ばか狼(いぬ)が迎えに参りました。

12時のトキノカネ

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12. 私は別人です。

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「許されないのも分かる。怒りの気持ちも分かる。だが…」

「勘違いしないでほしいのですが、私にはそんな気持ちはありません」


顔を上げた男にすみれはそれが本当だと示すように穏やかな表情を見せる。

男はすみれに前世の記憶がある前提で話すが、そこはすみれもこの部屋に
男を招いた時に気持ちが決まっていた。逃げる気はない。

「貴方の言うすみれさんは、貴方の幸せを願って死にました」

思い出すように、もう一人の自分を語るように虚空を見るすみれ。


「たとえ貴方が、彼女が死んだその日、別の女性といたとしても
彼女は祝福しました。彼女はそうする他なかった。死ぬのだと思った時、
彼女は貴方のすべてを許し、幸せを願い、置いていく貴方に謝罪しました。
その気持ちがすべてです。同時に貴方への思いもその気持ちとともに
死にました。生まれ変わった私にはだから貴方へ向く気持ちはありません。
すべて終わったことです。謝罪はいりません」


出会った時にすぐに番だと言われた。
病気なのだと言えば、すぐに花嫁衣裳を用意しようと言ってくれた。
奇跡が起こればいいと一緒になって願ってくれた。
僅かな時間しかいれないかもしれないと言っても傍にいるといってくれた。

他に代わりはないと献身的に自分の傍にいてくれたイルを彼女は愛していた。

ぐわりと湧き上がる昨日、生まれたもう一つの自分がもたらす感情。
それに持っていかれそうになる。
だが同時に今の自分がいることを自覚する。

それが感情的になる自分を押しとどめさせてくれる。


「…それは…、ちが…う…」

「お帰りください。もう学校にくるようなこともしないでください。目立つのは嫌いです。相手に配慮のない行動はしないでください。お願いします。
一方的な押し付けは困るんです。」


「すみれ」


「もう私は別の人間です。…理解してください」


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