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宿命と対決
第百十八話 開門
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メリッサは礼拝堂の中、両手両足を鎖でつながれていた。もう、何日にもなる、何かをされるでもなく、まるで置物のように扱われていた。
「ずいぶんとご機嫌斜めではないか、銀色の乙女?」
目の前にいたアウティスはさも愉しそうに、微笑んだ。
「……いつまで私をこうするつもりだ、お前が心配しなくとも必ず佑月はお前を倒す、それまで今みたいに余裕ぶって笑みを浮かべているがいい」
「威勢がいいな、私はせっかく腹を空かせているだろうと思って食事を持ってきてやったのに」
「敵の施しなど受けん!」
「くくっ……そう言っていられるのは今のうちだけだ」
「……何……?」
アウティスは召使いに運ばせて、黄緑色のキャベツを皿の上に丸々置いた。
「なんだそれは……?」
「これはこの世界でキャベージというものだ、春のみに実る貴重な野菜だ、その中でも私は特に選び抜いて最も新鮮で野菜の風味が豊かなものだけを食している」
「食……す? 本気か?」
その瞬間アウティスは手刀でキャベージを刻み、瞬く間に食べやすい大きさに切った。
「野菜本来の味、……そう、本当に美味いベジタブルなら、生でも食べられる……!」
そう言いながら何もつけずにキャベージを無表情でアウティスは食べだした。
「馬鹿な! 何もつけずに食べるだと! そんなものが食えるのか⁉」
「食えるさ、野菜が新鮮なら生が一番だ……! さあ、お前も食すがいい銀色の乙女?」
そうしてアウティスは皿をメリッサのもとに持ってきた。
「馬鹿! やめろ! そんなものを私に近づけるな!」
「なに、お前もこの味が忘れられなくなって、欲しい……欲しい……とねだりだすさ」
「ふざけるな! やめろ──! うぐっ!?」
「──どうだ美味かろう?」
アウティス手づかみで彼女の口元にそれを持って行った。
「ぷは、ふざけるな、こんなもの私の口に入れるなどけがらわ……! くっ! うう!、ううん‼ けほっ、けほっ‼ や……、やめ……ろ……!、こ、れ以上……私の口を……汚すな……!」
「なーに、まだまだたくさんある。……存分に楽しめ……!」
「……まて、そんな無理やりだなんて、うわ、やめろ! やめろ────‼」
そして、メリッサの拷問の日々が始まった、毎日キャベージだけを喰わされ、彼女は口から唾液を垂らしながら、無理やり口の中に放り込まれる日々が続くのであった。
────────────────────────────
「パパ! 起きて。もう、お昼だよ」
ん……ナオコの声が聞こえる。まぶたを開けると強い日差しに照らされていた。光が痛い、……ああ、もう昼か。森の中で、毛布にくるまって寝ていたのをナオコに起こされた。
「あれ、もうこんな時間か」
「そうだよパパ。私、おなかすいたー」
「そうか、ママが保存食用に買っておいた、肉の塩漬けでもたべよう」
「はーい」
僕もナオコと一緒に肉の塩漬けを食べる。……うーん固いな、ボリボリとした食感で辛い、でも食べないよりましだ。肉にかじりつく、ああ、メリッサが恋しい、そろそろ、メリッサがいないことに喪失感を感じ始めた。彼女がいれば食事も裁縫も移動も全部任せていられたのに。
だんだんアウティスに腹が立ってきた。なんで、あいつの思い込みでこんな目に遭わされなきゃならないんだ、次は絶対にボコボコにしてやる。
「……アンタ、よくもやってくれたわね……!」
木の棒をつきながらボロボロになったエイミアが肩で息をして森の奥からやって来た。
「やあ、おはよう」
僕は何事もないかのように普段通りの挨拶をした。
「エイミアお姉ちゃん、なにがあったの?」
ナオコは、不思議そうな目でびしょ濡れのエイミアを見つめていた。
「ふふふ、流石にお姉さんも夜中に、私の身の丈の四十倍ほどの崖から突き落とされるとは思わなかったわ……やってくれるじゃない……!」
「──それはなかなか大変だったね」
僕は平然として言葉を返す。
「……真夜中の川は寒かったわ、まさか肉食の魚と水泳競争する羽目になるとはね……」
