麗しの帝王と美丈夫騎士からの二柱寵愛~帝王のパートナーなんて目指さない!~

KUMANOMORI(くまのもり)

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思惑

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 デュアルの希望を出したところ、麗史様以外は受理される。
 オレとしては先日のデュアルのおかげで、麗史様とのデュアルが難しいことは理解していたので、問題はなかった。実際的な意味でデュアルの人数をかせがなければいけないので、オレはデュアル相手探しに奔走した。
 思い出してみれば、一度経験した未来でも同じように、麗史様とのデュアルは叶わなかった。
 ただ、桐峯とのデュアルはしていないはずだ。

 じゃあ誰を相手にデュアルとしたんだっけ?と思い出す。パートナー投票やデュアルを経験しているということは、学内試験も経験しているはずだ。
 柳と琉来の他に3人誰とデュアルをしたんだっけ?と思う。
 そして、申請できる相手が見つからずに、離音先生、羅千先生、瑠磨先生とのデュアルを行ったことを思い出した。

 そのときのオレは、パートナーになるために必死だったため、学内の試験に対しては無頓着だった。だから、救済策として教師とのデュアルで対応してもらったのだ。

 離音先生は柔和な人柄なだけ、柔らかな剣使いをしていて、羅千先生は直線的な動きのレプリカ斧、瑠磨先生は飛び道具を得意としていたように思う。何か違和感があったのを覚えていた。どの先生とのデュアルでも本気を出してもらっていない、という感覚があったからだ。
 教師が生徒をボコボコにのしてしまうのは、どうかとも思うが、それにしても手ごたえがない、という印象だった。
 先生たちのおかげで、3勝2分けでオレは試験を終えたと記憶している。
 今回は、そこに桐峯が加わっているし、まだ他の生徒にデュアルを申し込む余裕があるはずだ。


 誰か相手をしてくれる人はいないのか、色々な奴に声をかけて探していたけれど、試験では皆できるだけ勝ちたいと思っているため、それなりの使い手でありながら、飛び抜けて高いランクにいるわけでもないオレは嫌煙されがちだ。
 ランクが高ければ、記念デュアルとして歓迎されるのだろうけど。


 そんなある日、学園共和党のメンバー二人から呼び出しをされた。
 桐峯に付き従っていた奴らだ。
「デュアル相手になってやってもいい」
 と言うのだった。
 どこまでも上から与えてやる視点なんだな、と思いながらも「ぜひお願いするよ」と答える。
 こっちとしても、未知の相手とのデュアル経験は、ぜひ欲しいものだったからだ。

 オレの返答に肩透かしを食らったような顔をする二人だったが、一人がもう一人に耳打ちをする。
 そして笑い合いながら、「ただし、女の姿でな」と付け加えるのだった。

 これには桐峯は関わっているのか?と邪推する。
 もし関わっているなら、オレを誘いだせ、その能力を見破れと言われたのかもしれない。あるいは、この二人自身の野卑な好奇心の可能性も、否定できないが。

「いいよ、それで」とオレは答える。
 二人は顔を見合わせて肩をすくめた。もっと過剰な反応をされることを期待していたようだ。

「後悔するなよ、それに逃げるなよ」
「必ず女の姿でだ」
 と念を押してくるのだった。いずれにせよ、こっちからすれば願ってもないことだ。
「お願いするよ、希望出しといてくれよな」
 と答える。
 後で柳に聞いたことによれば、その二人は露木と橘といって、共和党では力を持つ者だと知った。また、パートナー候補に名乗り出ていたことを知る。つまり、柳の競合でもあるようだ。


 デュアルの相手が揃ったところで、オレは柳に、デュアルの希望を出したことを報告する。その流れで他の相手の話も出たのだった。
「露木は飛び道具、橘は鎖鎌を得意とする。ただ、葉にとってはそれほど恐ろしい相手ではないはずだ。だが、何か引っかかる」
 と柳は言う。
「どうしてだ?何か探りを入れたいからデュアルに誘ってきたんじゃないのか?桐峯もそうだし」
「桐峯はともかく、あの二人は、いつも自由党の奴らと競っていた。どっちの党からパートナーが出るかどうかは、学園の中での大きな関心ごとだからだ。なぜ、党に所属していない葉に狙いを定めたのか分からない」

 確かに、一度経験した未来では奴らとのデュアルの経験はない。
 前回オレはパートナー候補として上りつめようとしていたはずで、パートナーを目指そうとする奴らからすれば、目障りな存在だったはずなのに。

「オレや蓮見様と、葉がつながるのを防ぎたいという意図かもしれない」
「そりゃもう遅いよな。オレは二人を擁立するって決めたし」
 オレは肩をすくめる。柳は難しい表情をしたまま、崩さないのだった。

「ひょっとしたら、お前はまだパートナーを目指していると思われていた方がいいのかもしれない」
「何でだよ?」
「オレ相手にパートナー候補として競っていると見せかけておいた方が、安全だという話だ。今までのお前の言動からして、急にパートナー候補をやめるとなれば、何か心境の変化があったと疑われる。そうすれば、オレや蓮見様との個人的な繋がりを疑われるだろう。無所属であるお前が、共和党と正面からぶつかるのは得策じゃない。桐峯がお前にデュアルを申し込んだことにも、何か裏があるように思う」
「実情はどうであれ、装えってことか」

