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闘技大会開幕
第百六十話 反省会
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初戦から一日たった後、客室にメンバーが集められた。集合をかけたのは僕ではない、メリッサだ、理由はわかっている、昨日からずっと不機嫌だったから。正直おっかなびっくりであったが、チームのリーダーらしく静かに僕は座っていた。
そして、影のリーダーであるメリッサがゆっくりはっきりとに怒りを込めた声で語り始めた。
「昨日の試合は何だ……?」
みんなびくっとした、それぞれ思うことがある、みんな上手く行かなかった、シェリーでさえきちんと機能したと言えない、動きが硬く、足止めを食らっていた。まあ、援護射撃が薄かったせいもあるが。
「お前たち何のために訓練したんだ、時間をつぶすためとかレクリエーションではないんだぞ!」
「ま、まあ、メリッサちゃんの気持ちもわかるけど、ほ、ほら、みんな初戦だし仕方ないんじゃない……?」
かのエイミアでさえ、少し恐る恐るみんなのカバーをした、だが、間髪入れずにメリッサはエイミアに食って掛かる。
「エイミア、あれはなんだ? いつ私が勝手に行動しろと言った、お前が勝手に暴れたせいで、みんなが戦いの入りに集中できなかったじゃないか、流石、神階第一階層だな、私の意見など聞く耳持たぬ、そういうことか?」
「いやいやいや、あれは、ね、えーと、そう! 相手が喧嘩吹っ掛けたの、だから私は仕方なく……別にメリッサの事を下に見ているとか、作戦に不満があるとかそういうのではなくて……」
「お前が勝手に、相手に降伏勧告したからだろ! 相手はもちろん戦う気満々だったんだ、はいそうですねといくわけがないだろ! それになんだ、私は活躍したから、自分の仕事を放棄だと……?
ずいぶんとえらいな、エイミア。おかげで、レイラは死にかけたし、もしブライアンがかばわなければ死んでいたぞ! お前のせいだ、わかっているのか!」
あまりもの剣幕で小さい体でエイミアをにらみつけて、もうエイミアですらたじたじであった。遠目ではエイミアよりもメリッサの方がでかく見えたくらいだ。雰囲気を和ませようとしたのか、レイラがアシストしようとエイミアを援護する。
「で、でも、エイミアさんのおかげで、ヴァルキュリアはいなくなったし、えーと、その、結果的に勝ったからメリッサさんもそんなに怒らなくても……」
「ヴァルキュリアの始末は無用だった! むしろうちのヴァルキュリアとエインヘリャルの連携を実戦で確かめるために、真っ向から戦うべきだった、経験不足がこのザマだからな。
それにレイラ、お前なんだ、何故シェリーや佑月の援護射撃を行わなかった、もとをただせば、敵に陣形を突破されたのは弾幕が薄かったせいだ、訓練通り計画的に効率よく戦えば普通に勝てる相手だった。
レイラ、ブライアン、アデル、お前たちはいったい何の訓練をしたんだ、戦場で観客気分で成り行きを見守るためか!」
「いや、だってよ……」
アデルが言い訳をしようとするとすぐさまメリッサは速足で近づいて罵り始めた。
「だって、何だ⁉ 殺し合いだと言ったはずだ、お前らの行動で誰かが死ぬんだ、お前たちも戦力として考えて作戦を立てた、一人でも欠けたら成り立たない戦術だ、お前ら一人一人に責任がある、そう責任が!」
もう誰も反論する者などいなかった。勝ったのに葬式みたいにみんな落ち込んで静まり返っている。僕はチームがバラバラにならないようにフォローをすることにした。
「……メリッサ、もういいだろ、君の気持ちはよくわかった、君が闘技大会にかける意欲も、情熱もね。でもまだ、初戦なんだ、まだ、次がある、昨日できなかったことは次きちんとやればいい。
