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第37話 心の準備が
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アレン様とケント様が王宮へ向かった後、チラチラと降っていた雪は激しくなり、午後には道にまで積もりだしていた。
ケント様たちは大丈夫かしらと心配になる。
「ロナ、馬車って雪道でも走れるものなの?」
「うっすら積もったくらいなら走れますが、これ以上積もると今日は帰ってこないかもしれませんね」
「そう、そうよね……雪道を無理して帰ると危ないわよね」
「あとは旦那様が判断されると思います。きっと宿にお泊まりになるでしょうから、心配いりませんよ」
ロナにそう言われたにも関わらず、外が気になって仕方がない。
ケント様に任せていただいた書類の整理をしながら、ずっと窓の外を気にする私。
「リナ様、暗くなりましたので、もう今日はお戻りにならないでしょう。さぁ、眠る準備をいたしましょう」
ロナにカーテンを閉められてしまい、渋々 湯浴みへ向かう。
温かいお湯に浸かると体がじわじわと暖かくなる。
ケント様は大丈夫かな?
ちゃんと宿はとれたのかしら。
雪の中、寒い思いをしてなければいいんだけど……
夜中になっても、外から聞こえる風の音が気になって仕方がない。
かなり吹雪いているようで、ビュー、ヒューという風の音に、時折馬の嘶きが混じっているように聞こえるのだ。
帰ってきたのでは?と気になってしまう。
さすがに吹雪の夜に馬車を走らせるような無謀なことはしないはずなのに……
目を閉じて、そんなことを考えているうちに、私は眠っていたようだ。
***
「リナ様、リナ様、朝ですよ?そろそろ起きませんか?」
遠慮がちに呼びかけられたロナの声で、目を覚ます。
「あっ、ああっ、ロナ、おはよう。ケント様たちは帰ってきた?」
私は慌てて体を起こした。
「いいえ、まだですよ」
ロナがカーテンを開けると、眩しい光が差し込んできた。
「ああ、よかった。ちゃんと玄関で出迎えたいもの。でも、すっかり寝坊してしまったわ」
「たまにはいいのではないですか?心配でなかなか眠れなかったのでしょう?もうすぐ昼食の時間になりますから、起こさせてもらいました」
「もう昼食なのね……起こしてくれてありがとう」
身だしなみをととのえ手早く昼食を済ませる。
任されていた仕事は昨日のうちに終わらせてしまった。
久しぶりに刺繍でもしようかと道具を出してきたのはいいけれど、外が気になり進まない。
ロナから「馬車がこちらへ向かってきています」と連絡を受けた私は、慌てて部屋から飛び出し、階段を駆け下りた。
すぐ後ろからロナが追いかけてくる。
「リナ様、落ち着いてください。怪我をしますよ」焦ったロナの声が聞こえる。
「大丈夫、慣れてるから」
階段を駆け下りながら答えたので、危うく舌を噛みそうだった。
走りながら話すものじゃないわね。
危ない、危ない。
日本にいた頃は、毎朝 電車に乗り遅れそうでなり、ホームへ向かって階段を駆け下りていたのだ。
階段を駆け下りるのには慣れている。
それでもドレスが重くて、息が切れた。
荒くなった息をととのえ、玄関ホールで彼を待つ。
どうしてだか彼だけなかなか入ってこない。
アレン様はジョセフィーヌ様に帰宅の挨拶をした後、私に近づくと、
「リナさん、今日は夕飯を共にしよう。その時に話をしよう」
そう言い残して、離れへと戻ってしまった。
なかなか戻らないケント様が心配で、コートも羽織らぬまま外へと飛び出す。
日が照っているものの、やはり外は寒い。
「ケント様、お帰りなさい」
馬車に向かって声をかける。
吐き出した息が白い。
ガタンッと音がして、扉からケント様が前のめりで出てきた。
こちらに倒れそうになり、咄嗟に手を伸ばす。
彼は私の手が届く直前で、何とか踏み止まった。
ほっと胸をなでおろしていると、その手が優しくひかれ、指先に彼の唇が触れた。
ふぇっ? 今、触れたよね?
びっ、びっくりした~。
「リナ、ここは冷える。早く戻ろう」
冷たくなっていた指先が一気に熱を帯びる。
「あっ、あっあうっ、ケント様、お帰りなさい。お疲れさまでした。早く行きましょう」
恥ずかしい、恥ずかしいよぅ。
今は彼の顔をまっすぐ見ることができない。
私は僕の手をひき、そのまま玄関へと急いだ。
玄関ホールでは、みながケント様の帰りを今か今かと待っていた。
「「「お帰りなさいませ」」」
元気よくみなに迎えられ、彼と繋いだ手をパッと離す。
ケント様はそんな私を見て、クスリと笑った後、急に真顔になった。
周りの空気が張り詰め、私にも緊張が走る。
「リナ、陛下との謁見のことなんだが……」
突然 話し始めた彼の言葉に不穏なものを感じ、「アラン様より夕食の時に話すと言われました」と彼の言葉に被せるように避けてしまった。
今すぐに話を聞くのは……
心の準備ができていない。
「あっ、ああ、そうか……父上が後で話すのか……わかった。僕は着替えてくる。君も夕食まで部屋でゆっくり休むといい」
彼は足早に去っていった。
ふぅーっ、彼は何を告げようとしたんだろう。
アレン様、ケント様の様子からして、よくない話だと思われる。
どんな話なのだろう……
不安の波が押し寄せてくる。
ケント様たちは大丈夫かしらと心配になる。
「ロナ、馬車って雪道でも走れるものなの?」
「うっすら積もったくらいなら走れますが、これ以上積もると今日は帰ってこないかもしれませんね」
「そう、そうよね……雪道を無理して帰ると危ないわよね」
「あとは旦那様が判断されると思います。きっと宿にお泊まりになるでしょうから、心配いりませんよ」
ロナにそう言われたにも関わらず、外が気になって仕方がない。
ケント様に任せていただいた書類の整理をしながら、ずっと窓の外を気にする私。
「リナ様、暗くなりましたので、もう今日はお戻りにならないでしょう。さぁ、眠る準備をいたしましょう」
ロナにカーテンを閉められてしまい、渋々 湯浴みへ向かう。
温かいお湯に浸かると体がじわじわと暖かくなる。
ケント様は大丈夫かな?
