湯守のいる宿

菊音花帆

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第三湯

湯守のいる宿【第三湯・優しい夢】


秋が深まり、カサカサと落ち葉が風に揺られ、舞い落ちる。

翡翠亭は増々、湯の効能が良いと噂を呼び、相変わらず賑わいを見せていた。
灯篭の灯りがぼんやり姿を露わにする時刻。
番台では秋元が。宿の入り口ではすみれが、それぞれ仕事に精を出す。

「お名前を頂戴いたします。…ありがとうございます。
では、こちらがお部屋の鍵になります。どうぞごゆっくりお過ごしください。」

「ありがとうございましたー!え?お湯、良かったですか?
有難うございます!またのお越しをお待ちしています!」

一組の老夫婦を見送ったすみれは、その足で少し疲れた表情になりながら、番台へふらりと向かう。

相変わらず全く動く気配のない、ねこのなつまるは、今日もすやすやと寝ている。
秋元も何か書き物をしているようだ。

「おう、すみれお疲れ。そうだ、今日確か四之宮が来る日だったよな?
部屋…ええと。あ、あった。またアジサイの間だ。」

「あたし、今日はちゃんと覚えてたわよ!…でもこんなに忙しくちゃ、話する暇がないよ…。」

「そうだな。紅葉狩りの客が、次から次へと…去年は暇だったのにな。」

「暇で潰れちゃうよりはいいでしょ?へへ、あたし結構お金溜まって来たんだよね。」

「まあ、使う所がないもんな。たまに街に下りてなんか買うくらいか。」

いつものように軽い雑談が始まる。
四之宮がここを訪れるという文が届いたと、数日前に女将さんが教えてくれた。
まだ半月経っていないが、近くに寄るからその足で翡翠亭を訪れると。
すみれは思っていたよりも早く、また四之宮の姿が見られることが嬉しくてたまらなかったのだ。

誕生日の夜に四之宮から貰った「蛍星」は、あれから身に付けるようにしていて、帯紐にちょこんと結びつけている。
眠りにつく前はその柔らかな光に癒され、目を閉じる。
あれからそんな毎日を送っていた。

しばらく秋元と話し込んでいると、すうっと女将が現れた。
いつものように扇子は叩かず、貫禄がみられないように感じた。

「お疲れあんた達。今日も忙しいねぇ。やれやれ、身体がちょっと痛いよ。」

「大丈夫ですか?女将さん…。無理しないでくださいね?」

「俺、部屋の案内もやりますよ。少し湯に浸かって休んでくださいよ。
番台は他に代わりがいますし。」

すみれも秋元も、不調そうな女将の姿を見て不安の表情。
滅多にこんな事はないのに、どうしたんだろうと心配していた。
ここ最近の忙しさで疲れが出たのだろうか。
深く溜息をつく女将はなにやら少し考えた後、心配する二人を見て言葉を綴った。

「そうだね…無理してアンタ達に迷惑かけないうちに、ちょっと休もうかね。」

「そうしてください!あたしも宿の案内、頑張りますから!」

すみれも秋元も、女将さんが休むなんてよっぽど具合が悪いのだと感じた。
それぞれが自分に出来る事は何か考え、女将を労わった。
女将が自室へ戻ろうとした矢先、背後から爽やかな声が響く。

「こんにちはー。ああ、皆さんお揃いでしたね。お久しぶりです!」

皆、一斉に振り向くと、そこには四之宮の姿があった。
キュっと後ろで長い髪を結び、変わらず淡い色の着物を着ている。
柔らかな表情のまま、宿の入り口に立っていた。

秋元も嬉しそうに四之宮を出迎える。
すみれは気恥ずかしそうにゆっくりと四之宮の元へ向かう。

「おう、早いな。丁度よかったぜ。女将さん今日は早く休んでもらうからよ、お前にもちょっと仕事を手伝って欲しいんだ。」

「いいよ、秋元。四之宮様にそんな事お願いしなくったって。」

珍しく女将が慌てた様子で、小走りで戻って来る。
迷惑をかけてはいけないと思っているのだろう。
大したことはないんですよと、四之宮に心配をかけないように話す女将。
秋元は四之宮に並び立ち、世間話をしている女将と四之宮の話に、口を突っ込みたくて仕方のない様子だった。

すみれも、四之宮が何か手伝ってくれたら、一緒に働けるようで楽しいのにと、口を出したかったのだ。
心配をかけぬようにと接していた女将だが、四之宮も女将の顔色が優れない事に気付き、そっと問いかける。

