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聖女はかく語りき。

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 聖女は十回やってきた。
 国のために祈り続けて、自分の力を存分に大地に注ぎ、天に放つのが私の仕事だ。十回の人生では母国の王や軍人、宰相達との婚姻を経験してきた。ときには爵位ある方たちと、商人やあるいは幼なじみの剣士と婚姻してきている。

 いずれの方々も私が妻となったとたんに、我が物顔で「聖女」を支配したがるようだ。独占欲や嫉妬心から束縛を受けたことはあっても、愛されたと感じたことはない。

「聖女と聞いていたが、中々淫らな身体をしているんだな」
「淫乱な聖女だ」
 聖女の名は彼らを盛り立てるには十分すぎたらしく、
「聖なる女性のはずなのに、寝室では淫らだ」
「いやらしく感じる身体を持っている」
 と人の口を伝って、私は汚されていく。
 何を言われても、私は神の祝福を国民に注いでいくだけだ。祈りを捧げ、力を大地や天に使う。国民の幸いを願うのだ。

 私と婚姻した彼らは勝手に高ぶって、勝手に心地よくなっていき、勝手に私を淫らだと勘違いしただけなのに。痛みを逃がす顔を感極まっていると勝手に解釈していらっしゃっただけ。
 私はただ、受け入れざるをえなかっただけだ。後ろ盾にない孤児の私は力を使い、聖女として見出されて生きのびてきた。


 聖女の地位はあやふやなものだ。国が栄えればまつりあげられて、国力がさがったり、災害がかさなったりすれば、諸悪の根源とされた。投獄されたり、見せしめに処刑されたりしたこともある。
 帝国に侵略により人柱として差し出された人生もあった。地位のある方との婚姻では、側室に子が生まれれば、国外に追放されたこともある。

 思えば、私は愛されたことなんてないのだった。
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