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徒花
第九十四話 流れゆく日々
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明けて暮れても僕の気持ちは晴れなかった。戦いであれば、相手が誰であろうと倒すのが当然である。それは理解できたが、相手が年端のいかぬ少女の姿であったことに、心に影を差し込ませる。
元より、メリッサやナオコのため、この手を血に染める覚悟はしている。悪魔となって、このラグナロクを勝ち抜くことこそが僕の真の望み。むしろ敵を倒し本望と喜ぶべきものを、何を僕は迷っているのか。
しかし、いくら考えても躊躇いが解けなかった。
鬱々と外の時が移ろいゆこうと、僕は宿に籠こもり、その姿に子どものナオコが疑問を持ったのだろう。椅子に座って、窓の外の青空を眺めていた僕に右手をとって引っ張った。
「ねえねえ、パパ、そろそろどこか遊びに連れてってよ、ずっと部屋にいてはつまんない」
「ああ、そうだね……」
生返事だけで、何もしない僕に焦れたのであろう、多少怒り気味でナオコは訴えかけた。
「ねえ! パパは悪い奴をやっつけたんだよね?」
「ん? ああ、そうだね」
「なら何で喜ばないの? そいつ弱い人たちをいじめて、みんな困ってたじゃない、それなのに変だよ」
「戦いに勝利しても、何かを得るとは限らない」
「でも、パパは私とママのために頑張ってるんでしょ? パパが戦えばみんなが幸せになるってママが言ってた」
「それは……、そうだね」
「じゃあ、私とママを助けたことになるよね?」
「そう……だね」
「パパ、どうしたの? 私たちの事が嫌いになったの?」
「そうじゃないよ、でも、戦いだけに明け暮れる日々をどうかなって」
「そうしなきゃ、私たち生き残れないよね?」
「ああ、そうだよ」
「もう! パパ、わかんない、いけず!」
そう言ってバタバタと足を鳴らして部屋からナオコは去った。そのやり取りを見て側にいたメリッサが業を煮やしたのだろう、僕に説教を始めた。
「お前、いつまでもぐずぐずして、まだ、あの女たちを始末したことを後悔してるのか?」
「後悔……、いやそうじゃなくて」
「それなら懺悔か、罪に思ってるのか? 初恋の相手である日向直子を手にかけたお前が」
「……!」
僕は日向さんの名前を出されて、不機嫌な表情をしてしまったのだろう、それに対しむしろどんどんメリッサは煽っていく。
「言われて当たり前だろ、お前が日向直子を手にかけたのは、この手に勝利を、そして私たちが生き延びる選択をしたからだ」
「……あの時は、日向さんが望んでいた、だから僕は心を鬼にして……!」
「同じことだ、この戦いを選択した以上は、生き残るかそれとも死ぬか、その二択しかない。それが契約、ラグナロクの生き残りをかけた戦争だ。さんざん言ったはずだ、哀れみは身を亡ぼすと」
「わかっているさ、ただ、生きている自分が少し嫌になっただけだ、戦いこそが生きる道なのかと」
「生きる道だ。席は十二席しかない、必然的に仲間を作れば作る程、仲間同士で殺し合う羽目になる。その時迷いがあったら、むしろ殺される側になる。自分以外のエインヘリャルを欺き、そして闇に葬る、その覚悟があるなら仲間を作ればいいさ。
しかし、前の敵は能力的に生かしておいてはお前にとって危険だ。ララァの能力は時間変革能力、その力があれば寝込みを襲われたら終わる。
またリリィもその能力の破壊力は脅威だ、今回はうまく処理できたが、あれが冷静にお前を殺すことに専念すれば、正面から戦って勝ち目は薄い。頭が悪くて助かったな。
ああいう敵は、自分の能力の価値に気づく前に始末しなければこの戦いに生き残れない、ならお前の選択は殺すしか選択肢はなかった、少し考えればわかるはずだ」