「女将さん、どこか身体に不調があるのですか?良ければ術をかけますが…。
今はまだお客さんもいるようですし、僕は女湯には入れませんし…。」

「いえいえ、本当に。少し休めばすぐにまた動けると思いますよ。」

「ん?女将さんの部屋には…確か小さい風呂がついてましたよね?
湯に術をかけて貰えばいいじゃないですか。」

秋元が閃いた。
そう、女将の自室には小さいが風呂が付いている。
最近はその風呂を使っているのだと、女将は話す。
客が使う大浴場など、術のかかった風呂には入っていなかったのだ。
疲労が溜まり、どんどん動けなくなっていたのだと言う。

秋元が必死に四之宮の術がかかった湯に入るよう、女将に勧める。
一つ溜息をついた女将は、ゆっくりその口を開いた。

「…頼んでもよろしいですかね?四之宮様。」

「ええ、お安い御用ですよ。早速、術をかけに行きましょう。」

皆、その言葉を聞いて安堵の表情を浮かべる。

「じゃあ、後の部屋案内は、あたしちゃんとやるんで、女将さんはゆっくりお湯に入ってきてくださいね!」

「ああ、すまないね。頼んだよ。」

振り向いて、女将は四之宮に頭を下げ、ゆっくりと歩き出す。
その後ろを四之宮が付いていき、少し言葉を交わしながら女将の部屋へ向かった。

一階の長い廊下の突き当りを左に曲がると、殺風景な扉があった。
女将は鍵をあけ、中に四之宮を招き入れる。

「お邪魔します。へえ…。女将さんのお部屋、初めて入りました。
綺麗な布や、不思議な物が沢山置いてありますね。」

調度品のようなもの、そして古そうな壁掛け。
奇麗な織物が掛けられていて、美術館の一角のようだった。

「古い付き合いのお客さんに頂いたんですよ。
もう皆、亡くなってしまいましたけどね。」

「貰った物を、大事にされてるのですね。…っと、すみません、ジロジロと見てしまって。さあ、どんな術をかけましょうか?」


「そうですね。最近夢見が悪くて。ちょっと困っていたんですよ。」

「なるほど…。わかりました。そうしましたら、それと疲労回復も混ぜておきますね。」

四之宮は女将の横を通り過ぎて、窓の外に置いてある五右衛門風呂へ向かう。
落ちた枯葉が浮いていて、一部を切り取れば美しい写真のようだ。

湯はきちんと源泉から汲んでいるようで、暖かい。
腕を湯につけ、すう、っと一つ息をつき、四之宮は言葉を紡ぐ。

「…満ちろや、香り。紡げや夢の糸、流れや流れ……」

話し終わらないうちに蛍星がふわっと現れ、湯から生まれて湯に戻る。
周りに零れた蛍星からは、甘い香りが漂う。

「久々に、見た気がしますよ。この不思議な光を。
…では、四之宮様、有難くお湯を使わせて頂きます。」

「ええ、ゆっくり浸かってください。少し眠くなるかも知れませんが、ちゃんと香りで起きられるので、安心してくださいね。…それでは、僕はお手伝いに行ってきます。」

「ええ、四之宮様も無理はなさらず。少し休んだら参りますので。」

ごゆっくり、と笑顔を女将に向けた四之宮。
ゆっくり扉を締め、秋元となつまるの居る番台へ歩き出す。

四之宮は少し嬉しかった。
最初こそ恐れられていたが、こうして気軽に術を頼まれることが。
秋元、すみれ、女将、皆から頼りにされているのだと感じ、その表情はとても穏やかなものであった。

番台へ戻ると、すみれの姿もそこにあった。
すみれはすぐに四之宮の気配に気づき、話しかける。

「あ!四之宮さん。女将さんはどうですか?ちゃんとお湯に入ってくれそうでした?」

「ええ、きっと入ってくれます。」

そうか、良かったと二人で微笑み合い、柔らかな空気が流れる。
そんな中、秋元は押し寄せる仕事の事で頭が一杯になっており、四之宮に話しかけるタイミングを伺っていた。
和やかな空気をバツンと断ち切るように、思い切って話しかける。

