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本編
贄とまだ知らぬ龍
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目を覚ませば真っ暗だった、
体を起こした私は周囲を見わたす。
でも、何も見あたらない。
「どうした、人間。」
突然、目の前から聞こえた声に悲鳴をあげた。
「だ、誰かいるの。」
「何だ。目が見えないのか?どれ。」
顔にブンブンと奇妙な風があたるのを感じる。
「これでも見えないか。」
「もしかして、暗闇じゃないんですか。」
「暗闇?」
まさかと思ったところで、ドシンと地響きが鳴る。
周囲から小さな光が舞い上がって、目の前の顔が微かに見える。
「どうだ、これで見えるか。」
今度は悲鳴すら出なかった。
「見えないか。」
「み、見えます。すみません。」
「何故謝る。」
相手はまだわかってないようだが、私は恐怖に震えていた。
声も片言だったと思う。
だって、相手は。
とても巨大で恐ろしい龍だったのだから。
「あぁ、虫には悪いことをしたかもな。起こしてしまった。」
花に集まっていた虫が光ったらしいが、そんなことより目の前のことでいっぱいだ。
龍の一挙一動に目を奪われていた。
「お前は、私の上に落ちてきたのだぞ。覚えているか。」
その言葉に、背筋が凍る。
ようやく、今の状況を理解してしまったのだ。
私は、贄の穴に落ちたのだ。
数年に一度、山に住む龍が暴れるこの地域では何度も生贄が差し出されてきた。
よりにもよってその龍の棲む穴に落ちてしまっただなんて。
「私は、落ちてしまったのですね。」
「そうだ、やっと理解したか。」
龍の上に落ちたおかげで助かったみたいだけれど、落ちたら這い上がれないほどの深い穴だ。
逃げ出せない。
涙をのんで、私は運命を受け入れた。
「そろそろ腹が減ったな。」
「...どうぞ、一思いにお食べください。」
「言われずとも食すが。」
遠慮なく、伸びてきた首が、ガブリと飲み込んだ。
音が、した。
続いて、ガブリ、ゴブリと。後ろから。
「あれ?」
目を開けて後ろを見れば、湖に口を突っ込んでいた。
そして何かを咥えると、それをこちらに放り投げてきた。
魚、だ。
「お前も食うか?」
「え。」
「食べれないのか。」
「食べ、れないことはないですが」
「そうか。」
私にかまわず、また湖をガブリと一口頂いた。
「魚を、食べるのですか。」
「それがどうした。お前も食うんだろう。」
しばらく考えて、ふに落ちる。
龍だから、てっきり何年も何も食べないものと思っていた。
どうやら湖の魚を食べていたらしい。
それなら、もしかしたら、助かるかも。
「あぁ、だがそろそろ餌が落ちてくる頃だな。」
けれど、その希望はあっさりと打ち砕かれる。
舌なめずりをして、その竜は天高くにあるその穴を待ちきれ無さそうな目で見上げた。
「ある日から何者かが投げ入れるようになった食料でな、よく焼けていて美味いのだ。」
あぁそうか。この龍は知らないのだ。
それが贄に選ばれた人間だということを。
焼かれる前の人間が、今目の前にいることを。
そして私が、選ばれた贄だということを。
「美味いのだがなぁ。」
その龍は、まだ何も知らない。
体を起こした私は周囲を見わたす。
でも、何も見あたらない。
「どうした、人間。」
突然、目の前から聞こえた声に悲鳴をあげた。
「だ、誰かいるの。」
「何だ。目が見えないのか?どれ。」
顔にブンブンと奇妙な風があたるのを感じる。
「これでも見えないか。」
「もしかして、暗闇じゃないんですか。」
「暗闇?」
まさかと思ったところで、ドシンと地響きが鳴る。
周囲から小さな光が舞い上がって、目の前の顔が微かに見える。
「どうだ、これで見えるか。」
今度は悲鳴すら出なかった。
「見えないか。」
「み、見えます。すみません。」
「何故謝る。」
相手はまだわかってないようだが、私は恐怖に震えていた。
声も片言だったと思う。
だって、相手は。
とても巨大で恐ろしい龍だったのだから。
「あぁ、虫には悪いことをしたかもな。起こしてしまった。」
花に集まっていた虫が光ったらしいが、そんなことより目の前のことでいっぱいだ。
龍の一挙一動に目を奪われていた。
「お前は、私の上に落ちてきたのだぞ。覚えているか。」
その言葉に、背筋が凍る。
ようやく、今の状況を理解してしまったのだ。
私は、贄の穴に落ちたのだ。
数年に一度、山に住む龍が暴れるこの地域では何度も生贄が差し出されてきた。
よりにもよってその龍の棲む穴に落ちてしまっただなんて。
「私は、落ちてしまったのですね。」
「そうだ、やっと理解したか。」
龍の上に落ちたおかげで助かったみたいだけれど、落ちたら這い上がれないほどの深い穴だ。
逃げ出せない。
涙をのんで、私は運命を受け入れた。
「そろそろ腹が減ったな。」
「...どうぞ、一思いにお食べください。」
「言われずとも食すが。」
遠慮なく、伸びてきた首が、ガブリと飲み込んだ。
音が、した。
続いて、ガブリ、ゴブリと。後ろから。
「あれ?」
目を開けて後ろを見れば、湖に口を突っ込んでいた。
そして何かを咥えると、それをこちらに放り投げてきた。
魚、だ。
「お前も食うか?」
「え。」
「食べれないのか。」
「食べ、れないことはないですが」
「そうか。」
私にかまわず、また湖をガブリと一口頂いた。
「魚を、食べるのですか。」
「それがどうした。お前も食うんだろう。」
しばらく考えて、ふに落ちる。
龍だから、てっきり何年も何も食べないものと思っていた。
どうやら湖の魚を食べていたらしい。
それなら、もしかしたら、助かるかも。
「あぁ、だがそろそろ餌が落ちてくる頃だな。」
けれど、その希望はあっさりと打ち砕かれる。
舌なめずりをして、その竜は天高くにあるその穴を待ちきれ無さそうな目で見上げた。
「ある日から何者かが投げ入れるようになった食料でな、よく焼けていて美味いのだ。」
あぁそうか。この龍は知らないのだ。
それが贄に選ばれた人間だということを。
焼かれる前の人間が、今目の前にいることを。
そして私が、選ばれた贄だということを。
「美味いのだがなぁ。」
その龍は、まだ何も知らない。
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