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平穏の中に忍びよる影
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「柘さん、お待たせして申し訳ありません」
と言って一人の男性が声をかけてきた。
「ご依頼いただき、ありがとうございます」
と告げる。
「次期家元の熱烈なオファーなんです。初めまして、麻井緋多知です」
と言って名刺を渡してくれた。
もらった名刺には、流観流を書かれている。華道の家元だ。
麻井緋多知(あさい ひたち)。
その名前の感じからして、緋々来との関係筋は想像できる。けれど、今それをこちらから話そうとは思わない。
「どうもご丁寧に、すみません」
と言い、私も名刺を渡す。
【FIORE】と店の名と私の名前が書かれた名刺だ。
「柘碧衣さんですか。兄が以前通っていた大学で一緒だったと聞いています」
「そうですね、緋々来さんのお名前に覚えはあります」
と私は言う。
舞台から視線を感じるような気がした。気のせいかもしれないけれど。
「そちらのお店の品ぞろえが、兄のお気に入りらしいんです。いつも横目に見ていて、いつかは依頼したいと思っていたと言っていました」
麻井緋多知はそう言ってくる。
「そうなんですね、嬉しいです。ところで、打ち合わせはどちらで行いますか?」
私は早々にこの場を去りたかった。
現在進行形で、舞台で行われているイベントは素晴らしいとは思う。
音楽と光、そして華道家たちの動きが渾然一体となって、見事なパフォーマンスとして昇華されている。
舞台の出来は、私がこの場に留まりたくない理由には無関係だ。
と言って一人の男性が声をかけてきた。
「ご依頼いただき、ありがとうございます」
と告げる。
「次期家元の熱烈なオファーなんです。初めまして、麻井緋多知です」
と言って名刺を渡してくれた。
もらった名刺には、流観流を書かれている。華道の家元だ。
麻井緋多知(あさい ひたち)。
その名前の感じからして、緋々来との関係筋は想像できる。けれど、今それをこちらから話そうとは思わない。
「どうもご丁寧に、すみません」
と言い、私も名刺を渡す。
【FIORE】と店の名と私の名前が書かれた名刺だ。
「柘碧衣さんですか。兄が以前通っていた大学で一緒だったと聞いています」
「そうですね、緋々来さんのお名前に覚えはあります」
と私は言う。
舞台から視線を感じるような気がした。気のせいかもしれないけれど。
「そちらのお店の品ぞろえが、兄のお気に入りらしいんです。いつも横目に見ていて、いつかは依頼したいと思っていたと言っていました」
麻井緋多知はそう言ってくる。
「そうなんですね、嬉しいです。ところで、打ち合わせはどちらで行いますか?」
私は早々にこの場を去りたかった。
現在進行形で、舞台で行われているイベントは素晴らしいとは思う。
音楽と光、そして華道家たちの動きが渾然一体となって、見事なパフォーマンスとして昇華されている。
舞台の出来は、私がこの場に留まりたくない理由には無関係だ。
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