「あー。悪い、四之宮。早速なんだが、ちょっと手伝ってくれねぇか?
その、人手が足りなくてな…。」

突然の依頼に少し驚きつつも、女将が欠けた分の仕事があるのは理解していた。
秋元の方へ向き直り、笑顔を向ける。
すみれと秋元の顔を交互に見ながら、四之宮はシャキっとした声で女将さんが復帰するまで、みんなで頑張りましょう、と。
それぞれ何をするか秋元から説明され、すみれと四之宮は持ち場へと向かった。


いっぽうその頃、術のかかったキラキラとした湯を嗜んでいる女将。
柔らかな湯触りを確かめるように、何度も肩や腕を撫でる。


「このお湯、とてもなめらかだねぇ…。
ああ、本当だ、眠くなってきたよ…少し、少しだけ…。」


うとうとし、そのままゆっくり眠りへと誘われる。
ざわざわとした声がゆっくり聞こえてくる。
そうだ。仕事をしなければ。
若女将にまた怒られてしまう。

「しおり!アンタまた皿を割ったのかい?料理までひっくり返して!ああ、勿体無い!お手当てから引くからねっ!」

「すみません!若女将!すぐに片付けますから!」

「ここはもういいから、さっさと新しい料理を運んどくれ!」

「は、はい、今すぐ行ってきます!」

「はは、しおり、また皿を割ったのかい?忙しくても焦らなくていい。
お前はもう少し美しく振る舞いなさい。」

「支配人!え、ええ。すみません、わたし、失敗ばかりしちゃって…。」

「しおり、お前はこの宿の女将になるんだ。女将は常に凛としていなければな。
そしてもうすぐ結納もある。」

「ええ、わかっています…。なかなかうまく出来なくて…。」

「若女将がキツくお前に当たるのも、理解してやっておくれ。彼女は女将の器ではない。その事は彼女自身もよく解っているさ。」

「はい…あっ!わたし、仕事に戻ります!」

「ああ、ちゃんと気品を持ち、意識して振舞う事を忘れずに、な。」


とぼとぼと廊下を歩き、支配人に背を向けて歩く。
心がざわつき、みるみる萎んで行くようだ。

「はあ…今日も失敗しちゃった。わたしが女将になるなんて…まだ早い気がするな…。」

しゅんとして窓の外を眺めていると、婚約者の雪野夏目が話しかけてきた。

「しおり、どうしたの?また何かあった?」

「えっ!ああ…。今日もお皿割ってしまって…。お料理も台無しにしてしまって…。」

「そうだったんだね。…ええと、良かったら少し外を散歩しないか?
気になる場所を見つけてね。」

「ええ、夜の散歩…いいですね。わたし、提灯を持ってきます。」

提灯の灯りだけで歩く夜道は、暗かったが暖かい空気が流れていた。
雪野夏目と婚約はしていたものの、しおりはまだ若く照れくさいと感じている。

「ちょっと聞いておきたいんだが…キミは俺と結婚するのが、その…嫌かい?
…大人が決めた結婚だ。キミはまだ若いから、恋だってしたいだろうに。」

「そ、そんな!嫌なんて事はないです!
夏目様こそ、わたしなんかが婚約相手でいいのかなって。」

「俺はしおりの事をちゃんと好いているよ。まだ俺の事、夏目様って呼ぶからさ。
距離を感じて寂しいな。」

「すみません…名前だけで呼ぶのは、まだ慣れなくて。」

「ゆっくり、慣れて欲しいな。…さて、この辺りだったかな。
ちょっとここを、触ってみて?」

少し湿った地面に手を付けて、夏目はそう話す。

「え?ここの地面を、ですか?…?なんだかちょっと温かいような…。」

「やっぱりそう感じる?ここに恐らく源泉があるんだ。
ちょっと表に出てきてもらおうかな。」

「…術を、かけるのですか?」

「ああ、目に見えるようにしないと、宿へと引っ張っていけないからね。
よし。くっ!…もう少し、よしよし、上がってきた。」

地面が光を帯びている。
ピュっと勢いよく、泥水も飛び出していた。

「ねえ、あの!また無理して具合が悪くならないように…。」

「くっ!もう少し、そうだ。上がってこい!はあ、はあ、くっ!」

地面はボコボコと膨れ上がるが、蓋で押さえつけられているように、あとひと息が足らない。

「わ、わたしも手伝います!この土を掘るわ!…くっ!くっ!」

「げほっ!くっ、はあ、やっと滲み出てきたな!あと少し!くっ!」

「ねえ!見て!お湯がこんなに!凄いわ!あふれて、流れ出した!」

