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一章 ヒカリ
第一話 メッセージ
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なにか、くる。暗闇の中、光だけが迫ってくる。ただただ一直線に……って、え、ここっ!? ぶつかる!!
強烈な光の衝撃、視界の全てが奪われた。
「はっ!」
瞬間、目の前に清々しく晴れ渡った青空が広がった。
今のは……夢? まだ少し頭がぼうっとしてる。そっか私、寝ちゃってたのか。しかも芝生の上で。いや、なんでよ?
「やばっ! もう三限目始まってる!」
口では「やばい」と言いつつも、頭の隅ではさっき見た夢が引っ掛かっていた。凄くインパクトが強かったはずなのに、なぜか内容は思い出せない。
「まあ夢なんてそんなもんか」
すぐに諦めモードになった。こういう切り替えが早いのは私のいいところだ、たぶん。
「それにしても、いい天気だなー」
空を仰ぎながら寝そべって地面を感じてみる。手入れの行き届いた芝生って、なんでこんなに心地いいんだろう。
「……サボろ」
空は快晴、雲ひとつない。その変わりに《リング》がハッキリと見えている。リングがサボれと言っている。嘘だけど。ってゆーか、あのリングって一体なんなの?
ここ2~3年で急速に現れた謎のリング。その実態は、地球をぐるっと一周するように囲んだ無数の隕石群だといわれている。
今日みたいによく晴れた日は、空の端から端まで一直線に白い帯が延び、まるで飛行機雲のようだ。ふわりとした輪からの着想で、《シフォンの帯》と命名されたらしい。一般的には《シフォン》とか《リング》って呼ばれてる。
そういやネットで、どこかの小惑星が砕けて流れついた隕石群だって言ってたな。テレビでも“新元素の発見!?”とか特集組まれて話題になってた。あれってどこの局だったかな? ちょっと話題になると他局もすぐ真似するから覚えてないや。
まあ、最後の方なんて“隕石が地表に降り注ぐ!?”とか言って、もはや科学そっちのけで予言めいたオカルト番組になってたもんなぁ。
ってゆーかさ、あれだけ取り沙汰されて、結局のところ何にも解明されてないって、どうよ。
「ヨーコー」
おっと、誰か私のこと呼んでる。あの声はマサミだな。それにしても面白いなー、寝そべってるせいで頭の上から声が降ってくる。なんか変な感じ。思わずニンマリ。
足音がすぐ傍まで来て止まると、マサミの顔が私を覗き込んできた。ぷぷっ、顔、逆さまだよ。
「ねえ、こっちに何か落ちてこなかった?」
そう言いながら辺りをキョロキョロ見回してる。
「んにゃ、なーんにも」
「っていうかアンタ、こんなとこで何やってんのよ。講義出なかったでしょ?」
「え? あー、リング見てたー」
「リングって、ああ《シフォンの帯》のこと? え、ここでずっと?」
マサミはチラッとだけ空を見上げると、私の横に座った。
「そ、リングがサボれってさ」
「アホ。でも珍しいね、ヨーコが地概サボるなんて」
「え? ……あああっ!!」
“地球科学概論”、私が唯一楽しみにしてる講義だ。反射的に体が起きる。
「古屋先生ゴメンなさいっ!」
誰にともなく頭を下げた。
「あはは、アンタ古ポン好きだもんねぇ。いーっつも講義の後、質問してたし」
「いや、だって講義の内容じゃ全然足りないし! うー、なのに、なんで忘れてたかなー」
あまりの失態に脱力し、再び芝生に寝そべった。
「アンタまだ寝るの?」
マサミが呆れたように言う。実際のところ気が抜けたってのもあるけど、空を仰ぐこの体勢がちょっとクセにもなっていた。なんでだろ?
「いや、何かさー、気になるんだよね」
腕を真っ直ぐ空に向け、人差し指でリングをなぞる。
「気になるって、リングが?」
「そ」
「そういえば今日、古ポンが講義の中で、あのリングは“外界からのメッセージ”って説を話してたよ」
「何それ? 宇宙人ってこと?」
あらら、“地球科学概論”って講義なのに宇宙に飛び出しちゃった。
「そーそー、けど、突飛過ぎて超盛り上がったわ。つーか、宇宙人なんているわきゃないし」
「あはは、だよねぇ。もー、そんなこと言うから、何かメッセージ見えてきちゃったじゃない」
メッセージ……
「いやっ!!!」
「どうしたのヨーコ!?」
「ご、ゴメン……なんでもない」
思わず謝っちゃったけど……これさ、「なんでもない」わけないよね?