「そいつは無事で何よりだ、エイミアも肉の塩漬け食べるかい?」
「──まあ、いいわ。お姉さん小娘じゃあるまいし、自分が原因のことでギャーギャー言わない。あっ、肉の塩漬けなら柔らかいところだけちょうだい」
こうしてエイミアに招かれながら一週間ほど移動をした。毎日エイミアが発情するため、僕は夜中じゅう逃げ回って、彼女を崖から突き落としたり狩猟用の罠に引っ掛けたり、落とし穴や檻の中に放り込む日々が続いた。懲りない奴だな、エイミアは。
「着いたわ、ここがリゴーシュという村よ」
緑の畑に包まれた農村だった。色とりどりの果実がなっており、風で甘い匂いが広がっていく、自然豊かで気持ちいいな。中世の田舎は貧しいとメリッサは言っていたけど、ここは豊かのようだ。ライ麦畑が黄金に輝く。
「あの館がアウティスの館よ」
指さすと大きな石工の塀に囲まれた、ゴシック調の巨大な館があった。中世では珍しく、窓にガラスが張っており、色のついたモザイク画の壁もある。
「ずいぶんと金持ちじゃないか」
僕がそう尋ねると、小悪魔のようにエイミアは微笑む。
「貴族だからね。本当はアウティスの兄が相続しているんだけど、体が弱くて、アウティスが実質、この館の主よ。兵はざっと百人はいて、そこら辺の領主が襲ってきてもここの兵士だけで迎撃出来るほどの防衛力を持っているわね。
さあこの難関を突破出来るかしら。貴方のことは調べてあるわ。貴方の能力の武器には制限があるそうね、さーて、アウティスにたどり着くまで持つかしらね?」
それは工夫が必要だな。メリッサに会うまで銃弾は三十九発。アウティスとの戦いのために一発でも無駄弾を使うことは避けたい。
「まずはナオコをどこかに預けたいのだけれどもいいかな」
「いいわよ、裕福な家を知っているから、そこで預けるといいわ」
────────────────────────────
「ちょっと、待ちなさいよ、私が頼んでいるのよ!」
──ところがエイミアが商人の館でそこの執事に怒りをぶつけることになってしまった。
「いえ、ですからアウティス様のご命令で協力してはならないと」
「話にならない! 主人を呼んできなさい」
「主は病でございます」
「病なんて逃げ口上を言うな! 私が直々にたたき起こしてあげるから、どきなさい!」
エイミアは執事を投げ飛ばし、ドスドスと館に入っていった。それから数十分がたった。
「──うん、お姉さんのおかげで、なんとか預かってくれるみたいだから」
微笑みながらナオコの頭をなでるエイミア、顔は相当ひきつってはいたが。
「エイミアお姉ちゃん。大丈夫なの? 迷惑じゃないの」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ。何かあったら私がこの館に火をつけるって脅しておいたから」
心配だ……ナオコじゃなく、エイミアの頭が。
「さってと、佑月これからどうする? ここで一泊する?」
「いや、直接アウティスの館に向かう」
これ以上、エイミアと一緒にいると頭がおかしくなりそうだ。この女性と早めにおさらばしたい。すぐにその足で僕とエイミアはアウティスの館に向かった。すると門で兵が待ち構えていた、……なるほどすべては手はず通りということか。
「止まれ! 何用だ!」
こちらをちらりと見るエイミア。わかってるよ、僕には策がある。
「へゃあ!?」
瞬間、エイミアが素っ頓狂な声を上げる。僕がショートソードをエイミアの喉に当てたからだ。
「エイミア、自分が捕まったと兵士に伝えろ、ここを通さないと自分が殺されるって」
「ごめーん、私、佑月に捕まっちゃったー。アウティスの元へ案内してくれる?」
甘ったるい声を出すエイミア。このヴァルキュリア、ちゃんと兵士に伝えたのだろうか。僕にはここの世界の言葉はわからないから不安だ、彼女は。
ところがギィッと言う音がし、茂みから矢が飛んでくる。危ない! とっさに避けようとしたが、エイミアの頬をかすめた。傷口から赤い血が流れる。エイミアの笑みが崩れた。
「ちょっと! どういうことよ! 私が捕まったのよ! コイツをアウティスの元に通しなさいよ!」
交渉は上手くいってないのか……? エイミアは声を荒げていた。どうなっているんだ?