今回のことは次への課題としてみんなそれぞれ理解しているだろうし、この辺でしまいにしないか?」
メリッサは僕に対し何か言おうとしたが、その言葉を飲み込んだようだった。
「わかった、少し感情的になりすぎた、みんな次はもっとうまくやれ、一人のミスが誰かの命にかかわる、それを理解してくれ」
皆が静かにうなずいた。僕はメリッサにからの説教は慣れっこだったが、他のみんなは、耐性がないせいか、メリッサが黙った後も深く落ち込んで暗い雰囲気のままだ。
沈黙を破ったのは気のきかせた、小粋なねーちゃん、もとい、レイラだった。
「みなさーん、そろそろ小腹がすきません? 私買い物に行ってきますから、何か欲しい物を言ってください」
するとノリのいいエイミアがすぐさま答えた。
「プリン・ア・ラ・モード。わかる? 日本人の人生を覗いたとき一度食べてみたかったのよね、プリンにフルーツにクリームにシロップかけたやつ、別世界でも通じてる?」
「あ、はい、わかりました」
「俺はタコスだ、トウモロコシの生地に具がバーとのってる奴、エインヘリャル共通語ではこう言うんだろ?」
アデルが次に乗っかる。
「わかりました、えーと」
「あ、レイラ、私、ホットドッグがいい、マスタードとケチャップ、ドバドバで。ジャンクフード好きなの知ってるでしょ?」
ユリアの一声だ、ホットドッグはジャンクフードなのか……? それに続いて、シェリーが言う。
「あたしはタンドーリーチキンだ、スパイスが利いてる奴だ、わかるか?」
みんなメリッサの説教から解放されて気分が高揚しているのかノリがいい。つぎはナオコだった。
「私、ホットケーキ、おいしいから」
同時にこの子の手元にいるヤカバのルミコが小気味よく吠えた。
「私はチーズケーキだ」
一瞬張りのあるハスキーヴォイスで言ったので誰かと思ったが、メリッサだ。お腹が空いているのかな、じゃあ僕も言ってみるかな。
「じゃあ、僕はストロベリーパフェで」
「へっ?」
「はっ?」
「あい?」
口々に僕の発した言葉にこちらを向いた。
「ストロベリーパフェ……」
負けじと僕はオーダーを続ける。いいだろ食べたいんだよ、文句あるのか、喧嘩なら買うぞ。みんながため息をついて一瞬間が開いた後、レイラはすっきりした表情でこう言った。
「わかりました! えっと、甘いものが4っつ、辛い物3っつ、あわせて苦いものが9つですね、了解です、行ってきます」
「待った」
すぐさま僕はレイラに制止をかける。少し僕はため息をついて、メリッサに言った。
「すまない、メリッサ、買い物に行ってくれ、メニュー覚えてるだろ?」
「ああそうだな、ナオコ、買い物だ、一緒に行くか?」
「うん! いいね、外出るの楽しいから」
ルミコも気分良く吠えた。元気があっていいな子どもは。対してレイラは戸惑った様子だった。
「えっとあの……どういうことでしょうか……?」
「お前じゃあ無理だってよ」
そう言って小ばかにしたのがアデルだった。僕はすぐさま彼をにらんだ。こいつ……! レイラはしゅんとした様子で、
「ははは、そ、そうですか、買い物くらいできると思ったのになあ、はは、ダメだなあ私……」
「レイラお姉ちゃんも来てよ」
ナオコの一声にレイラは一瞬驚いた。
「荷物持ちは多いほうが良いし、レイラお姉ちゃん現地語が上手だから、凄くいてくれると頼もしいと思う、いっしょに行こっ?」
ナオコの言葉にレイラはみるみる顔がまばゆく輝くようだった。
「はい! そうですね! 買い物大好きです、ありがとうございます!」
そう言って立ち上がったメリッサとナオコにレイラは付いていった。彼女らの気配が消えた後ユリアがアデルに食って掛かった。
「お前……! 何でレイラにあんなことを言うんだ、いつもいつも……!」
