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のんきな兎は泣き喚く
「ウルル、お前最近変だぞ。どうしたんだよ、本当に。何かあったのか?」
そう言われるが、さっき勝手にしろと言っていたロイに、僕は答えることが出来ず。ふるふると首を振る僕に、
「……ウルル、何かあったんなら言ってくれ。分かんねぇだろ?」
困ったようにそう言い、顔を覗き込まれる。僕は、そう言われても言葉にすることが出来なくて、優しいロイを困らせていることに情けなくなってくる。
「あー……。泣くな泣くな、もういい。はぁ、本当にどうしたんだよ。」
家に帰り、溜め息をついたロイは、僕の頬を挟んで額を合わせてきた。僕は兎耳を垂らして、しょぼんと下を向く。
「分かんない……。胸がギュってなって、スース―して、悲しくなったの……。」
「あ?どういうことだ。何が悲しいんだよ。」
「うぅ、分かんないぃ~……!」
「あー分かった、もう聞かねぇよ。」
仕方ねぇなぁ、と苦笑してその腕の中に閉じ込めてくれる。
「あ、そういや明日のことなんだけどよ。」
思い出したように、ロイがそう言った時、僕はあの子とロイが話していたことを思い出して大袈裟にビクついた。そんな僕を見て片眉を上げたロイ。
「……何だ?おい、何か隠してんだろ。おら、はけ。明日に何があんだ。」
僕の反応でばれてしまい、無理矢理顔を合わせられる。顰めた顔をしているが、目の奥では僕を心配していることが分かり、うぅ~と唸る。
「おい、さすがに分かったからには逃がさねぇぞ。明日、何があるんだよ。何が不安なんだ。」
問い詰められ、僕は口を開く。
「うぅ~……。あ、あの子……。」
「あ?あの子って誰だ。」
「ね、猫……。」
「は?……もしかして、猫獣人の女の子か?それがどうした。」
「う、うわーん!」
「はぁ!?ちょ、何だってんだよ……!」
いきなり声を上げて泣き出した僕に、ロイは慌てたように涙を拭ってくれる。ぐすぐすと泣く僕に、
「何かされたのか?」
ゆっくりそう聞いてくる。
「うっ、ぐすっ、うぅ~……。」
僕はぶんぶんと首を振る。
「つ、つが、番に、うぅ~……。」
「あ?番?番になれって言われたのか?」
「違う~!」
的外れなことばかり言うロイに、僕は泣きながら怒ってぽこぽこロイの胸を叩く。
「何だよ、番がどうした。」
「か、勝手に、しろって、言った……!」
「あ?そんなこと……まさかさっきのシュタンに言ったやつか?」
いや、言ったけどよ…と珍しく言葉を詰まらせるロイ。僕は、感情が高ぶってきて、
「僕のこと、勝手にしろって……!ロイのばか!ロイが悪いんだぁ……!」
うわーんと泣きながらばたばた暴れる。
「おいこら、暴れんな。……はぁ、それかよ。ん?いや待て、明日は何なんだよ。」
「あの子と番になるんでしょ……!もてあそばれた!ロイのばかぁ!」
「人聞き悪すぎんだろーが!ならねーよ!この馬鹿うさぎ!何を勝手に話進めてんだ!」
ガァっと怒鳴られて、僕はビビビと震えて固まる。そんな僕に、ロイはため息をついて項垂れた。
「だいたい話が見えてきた。お前、あの時中途半端に話を聞いてたんだろ。明日は護衛任務だよ、馬鹿。あの猫獣人の子は……。」
それからロイに説明されたのは。あの猫獣人の子は僕でも知っている商会の娘さんで。父親が商談のために隣町に行くのだが、その間護衛をして欲しいというものだった。なんでも、父親が無頓着なところがあるから、心配になったらしく。何とか騎士団と繋がりを持って依頼できないかと思ったとのこと。
「正式な依頼方法ってのがあるんだけどな、その商会には騎士団も世話になってるから、上に話を通して護衛任務を行うことになった。」
僕は、呆然としたままロイの話を聞いていた。
「あの子と、番になるんじゃないの?」
「あぁ?なるわけねぇだろーが。ったく、どうしたらそんな勘違い出来るんだよ。」
尚も聞く僕に、呆れたようにそう言われる。
「じゃあ、僕がなる。」
「は?」
口からぽろっと出た言葉に、ロイが目を見開いた。そんなロイを見ながら、僕は感情の赴くままに伝える。
「僕、ロイ好きなの。番になる。」
「待て待て、ちょっと落ち着け。」
「落ち着いてるよ。ロイが好きなの、大好きなの。」
「……あーお前本当、何なんだよ。」
言い張る僕に、少し笑ったロイは、僕の後頭部に手を差し込むと、
「んぅ……。」
そのまま唇を合わせてきた。何度も離しては合わせられる唇に、僕はぽわーっとしてくる。
「つまり、嫉妬してたってことだな?可愛すぎんだろ、お前。この馬鹿うさぎ、俺は初めからお前しか可愛がってねぇだろーが。」
意地悪気にそう言って、舌なめずりしたロイが色っぽくて僕は顔が真っ赤になった。顔中に唇を降らしてくるロイに、僕は赤くなりながらギュッと目を瞑る。
「あぁ、じゃあ風呂も一緒に入ってやるよ。番になるんだろ?」
そう言われ、獰猛なロイの目に射抜かれて僕は身の危険を感じた。
「い、いい。まだいい、一人で入る……。」
身体が熱くなってきてしまい、僕は慌ててそう言う。
「何でだよ、あんだけ入りたいって言ってたじゃねーか。…まぁ、入るだけじゃ終わらねぇけどな。」
兎耳を甘噛みされて、ぴゃっと飛び上がる。
「ろ、ロイ、何だか、いやらしい……!」
「あ?散々我慢してたんだぞこっちは。お前が受け入れてくれんなら、もうその必要もねぇだろ。」
「うぅ、僕どうにかなっちゃう、怖い……。ロイ好き……。」
「言ってること滅茶苦茶だぞ。」
呆れたように言ったロイは、笑ってまた唇を合わせてきた。僕はぽわーっとなりながらも、ロイに身体を預ける。どんどん熱くなる身体に、呼吸も乱れていく。
「……あ?お前、何かすげぇ熱い……っておい、お前、まさか。」
「うん?なぁに、ロイ。好き、大好き。もっと……。」
ロイの首に腕を回して、もっととおねだりするが、ロイは額に手を当てて仰いでしまった。
「そういうことかよ……。ウルル、あっち行くぞ。」
そう言われると、ロイは僕を抱き上げて歩き、引き出しをゴソゴソすると何か小さくて丸い物を僕の口の中に放り込んだ。飲め、と言われて、そのまま飲み込む。そして、そのままベッドに寝かされる僕。
「どして?ロイ……。」
「一緒にいるから、ちょっと寝ろ。」
ロイも寝転ぶと、そのまま大きい身体に抱き込まれる。僕は安心して、ロイの言う通り、少し目を閉じたが、すぐに眠気に襲われて意識を手放してしまったのだった。
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