恐る恐るもう一度空に視線を送り直す。
リングの白い帯に沿ってるアレ……文字っぽくない? いや、ちょっと本当かんべんしてよ。目を凝らすと、リングの上にしっかり言葉が浮かび上がって見えた。
―――――――――――――――
我々が到着するまで14年2ヶ月
それまでにその星を制圧せよ
―――――――――――――――
「ねぇ、マサミ」
「何?」
「あのリング、何か文字が見えない?」
見落とさないよう指で文字の位置を差し示す。
「どれどれ……って、何も見えないわよ。あっ、なに、さっきの“外界からのメッセージ説”言ってんの?」
ダメだ……マサミには見えてないんだ。
「そ、そうそう、きてるよーソレ、マジでやばいよ」
っていうかコレ、洒落になってなくない? 本当に宇宙人とか来ちゃってるんじゃないの?
アレかな、コレ見たらUFOにさらわれて頭ん中いじられるとか。えー、真っ昼間のキャンパスだし、めっちゃ芝生に寝そべってたし、さすがに人目あるし、無理くない?
でも、実際、文字が見えちゃってる事実がヤバい。なに、暗示? 病気? あっ、もしかして、寝てる間に誰かにARメガネかけられた?
それだ! と、目の周りを触ってみたが、なーんもない。
「あはは、ウケる、何やってんの。だから講義出ろっての」
講義? そうだよ!
「ほんっと、なーんで今日に限って講義休んじゃったんだろ。ね、ねえ、古屋先生のメッセージ説って、どんな内容だったの?」
動揺を悟られぬよう、いつもと変わらぬ口調を心掛ける。内心は不安と焦りが9割を占め、残り1割でなんとか頑張ってる私。
「えっとね、確か14年後に何か起きるって……」
「ええっ!! な、何が起きるって!?」
「ど、どうしたのヨーコ!? 何もないよ、誰もツッコまなかったし」
あまりに私が驚いたせいか、マサミが“何事”って顔でこっちを見返した。でも今はそれどころじゃない。だって14年なんて中途半端な数字、とても偶然とは思えない。
「そっかー、気になるなーソレ、あはは」
マサミからこれ以上詳しいことは聞けそうにない。でも、いいこと聞いた。講義で話したってことは、古屋先生もあのメッセージを知ってるってことだよね、それも私より先に。もしそうなら……あのメッセージは唐突に現れたんじゃない。私にも見えるようになっただけだ!
すぐにでも先生に確認したい。講義が終わった今なら教授室に戻ってるはずだ。
「ごめんマサミ、私、古屋先生のところ行ってみる」
「え? わざわざその話を聞きに?」
立ち上がった私をマサミは間の抜けた顔で見上げていた。自分でもおかしなことを言ってる自覚はありつつも、妙なテンションのせいでじっとしていられない。
「つ、ついでよ、ついで。講義サボっちゃったことも謝っておきたいし」
駆け出しながら、どっちがついで? と、頭の中にハテナマークが浮かんでいた。
強烈な光の衝撃、視界の全てが奪われた。
「はっ!」
瞬間、目の前に清々しく晴れ渡った青空が広がった。
今のは……夢? まだ少し頭がぼうっとしてる。そっか私、寝ちゃってたのか。しかも芝生の上で。いや、なんでよ?
「やばっ! もう三限目始まってる!」
口では「やばい」と言いつつも、頭の隅ではさっき見た夢が引っ掛かっていた。凄くインパクトが強かったはずなのに、なぜか内容は思い出せない。
「まあ夢なんてそんなもんか」
すぐに諦めモードになった。こういう切り替えが早いのは私のいいところだ、たぶん。
「それにしても、いい天気だなー」
空を仰ぎながら寝そべって地面を感じてみる。手入れの行き届いた芝生って、なんでこんなに心地いいんだろう。
「……サボろ」
空は快晴、雲ひとつない。その変わりに《リング》がハッキリと見えている。リングがサボれと言っている。嘘だけど。ってゆーか、あのリングって一体なんなの?
ここ2~3年で急速に現れた謎のリング。その実態は、地球をぐるっと一周するように囲んだ無数の隕石群だといわれている。
今日みたいによく晴れた日は、空の端から端まで一直線に白い帯が延び、まるで飛行機雲のようだ。ふわりとした輪からの着想で、《シフォンの帯》と命名されたらしい。一般的には《シフォン》とか《リング》って呼ばれてる。
そういやネットで、どこかの小惑星が砕けて流れついた隕石群だって言ってたな。テレビでも“新元素の発見!?”とか特集組まれて話題になってた。あれってどこの局だったかな? ちょっと話題になると他局もすぐ真似するから覚えてないや。
まあ、最後の方なんて“隕石が地表に降り注ぐ!?”とか言って、もはや科学そっちのけで予言めいたオカルト番組になってたもんなぁ。
ってゆーかさ、あれだけ取り沙汰されて、結局のところ何にも解明されてないって、どうよ。
「ヨーコー」
おっと、誰か私のこと呼んでる。あの声はマサミだな。それにしても面白いなー、寝そべってるせいで頭の上から声が降ってくる。なんか変な感じ。思わずニンマリ。
足音がすぐ傍まで来て止まると、マサミの顔が私を覗き込んできた。ぷぷっ、顔、逆さまだよ。
「ねえ、こっちに何か落ちてこなかった?」
そう言いながら辺りをキョロキョロ見回してる。
「んにゃ、なーんにも」
「っていうかアンタ、こんなとこで何やってんのよ。講義出なかったでしょ?」
「え? あー、リング見てたー」
「リングって、ああ《シフォンの帯》のこと? え、ここでずっと?」
マサミはチラッとだけ空を見上げると、私の横に座った。
「そ、リングがサボれってさ」
「アホ。でも珍しいね、ヨーコが地概サボるなんて」
「え? ……あああっ!!」
“地球科学概論”、私が唯一楽しみにしてる講義だ。反射的に体が起きる。
「古屋先生ゴメンなさいっ!」
誰にともなく頭を下げた。
「あはは、アンタ古ポン好きだもんねぇ。いーっつも講義の後、質問してたし」
「いや、だって講義の内容じゃ全然足りないし! うー、なのに、なんで忘れてたかなー」
あまりの失態に脱力し、再び芝生に寝そべった。
「アンタまだ寝るの?」
マサミが呆れたように言う。実際のところ気が抜けたってのもあるけど、空を仰ぐこの体勢がちょっとクセにもなっていた。なんでだろ?
