28 / 60
第27話 魔界22人の魔将アルカナ
しおりを挟む
一人残された妙土の部屋に完全な静寂が訪れた。
薄暗かった部屋は明るくなっていたが、電灯らしきものはなく、明かりがどこから来ているのか謎だった。
時計どころか部屋に窓もないので、今の時刻を知りようがない。
朝なのか夜なのか。
出入口らしき扉があるものの、案の定、鍵がかかっている。
小鬼に魔王ラディリオンとくれば、ここは魔界に間違いないが、もちろん妙土は魔界について何も知らない。
自力でここから逃げるのは不可能である。
(さて、どうしようか・・・)
最後の夜、カイルの予告通り、カイルの腕の中で全身の力が抜けて意識が途切れ、気がつけば「リーザ」の体になっていた。
腰を覆う金髪やメロンサイズの胸は重いし、「天宮妙土」の体と勝手が違い、動きづらいこと、この上ない。
カイルの助けを待っている間に魔王ラディリオンにまた襲われるのは嫌だし、というか今度こそ問答無用で食われるような気がする。
速やかな脱出を図るにはどうすれば良いか。
「リーザ、何とかしてもらえない?」
沈黙が返ってきた。
「リーザ!」
『怒鳴るな、聞こえてる』
頭の中に直接、声が響いた。
・・・やっと出てきた・・・。
妙土は少し安堵した。
『私はお前の中にいる。お前も自分の中に直接、言葉を飛ばせ』
人に命令することに慣れている尊大な口調。
この人と魔王ラディリオンがどんな会話をするのか聞いてみたい。
・・・喧嘩になるよね、そりゃあ。
妙土はため息をついた。
『リーザ、ここを脱出したいの。私では無理。あなたにお願いしたいの』
『脱出の前にバルムンクの剣の青い宝石を探せ。どこかにあるはずだ』
『バルムンク!?青い宝石!?』
・・・そういや、青い宝石を取り戻したいとカイルが話していたような・・・。
バルムンクの柄にはまっていた青い宝石は魔王ラディリオンを封じていた。
そんな物騒な石を魔族側が、おいそれと簡単に見つけられる場所に置いておくとは思えない。
見つけるのは至難の技じゃ・・・。
『私には見当もつかない。だから、お前が探せ。大丈夫、お前は運が良い』
『はあ?私だって見当がつかないよ。あなたが探した方が効率が良いと思うのだけど』
『ユティアが来るな。また後で。ユティアには気をつけろ。ああ見えて魔将22人のうちの一人だ』
『魔将!?』
『魔界の戦闘集団アルカナだ。ラディリオンとラビリティア、リーデイルもアルカナだ。』
そこまで言うと、リーザの意識はプツリと途絶えた。
入れ替わりにユティアが薬湯を持って現れた。
「リーザ様ー、大丈夫ですかー?薬湯をお持ちしましたー」
「・・・ありがとう」
妙土は受け取ったが、漢方のような独特のにおいに飲む気が失せた。
口をつけず、むせたふりをしてユティアに器を返した。
改めてユティアを見る。
耳がとがっていて頭の上に角がある以外は人間と変わらない。
リーザは戦闘集団アルカナの一人と言っていたけど、どんな戦闘能力なんだろうか。
リーデイルのように、電車を持ち上げるような力があるなら、とりあえず勝てそうにない・・・。
「ユティアさん」
「ユティアでよいですよー」
「さっき聞いていたと思うけど」
妙土は咳払いをする。
「ユティア、私は妙土。体はリーザだけど、中身は別人格で魔界や魔族について知らないんです。だから、魔界について教えてもらえますか」
「いいですよー、何から話しますかー」
おおっ!
礼を尽くして聞けば何とかなるもんだ。
「まず魔界がどこにあるのか、とか」
「魔界は地下世界ですー。アフリカ大陸の下ですよー」
・・・漠然としていてよくわからない。
そもそも、魔界って、どんな世界なんだろう。
「ユティア、魔界を見たいのたけど、案内してもらえるかな」
「いいですよー」
軽いっ!
私を連れ出すのに許可とかなくていいのか!?
