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義弟の争奪戦
フェルディア様と私は、次期皇帝と次期皇后候補として、業務に携わり始めました。私の気持ちが固まるまで待ってくださるとのことで、あくまで候補にはなりますが、元々、把握していた内容ですので、帝国機密的にも問題はございません。
卒業生の方々もちらほら行儀見習いや文官として、業務についていらっしゃいます。
「フェルディア様。よろしければ、私たちとランチに行きませんか? もちろん、マリー様もご一緒でよろしいですよ?」
第一皇子の元取り巻きであった、サタリー様とナターシャ様、アイラ様がフェルディア様にそう声をかけます。彼女たちは、行儀見習いからは落とされたはずなのに、なぜこちらにいらっしゃるのでしょう?
フェルディア様は、凍えてしまいそうな視線を向けます。
「名前を呼ぶな。不敬だ。あと、僕を兄上のように簡単な男と思わないで欲しい。僕はマリーのことをずっと一途に思ってきた。今後も、そのようなことは起こらない。二度と声をかけてくるな」
余りにも冷たい言葉に、皆様が呆然となさっています。
「行くよ? マリー」
私には柔らかく微笑んで、手を差し出してエスコートしてくださいます。
「え? はい、失礼します」
皆様に一礼して去って行きました。
「何よあれ! 全然響かなすぎる!」
「第一皇子様はあんなにも簡単だったのに!」
「どうする? 諦める?」
「まさか! 第一皇子と一緒にいる時あんなにいい思いしたのに、諦められないよ!」
第一皇子は、取り巻きたちを高価なお店に連れて行ったり、プレゼントを贈ったりしていたようだ。その経験からなかなか抜け出せないのだろう。
ーーーー
「第二皇子様? 私、第二皇子様と一緒にお出かけしたいです」
そっと胸元を強調しながら、擦り寄るサタリー。
「先日、二度と声をかけてくるなと申し上げたはずだが? 近寄らないでくれるか?」
冷たくあしらう第二皇子に、駆け寄るサタリーが転んで倒れ込んでしまう。思わずそれを受け止めたタイミングで、マリーが現れた。
「あ……。失礼いたしました」
「待て! マリー! お前は離せ!」
第二皇子は、紳士的にサタリーを放り捨てて、マリーを必死に追いかける。
「待ってくれ、マリー」
第二皇子が肩を掴み、引き寄せると、マリーの目からは涙が溢れた。
「私、感情を抑える訓練をいたしましたのに……第一皇子と他の女性が近づいていても、こんなに動揺したことございませんのに、なぜかわからないのですが、涙が出てしまいます。私、次期皇后として失格ですわ」
ぼろぼろと涙をこぼすマリーを、第二皇子が思わず抱きしめる。
「マリー、違うんだ。あれは事故なんだ。でも、それよりも、僕がマリーを動揺させることができる存在ということに喜びを感じてしまう。マリーにとって、辛い思いをさせてしまっているのに……すまない。僕は、マリーにとって少しでも独占欲を抱いてくれる存在なのかな? それとも、トラウマを刺激してしまっただろうか……」
「トラウマ……確かに、第一皇子との出来事に、私は傷つきましたが、あのときもフェルディア様がいてくださいました。いつも心を軽くしてくださいましたわ。でも、今回はトラウマとは違う気がいたします。……独占欲、と言われるとそうなのかもしれませんが、このような感情、生まれて初めて抱いた気がいたしますわ」
そう言いながら、マリーは首を傾げて悩む。
「私、第一皇子にも幼い頃は憧れの気持ちを抱いていた記憶ですのに……」
「マリー!? 今はどうなの!?」
「学園の最後の1年できっぱり綺麗に気持ちが消え失せました。今はもう、何の思いもありません」
「そうか……安心したよ。サタリー嬢たちを野放しにはできないな……どうしようかな」
愛らしい笑顔を浮かべるフェルディア様の目の奥に凶悪な光を見た気がしますが、きっと気のせいだと思います。
後日、フェルディア様に不敬を働いたとして、サタリー嬢たちは修道院に送られることとなったようです。余りにも想定外の出来事で、何らかの力が働いたとしか考えようがないのですが、フェルディア様が愛らしく微笑んでおっしゃいました。
「きっとマリーに嫌な思いをさせた天罰が降っただけだから、マリーは何も気にしなくていいよ?」
相変わらずの愛らしさに、私は思わず頷いてしまい、このことは記憶から消し去られていきました。
卒業生の方々もちらほら行儀見習いや文官として、業務についていらっしゃいます。
「フェルディア様。よろしければ、私たちとランチに行きませんか? もちろん、マリー様もご一緒でよろしいですよ?」
第一皇子の元取り巻きであった、サタリー様とナターシャ様、アイラ様がフェルディア様にそう声をかけます。彼女たちは、行儀見習いからは落とされたはずなのに、なぜこちらにいらっしゃるのでしょう?
フェルディア様は、凍えてしまいそうな視線を向けます。
「名前を呼ぶな。不敬だ。あと、僕を兄上のように簡単な男と思わないで欲しい。僕はマリーのことをずっと一途に思ってきた。今後も、そのようなことは起こらない。二度と声をかけてくるな」
余りにも冷たい言葉に、皆様が呆然となさっています。
「行くよ? マリー」
私には柔らかく微笑んで、手を差し出してエスコートしてくださいます。
「え? はい、失礼します」
皆様に一礼して去って行きました。
「何よあれ! 全然響かなすぎる!」
「第一皇子様はあんなにも簡単だったのに!」
「どうする? 諦める?」
「まさか! 第一皇子と一緒にいる時あんなにいい思いしたのに、諦められないよ!」
第一皇子は、取り巻きたちを高価なお店に連れて行ったり、プレゼントを贈ったりしていたようだ。その経験からなかなか抜け出せないのだろう。
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「第二皇子様? 私、第二皇子様と一緒にお出かけしたいです」
そっと胸元を強調しながら、擦り寄るサタリー。
「先日、二度と声をかけてくるなと申し上げたはずだが? 近寄らないでくれるか?」
冷たくあしらう第二皇子に、駆け寄るサタリーが転んで倒れ込んでしまう。思わずそれを受け止めたタイミングで、マリーが現れた。
「あ……。失礼いたしました」
「待て! マリー! お前は離せ!」
第二皇子は、紳士的にサタリーを放り捨てて、マリーを必死に追いかける。
「待ってくれ、マリー」
第二皇子が肩を掴み、引き寄せると、マリーの目からは涙が溢れた。
「私、感情を抑える訓練をいたしましたのに……第一皇子と他の女性が近づいていても、こんなに動揺したことございませんのに、なぜかわからないのですが、涙が出てしまいます。私、次期皇后として失格ですわ」
ぼろぼろと涙をこぼすマリーを、第二皇子が思わず抱きしめる。
「マリー、違うんだ。あれは事故なんだ。でも、それよりも、僕がマリーを動揺させることができる存在ということに喜びを感じてしまう。マリーにとって、辛い思いをさせてしまっているのに……すまない。僕は、マリーにとって少しでも独占欲を抱いてくれる存在なのかな? それとも、トラウマを刺激してしまっただろうか……」
「トラウマ……確かに、第一皇子との出来事に、私は傷つきましたが、あのときもフェルディア様がいてくださいました。いつも心を軽くしてくださいましたわ。でも、今回はトラウマとは違う気がいたします。……独占欲、と言われるとそうなのかもしれませんが、このような感情、生まれて初めて抱いた気がいたしますわ」
そう言いながら、マリーは首を傾げて悩む。
「私、第一皇子にも幼い頃は憧れの気持ちを抱いていた記憶ですのに……」
「マリー!? 今はどうなの!?」
「学園の最後の1年できっぱり綺麗に気持ちが消え失せました。今はもう、何の思いもありません」
「そうか……安心したよ。サタリー嬢たちを野放しにはできないな……どうしようかな」
愛らしい笑顔を浮かべるフェルディア様の目の奥に凶悪な光を見た気がしますが、きっと気のせいだと思います。
後日、フェルディア様に不敬を働いたとして、サタリー嬢たちは修道院に送られることとなったようです。余りにも想定外の出来事で、何らかの力が働いたとしか考えようがないのですが、フェルディア様が愛らしく微笑んでおっしゃいました。
「きっとマリーに嫌な思いをさせた天罰が降っただけだから、マリーは何も気にしなくていいよ?」
相変わらずの愛らしさに、私は思わず頷いてしまい、このことは記憶から消し去られていきました。
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