「あん、ほんの冗談じゃねえか、何キレてんだか」
慌てるアデルにブライアンが立ち上がった。
「正直酷いと思います、レイラさんは善意で言ってくれているのに、あんな言い方、傷つきますよ、誰だって」
「あたしも同感だ」
今度はシェリーがアデルをにらんだ。
「お前、人を馬鹿にしてんだろ、結構あいつなりに頑張ってるレイラを。気にくわねーんだよそういうの、お前、武器作る以外、大して役に立っていないのに。なめてんのかてめえ、代わりに喧嘩買ってもいいぞ」
「抑えてシェリー……」
ダイアナは彼女をなだめるが、シェリーは頭に来ているようで、アデルを凝視し続けた。状況が悪いとみるや、アデルは慌てて釈明する。
「俺なりに場を和ませようとしただけだ、いちいちまじになんなよ、なあ?」
だがみんなは許してくれそうにない、仕方なく僕が仲裁することにした。
「アデルの言い方に問題があったが、そんなにみんな怒るんじゃない。メリッサに叱られて、イライラしているのはわかるが、チームまで壊すわけにいかないだろ、みんな落ち着いてくれ」
僕の冷静な意見に虚をつかれたのか、みなアデルに迫るのをため息をついて、止めたようだ。
3時間ほど沈黙の続く部屋で僕たちはじっとしていた。僕は外を眺めていたが、他のみんなは静かに話をしたり、何か物や道具をいじったりして時間をつぶした。遅いな、メリッサたち……。
だがようやく複数の足音が聞こえてきたので、入り口に目をやると、メリッサとナオコとレイラだった。両手いっぱいに荷物を抱えて。
「遅くなったな、すまない」
「どうしたんだい、その荷物?」
僕の質問にナオコが元気よく答えた。
「あのね、レイラお姉ちゃんがいろんな店の人と仲良くなって、すっごいみんなからプレゼントもらったんだ、みんな言ってたよ、最近では珍しい気立ての良い可愛い娘さんだって、レイラお姉ちゃんが!」
「えっとよくわかりませんが楽しくおしゃべりしてたら、皆さんからおすそ分けいっぱいもらいました、遅くなって申し訳ありません」
どうやら上手く行ったようなので僕は安心した。戦利品は食材ばかりだったが、しばらく遊んで暮らせるぐらいの量があった。やるなレイラ。どうやら人に好かれる才能があるらしい。何かに欠点があっても何か得意なものがあればそれを帳消しにして評価は上回る。
どうやらみんなレイラの事を見直したようで、シェリーなどが特にレイラを可愛がるようになった。
そして、影のリーダーであるメリッサがゆっくりはっきりとに怒りを込めた声で語り始めた。
「昨日の試合は何だ……?」
みんなびくっとした、それぞれ思うことがある、みんな上手く行かなかった、シェリーでさえきちんと機能したと言えない、動きが硬く、足止めを食らっていた。まあ、援護射撃が薄かったせいもあるが。
「お前たち何のために訓練したんだ、時間をつぶすためとかレクリエーションではないんだぞ!」
「ま、まあ、メリッサちゃんの気持ちもわかるけど、ほ、ほら、みんな初戦だし仕方ないんじゃない……?」
かのエイミアでさえ、少し恐る恐るみんなのカバーをした、だが、間髪入れずにメリッサはエイミアに食って掛かる。
「エイミア、あれはなんだ? いつ私が勝手に行動しろと言った、お前が勝手に暴れたせいで、みんなが戦いの入りに集中できなかったじゃないか、流石、神階第一階層だな、私の意見など聞く耳持たぬ、そういうことか?」
「いやいやいや、あれは、ね、えーと、そう! 相手が喧嘩吹っ掛けたの、だから私は仕方なく……別にメリッサの事を下に見ているとか、作戦に不満があるとかそういうのではなくて……」
「お前が勝手に、相手に降伏勧告したからだろ! 相手はもちろん戦う気満々だったんだ、はいそうですねといくわけがないだろ! それになんだ、私は活躍したから、自分の仕事を放棄だと……?