妙土が思ったことに答えるかのようにユティアはニンマリと笑う。
「リーザ様のお世話については、全権をこのユティアが任されてますー。望むことも、できうる限り叶えてやれと、ラディリオン様から申し使ってますー。」
かくして、妙土と小鬼ユティアの魔界珍道中が始まる。
薄暗かった部屋は明るくなっていたが、電灯らしきものはなく、明かりがどこから来ているのか謎だった。
時計どころか部屋に窓もないので、今の時刻を知りようがない。
朝なのか夜なのか。
出入口らしき扉があるものの、案の定、鍵がかかっている。
小鬼に魔王ラディリオンとくれば、ここは魔界に間違いないが、もちろん妙土は魔界について何も知らない。
自力でここから逃げるのは不可能である。
(さて、どうしようか・・・)
最後の夜、カイルの予告通り、カイルの腕の中で全身の力が抜けて意識が途切れ、気がつけば「リーザ」の体になっていた。
腰を覆う金髪やメロンサイズの胸は重いし、「天宮妙土」の体と勝手が違い、動きづらいこと、この上ない。
カイルの助けを待っている間に魔王ラディリオンにまた襲われるのは嫌だし、というか今度こそ問答無用で食われるような気がする。
速やかな脱出を図るにはどうすれば良いか。
「リーザ、何とかしてもらえない?」
沈黙が返ってきた。
「リーザ!」
『怒鳴るな、聞こえてる』
頭の中に直接、声が響いた。
・・・やっと出てきた・・・。
妙土は少し安堵した。
『私はお前の中にいる。お前も自分の中に直接、言葉を飛ばせ』
人に命令することに慣れている尊大な口調。
この人と魔王ラディリオンがどんな会話をするのか聞いてみたい。
・・・喧嘩になるよね、そりゃあ。
妙土はため息をついた。
『リーザ、ここを脱出したいの。私では無理。あなたにお願いしたいの』
『脱出の前にバルムンクの剣の青い宝石を探せ。どこかにあるはずだ』
『バルムンク!?青い宝石!?』
・・・そういや、青い宝石を取り戻したいとカイルが話していたような・・・。
バルムンクの柄にはまっていた青い宝石は魔王ラディリオンを封じていた。
そんな物騒な石を魔族側が、おいそれと簡単に見つけられる場所に置いておくとは思えない。
見つけるのは至難の技じゃ・・・。
『私には見当もつかない。だから、お前が探せ。大丈夫、お前は運が良い』
『はあ?私だって見当がつかないよ。あなたが探した方が効率が良いと思うのだけど』
『ユティアが来るな。また後で。ユティアには気をつけろ。ああ見えて魔将22人のうちの一人だ』
『魔将!?』
『魔界の戦闘集団アルカナだ。ラディリオンとラビリティア、リーデイルもアルカナだ。』
そこまで言うと、リーザの意識はプツリと途絶えた。
入れ替わりにユティアが薬湯を持って現れた。
「リーザ様ー、大丈夫ですかー?薬湯をお持ちしましたー」
「・・・ありがとう」
妙土は受け取ったが、漢方のような独特のにおいに飲む気が失せた。
口をつけず、むせたふりをしてユティアに器を返した。
改めてユティアを見る。
耳がとがっていて頭の上に角がある以外は人間と変わらない。
リーザは戦闘集団アルカナの一人と言っていたけど、どんな戦闘能力なんだろうか。
リーデイルのように、電車を持ち上げるような力があるなら、とりあえず勝てそうにない・・・。
「ユティアさん」
「ユティアでよいですよー」
「さっき聞いていたと思うけど」
妙土は咳払いをする。
「ユティア、私は妙土。体はリーザだけど、中身は別人格で魔界や魔族について知らないんです。だから、魔界について教えてもらえますか」
「いいですよー、何から話しますかー」
おおっ!
礼を尽くして聞けば何とかなるもんだ。
「まず魔界がどこにあるのか、とか」
「魔界は地下世界ですー。アフリカ大陸の下ですよー」
・・・漠然としていてよくわからない。
そもそも、魔界って、どんな世界なんだろう。
「ユティア、魔界を見たいのたけど、案内してもらえるかな」
「いいですよー」
軽いっ!
私を連れ出すのに許可とかなくていいのか!?
妙土が思ったことに答えるかのようにユティアはニンマリと笑う。
「リーザ様のお世話については、全権をこのユティアが任されてますー。望むことも、できうる限り叶えてやれと、ラディリオン様から申し使ってますー。」
かくして、妙土と小鬼ユティアの魔界珍道中が始まる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる