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始まり
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貴方に巡り会えたら
わたしの未来は、いいえ、わたしの過去は変わるのでしょうか・・・。
・゜・・゜・。.:*:・'°☆・゜・゜・・☆
梅雨入りしたばかりで、六月だというのに肌寒い。
絹子は人の行き交う六本木の交差点に立ち止まり、花屋を探す。
花屋の二階のカラオケBOXに辿り着くと
絹子はパーティールームの扉を開けた。
⭐
「ビールお代わりください!」
「俺、ハイボールね!」
男女二十人程が細長いテーブルを前に、向かい合って座っている。
凝った料理の皿を尻目に、みるみるジョッキが空になる。
「みんなよく飲むわね・・・」
飲まないのは絹子だけ。
絹子達の私立校は、中学時代は皆一緒だったのに、高校になると男子校女子高と別れていく。
高校のある場所も東京都と神奈川県。
中学生カップルは何組も破局している。遠距離恋愛は、いつの時代も辛いもの。
「葛西くんと菜摘ちゃんも高校進学してすぐ別れたよねー」
と誰かが言う。
もうみんな中年だ。そんな事も笑い話。
近況を語り合い、ペットの写真を見せ合い、子供の話どころか孫の話で盛り上がる。
喧騒の中、絹子の隣で静かにグラスを傾ける男性がいた。
絹子が眺めているのに気がついて、微笑みながら声をかけてきた。
「雰囲気が変わったね」
「そうかしら?」
「綺麗になった」
「ありがとう」
随分ストレートに言うのは酔っているからだろうか。
「離婚したんだ…」
彼が小さな声で呟いた。
「えっ!みんな知っているの?」
「幹事の田中にだけ話したよ」
「そうなの…」
他に言葉が見付からない絹子。
「今日は近藤くんは来ないのね。土方くんと仲良くて、よく『新撰組』ってからかわれていたわね」
何とか彼にそう言うと、土方孝介は小さく笑った。
⭐⭐
二次会の居酒屋では、絹子の前に座った山下くんが自分の離婚話を涙ながらに語っている。
此方はずいぶん前のことで周知の事実。
「ま、頑張れや」
幹事の田中くんが慰めていた。
孝介は店の奥まった席で、クラスのアイドル菜摘ちゃんと嬉しそうに話している。月日が経ってもアイドルは不動の位置である。
「やっぱり土方くんも菜摘ちゃんのことが好きだったのね」
絹子の胸の中がざわついた。
盛り上がっている二次会も、後一時間もすれば日付が変わる。
一端お開きということに成り、電車の時間を気にする者達は店を出る。
住まいが渋谷という孝介に
「渋谷駅で乗り換えるからご一緒させて。」
と、絹子は一緒に地下鉄の階段を降りた。
⭐⭐⭐
夜中の1時を廻った頃、絹子はようやく家に着いた。
自分の部屋で、孝介にメールする。
「無事に着きました。今日はありがとう」
「よかった!家まで送れなくてごめん」
更にメールが届く。
「会えないかな」
「私はいつでも大丈夫よ」
金曜のディナーを約束した絹子は
クラス会の時とは違う胸のざわめきを感じていた。
わたしの未来は、いいえ、わたしの過去は変わるのでしょうか・・・。
・゜・・゜・。.:*:・'°☆・゜・゜・・☆
梅雨入りしたばかりで、六月だというのに肌寒い。
絹子は人の行き交う六本木の交差点に立ち止まり、花屋を探す。
花屋の二階のカラオケBOXに辿り着くと
絹子はパーティールームの扉を開けた。
⭐
「ビールお代わりください!」
「俺、ハイボールね!」
男女二十人程が細長いテーブルを前に、向かい合って座っている。
凝った料理の皿を尻目に、みるみるジョッキが空になる。
「みんなよく飲むわね・・・」
飲まないのは絹子だけ。
絹子達の私立校は、中学時代は皆一緒だったのに、高校になると男子校女子高と別れていく。
高校のある場所も東京都と神奈川県。
中学生カップルは何組も破局している。遠距離恋愛は、いつの時代も辛いもの。
「葛西くんと菜摘ちゃんも高校進学してすぐ別れたよねー」
と誰かが言う。
もうみんな中年だ。そんな事も笑い話。
近況を語り合い、ペットの写真を見せ合い、子供の話どころか孫の話で盛り上がる。
喧騒の中、絹子の隣で静かにグラスを傾ける男性がいた。
絹子が眺めているのに気がついて、微笑みながら声をかけてきた。
「雰囲気が変わったね」
「そうかしら?」
「綺麗になった」
「ありがとう」
随分ストレートに言うのは酔っているからだろうか。
「離婚したんだ…」
彼が小さな声で呟いた。
「えっ!みんな知っているの?」
「幹事の田中にだけ話したよ」
「そうなの…」
他に言葉が見付からない絹子。
「今日は近藤くんは来ないのね。土方くんと仲良くて、よく『新撰組』ってからかわれていたわね」
何とか彼にそう言うと、土方孝介は小さく笑った。
⭐⭐
二次会の居酒屋では、絹子の前に座った山下くんが自分の離婚話を涙ながらに語っている。
此方はずいぶん前のことで周知の事実。
「ま、頑張れや」
幹事の田中くんが慰めていた。
孝介は店の奥まった席で、クラスのアイドル菜摘ちゃんと嬉しそうに話している。月日が経ってもアイドルは不動の位置である。
「やっぱり土方くんも菜摘ちゃんのことが好きだったのね」
絹子の胸の中がざわついた。
盛り上がっている二次会も、後一時間もすれば日付が変わる。
一端お開きということに成り、電車の時間を気にする者達は店を出る。
住まいが渋谷という孝介に
「渋谷駅で乗り換えるからご一緒させて。」
と、絹子は一緒に地下鉄の階段を降りた。
⭐⭐⭐
夜中の1時を廻った頃、絹子はようやく家に着いた。
自分の部屋で、孝介にメールする。
「無事に着きました。今日はありがとう」
「よかった!家まで送れなくてごめん」
更にメールが届く。
「会えないかな」
「私はいつでも大丈夫よ」
金曜のディナーを約束した絹子は
クラス会の時とは違う胸のざわめきを感じていた。
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