赤に咲く

12時のトキノカネ

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バチンッ


冒険者の屯する冒険者ギルドの目の前にあるお食事処兼夜にはお酒も出す居酒屋でその音は鳴り響いた。周囲がなんだなんだと見物する中で飛び切りの美人がこれまた偉く顔の整った兄ちゃんを見るなりつかつかと男の前まで歩いていき、何の言葉も発する前に手を振り上げて頬をたたいたのだ。

すわ痴情のもつれ?痴話げんか?男の浮気か?と
店の中で酒盛りしていた男たちはにやりと笑う。それにゴロツキどもの食堂で紅一点、花咲くバラのように怒りを見せる赤毛の女が涙目で男をにらむ。
その美しさ色っぽさに一瞬男たちは見入り虜になりそうになってはっと我に変える。女が怒鳴った。

「最低よ!あなた」

ビンタされたイツは驚きに固まって見開いた眼でレーシアを座った椅子から見上げていた。レーシアは怒りに震えている。
怒りに燃えるレーシアは何時にもまして美しい。しかしその怒りは尋常なものではない。憎しみの篭ったともすれば相手の死を望むようなそんな気迫にさしものイツも息を呑む。何がそんなにレーシアを怒らせたのかイツにはわからない。
でも、血を吐くようにレーシアはイツである自分を見て罵倒する。

「嘘つき!ありもしないことを嘘ついて、そんなに私を貶めたいの?それで私がどうなるか考えた?貴方からしたら大したこともない冗談みたいなことだったかもしれないけれど、私の人生はめちゃくちゃになったわ。仕事もやめさせられちゃったっ」

わっとレーシアが泣き崩れた。



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