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謎とそれを示す鍵となるもの
しおりを挟む「ほう、鬼族と魔物が共存していた可能性があると?」
「あぁ。それ以上詳しくは分からなかったが、親しい鬼族がいたらしい。同じ鬼族だからリラに興味を持ったんだろ」
「なるほどなるほど、これは面白くなってきたねぇ」
戻ってきた俺達を迎え入れてくれたケール様に、あったことを話すと可笑しそうにそう言った。俺は温かいお茶と菓子を出されたが、何を言われるだろうと手を付けられずにいた。そんな俺に、ケール様は目を爛々と輝かせると向かい合う俺達の間にある机に手をつくとズイッと顔を近付けてきた。
「リラ君、水竜と会って何か感じましたか? 話すとはどのように? 言葉がどうやって理解できるのです?」
矢継ぎ早に聞かれて、ポカンとするが、ハッとして答える。
「えっと、俺が何か感じることはなくて、言葉は頭の中に流れてくる?みたいな……」
「言語が異なりますからね、それは鬼族だけが分かるのでしょうか。それとも、意図して鬼族であるリラ君にだけ分かるようにできるのか。クラウドは何も聞こえなかったんですよね。ならば……」
止まらないケール様に、俺はついていくことができなくなって静かに見守る。クラウドは横で呆れたように腕を組んでいる。俺が見上げると横目で見下ろしてきて、クイッと顎で前をさされる。何だ?と首を傾げると、
「腹減ってんなら食え。おかわりは我慢しろ」
「今の状況で言うことかそれ? え、俺何も言ってなくね? なんで腹減ってると思った?」
クラウドは俺が腹が減ってて目の前の菓子を食べたいと思っていると考えていたらしい。水竜の話をされている間、俺ちょっと不安もあったんだけど、その繊細な心をこいつは何だと思ってんだ?ずっとお菓子食べたいと思ってると思われていた?
驚きながらクラウドを凝視していると、鬱陶しそうに見られる。そんな反応されるのは腑に落ちないんですが!?
「何だよ、いいから食っとけ。俺のもやるから」
「いらねーわ! ってかお菓子食いたいんじゃねぇ! 俺がどんな気持ちでいると思ってんだ!」
思わず小声ではあるがクラウドに食って掛かると、片手で両頬を掴まれて顔を潰される。離そうとしても力で敵うわけないし、ボカボカ殴るが効いている気がしない。
「どちらにしろ、水竜はリラ君がいたから近付いてきたのだろうね。傍にいたのがクラウドだけだったのも関係しているだろう。複数人でいたら恐らく出てこなかっただろうね。」
そんな俺達を気にした様子もなく話し続けるケール様。そんな中で、俺達のいる部屋の扉からノック音が聞こえた。俺は慌ててクラウドから離れようとするが……。全然離さねぇなこいつ!奮闘している間に、ケール様がさっさと招き入れてしまった。
「よぉ、戻って来たって聞いて……。何やってんだお前ら。相変わらずイチャついてんな」
騎士団長が入ってきて、面白そうにそう言ってくる。いや、イチャついているんじゃなくてイジメられているんですけど!と言いたいが、タコ口にされているため言えず。
「まぁいい。ほら、王宮図書館の禁書閲覧許可証だ」
そう言って、騎士団長が一枚の紙をケール様に渡した。
「あぁ、ありがとうございます」
「禁書? 今回のことについてか?」
受け取ったケール様に、クラウドが聞く。
「えぇ。まぁ、念の為ですよ。あそこに鬼族についてのことが書かれた書物があるとは思えません。魔物と関わりがあった鬼族が王都にいたとは考えにくいですし。どちらかと言うと、各諸国の御伽話でも調べた方がいいかもしれません」
「御伽話?」
「そうです。魔物と一緒に悪をやっつけた!とかね。そういった話があれば、その元となった出来事を調べると何か分かるかもしれないということです」
なるほど……!まさかの視点に驚く。こういうのは難しい専門書とかと読まないといけないんだと思っていた俺。確かに、魔物と話せるだとか、共存していただとか、現実味がない。だが、作り話としては十分有り得る。すごい、そういう考えもあるのか……。
俺が感心していると、ようやく手を離したクラウドが、
「魔物を扱う御伽話がどれだけあると思ってんだ。骨が折れそうだな」
とため息をついて言った。
