貴方の側にずっと

麻実

文字の大きさ
上 下
9 / 20

それぞれに

しおりを挟む
「日本の夏は酷暑だね。そのうち極楽鳥でも飛ぶようになるんじゃない」

絹子の用意した素麺を食べながら芳江がこぼす。
芳江は海外が性に合うのか、マンションを絹子に任せて行ったり来たりしている。
そんな芳江の好意に甘えて、もう2年が経つ。

「なんだか船乗りの妻になったようだわ」
「港々に女がいたりしてね。そのなかでも絹子が最高だよ」

笑いが治まらない絹子に
「好きなだけ居ていいからね」
と言って
芳江は今度はマレーシアに出掛けて行った。



トシ子は伊豆から東京の病院に転院したものの未だ入院中らしい。
口には出さないが、天罰という言葉が浮かぶ。
夫は五百萬円をトシ子の夫に払ったのだろうか?
どうしたのか絹子は知らない。
絹子に無関心なのも極まれりである。

⭐⭐


長身でスマート、優しくてダンディな孝介。 二年が過ぎても毎日メールをくれ、毎週ホテルで会い濃密な時間を過ごす。
ふと、絹子が問う。

「もしもタイムマシンで高校生に戻れたら・・・・・付き合う?」
「探しに行くよ。絹子の高校へ。
でも、未来が変わってしまうかな…」

恵まれた人生を送ってきた孝介は、人生が変わってしまうことは望まないはず。離婚したとはいえ、愛した人と縁がない人生なんて嬉しくなかろう。

それに引き換え絹子の人生は、未来が変わっても惜しくはない。
同床異夢とはまさにこのこと。

其でも絹子は
生まれ変わってもこうして孝介と過ごすような気がする。
絹子はにっこり笑って言い切った。

「きっと未来は変わらないわ。」

しおりを挟む

処理中です...