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第7章
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待ちに待ったクリスマスイブ。
由伊からの誘いを断り、律は一人クリスマスパーティーの準備に取り掛かっていた。
「……よし、と」
流石にケーキ作りは出来なかったので、市販のものを文崇に頼んだ。
下ごしらえは終わったのであとは夜に帰ってくる父を待つだけ。
部屋もいつもよりも念入りに掃除をしたし、やる事が無くなってしまった。
まだ昼間の15時。
「……どうしよう」
ソファに腰をかけ、ごろっと横になる。
ふわりと、ソファが受け止めてくれて、正直このまま眠れるなと思った。
しかしせっかくのクリスマス。
いつもは一人でクリスマスなんて意識して生活していないから、今日くらいはしっかり起きて一日を満喫したい。
……俺、一人の時何したんだっけ。
いつの間にかあっという間に由伊と居る時間が多くなって一人で過ごしていなかった。
「どうしよぉ……何したらいいんだぁ……」
そういえば、由伊の家で読んでた漫画の最新刊、発売日だーって由伊が言ってた気がする。
「そうだ!本屋さんに行こう!」
名案を思いつき、律は立ち上がって上着を着て財布を持つ。
律は家を出て施錠する。
一人でこんなにルンルン気分で外に出れるのは何年ぶりだろうか。
これも全部由伊や皆のお陰だと断言出来る。
外には楽しいものが沢山あると教えてくれた皆が居たから、今こうしてワクワクを胸に外を歩けている。
ちょおーっと寒いかな。
吐く息も白く、鼻も耳も寒い。
耳あて持ってくるべきだったかなぁ……。まあいっか!
……あ、お花屋さんがある。
あれ、こんな所にあったっけ。
普段外には出ないけど、この道は律が通学の時に通る道だ。
店の並びや建物は何となく覚えている。
しかし、そんなことは二の次でふわふわと花の甘い香りに誘われて、花屋さんに入った。
色とりどりの花がいけられていて、冬に色鮮やかな花を見れるのは新鮮で楽しい。
「くりすます、ろーず……」
確かカナが冬の時期になると、この花をテーブルに飾ってくれてた気がする。
母さんは、本当に花が好きだったよなぁ。
律はキョロキョロと辺りを見回し、店員さんを探す。
「キミ、誰か探してるの?」
「へっ」
急に後ろから声をかけられて、ビクッと肩が跳ねてしまった。
「あはは、ごめんねぇ。キョロキョロしてたからつい声掛けちゃった。だぁれ?僕かな?」
振り向くと、緑色のエプロンをして穏やかな笑みを浮かべた綺麗な男性が立っていた。
「……あ、あの……花……」
あまりにも綺麗で目がチカチカする。
手に持っている赤い薔薇の花束が、妙に似合う美麗な人。
「ああ、お花欲しいのか!どれ欲しいの?」
話し方も声も甘くて優しい。
例えるならミルクのような甘さと柔らかさを感じる。
「……クリスマス、ローズが欲しいです」
恐る恐る口に出すと、店員はニコッと笑って「おーけー」と返事した。
「花束にするのかな?何色がいい?何本?」
「……は、はい……えっと、……じゃあ白と、ピンク……え、えと……」
ボソボソと話しても店員は仕事であるからか、嫌な顔ひとつせずに聞いてくれた。
「あまり決まってない感じ?じゃあ俺がやっちゃっても平気?それともなんか希望ある?」
「……あ、いえ……部屋に飾るだけなので」
そう答えると店員は「りょーかいっ。ちょっとレジ前で待っててね」と言って、クリスマスローズを手に取りカウンターの奥へ行った。
周りの花も見ながら、律もレジに行く。
数分と待たずに店員がクリスマスローズの花束を手にして戻ってきた。
「わぁ……」
「へへ、気に入ってくれた?」
深紅の包み紙に黄色いリボンをあしらわれて出て来た白とピンクのクリスマスローズはとても愛らしい。
このまま父さんに見せたいぐらいだ。
「はい!とっても可愛いです……!」
そう頬を緩ませて言うと、店員はニッコリ笑う。
「君だって可愛いよ~?可愛いから、お代は500円でいーよ!」
「えっ!?500円!?で、でも多分もっとしますよね?」
さっき店内を見た時、小さな花束やちょっとしたアレンジ花で500円だったんだから、大きい物はもっとするはず。
「いいのいいの!俺がしたいようにしてるし、君、俺の好みだからワンコインで」
そ、そんな事は有りなのだろうか……。
「俺からのクリスマスプレゼントだと思って、ね?」
さっき会ったばかりの店員にプレゼントを貰えるだなんて、贅沢過ぎる……しかも、こんな綺麗な人だ。
他にもこの人から欲しいと思う人は沢山いるだろうに……。
あっそれともこれが、この人の商売法なのだろうか。
だとしたら早く受け取らないと迷惑だよな。
律は財布を覗きワンコインを店員に渡した。
「本当に良いんですか?」
やっぱり不安で聞くと、コインを握る律の手をぎゅ、と優しく包み店員は言う。
「いーのいーの!特別サービスだからさ、楽しく過ごしなね、めりくり」
ぱちっとウィンクをされ、律は少し頬が熱くなる。
様になるかっこいい人だ……。
「あー、ちょっと頬っぺた紅いねぇ~かーわいいっ」
店員はニコニコ笑って、頭を撫でてくれる。
「……あ、あの……ありがとうございます……大切にします」
照れくさいけどそう言うと、店員は優しく目を細め「うん、大切にしてね」と微笑んだ。
店員に手を振られ、お花屋さんを後にした。
しかし、ここである事に気づいた。
花束持って本屋とか、めちゃくちゃ目立つじゃん……!
やってしまった!!本屋の後に来るべきだった!!
しかし、買ってしまった物は仕方が無い。
……花束持って歩くかぁ。
気分はルンルンで、本屋に向かうのだった。
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