熱さと冷たさを混ぜたような水が溢れて、大きな水たまりがその場に出来た。

「はあ、はあ、全く。なかなかしぶとかった。でも、はは、成功したな。
新しい源泉だ。最後に術をもう一つ。」

夏目がなにやら優しい言葉を紡ぐ。
すると、脈々と流れる湯が、宿の方向へ降りて行った。

「わあ!水脈が光ってる…!宿へちゃんと向かってる…!」

「これで完成。…っく!」

夏目は突然の眩暈に襲われ、しゃがみ込む。
しおりは、はっとして夏目に駆け寄る。
二人とももう、泥だらけだった。


「夏目!ああ、無理をしないで!少し休みましょう?あそこまで、歩ける?」

「ふふ、やっと俺のこと、夏目って呼んでくれた。頑張った甲斐があったよ。」

「夏目…。」

暗転。
そこはまた宿の中だった。
元気そうな夏目が隣に座っている。

目の前には支配人と若女将の姿もあった。

「よくやってくれたよ、夏目君。キミのお陰で宿は大繁盛だ。
ははは、まさか裏山の入り口に源泉が隠れていたなんて。」

「さすが、湯守だわ。お客さんみんな身体の痛みが消えたって言って、大喜びよ!」

「そうだ、あの源泉はお客にも見てもらえるように、近くに祠でも置こうか。
どうかね?自然の恵みと、湯守への感謝だ。」

「ええ、よいお考えですわ。本物の、天然の湯だと証明できますもの。」

明るく嬉しそうに、隣に座る夏目は笑う。

「ははは、そこまでしなくても。でも、宿に貢献できてよかったですよ。」

「術もかけてあるのでしょう?ウチの宿ならではの湯だわ。これなら安泰ね。」

「さあ、次はキミたちへの祝杯をあげねばな。盛大に祝おうじゃないか。」

賑やかな話声が遠ざかる。

暗転。
そう、これは夏目との披露宴での光景だった。
自然と笑みが零れていたが、今の夏目は眼の前で横たわっている。
自分の手を見ると、ガサガサしていて歳をとっているようだった。


「しおり、立派な女将になったね。ごほっ、…うっ。
…最後まで添い遂げられず、ゴメンな。」

「ううん、貴方が居てくれたから、わたしはここに居られるのよ。
本当に有難う、夏目。」

「湯守の命は短いんだ。きっとどの湯守も早死にするのが運命なんだよ。
…黙っていて悪かった。」

「貴方を想い続けるわ。わたしは再婚など、絶対にしないから。」

「キミは幸せになるんだよ…。これから沢山の人に慕われて、沢山の人と繋がるんだよ。それが出来る、君になら…。」


すうっと辺りが白い光に包まれる。
そうだ、夏目が死んでしまった日。
これはあの時の光景だった。

いつの間にか後ろから夏目に抱きしめられながら、女将は真っ白な空間を漂う。
辺りには水の音が流れている。
そっと耳元で夏目が囁くように。

「ああ…しおり。キミは今とても幸せなんだね。沢山の仲間に囲まれて。
良かった。俺も君を愛しているよ。」


伝わる。夏目の温かさが。
返事をしなければと思うが、声がなかなか出てこない。
ふと、甘い香りが漂ってくる。
少し肌が冷たい。

ハっと目を覚ますと、そこは自室の五右衛門風呂だった。

「夏目…!…。この、香りは。…夢…。夢だったのか。」

…あたしは確かに今、幸せだ。…ありがとう、夏目。

女将は過去の夢を見た。愛した人が夢に出てきた。それは久方ぶりの再開。
懐かしさと愛おしさで、涙がこみ上げてくる。
もう一度あの腕に抱かれたいと、何度思っていた事か。

夢だとしても、それは叶ったのだ。
女将は人知れず、何年振りかに涙を流し、夏目を想っていた。


その頃すみれは一仕事終え、番台の秋元にまた話しかけに行っていた。

「ねえ、女将さん大丈夫かな?随分遅いけど、寝てるのかな?
…あたしちょっと見てこようかな?」

「やめとけ。たまにはゆっくり休ませてやれよ。
四之宮の湯に入ってるなら、安心だろう。」

「まあそうか、そうだよね。さて!あたしは配膳やってこなきゃ!
あ、あと四之宮さんどこ行っちゃったのかな?」

「そういや客を部屋に案内してから、戻って来てねぇな…。
女二人の客だし、こりゃもしかしたら捕まってるのかもな。」

「えっ!そ、そうなの!?ちょっとどこの部屋?」

カっと目を開いて秋元から番帳を奪い、すみれは女性客の名前を探す。
必死だ。その様子はとても必死だった。
スイレンの間に怪しさを感じたすみれは、そのまま駆け足で番台を後にする。

