貴方の側にずっと

麻実

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文化祭

十月十日は体育の日。
そして絹子には、高校入学後初めての文化祭。
校門には花で飾られた大きな立て札に『銀杏祭』と書かれている。

「銀杏の木がないのになんで『ぎんなんさい』なのかしらね」
と呑気にいう絹子に取り合わず、芳江が手を引く。
「ほら、早く早く」
制服の白いブラウスにライトグレーのスカート姿の二人は、校舎に向かって駆け出した。



三階建ての校舎は、どこの教室も各クラブの催しで賑わっている。
中庭では芝の上に緋毛氈がしかれ、茶道部の面々が茶を点てている。

そこで芳江はあり得ないものを見た。

中学の時の同級生
近藤くんが大きな身体を縮めるようにして正座でお茶を飲んでいる!
足音を忍ばせ
中学の時アイドルだった菜摘の前に座っている、詰襟姿の近藤くんの側まで行く。

「何やってんの?」
「榊さん、近藤くんにお茶を供しているところですの。お静かに」

菜摘に制止された芳江は首をすくめて退散した。
お茶を飲み終わった近藤くんが、汗をふきふき芳江の側にやって来る。

「よう、榊。お茶って苦いなあ」
「あんたがいるってことは土方もいるのよね」
「鋭いじゃん。突然、銀杏祭に行こうって言われて一緒に来たのに
俺を茶道部に押し付けてどっか行ったわ」

そのまま近藤章太は芝生に寝転がった。

⭐⭐


あちこちの壁に掛かっている立派な額縁の絵は、絵画クラブの作品である。

絹子が人気のない廊下でひとりで壁の絵を観ていると、
誰かがそっと腕に触れる。

「絹子・・」
という優しい声が聞こえた。
「土方くん?」

土方くんとは中学の時同じクラスだったけど、そんなに話したことはなかったわ。
あら!眼鏡をかけていないし髪も真っ黒。ん?中学の時もそうだったわ。
私、何を言ってるのかしらね。
そう思いながら見上げると
なんだか懐かしい瞳が絹子をじっと見詰めている。

「約束通り探しに来たよ」
「孝介さん‼」

どうして?どうして? 
どうして私達、高校生なの? 
一緒に飛行機に乗っていたはず・・。

声にならず孝介を見詰める絹子。

「僕にもわからない。でも、君に会えてよかったよ」

孝介は絹子をぎゅうっと抱きしめた。


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