15 / 22
思惑
しおりを挟むデュアルの希望を出したところ、麗史様以外は受理される。
オレとしては先日のデュアルのおかげで、麗史様とのデュアルが難しいことは理解していたので、問題はなかった。実際的な意味でデュアルの人数をかせがなければいけないので、オレはデュアル相手探しに奔走した。
思い出してみれば、一度経験した未来でも同じように、麗史様とのデュアルは叶わなかった。
ただ、桐峯とのデュアルはしていないはずだ。
じゃあ誰を相手にデュアルとしたんだっけ?と思い出す。パートナー投票やデュアルを経験しているということは、学内試験も経験しているはずだ。
柳と琉来の他に3人誰とデュアルをしたんだっけ?と思う。
そして、申請できる相手が見つからずに、離音先生、羅千先生、瑠磨先生とのデュアルを行ったことを思い出した。
そのときのオレは、パートナーになるために必死だったため、学内の試験に対しては無頓着だった。だから、救済策として教師とのデュアルで対応してもらったのだ。
離音先生は柔和な人柄なだけ、柔らかな剣使いをしていて、羅千先生は直線的な動きのレプリカ斧、瑠磨先生は飛び道具を得意としていたように思う。何か違和感があったのを覚えていた。どの先生とのデュアルでも本気を出してもらっていない、という感覚があったからだ。
教師が生徒をボコボコにのしてしまうのは、どうかとも思うが、それにしても手ごたえがない、という印象だった。
先生たちのおかげで、3勝2分けでオレは試験を終えたと記憶している。
今回は、そこに桐峯が加わっているし、まだ他の生徒にデュアルを申し込む余裕があるはずだ。
誰か相手をしてくれる人はいないのか、色々な奴に声をかけて探していたけれど、試験では皆できるだけ勝ちたいと思っているため、それなりの使い手でありながら、飛び抜けて高いランクにいるわけでもないオレは嫌煙されがちだ。
ランクが高ければ、記念デュアルとして歓迎されるのだろうけど。
そんなある日、学園共和党のメンバー二人から呼び出しをされた。
桐峯に付き従っていた奴らだ。
「デュアル相手になってやってもいい」
と言うのだった。
どこまでも上から与えてやる視点なんだな、と思いながらも「ぜひお願いするよ」と答える。
こっちとしても、未知の相手とのデュアル経験は、ぜひ欲しいものだったからだ。
オレの返答に肩透かしを食らったような顔をする二人だったが、一人がもう一人に耳打ちをする。
そして笑い合いながら、「ただし、女の姿でな」と付け加えるのだった。
これには桐峯は関わっているのか?と邪推する。
もし関わっているなら、オレを誘いだせ、その能力を見破れと言われたのかもしれない。あるいは、この二人自身の野卑な好奇心の可能性も、否定できないが。
「いいよ、それで」とオレは答える。
二人は顔を見合わせて肩をすくめた。もっと過剰な反応をされることを期待していたようだ。
「後悔するなよ、それに逃げるなよ」
「必ず女の姿でだ」
と念を押してくるのだった。いずれにせよ、こっちからすれば願ってもないことだ。
「お願いするよ、希望出しといてくれよな」
と答える。
後で柳に聞いたことによれば、その二人は露木と橘といって、共和党では力を持つ者だと知った。また、パートナー候補に名乗り出ていたことを知る。つまり、柳の競合でもあるようだ。
デュアルの相手が揃ったところで、オレは柳に、デュアルの希望を出したことを報告する。その流れで他の相手の話も出たのだった。
「露木は飛び道具、橘は鎖鎌を得意とする。ただ、葉にとってはそれほど恐ろしい相手ではないはずだ。だが、何か引っかかる」
と柳は言う。
「どうしてだ?何か探りを入れたいからデュアルに誘ってきたんじゃないのか?桐峯もそうだし」
「桐峯はともかく、あの二人は、いつも自由党の奴らと競っていた。どっちの党からパートナーが出るかどうかは、学園の中での大きな関心ごとだからだ。なぜ、党に所属していない葉に狙いを定めたのか分からない」
確かに、一度経験した未来では奴らとのデュアルの経験はない。
前回オレはパートナー候補として上りつめようとしていたはずで、パートナーを目指そうとする奴らからすれば、目障りな存在だったはずなのに。
「オレや蓮見様と、葉がつながるのを防ぎたいという意図かもしれない」
「そりゃもう遅いよな。オレは二人を擁立するって決めたし」
オレは肩をすくめる。柳は難しい表情をしたまま、崩さないのだった。
「ひょっとしたら、お前はまだパートナーを目指していると思われていた方がいいのかもしれない」
「何でだよ?」