「おい!…全く…配膳はどうなんだよ…。」

頭をぽりっとひと搔きし、奥で木彫りのなつまるを掘っている忍野に声を掛ける。

「ちょっと俺抜けるから、番台代わりに頼みます、忍野さん。」

忍野はにこやかに頷くと、ぱぱっと服に付いた木くずを落とす。

「なんだか今日は大変そうだね、秋元くんは。」

そう呟くと、なつまるは一つ、おおきなあくびをした。

どすんどすんと音が聞こえるような足取りで、すみれはスイレンの間へ向かう。
ここだ。
四之宮はずっとここで何をしているのかと、横恋慕されてはいないかと、心配と少しの怒りの感情で、スイレンの間の戸を叩いた。

「失礼します。お食事の支度が整いましたので…。」

そこには正座をして身動きの取れなさそうな四之宮の姿と、その真横に座る女性客の姿があった。

「ああ、すみれさん。ええと…お客さん。僕もそろそろ失礼しますね。
では、ごゆっくりお過ごしください。」

そう告げると、去る四之宮を惜しむ女性客の言葉が飛び交う。
女性客に優しく微笑む四之宮の姿を見て、すみれは少し胸が締め付けられていた。

誰にでもするんだ、あの笑顔。
自分だけに向けられているものではないんだと、少し泣きそうになっていた。
そして何より怒りの感情がすみれを襲う。


「もう!四之宮さんてば!お客さんとなんのお話してたんですか!?」

「少しお話したい、と言われまして…旅をしていて、今日だけ働いているとか。
そんな話をしていました。」

「もう!四之宮さんのバカ!」

馬鹿と言われて四之宮は驚いた表情だ。
すみれの目じりには少し涙の痕があるし、何事かと四之宮は一気に不安になる。

「すみれさん…すみません。僕、何か怒らせるような事してしまいましたかね?」

潤んだ瞳でじっと四之宮を見つめるすみれの顔は真っ赤だった。
言いたいことは沢山あったのだが、今は仕事中だ。
ぐっと堪えてなんとか立ち直るすみれは強かった。

「なんでもないです!…次は配膳を手伝ってください!」

「え、ええ。わかりました。」

四之宮は焦っていた。あんな怒った顔のすみれを見たのは初めてだったのだ。
いつも明るくて元気なすみれ、自分が旅立つ日の元気のないすみれしか知らなかった。
少し鈍感な部分のある四之宮は、すみれが女性客に焼きもちをやいているなど、想像する事も出来なかったのだ。

今はそう、すみれに言われた通りに配膳の手伝いへ向かった。


夕餉の時間が過ぎ、館内が少し静かになって来た頃、女将が姿を現した。
いつものように、皆が居るであろう番台へ、ゆっくり歩を進める。
なつまるがこちらへ向かってくるのが見えた。


「悪かったね、秋元…?あれ?どこに行っちまったんだい。」

「ああ、女将さん。秋元くんは随分忙しそうでしたよ。」

忍野が暖簾越しに、女将にそう告げる。

暫くその場で扇子をトントンと叩いていると、階段からすみれと四之宮が降りてくるのが見えた。

「女将さん!もう身体は大丈夫なんですか?」

駆け寄って女将の姿を見たが、顔色もよくいつもの調子を取り戻したかのように見える。
頬も健康的で少し色っぽく見えて、すみれは大人の女性のその姿に少し見とれそうになっていた。