「そうなんですよねぇ。また他の国も、となると途方もない数になりますね。だいたい、御伽話には魔物が出てきますから。まぁ気長にいきましょう」
ケール様はそう言うと、さっそく王宮図書館に行くようで追い出されてしまった。同じく追い出された騎士団長は、早々にどこかに行ってしまった。俺とクラウドはそのまま王宮を出た。
「あっ、帽子……」
「今更だろ。もう帽子はいい」
「えっ! いや、駄目だろ!」
「もうお前がリュグナー家に出入りしてても何とも思わねぇよ」
「え? なんで?」
「……何でってお前、さんざん俺と一緒にいんだろ。それに被るの忘れて帰ってくる時もあるって言ってたぞ」
「うっ、確かに忘れることはあったけど、誰にも見られてないし……。ってか何で知ってるんだ!?」
「使用人たちが言ってた」
「俺の情報ダダ漏れ……!」
うわーっと頭を抱えると、呆れたように見られる。うん、まぁいいか。クラウドが帽子を被らなくていいって言ったって言おう、もし公爵様に怒られたら。そう考えていると、クラウドがさっさと歩いて行ってしまう。
「ちょ、どこ行くんだよ。帰るのか?」
「いや、調べ物だ」
「俺はついて行ってもいいやつ?」
「好きにしろ」
許可をもらったので、遠慮なくついていく。特に用事もないし、クラウドがどこに行くのかも気になるし。そうしてついていくと、年季の入った建物が見えてくる。クラウドはそこへ近付いていき、扉を開けた。チリンチリンと来客を知らせるベルが鳴り、俺も慌てて中へ。
「うわっ! すげぇ! 本がいっぱいある!」
「うるせぇ、騒ぐな。好きに見て回ってろ。俺は店主と話を……。あぁ、そうか。あの辺りの本なら読めるだろ」
「……お前が指してるの、俺には絵本に見えるんだけど?」
「あ? お前文字読めるのか?」
「読めるわ馬鹿! 田舎もんだからってすぐ馬鹿にしやがって……!」
「ふっ、冗談だっての。御伽話は絵本の方が分かりやすい。この国のものはだいたいここにあるはずだから探してみろ」
クラウドは憤慨する俺を笑うと、頭にポンと手を乗せてそう続け、奥へと入っていった。
「……初めからそう言えっての」
俺は口を尖らせると、クラウドの示した場所あたりに向かう。まだ俺が気にしていると分かっているからそう言ったんだろう。その小さい気遣いにこそばゆい気持ちになる。まぁ、俺が調べられるようなことなんてたかが知れているし、解決できるとは思ってないけど、なんか落ち着かないし。だからクラウドにもついてきたようなもんだけど、バレてそうだな。っていうか、クラウドは何をしに来たんだろう。店主と話って、知り合いなのかな。
「あ、魔物だ。あれ、こっちもか。あ、これも……。いや、多いな魔物が出てくる本!」
魔物が描かれている絵本を手に取ると、その横の絵本にもそれらしき描写が。そしてその横も、その上も……。絵本、魔物ばっかじゃねーか!と、骨が折れると言っていた意味をここでやっと理解した俺なのだった。
――――クラウドside
「よぉ、珍しいな。連れの子はどうしたんだ、またえらく可愛らしい子じゃねーか。お前はそっちの趣味だったのか」
ニヤニヤとふざけた顔でそう言ってくる古書店の店主。裏の書籍を扱う店でもある。俺も何度か来たことはあり、この店主とは知り合いだが、いつ見ても謎めいた風貌だなと呆れる。目元まで隠れる髪はゆらゆらと揺れて、顔が見えないし年齢も不詳。言動や口調からも若いのか老いているのか分からない。
「うるせぇよ。……探して欲しいものがある」
リラが水竜との話を気にしている様子だったから、このまま帰るよりはいいだろうと連れてきた。何をそんなに気にしているのか、リラはリラで鬼族だからって変わらない。人懐っこくて人の懐に入るのが上手くて、思わせぶりなことを言っては勘違いする野郎共を増やしていく……。いや、変わるならその辺りだけ変えてくれといいたいぐらいだ。
チラッとリラの様子を伺うと、「こっちも!? ありすぎだろ!」と言っているのが聞こえて吹き出しそうになる。大方、魔物が出てくる絵本が大量にあるのを見つけて慌ててるんだろ。
「変わるもんですねぇ。はいはい、承りましょう。楽しい子を連れて来てくれたお礼に」
ニヤニヤと笑いながらそう言う店主を無視して、俺は口を開いた。
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