 オレが言うと柳は頷いた。とはいえ、柳の表情は決して明るくはならない。
 こうして部屋の行き来がしにくくなることや、学内で話しにくくなることを案じているらしい。

「大丈夫だって。基本的にはライバルのように接すればいいんだろ?そうすれば違和感がないはずだ。今までだってそうしてきたし」
 オレの言葉に、柳は「なるほど」と呟いた。ライバルのように、か。と口の中で含むように言うので、何か特別なことを言ったか?と思う。

「じゃあ装うことにするが、それはあくまでも壮也や麗史様のためだ。今のオレはパートナーになることに執着はない」
「分かっている、だがくれぐれも気をつけてくれ」
「分かった」
 そう言い部屋を出ようとするが、手首を掴まれて「挨拶はくれないのか」と言われるので、柳の唇に口付けをする。
 まだセーフだな、と思った。これは挨拶内だ。唇を離すと、どこか名残惜しそうにする柳だったが、「ではまた」と身体を離してくれる。
 これはこれで、違和感があったが、仕方がない。
 個人的な関係を勘づかれては、二人のためにならないのなら。
 そう頭を切り替えて、桐峯や露木、橘とどんな風に闘えばいいのか、と頭を巡らせる。


 しかし、露木と橘とのデュアル希望を出し申請が通った後で、桐峯から再び声がかかった。学科授業の帰りの廊下で、
「露木と橘とのデュアルと取り消ししてくれないか」と話しかけられたのだ。
 オレとしてはせっかく見つけたデュアル相手なので、はいそうですか、と頷くわけにもいかない。

「何でだよ?」と聞いてみれば、あの二人とオレとのデュアルは党の意向ではないという。
 つまり、桐峯からすれば、あの二人とオレとのデュアルは望ましいことではないってことだ。

「申請しちゃったし。ま、試験の一つとしていいじゃん。別にお前がけしかけたなんて思わない」とオレは気軽に考えていたけれど、
「党の中では力のある二人だ。勝手な行動を起こされたら、他の党員への影響も大きい」
「あいつらが独自に考えて動いてるってことか?それとも、他の誰かが?」
 オレの言葉に、桐峯の瞳が光った。

「勘が良すぎる娼妓は、長生きできない」
 と言うのだ。
「そうかもな。でも図星を指されて讒言を吐く党首ってのも、その筋じゃ危険だと思うけどな」
 とオレも負ける気はないのだった。

 桐峯はいかめしい表情を緩めることはないまま、
「お前が二人を誘ったことにしてくれないか?」
 と妙な提案をしてくる。しかし、人にものを頼む態度じゃない。
「はあ?なんでそんなこと。それは、共和党のために動けってことだろ」
「あの二人もパートナー候補に名乗りをあげている。誘惑していることにして上手く利用できれば、お前は頭一つ抜けることが可能だ」
「そんなの、お前の差し金じゃないって証明がしたいだけだろーが。それに、お前だってパートナーになりたいんだろ?」

 オレの言葉に、桐峯が逡巡するのが分かった。
 何かある、とは思ったが深追いしない。柳と共有した見解によれば、オレはパートナーを目指していることに方がいいのだ。
「ま、いいけど。オレもライバルが減るのはラッキーだ」
「悪いな」
 そんなやりとりにより、オレは共和党の内部も一枚岩じゃない可能性を知るのだった。


 デュアルに関して気になることがあり、オレは離音先生に聞きに行く。
 職員棟の一室で、離音先生はちょうどデュアル試験についての書類整理をしていた。申請内容に間違いがないか、と聞かれ、さらに珍しい相手とデュアルをするね、と先生は感想を添えてくれる。

 自分の可能性を広げるためにも、普段デュアルしない珍しい人たちを誘ってみました、と言っておく。オレの聞きたい本題は、デュアルで魔法を使ってもいいのかどうかだった。
「デュアルでの魔法は、公闘の場合にはリスクがありますね」
 と離音先生。
「公式のデュアルでは、立ち合いや審判がいる中で魔法を使うことになるし、手の内を明かすことになるよね。あまり望ましいことじゃない。逆に言えば、魔法を使ったと周囲に分かられにくい魔法は、使える。とはいえ基本的には使わない傾向だと言える」
「なるほど、ありがとうございます」
「花菱君は、パートナーを目指しているの?」と離音先生に聞かれ、「目指しています。ただ、前ほどわき目を振らずって感じではないですけど」と答えた。

「なるほどね。たしかに、前ほど直情的な要素が見受けられなくなった。いい傾向だと思う。それは、君だけじゃなく柳くんや蓮見くんにとってもね」
 並べてあげられた名前にドキッとしてしまう。離音先生は何か知っているんだろか?

「花菱くんの疑問をすべて解決してあげることはできないけれど。一つだけ言えるのは、僕は君たちと敵対するつもりはない、ということだね。僕は争いには反対なんだ。だから、争いのない方法につく」
「それは、暗に争いがある場所がある、とおっしゃってますよね?」
 とオレが言うと、離音先生はそうだね、と少し悲しそうに微笑んだ。

 その争いというのは、第一候補のパートナーが何らかの方法で排除されてしまう歴史を指しているのかもしれない、と思った。
「とにかく、花菱くんのことは応援しているよ」
 と離音先生は言う。離音先生も何か知っているのかもしれない。とりあえず今は深入りせずに、オレは自分のできることをしようと思った。

 魔法に関しては、露木も橘も、桐峯も、デュアルに使いやすい魔法を持っているとすれば、使ってくる可能性があるってわけだ。
 単純にデュアルをする楽しみがあるけれど、今後のことを考えればできるだけ情報を集められるように振る舞うのが得策だと思う。

 魔法の認知は個人差があるようなので、あまり情報は出てこないまま、デュアル試験の日を迎えた。
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