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第29話 魔界紀行
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魔界の月は紅い。
妙土は不思議な思いで魔王ラディリオンがいる王宮の上の月を見つめていた。
魔界は地下の異次元にあるので本物の月ではなく、アルカナ「月」の力で生み出された擬似の月である。
同じように、アルカナ「太陽」が作り出した擬似太陽もあり、アルカナ「世界」が擬似月と擬似太陽を運行させることで、魔界に朝昼夜の時間帯を現出させていた。
アルカナの「月」と「太陽」、「世界」は、戦闘をするというより、魔界の世界を維持する役目を担っているようだ。
「アルカナって、何でもできるのね」
妙土は感心した。
アルカナ「星」こと、ユティアが満足そうに頷く。
ユティアは、「星」の名の通り、魔界の星々を司る。
夜の闇に星のイリュージョンをかけるのだという。
「3種の神器の力はスゴいのですが、リーネ族自体の力は、瞬間移動や念動力、あとはエネルギー波を撃つことですかねー。
わりと単純であります。それにくらべると、魔族はー」
ユティアの瞳がキラリと光る。
「それぞれの魔力が多種多様と異なりますー。
いろんなことができるんですよー。
・・・まあ、種族もたくさんいるので、全て把握しているわけではないのですが」
実際に魔界には様々な種族が王都を中心に存在している。
ユティアと1週間、魔界をまわって、妙土は改めて魔族の種類の多さに驚嘆した。
リーネ族以外の神族、妖精や精霊に、魔獣、巨人など人間の世界では、もはや伝説上の生き物となっているものたちがいた。
人間と魔族の間に生まれた亜人も数種類いる。
妙土はユティアと各種族の部落を泊まり歩き、魔族の生活や習慣、特性などを学んだ。
炎や水を操る種族、怪力や変身を得意とする種族、魔術や魔法に精通した種族、戦闘に特化したアルカナ。
種族の差を超えて魔界に共存する魔族たち。
それらを何千年も平穏無事に統べる魔王ラディリオンと女王ラビリティアの手腕に舌を巻くばかりである。
「ユティア、魔王ラディリオンが封印されている間、妹のラビリティアが一人で魔界を治めていたんでしょ?スゴい人だね」
「ラビリティア様はあまり人前におでましになりませんが、ラディリオン様と同等の魔力を持っているかとー。
美しく賢くあられますが、兄君以外の方には心を開きませんねー。昔はそうではなかったのですがー」
「昔は?」
「ここだけの話」
ユティアが真剣な顔になり、声のボリュームを落とした。。
「魔族の王族は、敗れたとは言え、古代の神々の血脈を守るため、近親相姦を繰り返しておりまして・・・。
ラディリオン様とラビリティア様のご両親も実の兄妹でした。そして、ラビリティア様は父親である先王様に毎晩のように夜伽をしていたようです」
「夜伽って・・・実の娘なのに・・・」
妙土は絶句した。
「ラディリオン様が妹と交わるのを拒んだため、神々の血を絶やさぬよう、との先王の思し召しです。
母君も黙認だったとか。毎晩、泣きながら父親と床を共にしている妹を助けるため、ラディリオン様は実の父親である先王を成敗いたしました」
「・・・つまり殺したと・・・」
「その事件以来、ラビリティア様は心を閉ざしてしまい・・・。昔は快活な方だったと聞いておりますー」
壮絶な話だ。
近親相姦に親殺し。
あの兄妹にそんな陰惨な過去があったとは・・・。
リーザも近親婚の家系に生まれ、血族と血で血を洗う争いをしたというから、ラディリオンの家庭環境に親近感を覚えたのではなかろうか。
「王族以外は自由に婚姻できましてー。異種族間でも大丈夫です」
魔族は、相手が異種族であっても子を成せる。
姿かたちが似てる人間との間にすら子を作れないようにプログラムされているリーネ族とは繁殖力が違う。
現存するリーネ族の数は、10人にも満たないという。
本来、種族保存の個体数は男女合わせて200人ぐらい必要だというが、大きく下回っている。
まさにリーネ族は絶滅危惧種である。
生き残るためのシステムに脆弱性があったのだろうとユティアは解説する。
神魔対戦で多くのリーネ族が魔族の攻撃で亡くなったことが大きな原因ではないかと思ったが、妙土は黙っていた。
種の存続には天敵の存在は脅威である。
狼たちの遠吠えが聞こえた。
今夜は満月だ。
狼人間、人狼族たちの時間が始まる。
人狼族の集落も訪れたが、人狼族にも家族がいて日々の生活があった。
そういうところは、私たち人間と同じなのだな、と妙土は、思った。
魔界巡りも一段落したので久しぶりに王宮の部屋に戻り、食事と湯浴みをさせてもらった後、ユティアと別れた。
小旅行は終わった。