「湯はいかがでしたか?少しは心も軽くなっていれば良いのですが。」

「見ての通りですよ。四之宮様、ありがとうございました。
…他の仕事も、何か手伝ってくれたりしたんですか?」

「四之宮さん、ずーっと女のお客さんとお話してました!ふんっ!」

鼻息の荒いすみれの姿を見て、何があったかすぐに女将は理解した。
客と四之宮が仲良く話している姿でも見て、すみれはこうなっていると。

「すみれ…あんたは解り易く、焼きもち焼くんだねぇ。
さあ、四之宮様は少しお休みください。あとは私達でなんとかしますから。」

「いえいえ、今日だけまだ働かせてください。僕は大丈夫ですから。」

「四之宮さんは、これからあたしと一緒にお膳を下げに向かうんです!
行きますよ!四之宮さん!」

「は、はい、すみれさん!」

まるですみれに逆らえない様子の四之宮。
元気な二人を見た女将は、やれやれといったご様子だ。

宿の入り口で少し夜風に当たっていると、背後から秋元の声がする。

「お、女将さん!身体はもういいんですか?
すみません、接客を手伝ってて、ようやく戻って来れました。」

「お疲れ、秋元。悪かったね、アンタも忙しかっただろう?」

「え、ええまあ。やっぱり女将さんが居ないとうまく回らなくて、はは。
俺はまだまだ力不足です。」

「そんな事ないさ。誰もあたしを呼びに来なかっただろ?
ちゃんと上手くできてるからだよ。自信を持ちな。」

「はい。これからまたこんな事があったら、次こそうまく回すので。頑張りますよ!」

自分が風呂で癒され、涙していたことなど、誰も知らない。
その間に随分と頑張ってくれていた事に、女将はありがたく思っていた。
そして、夢でも夏目にまた会えたのだ。

ふと、少し前から気になっていた事を秋元に尋ねてみる。

「話は変わるが、秋元。
アンタの目から見て、すみれは四之宮さんの事が好きだと思うかい?」

「なっ!急ですね。…まあ、あいつ解りやすいですからね。
憧れてるのか、単純に好きなのか…ちょっと俺には解らないです。」

「そうかい。なら、アンタはすみれが好きかい?」

「なっ!!そ、それもまた急ですね…うーん。
俺にとってあいつは妹みたいな感じですよ。」

「あたしはね、出来ればあんたにすみれを任せたいんだ。」

そう。湯守の命は短い。
夏目もそう話していたし、実際そうだった。
自分を残して亡くなってしまったのだ。
だからこそ女将は、すみれの事は将来秋元に託したい思いがあった。

自分と同じ思いをすみれにさせたくなかったからだ。

「それは…あいつが決める事なので、俺は何も言えないし、出来ませんよ。」

「その通りなんだけどね、湯守と結ばれるのは、とても大変な事なのさ。
あたしはすみれに寂しい思いをさせたくなくてね。」

「寂しい思い…確かそれ、前に四之宮も自分で言ってました。辛い思いをさせるって。
修行の旅に出て、寂しくさせるからって事なんですかね?」

「他人の痛みや傷は癒せるのに、本人はとても大きな宿命を背負っているのさ、湯守という人間は。」

「それでも…。すみれがあいつが好きなら、応援しますよ、俺は。」

「そうかい。それじゃあ、すみれの気持ち次第なんだねぇ。」


女将から突然、恋だの愛だのと話しをされた秋元は、ちょっと複雑な面持ちで居た。

―俺にとってあいつは妹みたいな存在
―すみれがあいつが好きなら応援しますよ

それは自分に言い聞かせるようにも言ったのだ。
そう、ワガママでお転婆なすみれの話し相手はいつも自分だった。

ただ、好きだと言葉に出してしまうのは、今の関係が壊れてしまう気がして言えない。
今のままでいい。
そう秋元は少し切なそうな表情で遠くを見ていた。

配膳を一通り終えたすみれは、四之宮を引き連れて廊下を歩く。
心を搔き乱されていたが、ようやくすみれは仕事をし、落ち着いていた。

「もう疲れたんですか?四之宮さん。」

「ええ、ちょっと。はあ。慣れない事をするのは疲れます。
…でもこうして毎日すみれさんは頑張っているんですね。」

「はい!そうですよ。これがあたしの仕事です。」

四之宮の方を振り向き、誇らしげな様子のすみれ。
そして様子のおかしいすみれがどうなっているのか、落ち着かないままの四之宮。

自分から話さなければ。
きっと仕事が遅くて怒っているのではないかと、思考を巡らせる。

「あの…そろそろ機嫌を直してはもらえませんか?すみれさん。」

すみれはその言葉にはっとした。
そういえば忙しくて忘れていたが、随分恥ずかしい姿を四之宮に見せてしまっていた。
なにも怒る事なかったのかも、と。今更慌ててしまいそうになる。

