悪役令嬢の指南書

碧井 汐桜香

文字の大きさ
7 / 13

7.邪神降臨

しおりを挟む
「ファルシア様!」

 そう言って、リーンベルが私を守るように飛びついてきました。

 邪神様が邪悪そうな笑みを浮かべ、こちらを見ています。

「……邪神め、覚悟せよ」

「邪神を相手にするには、戦力として不足しているが……ルイス!」

 殿下の声に頷き、ルイス様が剣を構えます。

「……は!? 剣!? ……それって切れるやつ?」

 邪神様の言葉に、ルイス様が頷き、風に乗って飛んできた葉を切り刻みます。

「……ちょ、ちょっと待って! 私の身体を切ると、邪気がこの世界を覆って、えーっと、やばいことになるよ!?」

「やばいこととはなんだ?」

 慌てた様子の邪神様。手から邪気を放ったり剣を扱ったり……なさらないのかしら?

「そ、その。世界の滅亡とか!!」

「は?」

「ほ、ほら! 流行り病が広がるよ!?」

「……聖魔法に守られている我が国に病が広がることはないと思うが?」

「えっと……」

 邪神様とルイス様の掛け合いを見ていると、幼子の虚言と付き合う大人の姿のように見えてきました。

「殿下……その……」

「あぁ、ファルシア。言いたいことはわかる。ただ、邪神の策略かもしれぬ」

「では、そこの麻紐で邪神様をぐるぐる巻きにしてみたらいかがでしょうか?」

「……」






「なによ! 私は神プレーヤーなのよ!?」

 剣を構えた殿下とルイス様の手によってぐるぐる巻きにされた邪神様。涙目になりながらなにか叫んでいらっしゃいます。

「殿下。せっかくナニアが用意してくれたのですもの。邪神様の服を着替えさせてもよろしいでしょうか?」

「あぁ、神殿から邪神の引き渡し要請が来るまでは、好きにしてくれ。逃がさないように拘束の魔術具をつけておこう」

「ありがとう存じます。さぁ、ナニア。やっておしまいなさい!?」

「はっ」

 私がナニアに指示をだすと他のメイドたちも集まり、私の部屋に邪神様を運びます。

「これはマッサージのし甲斐がりそうですわ!」
「お嬢様は大変美しくいらっしゃるから、こんな原石を見つけると楽しみになってしまいますわね!」
「魔法が付加された美容液を使いましょう!」

 きゃっきゃと聞こえてきそうな盛り上がりを見せ、邪神様はつれていかれました。







「……ファルシア様が邪神ばかりを見ていて、構ってくださいません」

「あれは、邪神なのだろうか? 単なる人間に見えるが……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

やさしい・悪役令嬢

きぬがやあきら
恋愛
「そのようなところに立っていると、ずぶ濡れになりますわよ」 と、親切に忠告してあげただけだった。 それなのに、ずぶ濡れになったマリアナに”嫌がらせを指示した張本人はオデットだ”と、誤解を受ける。 友人もなく、気の毒な転入生を気にかけただけなのに。 あろうことか、オデットの婚約者ルシアンにまで言いつけられる始末だ。 美貌に、教養、権力、果ては将来の王太子妃の座まで持ち、何不自由なく育った箱入り娘のオデットと、庶民上がりのたくましい子爵令嬢マリアナの、静かな戦いの火蓋が切って落とされた。

もしもゲーム通りになってたら?

クラッベ
恋愛
よくある転生もので悪役令嬢はいい子に、ヒロインが逆ハーレム狙いの悪女だったりしますが もし、転生者がヒロインだけで、悪役令嬢がゲーム通りの悪人だったなら? 全てがゲーム通りに進んだとしたら? 果たしてヒロインは幸せになれるのか ※3/15 思いついたのが出来たので、おまけとして追加しました。 ※9/28 また新しく思いつきましたので掲載します。今後も何か思いつきましたら更新しますが、基本的には「完結」とさせていただいてます。9/29も一話更新する予定です。 ※2/8 「パターンその6・おまけ」を更新しました。 ※4/14「パターンその7・おまけ」を更新しました。

転生したら没落寸前だったので、お弁当屋さんになろうと思います。

皐月めい
恋愛
「婚約を破棄してほしい」 そう言われた瞬間、前世の記憶を思い出した私。 前世社畜だった私は伯爵令嬢に生まれ変わったラッキーガール……と思いきや。 父が亡くなり、母は倒れて、我が伯爵家にはとんでもない借金が残され、一年後には爵位も取り消し、七年婚約していた婚約者から婚約まで破棄された。最悪だよ。 使用人は解雇し、平民になる準備を始めようとしたのだけれど。 え、塊肉を切るところから料理が始まるとか正気ですか……? その上デリバリーとテイクアウトがない世界で生きていける自信がないんだけど……この国のズボラはどうしてるの……? あ、お弁当屋さんを作ればいいんだ! 能天気な転生令嬢が、自分の騎士とお弁当屋さんを立ち上げて幸せになるまでの話です。

本当に現実を生きていないのは?

朝樹 四季
恋愛
ある日、ヒロインと悪役令嬢が言い争っている場面を見た。ヒロインによる攻略はもう随分と進んでいるらしい。 だけど、その言い争いを見ている攻略対象者である王子の顔を見て、俺はヒロインの攻略をぶち壊す暗躍をすることを決意した。 だって、ここは現実だ。 ※番外編はリクエスト頂いたものです。もしかしたらまたひょっこり増えるかもしれません。

毒姫の婚約騒動

SHIN
恋愛
卒業式を迎え、立食パーティーの懇談会が良い意味でも悪い意味でもどことなくざわめいていた。 「卒業パーティーには一人で行ってくれ。」 「分かりました。」 そう婚約者から言われて一人で来ましたが、あら、その婚約者は何処に? あらあら、えっと私に用ですか? 所で、お名前は? 毒姫と呼ばれる普通?の少女と常に手袋を着けている潔癖症?の男のお話し。

政略転じまして出会いました婚

ひづき
恋愛
花嫁である異母姉が逃げ出した。 代わりにウェディングドレスを着せられたミリアはその場凌ぎの花嫁…のはずだった。 女難の相があるらしい旦那様はミリアが気に入ったようです。

『候補』だって言ったじゃないですか!

鳥類
恋愛
いつのまにやら『転生』して美幼女になっていましたよ!魔法がある世界とかサイコーか! 頑張って王宮魔導師になるぞ!と意気込んでいたら…いつのまにやら第一王子殿下の『婚約者候補』にされていた…!! 初投稿です。 異世界転生モノをやってみたかった…。 誤字脱字・タグ違いなどございましたらご一報いただければ幸いです。 内容については生温くサラッと読んでいただけたらと…思います。

安らかにお眠りください

くびのほきょう
恋愛
父母兄を馬車の事故で亡くし6歳で天涯孤独になった侯爵令嬢と、その婚約者で、母を愛しているために側室を娶らない自分の父に憧れて自分も父王のように誠実に生きたいと思っていた王子の話。 ※突然残酷な描写が入ります。 ※視点がコロコロ変わり分かりづらい構成です。 ※小説家になろう様へも投稿しています。

処理中です...