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影の権力者
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しおりを挟むダンスパーティは見事に成功を納めた。ルーカスがクラドとギリアン兄を脅していると疑う学生は減っていく。ただ、二人に対しての声明は相変わらず届いていた。
紙をじっと見つめたまま青い顔をするクラドと、紙を破り捨てるギリアン兄の対比が見事だ。
「アカデミーを去らなければ、危険なことになる」と。アカデミー内が荒らされる事態はあったけれど、二人に直接的な被害はない。それに、今回の文面に関しては、「このままいると危険がやってくるから逃げろ」と言っているようにも読み取れるのだ。
このままクラドとギリアン兄がアカデミーにいると起こりうる危険って何だろう?
――――誰がこの声明を書いているんだろう?
キャディに声明の心当たりを聞いてみても、首を振るだけだ。呪具の腕輪をつけられてしまったキャディは、すっかり気弱になってしまった。
「お父様にこの失態が伝わってしまったら。そのときは私の命がついえるときですわ……」
恐ろしいことを毎日口にする。そんなに怖いお父さんというのは、どこの誰なんだろう?と気になるのだ。
キャディの秘密の姿を目撃してしまったロアシュは、積極的に彼女を脅しにかかる。
「ほぉら、ボンボン家の秘密とあんたのその姿の秘密を教えてくれよ?さっさと吐いた方が身のためだ」とペーパーナイフでキャディの頬を叩きながら、脅しをかけるのだ。
時も場所もわきまえずに、脅しをするので、キャディを取り巻いていた女の子達は、すっかりおびえてしまう。そして結果的にキャディは学生達の輪から外れてしまうことになった。
――――やばいなぁ。こんなの実質上のいじめじゃん!キャディの楽しいアカデミーライフが暗黒時代になっちゃうよ!
見かねた私はロアシュに脅しをやめるように言う。けれど、ロアシュは、
「キャディ嬢が自分の秘密や生家の秘密を教えてくれればいいだけさ。あんな姿をしていて、普通の貴族階級のわけがない!ほら、さっさと正体を現せよ、化け物!」
宝物探しに夢中になる少年のようなキラキラした顔つきで、キャディを脅し続けるのだ。
ロアシュは自分が悪いことをしている自覚がないみたいだ。
むしろ好奇心がくすぐられる存在、そして自分の目的を成就させるための駒として、キャディを扱うことに何の疑問もないらしい。
ロアシュの言葉の中でも、特に「化け物」という単語にキャディの目は見開かれ、そして顔を伏せてしまう。
女の子を化け物扱いするなんて、最低だ。
これじゃ、ロアシュは今回もクズメンまっしぐらだと思う。
悪役騎士としてロアシュのノリについていくとは決めたものの、女の子に優しくないロアシュを見ているとだんだん腹が立ってくる。
「ロアシュ、やり方が下手すぎぃ。キャディを真正面から脅しても、いいものが出てくるわけないじゃん」
「じゃあ、ラッキーならどうする。やってみせてくれよ?」
とニヤニヤ笑って返してくるので、まずいハメられた、と思うのだ。
ロアシュの脅しはあくまでもパフォーマンスで、私に作戦の主導権を握らせようとする作戦だったらしい。
「ほら。女ったらしのラッキーならどうするんだよ?」と続けてくるのだった。
食えないやつぅ、と思う。
――――女の子をたらしこんだことなんてないのにぃっ!失礼だな!
すっかり縮こまってしまったキャディがあまりにも気の毒なので、少なくとも「お父様」についての恐れを軽くしてあげたいと思った。
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