33 / 45
33
しおりを挟む
またいつも通りの日常が始まった。テイマーになる前と同じ生活だ。
朝ごはんを食べて学校へ、帰ったら宿題を終わらせ、夕飯を食べて風呂に入って寝る。この繰り返し。
違うのは、ラビちゃんがいないこと。いまだに音沙汰がないらしい。
そして、決闘を見たクラスのみんなが、僕を腫れ物のように扱い距離を取っていることかな。
ザンブとの戦いを見て、僕がどうやってスライムを育てたのか気になったらしく、色々と聞いてくるテイマーの子がいた。
僕は嬉しかったんだけど、その子は周りから今はそっとしといてあげないと……だなんて注意されていた。
ラビちゃんがいたときは、みんなともっと気軽に話せてたんだけどなぁ。
だいぶ心は落ち着いたし、悲しくないと言ったら嘘になるけれど、気を遣わなくていいのに。
……でも、そのいつも通りは今日まで。
「ぶっひゃっひゃっひゃ! や~っと帰って来れたぜぇ。さて、俺っちの奴隷はどこかなぁ?」
一
あいつの姿を見た瞬間、嫌な光景が脳内を埋め尽くす。
……ダメだ、耐えられない。
わざと視線を逸らし、窓の外を見て心を落ち着かせる。
しかし、そんな時間は許してもらえなかった。
「おい、俺っちが呼んだら奴隷はすぐに駆けつけろ!」
ザンブに首根っこを掴まれて持ち上げられ、強制的に対峙させられてしまう。
スラマルとコロゾーを失い、追加ステータスがなくなってしまったので、ザンブの力に抗うことができない。
そのまま無理矢理に引きずられ、ザンブの席まで連れていかれた。
「なんだよザンブ、痛いだろ」
「ザンブ様だろ奴隷! 俺っちが座る前にはイスを下げ、俺っちが立ったらイスを戻せ。まぁでもぉ、今日のところはぁ、まだ教育をしていなかったから仕方ないかなぁ? 敬語も使えない無能とは思わなかったけどぉ。……躾だ。おら、イスになれ!」
自分のイスを蹴飛ばしたザンブは、片手で僕を投げ飛ばす。
そして、床に手をつき四つん這いの形になった僕の上に、ドサッと無遠慮に座った。
決闘で決めたことは絶対だ。逆らうことは許されない。
負けたら奴隷になるという条件は、ザンブが一方的に突きつけてきたものだが、僕は感情に任せて同意してしまった。
もし無かったことにしようものなら、最悪の場合は裁判にかけられる。
嘘か真かを魔道具で判別され、犯罪者になってしまう。
そうなれば、罰ゲームなんかじゃ済まされない。
「はい……すみません、ザンブ様」
「ぶひょほほほ! 分かればいいのよ分かればぁ!」
先生がやって来て、イスになるのは免れたのだが、その後は地獄のような時を過ごした。
常にザンブに気を配り、後ろをついて行かなければならない。
イスを動かし、ドアを開ける。
給食なんて当然のように奪われるし、トイレではザンブが用を足す間の見張りをさせられる。
みんなの前で歌わされたり、廊下でザンブのすごいところを大声で言わされたり……そのたびに、クスクスとクラスメートにも知らない上級生や下級生にも笑われた。
「あ~あ、もう終わりかぁ。楽しかったなぁ奴隷くん?」
「……はい、ザンブ様」
学校が終わり、ようやく解放してもらえそうだ。
「そうだぁ、いいこと思いついちゃったぁ! 俺っちってばぁ、奴隷にも優しいのよぉ。いや~、あれは気持ちよかったなぁ。お前のクソ雑魚スライムをプチって潰すのがさぁ! また決闘してぇ、奴隷にもし負けるようならぁ、この罰を無かったことにしてやるよぉ。なっ? 俺っちってば天才だろぉ?」
「……くっ」
「ん、何か言ったか?」
「いえ、そろそろ帰ります」
血が出るほど歯を食いしばり、怒りを耐えた。
こうなっているのも、自分が全て悪いのだ。奴隷になる罰ゲームを受け入れた自分が。
……でも、我慢できない。
何がザンブ様だ!
僕の家族を殺しておいて、何が楽しいだ!