「オレ相手にパートナー候補として競っていると見せかけておいた方が、安全だという話だ。今までのお前の言動からして、急にパートナー候補をやめるとなれば、何か心境の変化があったと疑われる。そうすれば、オレや蓮見様との個人的な繋がりを疑われるだろう。無所属であるお前が、共和党と正面からぶつかるのは得策じゃない。桐峯がお前にデュアルを申し込んだことにも、何か裏があるように思う」
「実情はどうであれ、装えってことか」
オレが言うと柳は頷いた。とはいえ、柳の表情は決して明るくはならない。
こうして部屋の行き来がしにくくなることや、学内で話しにくくなることを案じているらしい。
「大丈夫だって。基本的にはライバルのように接すればいいんだろ?そうすれば違和感がないはずだ。今までだってそうしてきたし」
オレの言葉に、柳は「なるほど」と呟いた。ライバルのように、か。と口の中で含むように言うので、何か特別なことを言ったか?と思う。
「じゃあ装うことにするが、それはあくまでも壮也や麗史様のためだ。今のオレはパートナーになることに執着はない」
「分かっている、だがくれぐれも気をつけてくれ」
「分かった」
そう言い部屋を出ようとするが、手首を掴まれて「挨拶はくれないのか」と言われるので、柳の唇に口付けをする。
まだセーフだな、と思った。これは挨拶内だ。唇を離すと、どこか名残惜しそうにする柳だったが、「ではまた」と身体を離してくれる。
これはこれで、違和感があったが、仕方がない。
個人的な関係を勘づかれては、二人のためにならないのなら。
そう頭を切り替えて、桐峯や露木、橘とどんな風に闘えばいいのか、と頭を巡らせる。
しかし、露木と橘とのデュアル希望を出し申請が通った後で、桐峯から再び声がかかった。学科授業の帰りの廊下で、
「露木と橘とのデュアルと取り消ししてくれないか」と話しかけられたのだ。
オレとしてはせっかく見つけたデュアル相手なので、はいそうですか、と頷くわけにもいかない。
「何でだよ?」と聞いてみれば、あの二人とオレとのデュアルは党の意向ではないという。
つまり、桐峯からすれば、あの二人とオレとのデュアルは望ましいことではないってことだ。
「申請しちゃったし。ま、試験の一つとしていいじゃん。別にお前がけしかけたなんて思わない」とオレは気軽に考えていたけれど、
「党の中では力のある二人だ。勝手な行動を起こされたら、他の党員への影響も大きい」
「あいつらが独自に考えて動いてるってことか?それとも、他の誰かが?」
オレの言葉に、桐峯の瞳が光った。
「勘が良すぎる娼妓は、長生きできない」
と言うのだ。
「そうかもな。でも図星を指されて讒言を吐く党首ってのも、その筋じゃ危険だと思うけどな」
とオレも負ける気はないのだった。
桐峯はいかめしい表情を緩めることはないまま、
「お前が二人を誘ったことにしてくれないか?」
と妙な提案をしてくる。しかし、人にものを頼む態度じゃない。
「はあ?なんでそんなこと。それは、共和党のために動けってことだろ」
「あの二人もパートナー候補に名乗りをあげている。誘惑していることにして上手く利用できれば、お前は頭一つ抜けることが可能だ」
「そんなの、お前の差し金じゃないって証明がしたいだけだろーが。それに、お前だってパートナーになりたいんだろ?」
オレの言葉に、桐峯が逡巡するのが分かった。
何かある、とは思ったが深追いしない。柳と共有した見解によれば、オレはパートナーを目指していることに方がいいのだ。
「ま、いいけど。オレもライバルが減るのはラッキーだ」
「悪いな」
そんなやりとりにより、オレは共和党の内部も一枚岩じゃない可能性を知るのだった。
デュアルに関して気になることがあり、オレは離音先生に聞きに行く。
職員棟の一室で、離音先生はちょうどデュアル試験についての書類整理をしていた。申請内容に間違いがないか、と聞かれ、さらに珍しい相手とデュアルをするね、と先生は感想を添えてくれる。
自分の可能性を広げるためにも、普段デュアルしない珍しい人たちを誘ってみました、と言っておく。オレの聞きたい本題は、デュアルで魔法を使ってもいいのかどうかだった。
「デュアルでの魔法は、公闘の場合にはリスクがありますね」
と離音先生。
「公式のデュアルでは、立ち合いや審判がいる中で魔法を使うことになるし、手の内を明かすことになるよね。あまり望ましいことじゃない。逆に言えば、魔法を使ったと周囲に分かられにくい魔法は、使える。とはいえ基本的には使わない傾向だと言える」
「なるほど、ありがとうございます」
「花菱君は、パートナーを目指しているの?」と離音先生に聞かれ、「目指しています。ただ、前ほどわき目を振らずって感じではないですけど」と答えた。
「なるほどね。たしかに、前ほど直情的な要素が見受けられなくなった。いい傾向だと思う。それは、君だけじゃなく柳くんや蓮見くんにとってもね」
並べてあげられた名前にドキッとしてしまう。離音先生は何か知っているんだろか?