「ああ、そうだよ、だから殺した。でも……」
「少女の姿をしていたからって何の感情を抱く必要がある、そのような騎士道精神なんぞ、邪魔すぎる、捨てろ」
「騎士道じゃない、ただ人として……」
「じゃあ、武士道で例えようか、幸若舞の“敦盛”って知ってるか?」
「いや、知らない」
「聞いたことないか『人間五十年、下天の内を比ぶれば、夢幻の如くなり、ひとたび生をうけ滅せぬもののあるべきか……』」
「ああ、時代劇かなんかで聴いたことがある」
「織田信長が好んだこの節をよく日本の大河ドラマで流れるな、意味はこうだ『人間の一生など、天界の長い時の流れに比べたら、夢幻、つまり一瞬のよう過ぎていき、そして消えゆく運命だ』」
「へえ、そういう意味なのか」
「まあ、待て。言いたいことはたくさんある、この節は幸若舞のかなり一部分で、本当はもっと長い、大体でまとめるとこうだ。
この物語は源平合戦の一つの戦いを表現している。主人公は題名の平敦盛、ではなく、源氏方の熊谷直実だ。
ときは1184年 源氏と平家は真っ向勝負になり源義経が率いる源氏方が奇襲する形で始まった、一ノ谷の戦いだ。
鵯越の逆落としで有名な崖を降りる形で戦った名シーンの少し前の戦いで熊谷直実は数騎を率いて抜け駆けして戦った。
しかし初めの平家方は頑強で陣を破れなかった。ということで熊谷直実は息子とともに自陣に一度戻った、その時傷だらけでな、一緒に戦った息子の熊谷直家は瀕死だったらしい。
復讐心に燃える熊谷直実は、義経が率いる援軍がやって来て、散々打ち破られて敗走する平氏に襲い掛かったらしい。
そのとき船に乗って逃げようとする平家の中に立派な鎧を着た武者がいた、平敦盛だ。直実は逃げる敦盛に対しこう呼びかけたのだ。
『敵に背を向けるな卑怯者、戻れ』と。復讐心で手柄を上げたかった直実は必死だったんだろうな。武士の誇りがあった敦盛はそれに対し浅瀬のなかを馬で引き返し一騎打ちに応じた。
だが、直実は43歳、脂ののった武将だ、歴戦に次ぐ歴戦のつわもの、あっさりと敦盛の馬から落とし、組み伏せた。あとは首を取るだけ、それで大手柄だ。その時ふと敵の敦盛の顔を見てしまった。
その時の敦盛、15歳ぐらい、丁度、瀕死で苦しんでいる、愛する息子と同じぐらいの歳だった。若武者の顔に直実は戸惑いを起こす。息子の顔と重ね合わせてしまったんだ、そして躊躇い殺すのをやめようと、
『儂は大したことないものだが名は熊谷直実と申す、そなたの名は?』と言ってしまった。
それに対し敦盛は『そなたが名乗らずともよい、私の首を取って他人に聞いてみろ、きっと私の名を教えてくれるだろう』つまり、私の名前は誰もが知っているほどの有名な武将、そう大手柄だから自分の首を取って晒すがよいと。
あまりの立派な若武者ぶりにますます直実は殺すのが惜しくなるも、源氏方の兵が集まってきて、首を取らない様子に不審がられた。
このままだと、敵に寝返ったと思われてしまう。また、自分を犠牲にし、見逃したとしても他の者に首を取られるほど源氏方に囲まれていた。そして考えた……この子はどの道死ぬだろうと。
その結果、泣く泣く直実はその若武者の首を取り手柄とした。その時、きっと今のお前と同じ心境だっただろうな。悔やんでも悔やみきれなかったらしい。
そして有名な節に入る、人間の一生は儚いものだ、一瞬のように過ぎ去ってしまう。今この心境をもって菩提心とし、仏の道に入りこの者を供養する坊さんになろう。
そう言って直実は出家し、のち立派な寺を建てたというところで物語は終わる」
「……そうか今も昔も同じなんだな、僕よりずっと前の時代でも戦いでは人間性が出てしまう」
「まあ、待て私の話は終わっていない、この話にはまだ続きがある」
「ん……?」
「物語はここで終わってしまい、直実は突発的に坊さんになったようにみんな思うだろうが、実際は出家したのはこの戦いの数年後だ」
