上 下
30 / 65
いくつかの真実

2

しおりを挟む
 生理が来たと告げたところで、すぐに別の案が提示される。
 休み時間に連絡が来た。

「体外受精を検討する。今週末にクリニックに行きたい」
 ワンクールだけの試みで不成立だとしても、切り替えるには随分と早い。けれど、もしも問題がなければ、四割程度の確率で妊娠するという。

 生理開始から十日未満程度で誘発剤して、卵子を採取するようだ。
「そんなに早く子どもが欲しいの?」

「戸籍謄本を持ってきてくれ」
「は?」

「婚姻関係じゃなければ、事実婚だと証明する必要がある。互いに独身であるかどうかを証明しなければいけない。まともなクリニックなら提出を求められるだろ」
「事実婚じゃないでしょ」

「事実婚ということにして、体外受精をする」
「そ、それは」

「何か問題があるのか」
 四割の確率で妊娠してしまう可能性がある?いや、でも着床する可能性は低いと思うのだ。

「もう少し、チャレンジしてもいいと思う」
「そんなに時間がない」
「時間?」

「あまり、自由がきかないんだ」
「もし、別の人が輝夜の子どもを妊娠したなら。その時点でこの契約がおしまいになるから?」
 私は思っていたことを口にする。それを告げたら、すべてが終わってしまうように思えた。

「環以外とはこの契約をしていない」
 輝夜はそれだけ告げてくる。

「たしかに、誘発剤には副作用もある。それに採取にリスクがないわけじゃない。もう少し様子を見てもいい」
 と輝夜は提案を翻すのだった。
 彼の意図が分からない。

 通話を切り、私ため息をついた。
 化粧室に行けば本当に出血があり、驚く。けれども最近は、ほとんど出血しなくなっている。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

詩集「支離滅裂」

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:547pt お気に入り:1

お持ち帰りされた私に一途な恋

恋愛 / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:1,224

冷酷な少年に成り代わってしまった俺の話

BL / 連載中 24h.ポイント:12,944pt お気に入り:2,354

声を失ったSubはDomの名を呼びたい

BL / 連載中 24h.ポイント:3,253pt お気に入り:886

ねぇ、神様?どうして死なせてくれないの?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:525pt お気に入り:6

才能だって、恋だって、自分が一番わからない

BL / 連載中 24h.ポイント:298pt お気に入り:13

ちびヨメは氷血の辺境伯に溺愛される

BL / 連載中 24h.ポイント:51,540pt お気に入り:4,799

処理中です...