魂レベルでビッチです～ヤンデレ彼氏に殺されて悪役令嬢に転生したらしいので、処刑上等で自由な異世界ライフを楽しみます！～

王殺し

4

「ごめんなさい、無理です～っ！」
　割とどんな人とでもキスは出来る自信があるけれど、どうしてもそんな気にならない。顔の間に手を翳したら、

「ルピア、お前に拒否権はないんだ」
　と眉根を寄せた彼が一度身体をとんと押した。その後、王様が剣を数回振りおろす。はらりと布地が肌から落ちていく気配があった。

　一同の視線がこちらに集まる気配があって、単純な驚きの中に、見てはいけないものを見たかのような羞恥の色が浮かんでいる。

「はぁ……っ！？」
　思わず顔を背けるルーカスと、口元を両手で押さえるキャディ。
「まぁ……っ！」

　ルーカスとキャディの驚きの理由は、自分の身体を見下ろしたら分かった。何も、着ていない。ほどよい形のほどよいサイズの胸や見覚えのある諸々がその下に見えていた。
　そしてダートにつけられた怪しい紋章が浮かびあがっているのが見える。

「その身体は、私ものだ。なぜリキュル国の紋章がついている？」

　ま、まずいなぁ。これって公然わいせつ罪？と前世を引きずった思考が駆け巡ったところで、王様が剣先をこちらに向けた。

「姦通したな……」
　ぎん、とこちらを睨みつけてくる。
「し、してないよ！」
　王様がぶんっと剣を振り回せば、リーミアが剣を受ける。軽いですね、と感想を漏らしながら剣を弾き飛ばした。

「欲に目がくらんだ愚かな王様、さようなら」
　ダートの嘲る笑い声が響いた。
　その声は、私以外には聞こえないようだったけれど、異変は他の人にも分かったようだ。

「その紋章はリキュル国の……」
　私のお腹に光っているワイングラスのような形の紋章に、リーミアの視線が刺さる。

「バイバァ～イ」
　とダートが言った瞬間に、王様の目が見開かれた。ぐにゃり、と王様の姿が歪んだ。私だけが見た幻覚ではないようだ。

「王……っ！？」
　とジョーがいい、何だ？とルーカス。王様の姿はまるでホースから飛び出た水の筋のようになって、そして、私のお腹の紋章に吸い込まれていった。

「えぇ……っ！」

　しゅん、とお腹の部分に何かがおさまった感覚がある。ダートが指先をもてあそべば、私の身体を布が包み込む。王様に切り裂かれた衣装が元に戻ってきた。

　ミッションコンプリート。