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のんきな兎は愛される
しおりを挟む朝日が昇ろうとしていた頃に、僕はスッと目が覚めた。何だかすごくスッキリしている。清々しくて、何だか身体も軽い。ムクッと起き上がって兎耳をピンと立たせる。
「お腹空いた……。」
そういえば、昨日は夕ご飯食べてないことを思い出してシュンとする。いそいそとベッドから出ようとすると、
「わぁっ!」
突然腕を引っ張られてベッドに逆戻り。ぽふっと仰向けにされると、その上から覆い被さるようにしてロイに見下ろされる。
「何ともねぇか?ったく、道理で様子がおかしいはずだ。」
ぱちぱちと瞬きする僕を見て溜め息をつかれる。寝ぐせがついているロイは、寝起きだからか少し眠そうで顔を顰めている。僕は昨日のことを思い出して、この人が僕の番なんだ、と嬉しくなる。もともとロイは目鼻立ちがはっきりしていて格好良いが、前髪はいつも上げられているが今は下ろされているため色気を感じて増して格好良く見える。
「ロイ、格好良い。好き。」
「あー、お前記憶は残るタイプか。」
「……?」
首を傾げる僕に、
「まさか分かってねぇのか?」
少し驚いたように目を見開くロイ。何でもいいからもっとひっつきたい僕は両腕をロイの首に伸ばす。すると、そのまま身体を近付けてくれたロイに、ギュッと首に腕を回して抱き着く。
「ロイ好き、大好き。ギュってして。」
「……この状況分かってんのかお前。」
ぐりぐりと頭を擦り付けていると、ロイは僕の首元に顔を埋めてくる。そして、
「んひゃっ!」
熱い舌で舐められ、ゾクゾクと背中が震える。いつの間にか僕の腰に回されたロイの腕で、身体が密着する。硬いものが下半身に当てられ、僕はカッと熱くなった。
「んぅ……。」
肩を甘噛みされ、声が漏れる。そんな僕にフッと笑ったロイと目が合って、顔が近付く。
「ウルル、口開けろ。」
そう言われて僕は反射的に口を開けた。その瞬間、
「はっ……ぁ……っ……!」
合わせられた唇からロイの舌が入ってきて、僕のそれが絡め取られる。熱い舌同士がくっついて溶け合うような感覚に気持ち良くなってくる。だが、息遣いすらも食べられるんじゃないかと思うほど、激しくなっていく口付けに、僕はもういっぱいいっぱいで、必死にロイにしがみ付く。
「ぁ……っ……は……ひゃっ……!」
その時、僕の胸辺りにロイの手が沿わされて、すでにピンと立っている飾りを指で摘ままれ、突然の刺激に声が上がる。そのまま、離されることのない唇に必死についていきながらも、指でクニクニといじられ弾かれ、ビクつく身体の熱がどんどん上がっていく。
「あぁっ……!」
ようやく離された唇だったが、最早力が入らない僕。そんな時に、いじられていたそこを口に含まれて舌で転がされ、僕はされるがまま刺激を受け続ける。すでに一度達してしまったが、続けられる愛撫にまた芯を持ち始める。服は剥ぎ取られ、腰に回っていた腕は下がって際どいところを撫でられ、むずむずと物足りない感覚になる。
「ろ、ロイ、気持ちい、ロイ、好き……。」
「はっ、可愛すぎんだろお前……。」
顔を上げたロイにキスされ、もっとと強請る僕。髪をかき上げたロイが格好良くて、思わず見惚れていると、
「んっ……ぁ……っ!?」
後孔に指を沿わされた後、すぐに侵入してきて、異物感に圧迫感を感じ少し苦しくなる。だが、
「ふっ、気持ち良いな、ウルル。」
すぐに緩んだそこに、入って来たロイの指が動いて、敏感な場所を探り当てられる。
「あっ、あっ、あぁ……っ!」
「さすが兎族。可愛いな、お前。」
ビクビクと反応する僕に、舌なめずりをしたロイは、指を抜くとそこに自身のすでに硬くなったものを押し当ててきた。
「はっ、ロイ、ロイ、好き……。」
そう言う僕に、ギラつかせた目で見下ろすロイに噛み付くようなキスをされると、硬く熱いものを押し入れられて、圧迫感に息が止まる。舌で唇をこじ開けられ、絡めながら必死で呼吸すると、
――ズンッ!
