別れを告げたら、赤い紐で結ばれて・・・ハッピーエンド

KUMANOMORI(くまのもり)

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忍びよる・・・?

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 翌日は雑誌のインタビューを予定していたので、mousa本社の取材部屋に向かった。私が行ったとたんに、空気が変わる気配がする。雑談をしていた本社スタッフが話をとめたからだ。
「どうしたんですか?」
 と私が聞くと、切り出しにくそうに一人の女性社員が言った。
「玖珠さん、SNSが荒れてて。しつこく画像を張ったツイートがしつこくリプライされてるんです」
 スマートフォンの画面を見せてくれる。
 見覚えのある男性二人と私がそれぞれ写っている写真だ。どうも様子からすれば昨夜のことだと思う。
「うちの鳥府と、玖珠さんあともう一人は、トレーナーさんですよね?」
「彼氏です」
 と私が答える。
「盗撮っぽいから削除申請しているんだけど。住んでいる場所とか特定されそうな写真だから、気を付けた方がいいかもしれない」
 私は見せてもらった画像を確認する。

「たしかに、建物とか写ってますね」
 昨日の今日で写真をあげるなんて、どんな趣味をしているんだろう?
「こういう盗撮みたいなの、心当たりない?今までに経験ある?」
「私自身はないですけど。そう言えば、一緒に写っている男性トレーナーは、先日も写真を撮られてました。友達同士で出回った程度だったみたいですけど」
「なるほど。だとすれば、彼氏の方が狙われていた可能性もあるってわけか」
 とたんに、慧ちゃんのことが気にかかり、
「一応注意するよう連絡入れてもいいですか?」
 と断りを入れてから、慧ちゃんにメッセージを送っておく。また写真撮られているかも、気をつけて、と。
「玖珠さんも気を付けたほうがいいよ。マネージャーがつく前のタレント狙いのストーカーって一番たちが悪いから」
「はい」
「とりあえずは、予定通り進行させてもらうけど。何か都合があれば教えてくれていいからね」と言ってくれる。その後出社してきた鳥府くんにも事情がいきわたったらしい。
 しかし、鳥府くんはそれほど危険性を感じていないようだった。

「那々巳って意外に細かいこと気にしないから、実は盲点があるかもよ」と言うのだ。
「何か心当たりあるの?」
「あるようなないような。昔もこういうことあった気がするんだよね~」
 と鳥府くんは予想外にものどかに言う。写真には本人も写っているのに、ずいぶん警戒心が薄い気もする。
 私には全く心当たりがなかったので、鳥府くんの独特な見解という風に位置付けてあまり考えないことにした。


 インタビュー内容は恋愛や結婚と美容に関する内容だった。すべて美容や健康的な生活につなげるようなコメントが求められているのが分かったので、美容のためにも自分らしくいられる恋愛がしたい、結婚もしたい、という風にコメントをしていく。
 過去の恋愛に聞かれて、ズルズルのドロドロの時代には美容的にも良くありませんでした、ともコメントした。ちなみに「セックスと美容、健康の関連性はどうですか?充実しているとやっぱりいい感じですか?」と聞かれ、関連はあると思います、対等なセックスが出来る相手が理想ですよね、と答える。

 インタビューはつつがなく終わり、その日の仕事はおしまいになった。早めに上がっていいということなので、久しぶりに買い物をして帰ろうと思う。
 帰り際に「写真のこともあるし、送ろうか?」と鳥府くんに声をかけられる。とはいえ、鳥府くんは別件の用事を抱えているようで、何度も別室に呼ばれていたのを見ていたので、「忙しそうだしいいよ」と断った。鳥府くんもここでごり押しする余裕はなかったようだ。
「くれぐれも気をつけて」と言われながら、私はmousa本社を後にした。



 ブラブラと街歩きをして、いくつかのショップでメイク用品や服を買う。休憩中にカフェでカフェラテを飲みながら、慧ちゃんから来ていたメッセージを確認した。
「オレの方は何にも影響ないけど、那々は気をつけて」と言う。
「迎えに行こうか?」
 とさらに続けてメッセージが来た。
「今日は早上がりで今カフェなの」と私は返す。
 そこで、「玖珠さんですよね?」と片手にコーヒーを持っている女性に声をかけられた。
「はい」と答えると「今度CM出るって告知流れてきてて。今度ジム行ってもいいですか?SNSで見て気になってて」
「ありがとうございます。ぜひ来てください!まだ詳しい情報は解禁してないんですけど、徐々に小出しにする感じですね」
「ぜひ行きます!」
 そんな風に何気ないやり取りだったけれど、意外にも見ている人がいることに驚いた。ともすれば、あの画像も拡散される可能性があるってことか。

 カフェで休んだので夕食の買い物をして帰ることにした。近所のスーパーの中でカートを滑らせていると、ずっと背後に人の気配を感じる。お店なんだし、そりゃ人の気配を感じるものだけれど、ずっと私についてきている人がいるのだ。
 黒のキャップをかぶっていて、黒のマスクをし、大きめの黒のジャージを着ている。容姿はあまりはっきりしない。

 私のストーカー?
 それとも慧ちゃんにストーカーしていて、私に憎しみを募らせている人?
 そんな風に想像していると、恐ろしくなり、今日食べる分だけのものをかごに入れて、ハイスピードにセリフレジを通し、会計を終える。

 近所のスーパーにしたのは間違いだったな、と思うけれど、今や遅い、家に早く帰ろうと思い、帰路を急ぐ。ただ、遠のいていた背後の気配が急に近づいてくる。私が急ぐと、後ろの人物も同様に急ぐのだ。追われているのは、間違いなかった。わざと遠回りをしていたせいで、思いがけず時間がかかってしまったけれど、ようやくアパートが見えてくる。  

 急いで敷地内に入り、ポストを確認する間もなく階段を駆けあがるのだけれど、
「待てよ」
 と声がかかり、背筋にぞっと寒いものが走った。嘘、ヤバい、と心の声は言うのだけれど、声を押し込んで私は足を進める。
 後ろ手を引かれた。
「やめてよ!」と私は強引に手を振りほどこうとするのだけれど、思いのほか力が強くて、振りほどけない。

 こうなったら蹴るしかない、と思い、思い切り足を振り上げたところで、相手がひるんだらしい。
「おい、ちょっと待て。那々巳!何考えてる」と言ってきた。その声には聞き覚えがある。けれど、なんでこんな風な接触方法をしてくるのかは、不明だ。
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