【完結】恋愛結婚するんだから!!

青井 海

文字の大きさ
7 / 28

第7話 ヒューの決意

しおりを挟む
その頃、18歳になったシエラ伯爵家ヒュパートはーー

父親であるシエラ伯爵の部屋にいた。
「父上、お願いがあります。ミラージュ伯爵家オリアンナ嬢へ婚約申し込みの許可をいただけませんか?」

「なに? ミラージュ伯爵家? ダメだ。許可できない。お前にはもっといい話がきているというのに、まさか恋仲なのか?」

「いえ、今はまだ友人です。」

「ならやめておけ。前当主は素晴らしかったのだが、今の当主はダメだ。縁付きになるのは危険だ。
どうしても彼女を娶りたいのなら、お前が共倒れしないだけの力をつけるしかあるまい。例えば、そうだな~、今、勢いのあるキャロル男爵のように。」
父はニヤリと挑戦的な顔をして笑った。
お前には無理だと言いたいのだろう。

僕が、オリィを諦める?
まさか彼女にキャロル男爵との縁談話があるのか?

確か……キャロル男爵は、28歳と僕よりも10歳上で、オリィの一回り年上であるが、背か高く、黒髪に濃いブルーの涼やかな瞳でなんとも見映えのよい男。
自身の力だけで男爵になっただけのことはあり、堂々として自信に溢れている。

男から見てもいい男。
憧れるヤツもいるだろう。
「チッ」
なぜ、そんな男が未だに独身なのか……

「ヒュパート、舌打ちなど感心しないな。」
「申し訳ありません。」


キャロル男爵は、元は平民だったのだ。
貴族とは異なり、自由に振る舞えたことだろう。あれだけ容姿も優れているんだ。
さぞかし浮名を流してきたことだろう。

商家の次男だった彼は、長男に対抗するがごとく新たな商会を立ち上げ、メキメキと頭角を表した。
今まで国交のなかった遠い国から低価格で高品質な新たな燃料を見つけ出し、独占で取引を結ぶことに成功。
大きな富を手に入れた。
彼が広めた燃料により、国に大きな利益をもたらしたことが評価され、叙爵された。
今、勢いのある貴族だ。

富と地位を手に入れた彼が更なる高みを目指して高位貴族との縁を望んだ。
そういったところだろう。

そりゃ、舌打ちくらいしたくなるさ。
でも父上の前では控えるべきだったな。

オリィは気立てもよく、美しい娘だ。
会ってしまえば、キャロル男爵だとて、彼女自身を欲しくなるかもしれない。

通常、貴族は同じような爵位の家同士で婚姻を結ぶ。
以前のミラージュ伯爵家であれば、キャロル男爵の話に耳を傾けたりしないだろう。
だが、今は当主が力不足のせいで傾いてしまっている。
このままでは次世代に引き継げるかどうか危ういものだ。

父は僕に力をつけるよう言った。
確かに、今の僕では勝ち目はないだろう。
オリィにとって幼馴染みで気心のおける仲ということ以外は。

シエラ伯爵家は騎士を多く輩出する家系。
僕自身も騎士科を卒業し、今年から騎士団に所属している。
身長もぐぅーんと伸び、程よく筋肉もついた。
僕が力をつけるとなると、騎士として確固たる地位を築くことだろう。

そして上位貴族といい関係を築き、大きな影響力を身につける?
あー、正直なところどうすればいいのかわからない。
僕は身体を動かすことは好きだが、考えることは苦手だ。

僕の頭で考えてもいい案は浮かびそうにない。
今は自分にできることをやるだけだ。
僕は今まで以上に鍛練に励むようになった。
僕はこの時、ミスをしたんだ。

鍛練に励むだけでなく、オリィに会いに行き、先に好意だけでも伝えるべきだった。
たとえプロポーズはできなくても。

僕と彼女はただの幼馴染みだ。
彼女は僕を男として意識していないと思われる。

***

ある日、オリィから手紙とともに刺繍されたハンカチが届いた。
僕はオリィからの初めてのプレゼントであるハンカチを受けとり、舞い上がった。
刺繍入りのハンカチなんて、感激だ。

胸元に押し当てて、幸せを噛みしめた。
オリィだって、少しは僕を気にかけてくれている。
僕はハンカチを胸ポケットへ入れ、剣を握る。
よし、鍛練頑張るぞ。

僕は不安な気持ちを降りきるように、剣を振るい続けた。

この時の僕は、ミラージュ家へ行けば、いつでもオリィに会えると思っていたんだ。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした

エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ 女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。 過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。 公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。 けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。 これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。 イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん) ※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。 ※他サイトにも投稿しています。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

乙女ゲームは見守るだけで良かったのに

冬野月子
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した私。 ゲームにはほとんど出ないモブ。 でもモブだから、純粋に楽しめる。 リアルに推しを拝める喜びを噛みしめながら、目の前で繰り広げられている悪役令嬢の断罪劇を観客として見守っていたのに。 ———どうして『彼』はこちらへ向かってくるの?! 全三話。 「小説家になろう」にも投稿しています。

【12月末日公開終了】婚約破棄された令嬢は何度も時を遡る

たぬきち25番
恋愛
侯爵令嬢ビアンカは婚約破棄と同時に冤罪で投獄が言い渡された。 だが…… 気が付けば時を遡っていた。 この運命を変えたいビアンカは足搔こうとするが……?  時間を遡った先で必ず出会う謎の男性とは? ビアンカはやはり婚約破棄されてしまうのか? ※ずっとリベンジしたかった時間逆行&婚約破棄ものに挑戦しました。 短編ですので、お気楽に読んで下さったら嬉しいです♪ ※エンディング分岐します。 お好きなエンディングを選んで下さい。 ・ギルベルトエンド ・アルバートエンド(賛否両論お気をつけて!!) ※申し訳ございません。何を勘違いしていたのか…… まだギルベルトエンドをお届けしていないのに非公開にしていました……

処理中です...