と敏感な部分を押し上げられて、突然の刺激に呆気なく達してしまった。はぁ、はぁ、と息を整えている間にも、まだ僕の中に入っているロイのものは硬くて、顔が熱くなる。身体を撫でられる度にビクつく僕。兎耳を舐められ、胸に顔を埋められ、またしても身体の熱を上げられていった時に、ロイのもので揺さぶられる。気持ち良さに、何度もロイの名前を呼び、声を上げる僕をギュッと抱き締めてくれて、混ざり合う熱に僕は目を閉じたのだった。
――――
起きると、まだ昼前だった。そして、お風呂に連れて行ってくれたロイ。全身を洗ってくれたが、ロイの手が僕の身体を這い回る感覚に変な気分になってしまった僕。もじもじと足を擦り合わせ、
「ロイ、あのね、また気持ち良くして欲しい……。」
とお願いしたら、そこでもロイに愛してもらえた僕。くたっとなった僕を抱え上げて出ると、そのままベッドへ運ばれる。
「もう何ともねぇんだよな?……風呂であんなこと言うんじゃねぇ。我慢出来ねぇだろーが。」
そう言われ、寝室を出て行ったロイ。戻ってきたその手には、お皿を持っており、朝食だと気付く。
「ねぇ、ロイ。さっきから何ともないか聞いてくるのはどうして?」
ロイに後ろから抱きかかえられてご飯を食べさせてもらいながら、首を傾げて尋ねた。
「どうしてって……。お前、発情期だっただろ。」
……発情期?
「……やっぱり分かってなかったんだな。」
呆れたようにそう言われてしまった。そして、僕は思い返してみる。
確かに、何だか落ち着かないような、色んなことを考えしまうような、精神的に落ち着かないことが多かった。それはロイのことで悩んでいたからだと思っていたが、そうか、発情期だからだったのか。
基本的に、発情期の時期に生じるものは人それぞれだ。四六時中そういうことをしたい人もいれば、身体が少し熱くなるだけの人もいるし、不安感が大きくなったり、何でも心配しちゃう人もいる。決まって欲を発散するための熱は溜まるものなのだが、普段から発散している人は然程影響がないらしいとも聞いたことがある。
僕はどうやら、不安感が強くなっちゃうタイプだったらしい。だって今思うと、どうしてあんなに言うことを戸惑っていたのか分からない。早く番にしてって言えば良かったんだよ。だが、それはそうとして、
「僕、発情期初めてきた。」
「……だろうな。発情抑制剤は持ってんのか?」
「育ててる薬草の中にあるよ!あ、でもまだ育ってない……。」
「意味ねぇだろうそれ。昨日は俺のを飲ませたが、お前には効きすぎたみたいだな。」
「でもちゃんと収まったよ?」
「普通は熱が収まるだけなんだよ。お前、飲んですぐに強い眠気に襲われただろ。」
「駄目なの?」
「飲む度に寝てたらどうやって生活すんだよ。」
なるほど、と僕は感心する。兎獣人用の発情抑制剤を買って来なければ、と考えていると、ロイが着替えているのが目に入る。
「どこ行くの?僕も行く。」
「あ?護衛だって言ったろ。お前は寝てろ。いいか、今日は家から出るなよ。収まっているとはいえ、初めてならいつ熱が上がるか分からねぇんだからな。」
そう言うと、ロイは行ってしまった。
「寂しい……。」
ぐすぐすとベッドで泣いている僕。体は怠くて、あまり動きたくない。そういえば、僕今日仕事……!
今日も騎士寮の掃除をするはずだったことを思い出し、慌てて何とか身体を動かし着替える。そして、のろのろと準備すると家を出たのだった。
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