ギャーギャーとエイミアがわめき散らしていると、兵士たちがどんどん集まってくる。
「エイミア様、アウティス様がおっしゃるには、貴女が人質に取られた際にはエイミア様ごと殺しにかかれと……」
何か静かな口調で語る兵士。……ちょっと声が震えてるぞ、何しゃべったんだ?
「なんですって! アウティスが佑月を案内しろって言うからはるばる徒歩で、案内役を務めたのに、捕まったら私ごと殺せですって! ちょっとアウティス呼んできなさいよ!」
「お怒りはごもっともですが、アウティス様のご命令ですので……」
僕たちに槍を構える兵士たち。エイミアは、頬の傷から流れる血を白い指先で拭い、なめてうつむいていた。
「……切れた……マジ切れたわ、……せっかく第二の人生を与えてやって、強力な能力も与えてやったのに……この扱い……! ざっけんなよ……クソ坊主が……!」
拳をぷるぷると震わせる。矢を紡ぐ音が聞こえてくる。その時――
――ガギィ! と音を立てて、エイミアは一瞬で自分の身長より長い剣を出し、それを振り、向かってくる矢を払い兵士の盾に切りかかり一振りで叩き割った。
「いいじゃん、そっちがその気ならやってやろうじゃん! アウティス──ぶっ殺してやる──!」
叫びながら兵士たちに斬りかかるエイミアだった!
「ずいぶんとご機嫌斜めではないか、銀色の乙女?」
目の前にいたアウティスはさも愉しそうに、微笑んだ。
「……いつまで私をこうするつもりだ、お前が心配しなくとも必ず佑月はお前を倒す、それまで今みたいに余裕ぶって笑みを浮かべているがいい」
「威勢がいいな、私はせっかく腹を空かせているだろうと思って食事を持ってきてやったのに」
「敵の施しなど受けん!」
「くくっ……そう言っていられるのは今のうちだけだ」
「……何……?」
アウティスは召使いに運ばせて、黄緑色のキャベツを皿の上に丸々置いた。
「なんだそれは……?」
「これはこの世界でキャベージというものだ、春のみに実る貴重な野菜だ、その中でも私は特に選び抜いて最も新鮮で野菜の風味が豊かなものだけを食している」
「食……す? 本気か?」
その瞬間アウティスは手刀でキャベージを刻み、瞬く間に食べやすい大きさに切った。
「野菜本来の味、……そう、本当に美味いベジタブルなら、生でも食べられる……!」
そう言いながら何もつけずにキャベージを無表情でアウティスは食べだした。
「馬鹿な! 何もつけずに食べるだと! そんなものが食えるのか⁉」
「食えるさ、野菜が新鮮なら生が一番だ……! さあ、お前も食すがいい銀色の乙女?」
そうしてアウティスは皿をメリッサのもとに持ってきた。
「馬鹿! やめろ! そんなものを私に近づけるな!」
「なに、お前もこの味が忘れられなくなって、欲しい……欲しい……とねだりだすさ」
「ふざけるな! やめろ──! うぐっ!?」
「──どうだ美味かろう?」
アウティス手づかみで彼女の口元にそれを持って行った。
「ぷは、ふざけるな、こんなもの私の口に入れるなどけがらわ……! くっ! うう!、ううん‼ けほっ、けほっ‼ や……、やめ……ろ……!、こ、れ以上……私の口を……汚すな……!」
「なーに、まだまだたくさんある。……存分に楽しめ……!」
「……まて、そんな無理やりだなんて、うわ、やめろ! やめろ────‼」
そして、メリッサの拷問の日々が始まった、毎日キャベージだけを喰わされ、彼女は口から唾液を垂らしながら、無理やり口の中に放り込まれる日々が続くのであった。
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「パパ! 起きて。もう、お昼だよ」
