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彼女しかいらない

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 一年前。

 研究所に向かい、輝夜は所長室で父と対峙し、環と婚約した事後報告をする。
「別れろ。別れるための舞台づくりはしてやる。一度別れるんだ。そして一年後にその関係が盤石なことを証明してみせろ」
 と父、眩夜は言った。

 輝夜はまた始まったと思い、即座に切り返す言葉を紡ぐ。
「雅さんは許してくれました。亡くなる前に許可をとっているし、笑さんや妹達とは約束してきています」

「小学生時分のことは、何の証拠にもならない」
「そう言われると思って、映像記録は残しています。もらった手紙も残してきているので、ぜひご覧ください」

 輝夜が即座に返さなければ、奔流のような父の思考をせき止めるダムにはなり得ない。

「春黎側はどうであれ、今は状況が悪い。お前達の間に子どもができれば、春黎側に遺伝子情報を手渡すことになる」
「彼女達は戦う相手じゃない、何の問題もありません」

「私は血縁関係を信用していないんだ。お前のこともまた信用していない」

 何度となく言われたことの意味は理解している。父は本懐をとげて婚姻したわけでも、子どもを作ったわけではないからだ。
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