ゴミ召喚士と呼ばれたスライム超特化テイマーの僕〜超特化が凄すぎて、最強スライムを育ててしまう〜

伊藤ほほほ

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 僕の言葉を聞いて、ダグラスさんがゆっくりと口を開く。

「あー、なるほどねぇ。自信満々に挑んでコテンパンにされりゃ、そう弱気になっちゃうか。テイマーの先輩として言わせてもらえば、坊ちゃんはまだまだなんよ。例えばさぁ、ザンブって野郎は最初、1レベのオークをたった一体出して舐め腐ってたんしょ? オークなんて無視して坊ちゃんが特攻しとけば、相手は丸腰なんだから、足でも何でも刺せたはずじゃんね? 接近されてから追加で召喚しようと遅いんだからさ。従魔に戦わせるだけがテイマーじゃないんよ」

「あっ……」

「でしょ? お兄さんさぁ、前もクイズ出したじゃん? 経験がテイマーの武器になるって。それは、モンスターだけじゃなく、召喚士にも当てはまんの。あの手この手ってのは無限にあるんよ。お兄さんにだって、知らないやり方がたーっくさんあるわけ。テイマーに終わりはないってのはそうゆうこと。みんな未熟なの。正解は無いの。だからテイマーってのは難しいし、時間が掛かるし、辛いし……ね? みんな辞めちゃうのも分かるっしょ?」

 ダグラスさんの言う通りだ。決闘中に、初めから考えてた作戦以外のプランがいくつか脳裏をよぎっていた。
 枝分かれした選択肢から正解を導きだす。あのときこうしていれば……そんな後悔を埋めてくれるのが経験ってことか。
 僕は、何もかもが甘かったんだ。スラマルとコロゾーの命を背負う覚悟もせず、自分の命を賭けたつもりになって……たった一週間で、テイマーを分かった気でいてさ。

「……はい。ダグラスさんの話を聞いて、心がずっと揺れてるんです。自分がどうしたいのか、今はやっぱり答えが出せません。でも、前に進んでいるような気がしています」

「おし、ちょっと顔が変わってきやがったな。いい男の顔に近づいてんぜ? ま、ここではこんなとこか。ちょっとダグラスと話して待っとけ」

 僕とダグラスさんを残して、パッセさんが奥の方へ行ってしまった。

 少し心が軽くなった気がする。
 何も考えられなかったのに、悩む余裕ができてる。
 親方についてきてよかった。

「どう? 可愛いとこあるっしょ、うちの親方。すんげえこえぇけど、世話焼きなんだよねぇ。あっ、今の内緒ね? バレたらぶん殴られちゃう」

「ふふっ、分かってます」

 ほら、笑えてる。
 ほんとにいい人たちだ。気を遣ってくれて、僕みたいな子供に全力で向き合ってくれて。
 英雄ヒーローって、こんな感じなのかな?
 僕もダグラスさんやパッセの親方みたいな大人になりたい。

 色々と話をした。
 ダグラスさんは昔、悪友に唆されて、犯罪に近いグレーな仕事をしていたらしい。
 テイマーの不遇さに嘆き、世界の不平等さに怒り、何もかもがどうでもよくなっちゃったんだって。
 あるとき、酒場で酔って絡んだ相手がパッセの親方。それはもうコテンパンにやられたんだけど、一緒にいた悪友はダグラスさんを見捨てて逃げてしまった。裏切られたんだ。
 その瞬間、自分がちっぽけで、世界でただ一人取り残されたような悲しみを味わったみたい。

「おい小悪党チンピラ、なんて情けねぇ目ぇしてやがる。俺とちょっと話しようや。……ってさぁ、お兄さんもう頭ふらふらなのに、首根っこ掴まれて無理矢理に引き摺り回されちゃってぇ」

 店の裏で地べたに座ると、パッセさんからビールの入ったジョッキを押し付けられて、今日の僕みたいに話を聞いてもらったらしい。

「どうせ毎日下向いて歩ってんだろ? お日さんが眩しい眩しいってよぉ。うちの工房で働け。変わるなら今しかねえぞ? 嫌なら辞めりゃいい。……な~んて言われちゃったらさぁ、ついて行くしかないよねぇ? どう、似てた? かっけぇんだうちの親方は!」

 パッセの親方の真似をしながら、自慢の宝物でも紹介するかのように話すダグラスさん……の頭の上に、ゲンコツが落ちた。

「おうダグラス、ご機嫌だなぁ? 俺の声はもっと渋いだろうがタコ。ぶん殴んぞ!」

ったぁあああ! もう殴ってんじゃないっすか!」

 ゴツンッて、とんでもない音がしてた。
 あんな隕石みたいな拳を食らったら、僕の頭ならかち割れちゃうよ。

「うーし、次行くぞ次! そのぶち折れた槍は、もう使えねえから工房に置いとけ。肩を叩くのにちょうどよさそうだ。で、てめえはちんたら何してる? さっさと帰らねえかダグラス! 坊主、ついてこい」

「いやいや、なんなんすかもぉ。めちゃくちゃじゃないっすか……。お疲れっした! 坊ちゃんもまたね!」

「はい、ありがとうございました!」

 しょんぼりと頭を下げながら身支度を始めたダグラスさんを横目に工房を出る。本当は持って帰りたかったけど、テーブルの上に無惨な姿となったダグランス一号を置いて。
 僕はただ、肩幅の広いゴツゴツと大きな背中の後を追う。

 道中、アイス屋さんに立ち寄った。
 好きなの選べと言われたので、チョコとバニラの二つを指差す。パッセさんはハッカ味だ。
 僕がゆっくりと舐めとるように食べていると、親方は二口でアイスを完食し、バリバリとコーンを噛み砕いていく。あっという間に無くなってしまった。
 これが男の食べ方かと僕も真似してみたけれど、大きく一口食べたら喉が凍ったみたいに冷やされて、頭がギンギンと痛む。

「がははは、坊主にゃまだ早ぇな!」

 大きな手のひらが、僕の頭をぐしゃぐしゃに撫で回す。
 今度はハッカ味に挑戦してみよう。おそらくあれが大人の味に違いない。

 まだ痛む頭を押さえながら店を出て、再び歩きだす。
 毎日のように通る見知った道……着いたのは、僕の家だった。
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