「そうなのかい?」
「直実は一ノ谷の三年後、源氏のトップである源頼朝に流鏑馬の的立役つまり雑務を押し付けられて、弓矢の名人であった直実は屈辱としてこれを拒否し、領地を半分ぐらい削られる。
そして、息子の直家は “幸若舞 敦盛” ではすでに死んだことになっているが実は生きていて、瀕死から復活し、1189年の奥州合戦に参加し、主君の源頼朝に立派な武士だと讃えられている。
出家したのはそのころと大体同時期だ、諸説あるが、まあ、武士としてやりたいことやったし、今度は敦盛や自分のために死んだ者たちを供養しようとして出家したんだろう、坊さんになってりっぱな寺をいっぱい立てて、1207年63歳で往生する。
つまり、やることすべてやってから出家したんだ。突発的に戦いが嫌になって武士をやめたわけじゃない。そして熊谷家は今現在の日本でその血は受け継がれている。子孫だというものもいっぱいいるぞ。
名を上げ、家を残し、血も残す。立派な武士じゃないか。直実にここまでやられて死なれたら、むしろ首を取られた敦盛も本望だろう。
お前はどうだ? 今嫌になって戦うのをやめてみろ、私やナオコはどうなる? お前が死んで、お前のために死んでいったものが喜ぶと思うか? よく考えてみろ。
……戦って生きるってそういうことなんだ。生きる責任がある。お前が悔やむのも人間なら当然だ。でもな、それはやることやってからにしろ。十二人の中に生き残ってこそ、その命の責任を取ることになる。そう思わないか?」
「……耳が痛いな」
もう、僕はお手上げだった。見事にメリッサの指摘は的を射ている。ここで戦うのをやめてしまえばただの逃げだ。僕にはやるべき使命がある。
「顔つきが変わったな、まあ、そういうことだ。わかったらさっさとナオコと遊んでやれ。お前、親になってからまともにナオコと遊んでないじゃないか。子どもに愛情を注ぐのも生きる戦いの一つだろ?」
「わかったよ、敵わないよ、お姫様」
メリッサは少し照れ笑いをする。そして僕はドアを開け、宿の一階で不貞腐れたナオコと遊んで、もう一人のお姫様に振り回されてしまった。
元より、メリッサやナオコのため、この手を血に染める覚悟はしている。悪魔となって、このラグナロクを勝ち抜くことこそが僕の真の望み。むしろ敵を倒し本望と喜ぶべきものを、何を僕は迷っているのか。
しかし、いくら考えても躊躇いが解けなかった。
鬱々と外の時が移ろいゆこうと、僕は宿に籠こもり、その姿に子どものナオコが疑問を持ったのだろう。椅子に座って、窓の外の青空を眺めていた僕に右手をとって引っ張った。
「ねえねえ、パパ、そろそろどこか遊びに連れてってよ、ずっと部屋にいてはつまんない」
「ああ、そうだね……」
生返事だけで、何もしない僕に焦れたのであろう、多少怒り気味でナオコは訴えかけた。
「ねえ! パパは悪い奴をやっつけたんだよね?」
「ん? ああ、そうだね」
「なら何で喜ばないの? そいつ弱い人たちをいじめて、みんな困ってたじゃない、それなのに変だよ」
「戦いに勝利しても、何かを得るとは限らない」
「でも、パパは私とママのために頑張ってるんでしょ? パパが戦えばみんなが幸せになるってママが言ってた」
「それは……、そうだね」
「じゃあ、私とママを助けたことになるよね?」
「そう……だね」
「パパ、どうしたの? 私たちの事が嫌いになったの?」
「そうじゃないよ、でも、戦いだけに明け暮れる日々をどうかなって」
「そうしなきゃ、私たち生き残れないよね?」
「ああ、そうだよ」
「もう! パパ、わかんない、いけず!」
そう言ってバタバタと足を鳴らして部屋からナオコは去った。そのやり取りを見て側にいたメリッサが業を煮やしたのだろう、僕に説教を始めた。