ずいぶんとえらいな、エイミア。おかげで、レイラは死にかけたし、もしブライアンがかばわなければ死んでいたぞ! お前のせいだ、わかっているのか!」
あまりもの剣幕で小さい体でエイミアをにらみつけて、もうエイミアですらたじたじであった。遠目ではエイミアよりもメリッサの方がでかく見えたくらいだ。雰囲気を和ませようとしたのか、レイラがアシストしようとエイミアを援護する。
「で、でも、エイミアさんのおかげで、ヴァルキュリアはいなくなったし、えーと、その、結果的に勝ったからメリッサさんもそんなに怒らなくても……」
「ヴァルキュリアの始末は無用だった! むしろうちのヴァルキュリアとエインヘリャルの連携を実戦で確かめるために、真っ向から戦うべきだった、経験不足がこのザマだからな。
それにレイラ、お前なんだ、何故シェリーや佑月の援護射撃を行わなかった、もとをただせば、敵に陣形を突破されたのは弾幕が薄かったせいだ、訓練通り計画的に効率よく戦えば普通に勝てる相手だった。
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「いや、だってよ……」
アデルが言い訳をしようとするとすぐさまメリッサは速足で近づいて罵り始めた。
「だって、何だ⁉ 殺し合いだと言ったはずだ、お前らの行動で誰かが死ぬんだ、お前たちも戦力として考えて作戦を立てた、一人でも欠けたら成り立たない戦術だ、お前ら一人一人に責任がある、そう責任が!」
もう誰も反論する者などいなかった。勝ったのに葬式みたいにみんな落ち込んで静まり返っている。僕はチームがバラバラにならないようにフォローをすることにした。
「……メリッサ、もういいだろ、君の気持ちはよくわかった、君が闘技大会にかける意欲も、情熱もね。でもまだ、初戦なんだ、まだ、次がある、昨日できなかったことは次きちんとやればいい。
今回のことは次への課題としてみんなそれぞれ理解しているだろうし、この辺でしまいにしないか?」
メリッサは僕に対し何か言おうとしたが、その言葉を飲み込んだようだった。
「わかった、少し感情的になりすぎた、みんな次はもっとうまくやれ、一人のミスが誰かの命にかかわる、それを理解してくれ」
皆が静かにうなずいた。僕はメリッサにからの説教は慣れっこだったが、他のみんなは、耐性がないせいか、メリッサが黙った後も深く落ち込んで暗い雰囲気のままだ。
沈黙を破ったのは気のきかせた、小粋なねーちゃん、もとい、レイラだった。
「みなさーん、そろそろ小腹がすきません? 私買い物に行ってきますから、何か欲しい物を言ってください」
するとノリのいいエイミアがすぐさま答えた。
「プリン・ア・ラ・モード。わかる? 日本人の人生を覗いたとき一度食べてみたかったのよね、プリンにフルーツにクリームにシロップかけたやつ、別世界でも通じてる?」
「あ、はい、わかりました」
「俺はタコスだ、トウモロコシの生地に具がバーとのってる奴、エインヘリャル共通語ではこう言うんだろ?」
アデルが次に乗っかる。
「わかりました、えーと」
「あ、レイラ、私、ホットドッグがいい、マスタードとケチャップ、ドバドバで。ジャンクフード好きなの知ってるでしょ?」
ユリアの一声だ、ホットドッグはジャンクフードなのか……? それに続いて、シェリーが言う。
「あたしはタンドーリーチキンだ、スパイスが利いてる奴だ、わかるか?」
みんなメリッサの説教から解放されて気分が高揚しているのかノリがいい。つぎはナオコだった。
「私、ホットケーキ、おいしいから」
同時にこの子の手元にいるヤカバのルミコが小気味よく吠えた。
「私はチーズケーキだ」
一瞬張りのあるハスキーヴォイスで言ったので誰かと思ったが、メリッサだ。お腹が空いているのかな、じゃあ僕も言ってみるかな。
「じゃあ、僕はストロベリーパフェで」
「へっ?」
「はっ?」
「あい?」
口々に僕の発した言葉にこちらを向いた。
「ストロベリーパフェ……」
