ソラ・ルデ・ビアスの書架

梢瓏

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第三章 世界樹の守護者

第37話 情報屋の店

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 セレスがアルメイレの国のトレイルトッカと言う街に降り立ったのは、単なる偶然では無かった。

偶然ではない理由は後に説明が来るだろうと思うので後にするが、トレイルトッカにある特殊な情報屋にセレスは入って行った。

その店の主人とは数百年前にかなりお世話になっていて、主人とセレス2人が居れば世界の出来事はすべて掌握出来るだろう?とも言われる程だった。

 トレイルトッカの街はそれ程大きくなく、人口はたかだか数千人と言った所だろうか。

アルメイレの特産品が木材と言う事もあって、木の彫刻や置物がたくさん並んでいる。

その中でも特に派手目の彫刻が店舗に彫り込まれたつくりをしている店が、かの情報屋の店舗だった。

「ぅわ!ま~~た派手派手しいなコレは!アタシが昔、アンタのセンスが悪いからこんな装飾は止めろ!って言ったの忘れちゃったんだな~コレは!?」

セレスは、派手派手しい入り口を通り抜けながらぼやく。

店の入り口は通りからは奥まっていて、新規の客が入りづらい状況になっていた。

「これは・・・古参の客しか入れないんじゃないか?」

 セレスは呆れながら進み、ようやく店の本当の入り口に到達した。

怪しげなカーテンが何層にもかけられていて、カーテンの布地がただでさえ狭い通路を更に狭くしている。

一体このセンスはどこで磨いて来たのか?と呆れを通り越して諦めてボヤきながらセレスは進んだ。

そして、ようやくこの店の店主の目の前に出た。

「おや、お久しぶり。100年ぶり位かね?今までどこをほっつき歩いて居たんだ?ワシとお前で組んだらこの世界を征服出来たかも知れなかったのに!」

店主はエルフで、ちょっとかなり年老いている様に見える。

かなり度の高そうな眼鏡をかけていて、長い耳の耳たぶには、耳たぶが垂れる程にピアスが下がっている。

一体何歳のエルフなんだ?と考えても良く分からなそうな程の高齢そうにみえた。

「久しぶり、ベルフォリス、何だか前より元気そうだね?って、何でそんなにいきなり老けてるのアンタ?本当はアタシよりも歳若かったよね?それも演出?くだらない演出ばかりにかまけていると店潰れるとアタシは思うんだけどね。」

老けている様に見えるのは演出で、本当はセレスよりも若いと言う本来の年齢を指摘されたベルフォリスは、昔馴染みのセレスの前では何をやっても面白がってくれない事に腹を立て、まるで子供の様に頬を膨らませた。

「何だい何だい!人が折角久しぶりにセレスが来そうって言う情報を仕入れて準備していたのにさ、少しくらい驚いてくれたってイイじゃんよ!500年老いる様に見える薬を調合して使ってみたのにさ。でもコレ、効力が10分位しか持たないから、何もしなくてもそろそろ切れるけどね。」

そう言って、ベルフォリスは何もしないで老いたシワシワエルフの爺さんをしばらく楽しんだ。

 約10分が過ぎようか?と言う頃に、急にベルフォリスの周囲に煙りが立ち、煙が霧散して消えた頃にはすっかりまだ若々しいエルフの青年が居た。

「改めて、久しぶりセレス!本当、この100年間一体何やってたの?」

まじまじとセレスを見ながらベルフォリスは、空白の100年間をしきりに尋ねた。

「いや~~、話せば長くなるんだけど、トトアトエ・テルニアの王を辞めたり事後処理をしたり、メルヴィ・メルヴィレッジにある世界樹の守護者代理をやっていたりしててね~、あと、住んでる所の商店街の改造計画をしたりしてたら、いつの間にかあっと言う間に100年位過ぎててねぇ~・・・」

セレスは頭をボリボリかきながら苦笑いをして説明した。

この説明を聞きながら、ベルフォリスの顔は驚いたり呆れたり悲しんだりしていたので、セレスはこの、とっぽいエルフの青年の反応を面白がっていた。

「本当、ベルフォリスは変わらないなー、やっぱり純粋なエルフは100年こっきりだと全然年取らないよな~。あと、やっぱりお前もアタシと同じ魔界出身だけあって、体感時間と年齢が魔界に置き去りにされてしまっている事を、お前を見て再確認したよ。」

そう言て、少しニヤニヤしながらベルフォリスを眺めた。

ベルフォリスの髪は金髪で、エルフによくある長髪ではなく金色の草原の様な短髪にしている。

瞳の色はセレスと同じ緑色だったので、小さい頃はよく姉弟なのか?と間違われた事もあったのを思い出していた。

「セレスこそ、全然変わらないよ。ただ、昔は髪は凄く長くしていたのに、今は何だろう?ザンバラカットって言うのかな?ちょっと雑な髪形になってるよね?何か心境の変化?」

と聞いて来たので、

「まぁ、そんな所。この100年間は本当に色々あってねぇ~・・・」

セレスは、負傷した古傷が時々痛む左肩をさすりながら言った。

 この、馴染みの仲間との気を使わない会話にセレスは、本当に久しぶりに心の底から脱力する位にリラックスしていた。

「最近もさ~、ちょこまかと小さいトラブルが絶え無くてな~、魔界の『スェニストラフト温泉』に行って、じっくり骨休めしたい所なんだけど。」

肩をさすりながらセレスは続ける。

ベルフォリスは聞き上手らしく、「うんうん」と言いながらセレスの話を聞いていた。

「今日来たのは他でも無い、『ソフィアステイル』に会いに来たんだよ。」

そう言ってセレスは、ベルフォリスの目を見据えた。

ベルフォリスは、「はぁ~~~」と大きなため息をつくと、

「やっぱりそうだったか~。何となくそうだと思ってたんだよね~。」

と言って、情報を精査する時に使う占いのカードを見せた。

占いのカードには、泣き叫ぶ女の絵と、漆黒の闇夜の森の絵のカードがあった。

「正に、『慟哭の門』を使う『深淵のエルフ』って感じでしょ?」

そう言うベルフォリスに、セレスは静かに笑みを見せた。

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