「お前、いつまでもぐずぐずして、まだ、あの女たちを始末したことを後悔してるのか?」
「後悔……、いやそうじゃなくて」
「それなら懺悔か、罪に思ってるのか? 初恋の相手である日向直子を手にかけたお前が」
「……!」
僕は日向さんの名前を出されて、不機嫌な表情をしてしまったのだろう、それに対しむしろどんどんメリッサは煽っていく。
「言われて当たり前だろ、お前が日向直子を手にかけたのは、この手に勝利を、そして私たちが生き延びる選択をしたからだ」
「……あの時は、日向さんが望んでいた、だから僕は心を鬼にして……!」
「同じことだ、この戦いを選択した以上は、生き残るかそれとも死ぬか、その二択しかない。それが契約、ラグナロクの生き残りをかけた戦争だ。さんざん言ったはずだ、哀れみは身を亡ぼすと」
「わかっているさ、ただ、生きている自分が少し嫌になっただけだ、戦いこそが生きる道なのかと」
「生きる道だ。席は十二席しかない、必然的に仲間を作れば作る程、仲間同士で殺し合う羽目になる。その時迷いがあったら、むしろ殺される側になる。自分以外のエインヘリャルを欺き、そして闇に葬る、その覚悟があるなら仲間を作ればいいさ。
しかし、前の敵は能力的に生かしておいてはお前にとって危険だ。ララァの能力は時間変革能力、その力があれば寝込みを襲われたら終わる。
またリリィもその能力の破壊力は脅威だ、今回はうまく処理できたが、あれが冷静にお前を殺すことに専念すれば、正面から戦って勝ち目は薄い。頭が悪くて助かったな。
ああいう敵は、自分の能力の価値に気づく前に始末しなければこの戦いに生き残れない、ならお前の選択は殺すしか選択肢はなかった、少し考えればわかるはずだ」
「ああ、そうだよ、だから殺した。でも……」
「少女の姿をしていたからって何の感情を抱く必要がある、そのような騎士道精神なんぞ、邪魔すぎる、捨てろ」
「騎士道じゃない、ただ人として……」
「じゃあ、武士道で例えようか、幸若舞の“敦盛”って知ってるか?」
「いや、知らない」
「聞いたことないか『人間五十年、下天の内を比ぶれば、夢幻の如くなり、ひとたび生をうけ滅せぬもののあるべきか……』」
「ああ、時代劇かなんかで聴いたことがある」
「織田信長が好んだこの節をよく日本の大河ドラマで流れるな、意味はこうだ『人間の一生など、天界の長い時の流れに比べたら、夢幻、つまり一瞬のよう過ぎていき、そして消えゆく運命だ』」
「へえ、そういう意味なのか」
「まあ、待て。言いたいことはたくさんある、この節は幸若舞のかなり一部分で、本当はもっと長い、大体でまとめるとこうだ。
この物語は源平合戦の一つの戦いを表現している。主人公は題名の平敦盛、ではなく、源氏方の熊谷直実だ。
ときは1184年 源氏と平家は真っ向勝負になり源義経が率いる源氏方が奇襲する形で始まった、一ノ谷の戦いだ。
鵯越の逆落としで有名な崖を降りる形で戦った名シーンの少し前の戦いで熊谷直実は数騎を率いて抜け駆けして戦った。
しかし初めの平家方は頑強で陣を破れなかった。ということで熊谷直実は息子とともに自陣に一度戻った、その時傷だらけでな、一緒に戦った息子の熊谷直家は瀕死だったらしい。
復讐心に燃える熊谷直実は、義経が率いる援軍がやって来て、散々打ち破られて敗走する平氏に襲い掛かったらしい。
そのとき船に乗って逃げようとする平家の中に立派な鎧を着た武者がいた、平敦盛だ。直実は逃げる敦盛に対しこう呼びかけたのだ。
『敵に背を向けるな卑怯者、戻れ』と。復讐心で手柄を上げたかった直実は必死だったんだろうな。武士の誇りがあった敦盛はそれに対し浅瀬のなかを馬で引き返し一騎打ちに応じた。
だが、直実は43歳、脂ののった武将だ、歴戦に次ぐ歴戦のつわもの、あっさりと敦盛の馬から落とし、組み伏せた。あとは首を取るだけ、それで大手柄だ。その時ふと敵の敦盛の顔を見てしまった。