ん……ナオコの声が聞こえる。まぶたを開けると強い日差しに照らされていた。光が痛い、……ああ、もう昼か。森の中で、毛布にくるまって寝ていたのをナオコに起こされた。
「あれ、もうこんな時間か」
「そうだよパパ。私、おなかすいたー」
「そうか、ママが保存食用に買っておいた、肉の塩漬けでもたべよう」
「はーい」
僕もナオコと一緒に肉の塩漬けを食べる。……うーん固いな、ボリボリとした食感で辛い、でも食べないよりましだ。肉にかじりつく、ああ、メリッサが恋しい、そろそろ、メリッサがいないことに喪失感を感じ始めた。彼女がいれば食事も裁縫も移動も全部任せていられたのに。
だんだんアウティスに腹が立ってきた。なんで、あいつの思い込みでこんな目に遭わされなきゃならないんだ、次は絶対にボコボコにしてやる。
「……アンタ、よくもやってくれたわね……!」
木の棒をつきながらボロボロになったエイミアが肩で息をして森の奥からやって来た。
「やあ、おはよう」
僕は何事もないかのように普段通りの挨拶をした。
「エイミアお姉ちゃん、なにがあったの?」
ナオコは、不思議そうな目でびしょ濡れのエイミアを見つめていた。
「ふふふ、流石にお姉さんも夜中に、私の身の丈の四十倍ほどの崖から突き落とされるとは思わなかったわ……やってくれるじゃない……!」
「──それはなかなか大変だったね」
僕は平然として言葉を返す。
「……真夜中の川は寒かったわ、まさか肉食の魚と水泳競争する羽目になるとはね……」
「そいつは無事で何よりだ、エイミアも肉の塩漬け食べるかい?」
「──まあ、いいわ。お姉さん小娘じゃあるまいし、自分が原因のことでギャーギャー言わない。あっ、肉の塩漬けなら柔らかいところだけちょうだい」
こうしてエイミアに招かれながら一週間ほど移動をした。毎日エイミアが発情するため、僕は夜中じゅう逃げ回って、彼女を崖から突き落としたり狩猟用の罠に引っ掛けたり、落とし穴や檻の中に放り込む日々が続いた。懲りない奴だな、エイミアは。
「着いたわ、ここがリゴーシュという村よ」
緑の畑に包まれた農村だった。色とりどりの果実がなっており、風で甘い匂いが広がっていく、自然豊かで気持ちいいな。中世の田舎は貧しいとメリッサは言っていたけど、ここは豊かのようだ。ライ麦畑が黄金に輝く。
「あの館がアウティスの館よ」
指さすと大きな石工の塀に囲まれた、ゴシック調の巨大な館があった。中世では珍しく、窓にガラスが張っており、色のついたモザイク画の壁もある。
「ずいぶんと金持ちじゃないか」
僕がそう尋ねると、小悪魔のようにエイミアは微笑む。
「貴族だからね。本当はアウティスの兄が相続しているんだけど、体が弱くて、アウティスが実質、この館の主よ。兵はざっと百人はいて、そこら辺の領主が襲ってきてもここの兵士だけで迎撃出来るほどの防衛力を持っているわね。
さあこの難関を突破出来るかしら。貴方のことは調べてあるわ。貴方の能力の武器には制限があるそうね、さーて、アウティスにたどり着くまで持つかしらね?」
それは工夫が必要だな。メリッサに会うまで銃弾は三十九発。アウティスとの戦いのために一発でも無駄弾を使うことは避けたい。
「まずはナオコをどこかに預けたいのだけれどもいいかな」
「いいわよ、裕福な家を知っているから、そこで預けるといいわ」
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「ちょっと、待ちなさいよ、私が頼んでいるのよ!」
