリーホール状態の電車から空中戦にさらされたこと。
カイルとの出会い。
ニューヨークや宇宙空間への移動。
そして、夢物語のような神々の闘いにリーネ族や魔界の話。
生まれ変わりの話。
たまたま、妙土が読書好きで、神話や転生などに免疫があったから良かったものの、普通の女子校生には土台理解できないものばかりである。
自分の好きなものや興味があるものは意味があり、やがては役に立つののだな、としみじみと思う妙土であった。
ふと横に座るカイルを見る。
金髪やアクアマリンの瞳が通り過ぎるネオンの光に照らされてキラキラ光っている。
横顔は大理石の彫像のように整っていて綺麗だ。
「どうしたの?」
カイルはニコニコしながら尋ねる。
「いやあ、カイルが前世の息子という実感が沸かなくて・・・」
お互いにしばらく真面目な顔でじっと見つめ合っていたが、共通点のないそれぞれの顔にしかめっ面になり、やがて同時に吹き出した。
ひどい状況だと思うのに落ち着いていられるのは何でだろう。
いつのまにかカイルの手が妙土の手に重ねられていて、その体温がさらなる安心感を妙土にもたらした。
カイルに対する妙土の意識は「私を守ってくれるお兄ちゃん」ぐらいであった。
男に慣れていない妙土が手を重ねてきたカイルの不穏な意図に気づくことはなかった。
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