ちゃんと宿はとれたのかしら。
雪の中、寒い思いをしてなければいいんだけど……
夜中になっても、外から聞こえる風の音が気になって仕方がない。
かなり吹雪いているようで、ビュー、ヒューという風の音に、時折馬の嘶きが混じっているように聞こえるのだ。
帰ってきたのでは?と気になってしまう。
さすがに吹雪の夜に馬車を走らせるような無謀なことはしないはずなのに……
目を閉じて、そんなことを考えているうちに、私は眠っていたようだ。
***
「リナ様、リナ様、朝ですよ?そろそろ起きませんか?」
遠慮がちに呼びかけられたロナの声で、目を覚ます。
「あっ、ああっ、ロナ、おはよう。ケント様たちは帰ってきた?」
私は慌てて体を起こした。
「いいえ、まだですよ」
ロナがカーテンを開けると、眩しい光が差し込んできた。
「ああ、よかった。ちゃんと玄関で出迎えたいもの。でも、すっかり寝坊してしまったわ」
「たまにはいいのではないですか?心配でなかなか眠れなかったのでしょう?もうすぐ昼食の時間になりますから、起こさせてもらいました」
「もう昼食なのね……起こしてくれてありがとう」
身だしなみをととのえ手早く昼食を済ませる。
任されていた仕事は昨日のうちに終わらせてしまった。
久しぶりに刺繍でもしようかと道具を出してきたのはいいけれど、外が気になり進まない。
ロナから「馬車がこちらへ向かってきています」と連絡を受けた私は、慌てて部屋から飛び出し、階段を駆け下りた。
すぐ後ろからロナが追いかけてくる。
「リナ様、落ち着いてください。怪我をしますよ」焦ったロナの声が聞こえる。
「大丈夫、慣れてるから」
階段を駆け下りながら答えたので、危うく舌を噛みそうだった。
走りながら話すものじゃないわね。
危ない、危ない。
日本にいた頃は、毎朝 電車に乗り遅れそうでなり、ホームへ向かって階段を駆け下りていたのだ。
階段を駆け下りるのには慣れている。
それでもドレスが重くて、息が切れた。
荒くなった息をととのえ、玄関ホールで彼を待つ。
どうしてだか彼だけなかなか入ってこない。
アレン様はジョセフィーヌ様に帰宅の挨拶をした後、私に近づくと、
「リナさん、今日は夕飯を共にしよう。その時に話をしよう」
そう言い残して、離れへと戻ってしまった。
なかなか戻らないケント様が心配で、コートも羽織らぬまま外へと飛び出す。
日が照っているものの、やはり外は寒い。
「ケント様、お帰りなさい」
馬車に向かって声をかける。
吐き出した息が白い。
ガタンッと音がして、扉からケント様が前のめりで出てきた。
こちらに倒れそうになり、咄嗟に手を伸ばす。
彼は私の手が届く直前で、何とか踏み止まった。
ほっと胸をなでおろしていると、その手が優しくひかれ、指先に彼の唇が触れた。
ふぇっ? 今、触れたよね?
びっ、びっくりした~。
「リナ、ここは冷える。早く戻ろう」
冷たくなっていた指先が一気に熱を帯びる。
「あっ、あっあうっ、ケント様、お帰りなさい。お疲れさまでした。早く行きましょう」
恥ずかしい、恥ずかしいよぅ。
今は彼の顔をまっすぐ見ることができない。
私は僕の手をひき、そのまま玄関へと急いだ。
玄関ホールでは、みながケント様の帰りを今か今かと待っていた。
「「「お帰りなさいませ」」」
元気よくみなに迎えられ、彼と繋いだ手をパッと離す。
ケント様はそんな私を見て、クスリと笑った後、急に真顔になった。
周りの空気が張り詰め、私にも緊張が走る。
「リナ、陛下との謁見のことなんだが……」
突然 話し始めた彼の言葉に不穏なものを感じ、「アラン様より夕食の時に話すと言われました」と彼の言葉に被せるように避けてしまった。
今すぐに話を聞くのは……
心の準備ができていない。
「あっ、ああ、そうか……父上が後で話すのか……わかった。僕は着替えてくる。君も夕食まで部屋でゆっくり休むといい」
彼は足早に去っていった。
ふぅーっ、彼は何を告げようとしたんだろう。
アレン様、ケント様の様子からして、よくない話だと思われる。
どんな話なのだろう……
不安の波が押し寄せてくる。
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