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「ちょっと待てよ……。俺の服売れるんじゃね?」

 村の人、通りですれ違った人、大体みんな同じような服装だった。冒険者は金属や布製の防具を身につけていたが、依頼が終わるとやはり同じような服に着替えていた。富裕層の服装は分からないが、珍しい衣服は興味をそそるに違いない。

(作戦タイムだ。今日のプランを練り直そう。)

 寝具、衣服、桶、サボンを購入予定であったが、何店舗か古着屋と衣装屋に寄り、その後桶とサボン等の日用品を購入することにした。寝具は冒険者用の野営用の物があるかもしれないと考え、明日以降にする。

「うーん、どうやって売り込もうか。競い合わせで価格を吊り上げるのがいいかなー?」

 テレビドラマで見た営業の人は、別の店舗ではいくらだったので、それ以上で売りたい。という話術を用いて交渉していた。胡座をかいて腕を組み、脳漿を絞るように試行錯誤する。

「よし、行き当たりばったり作戦に決定しよう!時間が勿体ない!」

 今までの時間は何だったのか、パワー系の思考に辿り着いてしまったヨールではあるが、導入部は考えていた。

 一度に肌着とパンツと靴下の3つを売り込むのではなく、今日は肌着一点に絞る。

 店に入ったらまずは店主に同じ物を探している旨を伝える。店主の目の色が変わる、入手経緯や素材の詳細、作り方など聞かれる事になるだろう、そこから臨機応変に対応し、買い取り価格を導き出す作戦だ。肌着を小さく折り畳み、ポケットにしまって準備完了だ。

 カラーン カラーン

 鐘の音が響き渡る。昨日は気づかなかったが正午に一度お昼を知らせる時報が鳴るようだ。

「もうこんな時間!? 急がないと!!」

 早速部屋を出る。筋肉店主に遭遇したので、今日の夕飯を予約し、古着屋と衣装屋の場所を聞いた。大通り沿いに何店舗かあるみたいなので、とりあえずはそっち方面に向かう事にした。

「お腹すいたな……。」

 1時間半程歩くと大通りに出た。香ばしい匂いに誘われ、屋台で串焼きを2本購入した。銀貨1枚とお手頃だ。

(うん、うまい!)

 串焼きは、塩でシンプルに味付けされていたが、炭火で焼いた香ばしい匂いが鼻を抜けて、空腹なヨールには大満足な一品だった。営業トークを考えるのに夢中だったため無言で貪った。

 お腹を満たしたヨールは1軒目の古着屋に到着した。決戦の時だ!

(スゥー、ハァー……。さて、大事なのは落ち着くことだ。氷のような営業マンを演じるんだ。クールで、そして冷静な。よし、いくぜ!!)

 ポケットから肌着を手に取り、満を辞して店に乗り込む。
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