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25.獣人の秘密

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「お待ちください、ナリアンヌ様!」

 わたくしたちが、聖ルピテア王国に帰ろうとすると、後ろから声をかけられた。

「あら、獣人のお方……」

「我が名は、マルと申します! 以前、ナリアンヌ様に救っていただいたご恩をお返ししたくて!」

「わたくしが……?」

 突然、片膝をつき、頭を下げるマルさん。わたくしが救った……? 全く身に覚えがございませんわ。

「以前、我々の国でデュラハンが現れたとき、どこからか現れたナリアンヌ様とナリアンヌ様のお兄様、そしてそちらにいらっしゃる従者のお方。皆様で倒してくださったのです」

 次回、イベントはデュラハン討伐。ただ、イベント発生時に母を亡くす子供がいたのです。そのような悲劇は、事前に防ぎたいと願って、早めに討伐いたしました……。えぇ、転移魔法で不法入国して参りましたが。

「……み、身に覚えはございませんわ」

 さすがにこんな場所で、不法入国がばれるわけにはいきませんわ。ばあやも少し顔色を悪くしております。

「申し遅れました。我が名は、マル・ド・メルハー。今はなきメルハー獣国の王族の一人でした」

「……」

 まずいですわ。元とはいえ、王族のお方にばれていましたわ。

「我が国にデュラハンが現れたとき、一人でも多くの国民を守りたいと願っておりました。しかし、我々ではなすすべがありませんでした。そんなとき、突然現れたナリアンヌ様。我々が苦戦したデュラハンを瞬く間に倒し、消えてしまいました。まさに髪の使わせた聖女だと王も認め、感謝を捧げました。その後、デゼール王国に侵略され、国民も王族の我々も奴隷として身分を落としました。しかし、ナリアンヌ様こそ聖女には相応しいお方だと信じ、我々は恩義を抱き続けております。獣人は主を求める性質がございます。……いつか、ナリアンヌ様に主人となっていただきたいと願っております」

「まぁ。ありがとう。喜んで。……ということで殿下、お早めに獣人のお方が入国できるような仕組みづくりをお願いいたしますわ?」

 さすがにここまで言われたら、人違いとは言い切れませんわ。

「ナリアンヌ嬢。我が国が聖典の教義で獣人を人と認めず、入国を認めていないことを知っていながら……。僕の治世になったら、精一杯努力すると誓おう」

「ありがとうございます、殿下」

 わたくしと殿下が固く握手を交わしている中、ルチア様がおっしゃいました。

「獣人は人でない。食べて良い?」

「「いいわけあるか!」ありませんわ!」






「ところで、ナリアンヌ嬢。父上にこの件を報告するついでに、王宮でお茶でも飲まないかい? 外国の珍しいお菓子を手に入れたんだよ。君にぴったりの美しいお菓子なんだ」

「まあ、喜んでご一緒させていただきますわ! ねぇ、ルチア様?」

「行く。……どんまい、王子」
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