それでも目の前でしゅんとしている四之宮と、先ほどの女性客が仲良く話す姿を思い出すだけで、また怒りもこみ上げそうになっていた。


「あとで…後でお部屋で一緒に、お菓子とご飯食べてくれるなら、許します。」

少し恥ずかしそうに俯きながら、やはりすみれは四之宮との時間が欲しかったのだ。

「ふふふ、可愛いお願いですね。それなら喜んで。
アジサイの間で、一緒に食べましょう。」

いつもと変わらない、一緒に部屋で茶菓子を食べる提案。
すみれは疲れも吹き飛ぶほど嬉しかった。
そして、可愛いお願いなんて言葉に、すみれは舞い上がってしまう。

「やったー!じゃあ、あたし残りの仕事片付けてくるんで、四之宮さんは部屋で休んでいてください!」

そう早口で言い、すみれは話しながら走って去っていく。
今日のすみれは嵐のようだと、四之宮はつい笑いそうになってしまう。

すみれの喜怒哀楽全てを見たような。
それを特別な事のように感じていた。

「はーい、頑張ってくださいね。ふふ、本当に一生懸命働いて…。
すみれさん…。僕がもし…いえ、まだ早いですかね。」


湯守の宿命。今の幸せ。それは天秤にかけることは出来ないもの。

少し切ない想いを秘めた夜をそれぞれが迎え、すみれはその日、四之宮と散々くだらない話をして盛り上がった。


翌日―

「女将さん、おはようございます。」

「ああ、おはよう秋元。今日は何事もなきゃいいねぇ。
すみれはまだ起きてこないのかい?」

朝早く番台に秋元と女将の姿があった。
そしてそろそろすみれもやって来るような時間だ。
だが、まだ来ない。

少ししんとした後に、秋元がゆっくり口を開く。

「すみれのやつ、四之宮の部屋で遅くまで話し込んでたみたいです。
はは、すみれにつき合わされたら身が持たないですよ。」

「そうかい。今日はまた水質を確かめてもらうんだ。
一番最初に四之宮様が来たときに、先代がかけた湯の効能が消えかけていたね。」

そう言いながらなつまるをゆっくり撫でる女将。
昨日は本当に夢の一日を過ごした。
懐かしむように、宿を見渡す。

「女将さん確かそう言ってましたよね。先代も湯守だったんですか?」

「ああ、そうだよ。四之宮様が来て、あの湯を蘇らせてくれたのさ。
あたしにとっては思い出の湯なんだ。本当に有難いよ。」

そう聞いて秋元は好奇心が芽生える。
あの不思議な術を、先代もやっていたのかを女将に聞いてみたかった。


「先代の湯守も、凄い力を持っていたんですか?四之宮みたいな…。」

「そうだねぇ、光る川や水脈を見させられたよ。懐かしいね。
山の入り口に祠があるだろ?あそこが源泉なのさ。」

やはりあの不思議な光景を見ていたから、女将は四之宮の術に驚いていなかったのだ。
そう確信した。
そして先代の湯守は女将さんの旦那で、死に別れたと秋元は聞いていた。
今までなんとなく聞けなかった事も、機嫌と体調が良さそうな女将に聞けた。

そう、夏目の夢を見た女将の様子は、本当に穏やかなものだった。

「…なんだか昨日、仕事に復帰してからの女将さん、とても楽しそうに見えますよ。
俺まで嬉しくなります。」

「そうだね、いい夢を見たんだ。とても…いい夢を。」

なつまるを撫でながら目を閉じ、再び流れそうになる涙を女将は堪えた。
そうこうしているうちに、足音が近付いてくる。

もう少し待って欲しい。
そう思っていた時に、秋元が先に四之宮と目を合わせた。


「おはようございます、女将さん、秋元さん。」

「おう、おはようさん。大丈夫か?寝不足になってないか?」

「ええ、なんとか大丈夫です。ふふ、すみれさんはまだお若いから、元気ですね。」

きりっと気持ちを持ち直して、女将も四之宮と向き合う。
感謝の気持ちと、すみれが迷惑をかけていないかなど、色んな感情があった。

「すみませんね、四之宮様。すみれがご迷惑をおかけして…。」

「いえいえ、迷惑だなんて。昨日も皆さんと働けて楽しかったですよ。
初めての経験もさせて頂きましたし。」

にこやかな表情の四之宮を見て、女将も秋元もほっとした。
店で働いた経験のなかった四之宮にとって、本当に貴重な体験だったのだ。
すみれが一緒に働く仲間。そうよく話していたことも、なんだか今なら分かるような気がしていた。