その時の敦盛、15歳ぐらい、丁度、瀕死で苦しんでいる、愛する息子と同じぐらいの歳だった。若武者の顔に直実は戸惑いを起こす。息子の顔と重ね合わせてしまったんだ、そして躊躇い殺すのをやめようと、
『儂は大したことないものだが名は熊谷直実と申す、そなたの名は?』と言ってしまった。
それに対し敦盛は『そなたが名乗らずともよい、私の首を取って他人に聞いてみろ、きっと私の名を教えてくれるだろう』つまり、私の名前は誰もが知っているほどの有名な武将、そう大手柄だから自分の首を取って晒すがよいと。
あまりの立派な若武者ぶりにますます直実は殺すのが惜しくなるも、源氏方の兵が集まってきて、首を取らない様子に不審がられた。
このままだと、敵に寝返ったと思われてしまう。また、自分を犠牲にし、見逃したとしても他の者に首を取られるほど源氏方に囲まれていた。そして考えた……この子はどの道死ぬだろうと。
その結果、泣く泣く直実はその若武者の首を取り手柄とした。その時、きっと今のお前と同じ心境だっただろうな。悔やんでも悔やみきれなかったらしい。
そして有名な節に入る、人間の一生は儚いものだ、一瞬のように過ぎ去ってしまう。今この心境をもって菩提心とし、仏の道に入りこの者を供養する坊さんになろう。
そう言って直実は出家し、のち立派な寺を建てたというところで物語は終わる」
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「まあ、待て私の話は終わっていない、この話にはまだ続きがある」
「ん……?」
「物語はここで終わってしまい、直実は突発的に坊さんになったようにみんな思うだろうが、実際は出家したのはこの戦いの数年後だ」
「そうなのかい?」
「直実は一ノ谷の三年後、源氏のトップである源頼朝に流鏑馬の的立役つまり雑務を押し付けられて、弓矢の名人であった直実は屈辱としてこれを拒否し、領地を半分ぐらい削られる。
そして、息子の直家は “幸若舞 敦盛” ではすでに死んだことになっているが実は生きていて、瀕死から復活し、1189年の奥州合戦に参加し、主君の源頼朝に立派な武士だと讃えられている。
出家したのはそのころと大体同時期だ、諸説あるが、まあ、武士としてやりたいことやったし、今度は敦盛や自分のために死んだ者たちを供養しようとして出家したんだろう、坊さんになってりっぱな寺をいっぱい立てて、1207年63歳で往生する。
つまり、やることすべてやってから出家したんだ。突発的に戦いが嫌になって武士をやめたわけじゃない。そして熊谷家は今現在の日本でその血は受け継がれている。子孫だというものもいっぱいいるぞ。
名を上げ、家を残し、血も残す。立派な武士じゃないか。直実にここまでやられて死なれたら、むしろ首を取られた敦盛も本望だろう。
お前はどうだ? 今嫌になって戦うのをやめてみろ、私やナオコはどうなる? お前が死んで、お前のために死んでいったものが喜ぶと思うか? よく考えてみろ。
……戦って生きるってそういうことなんだ。生きる責任がある。お前が悔やむのも人間なら当然だ。でもな、それはやることやってからにしろ。十二人の中に生き残ってこそ、その命の責任を取ることになる。そう思わないか?」
「……耳が痛いな」
もう、僕はお手上げだった。見事にメリッサの指摘は的を射ている。ここで戦うのをやめてしまえばただの逃げだ。僕にはやるべき使命がある。
「顔つきが変わったな、まあ、そういうことだ。わかったらさっさとナオコと遊んでやれ。お前、親になってからまともにナオコと遊んでないじゃないか。子どもに愛情を注ぐのも生きる戦いの一つだろ?」
「わかったよ、敵わないよ、お姫様」
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