魔界の全貌やリーネ族との確執などがわかり、収穫の多い旅であった。
部屋で一息つくと同時に疲労から強烈な睡魔に襲われ、妙土は眠りにおちた。
妙土は不思議な思いで魔王ラディリオンがいる王宮の上の月を見つめていた。
魔界は地下の異次元にあるので本物の月ではなく、アルカナ「月」の力で生み出された擬似の月である。
同じように、アルカナ「太陽」が作り出した擬似太陽もあり、アルカナ「世界」が擬似月と擬似太陽を運行させることで、魔界に朝昼夜の時間帯を現出させていた。
アルカナの「月」と「太陽」、「世界」は、戦闘をするというより、魔界の世界を維持する役目を担っているようだ。
「アルカナって、何でもできるのね」
妙土は感心した。
アルカナ「星」こと、ユティアが満足そうに頷く。
ユティアは、「星」の名の通り、魔界の星々を司る。
夜の闇に星のイリュージョンをかけるのだという。
「3種の神器の力はスゴいのですが、リーネ族自体の力は、瞬間移動や念動力、あとはエネルギー波を撃つことですかねー。
わりと単純であります。それにくらべると、魔族はー」
ユティアの瞳がキラリと光る。
「それぞれの魔力が多種多様と異なりますー。
いろんなことができるんですよー。
・・・まあ、種族もたくさんいるので、全て把握しているわけではないのですが」
実際に魔界には様々な種族が王都を中心に存在している。
ユティアと1週間、魔界をまわって、妙土は改めて魔族の種類の多さに驚嘆した。
リーネ族以外の神族、妖精や精霊に、魔獣、巨人など人間の世界では、もはや伝説上の生き物となっているものたちがいた。
人間と魔族の間に生まれた亜人も数種類いる。
妙土はユティアと各種族の部落を泊まり歩き、魔族の生活や習慣、特性などを学んだ。
炎や水を操る種族、怪力や変身を得意とする種族、魔術や魔法に精通した種族、戦闘に特化したアルカナ。
種族の差を超えて魔界に共存する魔族たち。
それらを何千年も平穏無事に統べる魔王ラディリオンと女王ラビリティアの手腕に舌を巻くばかりである。
「ユティア、魔王ラディリオンが封印されている間、妹のラビリティアが一人で魔界を治めていたんでしょ?スゴい人だね」
「ラビリティア様はあまり人前におでましになりませんが、ラディリオン様と同等の魔力を持っているかとー。
美しく賢くあられますが、兄君以外の方には心を開きませんねー。昔はそうではなかったのですがー」
「昔は?」
「ここだけの話」
ユティアが真剣な顔になり、声のボリュームを落とした。。
「魔族の王族は、敗れたとは言え、古代の神々の血脈を守るため、近親相姦を繰り返しておりまして・・・。
ラディリオン様とラビリティア様のご両親も実の兄妹でした。そして、ラビリティア様は父親である先王様に毎晩のように夜伽をしていたようです」
「夜伽って・・・実の娘なのに・・・」
妙土は絶句した。
「ラディリオン様が妹と交わるのを拒んだため、神々の血を絶やさぬよう、との先王の思し召しです。
母君も黙認だったとか。毎晩、泣きながら父親と床を共にしている妹を助けるため、ラディリオン様は実の父親である先王を成敗いたしました」
「・・・つまり殺したと・・・」
「その事件以来、ラビリティア様は心を閉ざしてしまい・・・。昔は快活な方だったと聞いておりますー」
壮絶な話だ。
近親相姦に親殺し。
あの兄妹にそんな陰惨な過去があったとは・・・。
リーザも近親婚の家系に生まれ、血族と血で血を洗う争いをしたというから、ラディリオンの家庭環境に親近感を覚えたのではなかろうか。
「王族以外は自由に婚姻できましてー。異種族間でも大丈夫です」
魔族は、相手が異種族であっても子を成せる。
姿かたちが似てる人間との間にすら子を作れないようにプログラムされているリーネ族とは繁殖力が違う。
現存するリーネ族の数は、10人にも満たないという。
本来、種族保存の個体数は男女合わせて200人ぐらい必要だというが、大きく下回っている。
まさにリーネ族は絶滅危惧種である。
生き残るためのシステムに脆弱性があったのだろうとユティアは解説する。
神魔対戦で多くのリーネ族が魔族の攻撃で亡くなったことが大きな原因ではないかと思ったが、妙土は黙っていた。
種の存続には天敵の存在は脅威である。
狼たちの遠吠えが聞こえた。
今夜は満月だ。
狼人間、人狼族たちの時間が始まる。
人狼族の集落も訪れたが、人狼族にも家族がいて日々の生活があった。
そういうところは、私たち人間と同じなのだな、と妙土は、思った。
魔界巡りも一段落したので久しぶりに王宮の部屋に戻り、食事と湯浴みをさせてもらった後、ユティアと別れた。
小旅行は終わった。
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