幼女救世主伝説-王様、私が宰相として国を守ります。そして伝説へ~

琉奈川さとし

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魔族大戦

第八十七話 ウェストヘイム王城戦②

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 ウェストヘイム王は騎士たちに尋ねた。

「何故魔族がここにいるのだ! 騎士たちは何をしていたのか!」
「はっ、いえ、魔族とはワックスリバー国境線で戦闘があったと……」

「そんなことどうでもいい! 何故ここに、フェニックスヒルに魔族がいるのかと聞いている!」
「さあ、魔族がまさか、ここを知ってるとは……」

「言い訳なんぞどうでも良いわ! 何故──」

 押し問答になっているようなので、私はウェストヘイム王に助言した。

「陛下、責任の追及はともかく、今は現状を把握するため、情報を集めるのが先決かと」
「なるほど……、お前たち、調べてこい!」

「はっ」

 私たちは魔族たちの動向をうかがいながら、兵たちの報告を待った。どうやって、ここに……。到底魔族の仕業とは思えない、人間しか見えないヴェルドーと何か関係あるの……?

 私はルーカスに尋ねた。

「あの男、確かヴェルドーだっけ、あいつの情報ない、ルーカス?」
「あの男はどうやら、魔族から、魔将軍と呼ばれておりました。我が要塞を襲った魔族軍を指揮していたようです。

 詳細は不明ですが、人間のようですな、もしかして元人間かも知れませんが、大層、体躯たいくに優れ、剣術に優れ、剣において対抗するのは到底無理と現場の兵はもうしておりました」

「元人間か……、こちらの何かしらの情報を握っている可能性はあるのね?」
「要塞戦で手慣れた攻略といい、今回の奇襲といい、おそらく」

「まったく、なんなのよ、あの男は……」

 ウェストヘイムの騎士たちが報告に戻ってきた。

「陛下、魔族の軍勢はおよそ、3000です」
「なに、あまりに少ないではないか。で、わが軍は?」

「ウェストヘイム兵はおよそ、4000、ミサ宰相殿が連れてきた統一軍は2000、合わせて6000名です」
「なら守り切れるな、よし、防御態勢に入れと全軍に伝えよ」

 ウェストヘイム王が、騎士を返そうとしたのを私は少し制止した。

「陛下、少々お待ちを」
「ん?」

「少しこの騎士にお尋ねしたいのですが」
「ん、許可する」

 許可をとったので、私はウェストヘイム騎士に尋ねた。

「この、フェニックスヒルに通じる道はワックスリバーからあるの?」
「いえ、ここからワックスリバー国境へは険しい山がそびえ、およそ軍が通れるものではないかと」

「軍は通れない、つまり、小規模なら、通れる道があるのね、ワックスリバーから」
「はあ、しかし、崖みちで、しかも知っているのは、地元の人間しか知らず、余りにも厳しい道のため、地元の人間も近づかぬものかと……」

「ありがとうわかったわ、行って」
「はっ」

 状況を聞いて私はルーカスに尋ねた。

「ルーカスどう思う?」
「越えてきたんでしょうな、その山岳地帯を」

「地元の人間すら近づかないというのは気になるわね」
「はあ、そういった道は、地元の人間の手引きがない限り軍が通ることなど、不可能かと、飛兵がいる魔族とはいえ」

「まって、手引き?」
「ええ、まあ、危険な道を情報もなしに軍が通るなど無謀ですからね」

「現状、6000対3000なのよね、ルーカス。信じていいの?」
「その見立てに間違いはないかと思いますが、ざっと魔族軍を見る限り」

 ──何故、危険を冒してまで、小規模で、攻城戦を挑むの……? 悪路を通ってまで。歩兵は命がけのはずよ、そんな賭け、あざやかな要塞攻略をなした将軍がやるとは思えない。まさか……!

 私はウェストヘイム王に上申した。

「陛下、わが軍に内通者がいる可能性があります。ウェストヘイム軍に。ここは、城門を我が親衛隊に守らせていただけないでしょうか?」
「何をバカなことを、ミサ宰相殿。この私の臣下の中に魔族と通じるなど、そんなたわけがいるはずもない」

「念のため、念のために──」
「必要ない」

 私の具申は却下されてしまった。まずいぞ、内通者がいる可能性がある中、籠城戦なんて。内部のことが筒抜けな城など、平野同然。私は何度もウェストヘイム王を説得したが、聞き入れてもらえない。

 両軍の配置が済んだ時だ。いきなり、ヴェルドー軍は魔族を動かした。私は思わず声を上げた。

「──しまった! もう遅い!」

 私の声に皆が驚いた。そしてさらに驚いたのは次の瞬間だった。フェニックスヒルの城砦都市の外壁の門が一斉に開いたのだ。ウェストヘイム王は狼狽した。

「何故だ、何故城門を開いた! 何故だ!?」

 周りの騎士に詰め寄るが、時すでに遅し。堂々と、魔族軍が、城下街に侵入し、一直線にこの王城に駆け込んでくる! 私は王に具申した。

「陛下、すぐさま、この城の城門を上げてください! 跳ね橋の!」
「あ、ああ……、お前たち! そのように伝えよ!」

「ははっ!」

 城門の跳ね橋が徐々に上がる中、獅子に乗った、ヴェルドーは高笑いをしながら跳ね橋を獅子ごと飛び越えてくる!

「くははははは! 馬鹿どもめ! 遅すぎるわ!!」

 まずい! 王もうろたえて、騎士にわめきちらす。

「何をやってるのだ! 早く魔族を殺せ!」
「やってます!」

「やってから言え!」

 騎士たちが多勢、この場から立ち去り、城の防御に向かう。まず過ぎる……、この様子じゃ内通者が、城の構造すら敵に漏らしている可能性がある。ここも、落ちる……! 抵抗空しくはね橋が再び下ろされ、魔族が城に侵入してくる──! 

 こうなったら仕方ない。私はウェストヘイム王を説得しようと試みる。

「陛下、この城は落ちます! 内通者を通じて城の中を知られている可能性が大です、また、外壁に張らせておいた兵が遊兵となっており、兵力差は大差ありません。いったんこの城を敵に明け渡し、陛下は脱出し、のちに、兵を集め、この城を奪還する方が賢明です!」
「馬鹿を言うな! 王が、王城を離れるなど、あってはならん!」

「し、しかし……!」
「この、天井を見ろ! 先の魔族との戦いで、見事、魔族からこの城を守ってくれた、フェニックスが描かれておる! 何度魔族に襲われようと、このフェニックスヒルは魔族を撃退し、ここは歴史に名だたる難攻不落の城だ! フェニックスの加護がある限り、この城は落ちん!」

「陛下!」
「ミサ殿は心配性になっているだけだ、時期に魔族たちは勢いを失い敗退するであろう!」

 ……こうなってしまっては何を言っても無駄か。私はジョセフに顔を向けると、彼は冷静に言った。

「お逃げください、ミサ様。ここも落ちます」
「とはいってもねえ、ウェストヘイム国王が城を守っている中、統一宰相の私だけがのこのこ逃げるってできないのよね」

「今なら間に合いますよ」
「わかった、じゃあ、ルーカス」

 私はルーカスに指示をした。

「私はこのまま、ウェストヘイム国王とともに、城を守るけど、万が一のことを考えて、退路をウェストヘイムの騎士たちにきいて、確保して。私は陛下の説得を続けるわ」
「かしこまりました」

 命令通りにルーカスは謁見室を出る。……二度も落城か……。何かに呪われてるのかな、私。はーあ。下で、魔族との激戦が繰り広げられる中、私はため息をついた。
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