下を向き、逃げ出すように学校を後にする。
僕は走った。がむしゃらに走った。
力一杯拳を握りしめて。
肩が外れそうなほど、大きく両手を振って。
着いたのは、パッセさんの工房。
ザンブが復帰したら、顔を出すように言われていた。
「パッセの親方、いますか?」
「おう坊ちゃん! ちょっと待っててー!」
扉を開けると、作業中のダグラスさんが出迎えてくれた。
朝ごはんを食べて学校へ、帰ったら宿題を終わらせ、夕飯を食べて風呂に入って寝る。この繰り返し。
違うのは、ラビちゃんがいないこと。いまだに音沙汰がないらしい。
そして、決闘を見たクラスのみんなが、僕を腫れ物のように扱い距離を取っていることかな。
ザンブとの戦いを見て、僕がどうやってスライムを育てたのか気になったらしく、色々と聞いてくるテイマーの子がいた。
僕は嬉しかったんだけど、その子は周りから今はそっとしといてあげないと……だなんて注意されていた。
ラビちゃんがいたときは、みんなともっと気軽に話せてたんだけどなぁ。
だいぶ心は落ち着いたし、悲しくないと言ったら嘘になるけれど、気を遣わなくていいのに。
……でも、そのいつも通りは今日まで。
「ぶっひゃっひゃっひゃ! や~っと帰って来れたぜぇ。さて、俺っちの奴隷はどこかなぁ?」
一
あいつの姿を見た瞬間、嫌な光景が脳内を埋め尽くす。
……ダメだ、耐えられない。
わざと視線を逸らし、窓の外を見て心を落ち着かせる。
しかし、そんな時間は許してもらえなかった。
「おい、俺っちが呼んだら奴隷はすぐに駆けつけろ!」
ザンブに首根っこを掴まれて持ち上げられ、強制的に対峙させられてしまう。
スラマルとコロゾーを失い、追加ステータスがなくなってしまったので、ザンブの力に抗うことができない。
そのまま無理矢理に引きずられ、ザンブの席まで連れていかれた。
「なんだよザンブ、痛いだろ」
「ザンブ様だろ奴隷! 俺っちが座る前にはイスを下げ、俺っちが立ったらイスを戻せ。まぁでもぉ、今日のところはぁ、まだ教育をしていなかったから仕方ないかなぁ? 敬語も使えない無能とは思わなかったけどぉ。……躾だ。おら、イスになれ!」
自分のイスを蹴飛ばしたザンブは、片手で僕を投げ飛ばす。
そして、床に手をつき四つん這いの形になった僕の上に、ドサッと無遠慮に座った。
決闘で決めたことは絶対だ。逆らうことは許されない。
負けたら奴隷になるという条件は、ザンブが一方的に突きつけてきたものだが、僕は感情に任せて同意してしまった。
もし無かったことにしようものなら、最悪の場合は裁判にかけられる。
嘘か真かを魔道具で判別され、犯罪者になってしまう。
そうなれば、罰ゲームなんかじゃ済まされない。
「はい……すみません、ザンブ様」
「ぶひょほほほ! 分かればいいのよ分かればぁ!」
先生がやって来て、イスになるのは免れたのだが、その後は地獄のような時を過ごした。
常にザンブに気を配り、後ろをついて行かなければならない。
イスを動かし、ドアを開ける。
給食なんて当然のように奪われるし、トイレではザンブが用を足す間の見張りをさせられる。
みんなの前で歌わされたり、廊下でザンブのすごいところを大声で言わされたり……そのたびに、クスクスとクラスメートにも知らない上級生や下級生にも笑われた。
「あ~あ、もう終わりかぁ。楽しかったなぁ奴隷くん?」
「……はい、ザンブ様」
学校が終わり、ようやく解放してもらえそうだ。
「そうだぁ、いいこと思いついちゃったぁ! 俺っちってばぁ、奴隷にも優しいのよぉ。いや~、あれは気持ちよかったなぁ。お前のクソ雑魚スライムをプチって潰すのがさぁ! また決闘してぇ、奴隷にもし負けるようならぁ、この罰を無かったことにしてやるよぉ。なっ? 俺っちってば天才だろぉ?」
「……くっ」
「ん、何か言ったか?」
「いえ、そろそろ帰ります」
血が出るほど歯を食いしばり、怒りを耐えた。
こうなっているのも、自分が全て悪いのだ。奴隷になる罰ゲームを受け入れた自分が。
……でも、我慢できない。
何がザンブ様だ!
僕の家族を殺しておいて、何が楽しいだ!
下を向き、逃げ出すように学校を後にする。
僕は走った。がむしゃらに走った。
力一杯拳を握りしめて。
肩が外れそうなほど、大きく両手を振って。
着いたのは、パッセさんの工房。
ザンブが復帰したら、顔を出すように言われていた。
「パッセの親方、いますか?」
「おう坊ちゃん! ちょっと待っててー!」
扉を開けると、作業中のダグラスさんが出迎えてくれた。
54
あなたにおすすめの小説
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します
かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。
追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。
恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。
それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。
やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。
鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。
※小説家になろうにも投稿しています。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。
無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。
やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる