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不安と心配と、強い味方と
「さっきの水竜には、鬼族の友達がいたんだって。」
少し歩いて川沿いの大きな岩に腰掛けた。クラウドに促されて、俺はさっき聞いたこと、返ってきた言葉を思い出しながら話し始める。
「友達がいた?」
「うん。」
―――その昔、鬼族の友人がいた。
―――友人の命は尽きた。
―――我らは鬼族と共に生きてきた。だが、人は彼らを分かろうとしなかった。
―――それ故、人は彼らを恐れたのだ。
水竜が言っていたこと。鬼族は、魔物と共存していたが、人はそんな鬼族を理解できず恐怖を抱いたのかもしれない。きっと、それは迫害や差別、孤立へと繋がっていく。鬼族は、人の中では生きることが出来なかった……?俺が考え込んでいると、
「あだっ!」
いきなり頭を叩かれて、顔を上げる。すると、クラウドが呆れたような顔で俺を見ていた。
「話が飛躍し過ぎだ。分かったのは、水竜のような魔物と鬼族は共存していたってことと、人とは相容れなかったかもしれねえってことだけだ。」
落ち着いた口調でそう言われて、俺は口を尖らせる。
「でも、人は鬼族を恐れてたって。」
「昔は、魔物は全くの未知の存在だったんだ。人も魔力を行使して魔法を放つことが出来ないやつも大勢いたと聞く。その中で、魔物と共に暮らしている存在は異質ではあっただろうよ。」
「怖がられて、鬼族は追いやられた……。」
「追いやられたかは分からねぇだろ。鬼族が人を見限ったって可能性もある。憶測で考えすぎるな。どうであれ、今、お前が怖がられる謂れはねぇよ。」
そう言われてキョトンとするが、「あ~……。」とちょっと恥ずかしくなった。鬼族ってことを知っているのは限られた人たちだけだが、このことを話すと怖がられるかもしれないと無意識的に不安になっていたのかもしれないと気付いた。
「でも、さっきの水竜も、ランクは上の方だろ?そんな魔物と共存しているって、どうなんだ?俺、そもそも魔物のことに詳しくないし分からないんだよ。」
「昔は、だろ。それでお前が変わるわけでもねぇのに、何を心配してんだ。思ったまま口に出したり人を誑かすのは改善しろと思うけどな。」
クラウドは、ため息をついてそう言った。
「これでも考えてんだよ!っていうか、何だよ誑かすって。仲良くなるのはいいことじゃねーか!」
腑に落ちないことを言われて反論する。
「考えねぇから、結婚だ何だと言い出すんだろーが。仲良くなるなって言ってんじゃねぇよ、思わせぶりをすんなって言ってんだ。」
はぁ?結婚って何だよ、さっきのことはそういう話じゃねぇし、クラウドが駆け引きだとかどうのこうのって言い始めたんじゃねーか。だいたい駆け引きって何だよ、もう分かんねぇよ、言いたいこと言って聞きたいこと聞けばいいじゃねーか。頭良いやつはこれだから……って遠回しに頭悪いって言われている?……お?誰が馬鹿だ!
「……何を考えているのか知らねぇが、碌でもないことだろ。おい、リラ。」
「俺は学がなくても生きていけるもん。生きてこれたし。これからも生きるし。」
「はぁ、誰もそんなこと言ってねぇだろーが。お前はどこに行っても上手く生きていけるとは思うがな、変なやつらを引掛けるなって言ってんだよ。」
「そんなことしてねぇもん。」
言い合うが両者お互い譲らないため全然収まらない。だが、そうこうしている内に腹が減ってきた。そういえばもう昼時じゃねーか。仕方ない、今は休戦して腹を満たすか。
「よし、じゃあ昼飯食おうぜ。」
「……何が、よし、だ。お前の思考回路はどうなってやがる。」
溜め息をついたクラウドが呆れたようにそう返してきた。でも腹減ったろ?と聞くと、包みを開ける俺の横に無言で座って来たため少し笑った。
「今日はシェフが作ってくれたから美味そうだな~!」
前に持って来ていたものは、自分で簡単にできるものをパッと作って持って行っていたのだが、それを使用人に話すと、今回は準備して持たせてくれたのだ。わくわくしながら開けると、サンドイッチだが中身は柔らかい肉とたっぷりのソース、葉野菜が挟まれているものや、チーズにトマト、ハムなどが挟まれたものがあり、見るからに美味しそうだ。
「すげぇ、美味そう!あっ、焼き菓子も入れてくれてる!」
「あいつら、ピクニックじゃねぇんだぞ……。」
そう言いつつも、クラウドは早々に一つめのサンドイッチを食べ終えていた。俺もかぶりついて食べるが、自分が作ったやつとは比べ物にならないほど美味しい。
「これ、このソース美味い!なんか濃い!」
「お前、語彙力ねぇな。」
意地悪く笑ってそう言ってくるクラウドだったが、美味いサンドイッチに免じて許してやる大人な俺。もぐもぐ食べているが、クラウドは一つ食べただけで片肘をついて俺を見ており、食べる様子がない。
「ふわへぇのは?」
「食ってから話せ。……俺はもういい。残りは食え。」
そう言われて、口の中のものを飲み込むと、首を傾げる。
「腹減ってねぇのか?腹減ってなくてもこんなに旨かったら食えるだろ!」
「旨いなら食え。とりあえず、今日の目的は達した。後は戻るだけだ。」
あ~、そうか。水竜とは会えたしな。戻ったら報告するのかな。するよな、絶対。何言われるんだろう。俺……。
「あいだっ!」
「余計なこと考えずにさっさと食え。俺がいるのに何が怖いんだお前は。お前はいつもみたいに俺の後ろで震えてりゃいーんだよ。」
口角を上げて見降ろしながらそう言われ、口を尖らせる。少しホッとしたことは秘密だが、クラウドは俺の味方であってくれるらしいし、守ってくれるらしいから、全力で凭れかかっていこうと思う俺です。
「でもそうだな、クラウドは俺がいないと駄目だもんな!よし、俺の盾となり矛となれ!」
「調子乗んな。」
頬をビヨーンと伸ばされてそう言われるが、さっきより心が軽くなったため、やめろ~と抵抗しながらも笑ってしまった。食べ終えると、王都へと戻る俺達。途中で巨大な蜘蛛に遭遇して腰を抜かした俺。違うんだ、巨大な蜘蛛は別にいいんだけど、小さい蜘蛛が大量に上から降ってきたんだよ。ビビるだろ!?まぁクラウドがすぐに焼き払って何もなかったんだけど、でもビビるじゃん!?立てなくなった俺をクラウドがおぶってくれたが、王都に着いて知り合いに会う度に何事だと聞かれて説明するんだけど、めっちゃ生温かい目で見られる!恥ずかしい!とクラウドに言うと、
「ビビッて腰抜かしたのは事実だろーが。受け入れて恥ずかしがっとけ。」
とニヤニヤしながら言われて、結局ギャーギャー言い合いながら、報告に王宮へと向かったのだった。
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