「いや、何かさー、気になるんだよね」
腕を真っ直ぐ空に向け、人差し指でリングをなぞる。
「気になるって、リングが?」
「そ」
「そういえば今日、古ポンが講義の中で、あのリングは“外界からのメッセージ”って説を話してたよ」
「何それ? 宇宙人ってこと?」
あらら、“地球科学概論”って講義なのに宇宙に飛び出しちゃった。
「そーそー、けど、突飛過ぎて超盛り上がったわ。つーか、宇宙人なんているわきゃないし」
「あはは、だよねぇ。もー、そんなこと言うから、何かメッセージ見えてきちゃったじゃない」
メッセージ……
「いやっ!!!」
「どうしたのヨーコ!?」
「ご、ゴメン……なんでもない」
思わず謝っちゃったけど……これさ、「なんでもない」わけないよね?
恐る恐るもう一度空に視線を送り直す。
リングの白い帯に沿ってるアレ……文字っぽくない? いや、ちょっと本当かんべんしてよ。目を凝らすと、リングの上にしっかり言葉が浮かび上がって見えた。
―――――――――――――――
我々が到着するまで14年2ヶ月
それまでにその星を制圧せよ
―――――――――――――――
「ねぇ、マサミ」
「何?」
「あのリング、何か文字が見えない?」
見落とさないよう指で文字の位置を差し示す。
「どれどれ……って、何も見えないわよ。あっ、なに、さっきの“外界からのメッセージ説”言ってんの?」
ダメだ……マサミには見えてないんだ。
「そ、そうそう、きてるよーソレ、マジでやばいよ」
っていうかコレ、洒落になってなくない? 本当に宇宙人とか来ちゃってるんじゃないの?
アレかな、コレ見たらUFOにさらわれて頭ん中いじられるとか。えー、真っ昼間のキャンパスだし、めっちゃ芝生に寝そべってたし、さすがに人目あるし、無理くない?
でも、実際、文字が見えちゃってる事実がヤバい。なに、暗示? 病気? あっ、もしかして、寝てる間に誰かにARメガネかけられた?
それだ! と、目の周りを触ってみたが、なーんもない。
「あはは、ウケる、何やってんの。だから講義出ろっての」
講義? そうだよ!
「ほんっと、なーんで今日に限って講義休んじゃったんだろ。ね、ねえ、古屋先生のメッセージ説って、どんな内容だったの?」
動揺を悟られぬよう、いつもと変わらぬ口調を心掛ける。内心は不安と焦りが9割を占め、残り1割でなんとか頑張ってる私。
「えっとね、確か14年後に何か起きるって……」
「ええっ!! な、何が起きるって!?」
「ど、どうしたのヨーコ!? 何もないよ、誰もツッコまなかったし」
あまりに私が驚いたせいか、マサミが“何事”って顔でこっちを見返した。でも今はそれどころじゃない。だって14年なんて中途半端な数字、とても偶然とは思えない。
「そっかー、気になるなーソレ、あはは」
マサミからこれ以上詳しいことは聞けそうにない。でも、いいこと聞いた。講義で話したってことは、古屋先生もあのメッセージを知ってるってことだよね、それも私より先に。もしそうなら……あのメッセージは唐突に現れたんじゃない。私にも見えるようになっただけだ!
すぐにでも先生に確認したい。講義が終わった今なら教授室に戻ってるはずだ。
「ごめんマサミ、私、古屋先生のところ行ってみる」
「え? わざわざその話を聞きに?」
立ち上がった私をマサミは間の抜けた顔で見上げていた。自分でもおかしなことを言ってる自覚はありつつも、妙なテンションのせいでじっとしていられない。
「つ、ついでよ、ついで。講義サボっちゃったことも謝っておきたいし」
駆け出しながら、どっちがついで? と、頭の中にハテナマークが浮かんでいた。
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