──ところがエイミアが商人の館でそこの執事に怒りをぶつけることになってしまった。
「いえ、ですからアウティス様のご命令で協力してはならないと」
「話にならない! 主人を呼んできなさい」
「主は病でございます」
「病なんて逃げ口上を言うな! 私が直々にたたき起こしてあげるから、どきなさい!」
エイミアは執事を投げ飛ばし、ドスドスと館に入っていった。それから数十分がたった。
「──うん、お姉さんのおかげで、なんとか預かってくれるみたいだから」
微笑みながらナオコの頭をなでるエイミア、顔は相当ひきつってはいたが。
「エイミアお姉ちゃん。大丈夫なの? 迷惑じゃないの」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ。何かあったら私がこの館に火をつけるって脅しておいたから」
心配だ……ナオコじゃなく、エイミアの頭が。
「さってと、佑月これからどうする? ここで一泊する?」
「いや、直接アウティスの館に向かう」
これ以上、エイミアと一緒にいると頭がおかしくなりそうだ。この女性と早めにおさらばしたい。すぐにその足で僕とエイミアはアウティスの館に向かった。すると門で兵が待ち構えていた、……なるほどすべては手はず通りということか。
「止まれ! 何用だ!」
こちらをちらりと見るエイミア。わかってるよ、僕には策がある。
「へゃあ!?」
瞬間、エイミアが素っ頓狂な声を上げる。僕がショートソードをエイミアの喉に当てたからだ。
「エイミア、自分が捕まったと兵士に伝えろ、ここを通さないと自分が殺されるって」
「ごめーん、私、佑月に捕まっちゃったー。アウティスの元へ案内してくれる?」
甘ったるい声を出すエイミア。このヴァルキュリア、ちゃんと兵士に伝えたのだろうか。僕にはここの世界の言葉はわからないから不安だ、彼女は。
ところがギィッと言う音がし、茂みから矢が飛んでくる。危ない! とっさに避けようとしたが、エイミアの頬をかすめた。傷口から赤い血が流れる。エイミアの笑みが崩れた。
「ちょっと! どういうことよ! 私が捕まったのよ! コイツをアウティスの元に通しなさいよ!」
交渉は上手くいってないのか……? エイミアは声を荒げていた。どうなっているんだ?
ギャーギャーとエイミアがわめき散らしていると、兵士たちがどんどん集まってくる。
「エイミア様、アウティス様がおっしゃるには、貴女が人質に取られた際にはエイミア様ごと殺しにかかれと……」
何か静かな口調で語る兵士。……ちょっと声が震えてるぞ、何しゃべったんだ?
「なんですって! アウティスが佑月を案内しろって言うからはるばる徒歩で、案内役を務めたのに、捕まったら私ごと殺せですって! ちょっとアウティス呼んできなさいよ!」
「お怒りはごもっともですが、アウティス様のご命令ですので……」
僕たちに槍を構える兵士たち。エイミアは、頬の傷から流れる血を白い指先で拭い、なめてうつむいていた。
「……切れた……マジ切れたわ、……せっかく第二の人生を与えてやって、強力な能力も与えてやったのに……この扱い……! ざっけんなよ……クソ坊主が……!」
拳をぷるぷると震わせる。矢を紡ぐ音が聞こえてくる。その時――
――ガギィ! と音を立てて、エイミアは一瞬で自分の身長より長い剣を出し、それを振り、向かってくる矢を払い兵士の盾に切りかかり一振りで叩き割った。
「いいじゃん、そっちがその気ならやってやろうじゃん! アウティス──ぶっ殺してやる──!」
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