上 下
55 / 228
寝起きに戦闘はやめてください

1

しおりを挟む
「美景、キスして」
 目覚めれば、キラキラと光る瞳と形のいい薄い唇が目の前にあった。その時点で誰なのかは分かったし、ダメ、と言って拒否しなければいけないのは分かっている。

「ダメだよ、万理」
 と私は言うけれど、
「今日は大学に行ってくる。だから、頑張れのキスくらいいいじゃん」
 と万理は言うのだ。キラキラと光る瞳の色は見覚えのない色だった。
 なんで万理の目が虹色に見えるんだろう?と寝ぼけた頭で思う。

「万理が協力してくれるなんて、嬉しい」
 万理が私のために動いてくれるなら、キスくらい許してもいいかも。と判断力が備わっていない状態では、思えてきてしまう。
「ね?しても、いい?」
 万理は甘く囁く。その睫毛が触れるような距離に近づいてきたので、寝ぼけた頭のまま目をつむった。

「お前、ちょろすぎないか?」
 と万理とは違った声が聞こえて、私はハッとして目を見開いた。そして、即座にベッドから飛び起きる。

 万理の姿をとっていたその人物は、たちまち姿を変え、黒い着物に身を包んだ黒髪の青年になっていた。黒い長髪を五色の紐で縛っている。
しおりを挟む

処理中です...