三人でなつまるの名前の由来など、しばし雑談をしていると、ドタバタと番台に向かって走ってくるすみれの姿を三人は見つける。

「お、おはようございまーす!すみません!ちょっと寝坊しちゃいました…。」

「全く、アンタは…。でもまあ、昨日は疲れただろう?
よくやってくれたね、すみれ。」

「え…はい。ちょっとバタバタしたけど、余裕ですよ!任せてくださいっ!」

てっきり怒られるだろうと思っていたすみれは、素っ頓狂な声を出してしまう。
そして怒られないように任せてくださいも、付け加えたのだ。
ひとしきり寝て、頭は冴えていた。

そろそろ宿泊客も、早い人は起きてくるような時間帯。
女将から今日の動きなどの説明があり、皆熱心にそれを聞く。

皆それぞれの仕事場へと向かった。


「では、僕は水質を確かめに行ってきますね。」

「ええ、お願いします、四之宮様。」


朝餉を済ませた客が、宿を後にし、その見送りや布団を片付ける仕事。
それぞれがいつもしている仕事をこなしていく。
すみれは身体は動くが、今日また四之宮が旅立つ事を考えながら。
次はいつ会えるだろうと、少し気持ちが重くなっていた。

気付けばもう昼食の時間になり、皆が昼頃に出ると話していた四之宮を見送りに、宿の入り口に集まって来た。


「四之宮が来てもなかなか話せずに、毎回あっと云う間に帰っちまうな。
なあ、すみれ。」

「あたしは昨日、その…四之宮さんと色々お話できたもん。」

「…で?好きなのか?四之宮の事。」

「…!なによ!やめてよ!アンタ絶対からかうから、絶対言わないわよ!」

「ははは。顔真っ赤だぞ、すみれ。」

ギャンギャン騒ぐ若い二人に、またかと呆れ気味の女将。
もう、何度このやり取りを見て来ただろう。

「はいはい、うるさいよアンタ達。本当、元気だねぇ。」

「みなさん。水質、大丈夫でしたよ。まだきちんと術はかかっていました。
かけ直しは、次回で大丈夫そうです。」

「そうですか、有難うございます、四之宮様。
今日もすぐに何処か向かわれるのですか?」

「そうですね、早く発たねば。着くのが夜中になってしまうもので。
そろそろ、行きます。」

そう言って傘をかぶり、透明な羽織ものを風にたなびかせる四之宮の姿に、皆一瞬見とれてしまう。

この妙な感じは、やはり特別な湯守ならではの不思議な力が働いているのだろうか。
一足ほど、四之宮へ近付き、秋元は笑顔で四之宮に話しかける。

「女将さんの事、良くしてくれてありがとな、四之宮。」

すると、すみれも秋元より二歩先ほど四之宮に近付く。
すみれとしては、やはり先の約束を取り付けたかったのだ。

「四之宮さん…。あの、次はいつ来られますか?
あの、あたしまた何かお菓子買ってくるので!」

「ええ。お菓子、楽しみにしています。
またすぐに来ますから、すみれさん。」

最初の頃の、自分の横をすうっと通り過ぎてしまうような事は、もうなかった。
優しい笑顔で、優しい声の四之宮。
またすぐにと言っているが、やはり少し先なのだろうと、切なそうな表情のすみれ。

最後に女将が四之宮に近付き、深々と頭を下げる。

「四之宮様…昨日はいい夢を見させてくれて、本当に有難うございます。
とても、とても暖かかったですよ。」

「そうですか…それは何よりです。
心の引っかかりのようなものも、取れたようなお顔になりましたよ。」

「ええ。懐かしくて。そして目覚める前にいい言葉が聞けました。」

それはよかったと、四之宮も頭をぺこりと下げる。
そして全員の顔を見ながら、慈愛に満ちた表情で。

「…ではみなさん、これから寒くなりますので、ご自愛くださいね。
冬にまた、伺いますので。元気でお過ごしください。」

深々と頭を下げつづける女将の姿を、すみれと秋元は見守った。
きっととてもいい術のかかった湯に入ったのだろうと思っていた。

四之宮が坂を下りきるまで、その姿を女将は見守った。

「有難うございました、四之宮様。」

「…本当に、本当にありがとう…。」



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