負けじと僕はオーダーを続ける。いいだろ食べたいんだよ、文句あるのか、喧嘩なら買うぞ。みんながため息をついて一瞬間が開いた後、レイラはすっきりした表情でこう言った。
「わかりました! えっと、甘いものが4っつ、辛い物3っつ、あわせて苦いものが9つですね、了解です、行ってきます」
「待った」
すぐさま僕はレイラに制止をかける。少し僕はため息をついて、メリッサに言った。
「すまない、メリッサ、買い物に行ってくれ、メニュー覚えてるだろ?」
「ああそうだな、ナオコ、買い物だ、一緒に行くか?」
「うん! いいね、外出るの楽しいから」
ルミコも気分良く吠えた。元気があっていいな子どもは。対してレイラは戸惑った様子だった。
「えっとあの……どういうことでしょうか……?」
「お前じゃあ無理だってよ」
そう言って小ばかにしたのがアデルだった。僕はすぐさま彼をにらんだ。こいつ……! レイラはしゅんとした様子で、
「ははは、そ、そうですか、買い物くらいできると思ったのになあ、はは、ダメだなあ私……」
「レイラお姉ちゃんも来てよ」
ナオコの一声にレイラは一瞬驚いた。
「荷物持ちは多いほうが良いし、レイラお姉ちゃん現地語が上手だから、凄くいてくれると頼もしいと思う、いっしょに行こっ?」
ナオコの言葉にレイラはみるみる顔がまばゆく輝くようだった。
「はい! そうですね! 買い物大好きです、ありがとうございます!」
そう言って立ち上がったメリッサとナオコにレイラは付いていった。彼女らの気配が消えた後ユリアがアデルに食って掛かった。
「お前……! 何でレイラにあんなことを言うんだ、いつもいつも……!」
「あん、ほんの冗談じゃねえか、何キレてんだか」
慌てるアデルにブライアンが立ち上がった。
「正直酷いと思います、レイラさんは善意で言ってくれているのに、あんな言い方、傷つきますよ、誰だって」
「あたしも同感だ」
今度はシェリーがアデルをにらんだ。
「お前、人を馬鹿にしてんだろ、結構あいつなりに頑張ってるレイラを。気にくわねーんだよそういうの、お前、武器作る以外、大して役に立っていないのに。なめてんのかてめえ、代わりに喧嘩買ってもいいぞ」
「抑えてシェリー……」
ダイアナは彼女をなだめるが、シェリーは頭に来ているようで、アデルを凝視し続けた。状況が悪いとみるや、アデルは慌てて釈明する。
「俺なりに場を和ませようとしただけだ、いちいちまじになんなよ、なあ?」
だがみんなは許してくれそうにない、仕方なく僕が仲裁することにした。
「アデルの言い方に問題があったが、そんなにみんな怒るんじゃない。メリッサに叱られて、イライラしているのはわかるが、チームまで壊すわけにいかないだろ、みんな落ち着いてくれ」
僕の冷静な意見に虚をつかれたのか、みなアデルに迫るのをため息をついて、止めたようだ。
3時間ほど沈黙の続く部屋で僕たちはじっとしていた。僕は外を眺めていたが、他のみんなは静かに話をしたり、何か物や道具をいじったりして時間をつぶした。遅いな、メリッサたち……。
だがようやく複数の足音が聞こえてきたので、入り口に目をやると、メリッサとナオコとレイラだった。両手いっぱいに荷物を抱えて。
「遅くなったな、すまない」
「どうしたんだい、その荷物?」
僕の質問にナオコが元気よく答えた。
「あのね、レイラお姉ちゃんがいろんな店の人と仲良くなって、すっごいみんなからプレゼントもらったんだ、みんな言ってたよ、最近では珍しい気立ての良い可愛い娘さんだって、レイラお姉ちゃんが!」
「えっとよくわかりませんが楽しくおしゃべりしてたら、皆さんからおすそ分けいっぱいもらいました、遅くなって申し訳ありません」
どうやら上手く行ったようなので僕は安心した。戦利品は食材ばかりだったが、しばらく遊んで暮らせるぐらいの量があった。やるなレイラ。どうやら人に好かれる才能があるらしい。何かに欠点があっても何か得意なものがあればそれを帳消しにして評価は上回る。
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