「花菱くんの疑問をすべて解決してあげることはできないけれど。一つだけ言えるのは、僕は君たちと敵対するつもりはない、ということだね。僕は争いには反対なんだ。だから、争いのない方法につく」
「それは、暗に争いがある場所がある、とおっしゃってますよね?」
とオレが言うと、離音先生はそうだね、と少し悲しそうに微笑んだ。
その争いというのは、第一候補のパートナーが何らかの方法で排除されてしまう歴史を指しているのかもしれない、と思った。
「とにかく、花菱くんのことは応援しているよ」
と離音先生は言う。離音先生も何か知っているのかもしれない。とりあえず今は深入りせずに、オレは自分のできることをしようと思った。
魔法に関しては、露木も橘も、桐峯も、デュアルに使いやすい魔法を持っているとすれば、使ってくる可能性があるってわけだ。
単純にデュアルをする楽しみがあるけれど、今後のことを考えればできるだけ情報を集められるように振る舞うのが得策だと思う。
魔法の認知は個人差があるようなので、あまり情報は出てこないまま、デュアル試験の日を迎えた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結済み】騎士団長は親友に生き写しの隣国の魔術師を溺愛する
兔世夜美(トヨヤミ)
BL
アイゼンベルク帝国の騎士団長ジュリアスは留学してきた隣国ゼレスティア公国の数十年ぶりのビショップ候補、シタンの後見となる。その理由はシタンが十年前に失った親友であり片恋の相手、ラシードにうり二つだから。だが出会ったシタンのラシードとは違う表情や振る舞いに心が惹かれていき…。過去の恋と現在目の前にいる存在。その両方の間で惑うジュリアスの心の行方は。※最終話まで毎日更新。※大柄な体躯の30代黒髪碧眼の騎士団長×細身の20代長髪魔術師のカップリングです。※完結済みの「テンペストの魔女」と若干繋がっていますがそちらを知らなくても読めます。
異世界転移した先は陰間茶屋でした
四季織
BL
気が付いたら、見たこともない部屋にいた。そこは和洋折衷の異世界で、俺を拾ってくれたのは陰間茶屋のオーナーだった。以来、俺は陰間として働いている。全くお客がつかない人気のない陰間だけど。
※「異世界に来た俺の話」と同じ世界です。
※謎解き要素はありません。
※ミステリー小説のネタバレのようなものがありますので、ご注意ください。
吸血鬼公爵の籠の鳥
江多之折(エタノール)
BL
両親を早くに失い、身内に食い潰されるように支配され続けた半生。何度も死にかけ、何度も自尊心は踏みにじられた。こんな人生なら、もういらない。そう思って最後に「悪い子」になってみようと母に何度も言い聞かされた「夜に外を出歩いてはいけない」約束を破ってみることにしたレナードは、吸血鬼と遭遇する。
血を吸い殺されるところだったが、レナードには特殊な事情があり殺されることはなく…気が付けば熱心に看病され、囲われていた。
吸血鬼公爵×薄幸侯爵の溺愛もの。小説家になろうから改行を増やしまくって掲載し直したもの。
【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる
ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。
・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。
・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。
・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。
【完結】《BL》溺愛しないで下さい!僕はあなたの弟殿下ではありません!
白雨 音
BL
早くに両親を亡くし、孤児院で育ったテオは、勉強が好きだった為、修道院に入った。
現在二十歳、修道士となり、修道院で静かに暮らしていたが、
ある時、強制的に、第三王子クリストフの影武者にされてしまう。
クリストフは、テオに全てを丸投げし、「世界を見て来る!」と旅に出てしまった。
正体がバレたら、処刑されるかもしれない…必死でクリストフを演じるテオ。
そんなテオに、何かと構って来る、兄殿下の王太子ランベール。
どうやら、兄殿下と弟殿下は、密な関係の様で…??
BL異世界恋愛:短編(全24話) ※魔法要素ありません。※一部18禁(☆印です)
《完結しました》
花街だからといって身体は売ってません…って話聞いてます?
銀花月
BL
魔導師マルスは秘密裏に王命を受けて、花街で花を売る(フリ)をしていた。フッと視線を感じ、目線をむけると騎士団の第ニ副団長とバッチリ目が合ってしまう。
王命を知られる訳にもいかず…
王宮内で見た事はあるが接点もない。自分の事は分からないだろうとマルスはシラをきろうとするが、副団長は「お前の花を買ってやろう、マルス=トルマトン」と声をかけてきたーーーえ?俺だってバレてる?
※[小説家になろう]様にも掲載しています。
中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと
mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36)
低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。
諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。
冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。
その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。
語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。
異世界転生したと思ったら、悪役令嬢(男)だった
カイリ
BL
16年間公爵令息として何不自由ない生活を送ってきたヴィンセント。
ある日突然、前世の記憶がよみがえってきて、ここがゲームの世界であると知る。
俺、いつ死んだの?!
死んだことにも驚きが隠せないが、何より自分が転生してしまったのは悪役令嬢だった。
男なのに悪役令嬢ってどういうこと?
乙女げーのキャラクターが男女逆転してしまった世界の話です。
ゆっくり更新していく予定です。
設定等甘いかもしれませんがご容赦ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる