47 / 49
あるのは裏切りだけ
2
しおりを挟む
かつて、ルートグリムの王も軍の司令官も、宰相も同じことを言っていた。
今を生きる彼らの人生に私は存在しないけれど。聖女を目に前にしたとたんに、同じ発想に至るようだ。それは、国を変えて立場を変えても変わらないらしい。
「脅すわけではありませんが、シュシュプ孤児院の平穏を望むならば。身の振り方を考えた方がいいと思いますね」
レグノはしれっと言う。裏切りは珍しくない。私を前にして、裏切らなかった殿方はほとんどいないのだから。
私は皇帝のそばに寄っていき、かしずいた。
「十回の婚姻を経て、いやと言うほど手を穢してきた娼婦ですが。それでも構いませんか?」
「十回、それだけ求められてきた女がどんなものか、気になるものだな」
酷薄な笑みを浮かべた皇帝を見て、私はその命運を知る。
「宰務官、あなたは指をくわえて見ているだけですか?退室なさるか、陛下の介助をなさるか、どちらかお選びくださいな」
私は半身振り返り、レグノへと手を伸ばした。レグノの笑みを見て、私は胸がすく。
警告はしましたよ、本当にいいんですか?
そう視線で告げたけれど――――
獲物を目の前にした方々は大抵気づいてはくれない。
今を生きる彼らの人生に私は存在しないけれど。聖女を目に前にしたとたんに、同じ発想に至るようだ。それは、国を変えて立場を変えても変わらないらしい。
「脅すわけではありませんが、シュシュプ孤児院の平穏を望むならば。身の振り方を考えた方がいいと思いますね」
レグノはしれっと言う。裏切りは珍しくない。私を前にして、裏切らなかった殿方はほとんどいないのだから。
私は皇帝のそばに寄っていき、かしずいた。
「十回の婚姻を経て、いやと言うほど手を穢してきた娼婦ですが。それでも構いませんか?」
「十回、それだけ求められてきた女がどんなものか、気になるものだな」
酷薄な笑みを浮かべた皇帝を見て、私はその命運を知る。
「宰務官、あなたは指をくわえて見ているだけですか?退室なさるか、陛下の介助をなさるか、どちらかお選びくださいな」
私は半身振り返り、レグノへと手を伸ばした。レグノの笑みを見て、私は胸がすく。
警告はしましたよ、本当にいいんですか?
そう視線で告げたけれど――――
獲物を目の前にした方々は大抵気づいてはくれない。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
60
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる