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闘い

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 学校の前に差しかかったところで、
「馳」
 と言って声をかけてきたのは、長い髪の女性だ。

 ジャケットにワイドパンツのスタイルだった。
 女性の声には聞き覚えがある。

 少し前に宮久土先輩のアパートで見かけた女性の声だと気づいたのは、
「なんでアパートにいなかったの?」
 と彼に尋ねてきたからだ。

「ゆらぎ、朝早いね」
 宮久土先輩は質問に答えずに感想を言う。女性の眉根が寄るのを見て、さらに視線がこちらに向けられた。

「おはようございます」
 と何を言っていいか分からない私はただ挨拶をする。彼女は会釈をしてくれるけれど、視線には鋭さが宿っていた。

 いやだなぁ、と思う。どう見ても、恋敵として見ているのが明らかで、臨戦態勢だと分かるからだ。
「その子は?」
 と尋ねる彼女に、
「芦野うらさん、オレの彼女」
 と宮久土先輩は言う。

 オレの彼女。その発言の爆発力に先輩自身は気づいているのかな?
 彼女の顔はすっかり曇ってしまうし、私は胸がドキドキしてきてしまっていた。
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