別れを告げたら、赤い紐で結ばれて・・・ハッピーエンド

KUMANOMORI(くまのもり)

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好き好き好き

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 もつれあうようにして私たちは部屋に入る。
 ドア脇の壁に押し付けられながら、深く口付けられた。お互いの息がまじわってとても熱い。
「今日、身体使う仕事多かったの?アップが早い」
 と私が言うと、慧ちゃんは首を横に振る。
 そして、
「好きって言って」と言ってくるのだった。
「好きだよ、慧ちゃん」
 私は言う。そう言えばはっきりと言っていなかったのかもしれない。付き合っているっていうことは、そういうことだと分かってくれている、と私は思っていたのだけれど。

 眉を寄せて、「たまんない、ヤバい」と言って強く抱きしめてくる。
「大げさ」
「オレがどんだけ那々に片思いしてたか知ってる?そばにいるのに、こういうこと出来ない切なさって知ってる?」
「し、知らないけど。でも、私は慧ちゃんが協力してくれなかったら、潤くんと続けようとは思わなかったよ。協力してくれたのに、終わらせたらいけないと思ったし、慧ちゃんは割といつも彼女いたし」
「終わらせてくれたら、すぐに那々のとこいったのに。彼女といても那々のことばっか考えてて、あれは正直浮気だと思う。那々もこんな風に声出すのかなとか」
「やだ、最低」
「昔、潤とどんなことしてたのか気になる」
 ボトムスの上から、お尻のラインを触られて身体がびくびくをふるえてしまう。思わず声が漏れる。
「あ、あんまり、参考にしないほうがいいと思う」
「ヤダ」

 流れるように下を脱がされて、もつれるようにリビングの床の上で重なり合う。指が入り口をなぞっているので、身体を思わず寄せてしまうのだけれど、「どんな風にしてたの?」となおもしつこく聞いてくるので、慧ちゃんの手を掴んで、もっと後方の入り口の触れさせてみる。
「たまにこっちとか。あとは潤くんのそっちとか刺激しつつ。オモチャ使ってほぐしてとか?」
 慧ちゃんがごくりと唾を飲む音がした。
「でもね、好きでやってないよ。失敗すると結構最悪だし」
 指がそっちの方に触れる気配がして、身体が硬直する。当時は潤くんがあまりにも無反応だったからこそ、そして私は潤くんの顔を見なかったからこそできたのだと思う。
 それでも、冷え冷えとした調子で「片づけておいてね」と言われるのはたまらない気分だった。指は離れて、前の入り口を撫でてくる。

「オレはムリかも」
「ムリでいいよ」
 手を取り、前の方に触れてと示してみせる。同時に私は慧ちゃんのお尻のラインをなぞってみた。ビクッとこの上なく大きく震え、私の顔を見る。
「那々?」
 心許なそうに、こちらを見る顔にはややおびえの色は浮かんでいた。
「しないよ。けど好きな人は好きみたい。いい場所があるんだって」
 私が手を離すと慧ちゃんは小さくため息をついて、
「那々に想像の上をいかれてる。結局主導権、握れないっぽい」と言うのだった。
「潤くんの影を追ってるのは、慧ちゃんだよ。私は慧ちゃんがいいんだから、競っても無意味だよ」
「オレの方が好き?」
「好き」
 そう言うと、頭を抱えるようにして深く深くキスをしてくる。腰の裸の太ももに、布越しに当たるものを感じた。比べられて高まるってどういうことなんだろう、と思うけど、慧ちゃんの理屈ではトリガーになるらしい。布の上から触ってみると、慧ちゃんは身体をよじる。くすぐったい、と言うのだった。


「那々、後ろからしてもいい?」
 少し言いにくそうにしながら、言ってくる。
「後ろに入れるじゃないよね?」
「もちろん」
「いいよ」
 私は身体を起こして、後ろ向きになる。既に裸になっている下半身が心もとなかった。腰のあたりに両手が添えられて、そのまま胸の方へと手が動いていく。ホックが外され、両手がブラのアンダーバストから入り込んでくる。バストトップに指が触れたときに、痺れる感覚があった。声が漏れる。片手が胸から離れて、入り口付近を撫で始めてきた。
「まだ、来てない?」と慧ちゃん。
 一瞬何のことかと思ったけど、リセットのことだと気づいた。私は頷く。
「ずれてるのか、それか……」
 あまり可能性が高いとは言えないけれど、可能性の一つが思い浮かぶ。
「オレは那々となら嬉しいし、責任持つつもりもあるけど、こういうムードでアリナシする話じゃないよな。緊急のやつ、もらい行く?」
「様子見る。私もイヤじゃないから」

 マタニティになってもできるトレーニングや教室ありませんか?と妊婦さんからの問い合わせも多い。マニュアル的な回答はできるものの、自身で経験しないうちにはリアリティを持ってメニューを組み立てられない歯がゆさがあるのも事実だ。
「でも身体が資本だし……」
 と言ってピリピリと包みを破く音がする。
 肩口にキスが落ちてきて、入り口を撫でていた指が、中を行き来しているうちに、自分の中から湿り気のある音がしてきた。
 足をたて四つん這いになって、お尻を少しあげると、
「光景かなりエロいよ。全部見えてる。誘ってんの?」
 とかすれた声で聞いてくる。
「誘ってるよ」
 と私が言うと、唾を飲む音がして、左右のお尻を割るように手が触れてくる。
 直後入り口に硬いものが入って来た。うめき声が漏れてしまうのは、かなり強引に入って来たからだ。
「那々は自分で気づいてる?最近めっちゃ、キレイになってて。身体もめちゃくちゃセクシーになってる」
 お尻をも抱えるようにしながら、ズンズンと前後運動を繰りかえす。
「お尻好きだって、言ってたから」
「え?」
「慧ちゃん、キレイな胸より、キレイなお尻が好きって言ってたから。ヒップトレーニングしたんだよ。特に付き合ってから思い出して」
「それ、高校の頃の。むか~し昔の猥談じゃん」
「友達同士だったから、割とフランクに色々話してたしね」
「那々は何だっけ」
「忘れたよ。たぶん、手の届かないアイドルとするより、気心しれた友達とする方がいいみたいな、バカな話」
「けど、そっか。あのときから那々のこと好きだったけどな。那々とする想像したことも何回もある」
「いまさら猥談」
 グイッと奥まで差し込まれて、身体が震えた。

「でも、しなくてよかった。あのとき先に手を出したのがオレだったら、オレが潤の立場だったかも」
 背中に熱い息がかかる。
「浮気をしてたかもってこと?」
「違う。オレが空回りして、結局別れてたかもってこと」
「意味わかんない」
 角度をつけて突いてきた部分が気持ちよくて、床に崩れそうになる。上半身を支えてくれて、そのまま身体を反転させられた。
「やっぱ、顔みたい」
 と言って向き合う体勢で繋がる。
「潤は無駄な努力して、本命を逃したんだな」
「分かんない、それ」
「分かんなくていいんだよ」

 慧ちゃんのスピードが速くなって、そろそろだと分かる。見つめてくる眼差しの印象は、昔から変わらない。今は少し熱に浮かされているけれど、昔は友達として今は恋人として、反応を返してくれる。
 それは、当たり前のようでいて、とても尊いことだと思った。
「好きだよ」
 そう言うと、目が潤むのが分かる。きつく抱きしめられて、より深くつながった。ふたりの声が交ざったときに、慧ちゃんの果てる気配がして、私も一瞬意識を手放した。

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