天の龍 地の女神

常盤 舞子

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第27話 魔界22人の魔将アルカナ

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一人残された妙土たえとの部屋に完全な静寂が訪れた。
薄暗かった部屋は明るくなっていたが、電灯らしきものはなく、明かりがどこから来ているのか謎だった。

時計どころか部屋に窓もないので、今の時刻を知りようがない。
朝なのか夜なのか。
出入口らしき扉があるものの、案の定、鍵がかかっている。

小鬼に魔王ラディリオンとくれば、ここは魔界に間違いないが、もちろん妙土は魔界について何も知らない。
自力でここから逃げるのは不可能である。
(さて、どうしようか・・・)

最後の夜、カイルの予告通り、カイルの腕の中で全身の力が抜けて意識が途切れ、気がつけば「リーザ」の体になっていた。
腰を覆う金髪やメロンサイズの胸は重いし、「天宮妙土」の体と勝手が違い、動きづらいこと、この上ない。

カイルの助けを待っている間に魔王ラディリオンにまた襲われるのは嫌だし、というか今度こそ問答無用で食われるような気がする。
速やかな脱出を図るにはどうすれば良いか。

「リーザ、何とかしてもらえない?」
沈黙が返ってきた。

「リーザ!」
『怒鳴るな、聞こえてる』
頭の中に直接、声が響いた。

・・・やっと出てきた・・・。

妙土は少し安堵した。

『私はお前の中にいる。お前も自分の中に直接、言葉を飛ばせ』
人に命令することに慣れている尊大な口調。
この人と魔王ラディリオンがどんな会話をするのか聞いてみたい。
・・・喧嘩になるよね、そりゃあ。
妙土はため息をついた。

『リーザ、ここを脱出したいの。私では無理。あなたにお願いしたいの』
『脱出の前にバルムンクの剣の青い宝石を探せ。どこかにあるはずだ』
『バルムンク!?青い宝石!?』

・・・そういや、青い宝石を取り戻したいとカイルが話していたような・・・。
バルムンクの柄にはまっていた青い宝石は魔王ラディリオンを封じていた。
そんな物騒な石を魔族側が、おいそれと簡単に見つけられる場所に置いておくとは思えない。
見つけるのは至難の技じゃ・・・。

『私には見当もつかない。だから、お前が探せ。大丈夫、お前は運が良い』
『はあ?私だって見当がつかないよ。あなたが探した方が効率が良いと思うのだけど』
『ユティアが来るな。また後で。ユティアには気をつけろ。ああ見えて魔将22人のうちの一人だ』
『魔将!?』
『魔界の戦闘集団アルカナだ。ラディリオンとラビリティア、リーデイルもアルカナだ。』
そこまで言うと、リーザの意識はプツリと途絶えた。

入れ替わりにユティアが薬湯を持って現れた。
「リーザ様ー、大丈夫ですかー?薬湯をお持ちしましたー」
「・・・ありがとう」
妙土は受け取ったが、漢方のような独特のにおいに飲む気が失せた。
口をつけず、むせたふりをしてユティアに器を返した。

改めてユティアを見る。
耳がとがっていて頭の上に角がある以外は人間と変わらない。
リーザは戦闘集団アルカナの一人と言っていたけど、どんな戦闘能力なんだろうか。
リーデイルのように、電車を持ち上げるような力があるなら、とりあえず勝てそうにない・・・。

「ユティアさん」
「ユティアでよいですよー」
「さっき聞いていたと思うけど」
妙土は咳払いをする。
「ユティア、私は妙土。体はリーザだけど、中身は別人格で魔界や魔族について知らないんです。だから、魔界について教えてもらえますか」
「いいですよー、何から話しますかー」

おおっ!
礼を尽くして聞けば何とかなるもんだ。

「まず魔界がどこにあるのか、とか」
「魔界は地下世界ですー。アフリカ大陸の下ですよー」
・・・漠然としていてよくわからない。
そもそも、魔界って、どんな世界なんだろう。

「ユティア、魔界を見たいのたけど、案内してもらえるかな」
「いいですよー」
軽いっ!
私を連れ出すのに許可とかなくていいのか!?

妙土が思ったことに答えるかのようにユティアはニンマリと笑う。
「リーザ様のお世話については、全権をこのユティアが任されてますー。望むことも、できうる限り叶えてやれと、ラディリオン様から申し使ってますー。」

かくして、妙土と小鬼ユティアの魔界珍道中が始まる。
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