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二つの死闘
第百八十二話 敵情視察
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僕たちがコロッセウムに行く準備ができた後、館の玄関ホールでナオコがやってきた。不思議に思って僕は聞いてみた。
「ナオコ、どうしたんだい、闘技大会に興味があるのかい?」
「別にそうじゃないけど、パパ、クラリーナさんと一緒なんでしょ、パパが何かしでかすんじゃないかって、子どもとして心配!」
「ははは……そうか」
信用ないのね、僕。悲しい。娘に嫌われるようなことをしてる自覚はあるからなあ、といっても、クラリーナみたいに気さくに話し合える女性もいないし、メリッサははっきりとした性格なので、ちょっと相談すると、きつい返しが来るので困る時がある。
まあ、割と悩んでいること多いから、文通ぐらいは許してほしいんだけど。
僕はクラリーナをちらりと見る、返事の手紙を渡そうかと思ったけど、今渡すとみんながいるから角が立つので、やめた。とりあえずコロッセウムに向かおう。
あいかわらず盛況なようで、観客は満員だ、前回の戦いで目立つようなことをした僕は、正直彼らに殴られる覚悟があったけど、別に僕を見ても外人かってことで変な目で見るだけで、避けられるだけだ。あまり外人の見分けがつかないのかな、彼らは。
選手入場の時間だ、それぞれまちまちの衣装を着ていて、青軍猛虎隊のような、際立った人間もいなさそうだ。よくありそうなエインヘリャルたち、さてこいつらはどういう戦いをするのかな。
「あちらの、槍を構えているのが磊落アシャ同盟。剣が主体なのが、オーチカ共同組ですね。まあ、前の試合を見た限り、戦力は互角といった感じでしょうか、青軍猛虎隊のときは佑月さん苦労なされましたね」
僕は一瞬誰が言ったのかよくわからなかった、クラリーナのように澄んだ高い女性の声じゃなく、甘ったるい、ねっとりした、口調だったので、虚を突かれた気分だ。よく周りを見てみると、そこにはゴスロリ青髪のララァがいた。
「ララァ!?」
皆が口をそろえて、突然出現した、厄介な女性に、驚いた。それをララァは微笑みながらこちらを見渡すと、「げっ……!」と珍しく、低い声でまずいものを見たかのような表情をする。
「ララァ! あなた何をしているのです!」
「ま、まあ、クラリー姉さま、お久しぶりですね、ああ今日も美しい、さすが、赤竜の聖乙女、眩しいですわ」
「クラリー姉さま!?」
僕たち、エイミア以外が二人を見比べる、えっ、どういう関係だ、接点とか見つからなそうだぞ、性格反対だし。クラリーナは怒った口調でララァをとがめた。
「そんなこと言ってもごまかされませんからね、なんで、私に会いに来ないのですか! 貴女には言いたいことが山ほどあります。それに何です、佑月さんに腕組んだりして、彼は妻帯者ですよ! わきまえなさい、はしたない」
「あ、あらー、いやはや、どういたしましょう……?」
「で、佑月さんとどういう関係なんです?」
クラリーナは手紙で僕の資料を読んだと聞いたけど、教会団の刺客ということは伏せられていたのかな、ララァとリリィが戦いを挑んできたのに。
「えーと、なんともうしましょう、愛人とかペットとか言ったら、クラリー姉さまに斬られますね……、まあ怖い」
「そんなでたらめ、私には通じません、貴女ホント昔から嘘つきですから」
「あはは……」
ララァが乾いた笑いを浮かべている、珍しいな、ララァがクラリーナを苦手そうにしているなんて。彼女たちのことを詳しく知っているわけじゃないけど、二人は親しそうだし、なんか因縁があるのかな。
「だいたいなんですかその服装は、ふしだらな。フリフリのミニスカートなど、女性としてVラインは神聖な場所です、下着が見えたらどうするんですか。私みたいに前と後ろだけ隠しなさい」
いや、クラリーナ、君の腰からむっちり太もも丸出しもかなりえっちだぞ。傍にいるときは見ないふりをしているけど、そう言われると意識してしまうから仕方ない。
「あら、それには反論があります。クラリー姉さまのように、わたくし、足が長くありませんので、ミニスカートで長く美しく女性の足を見せているのですよ。それについてお姉さまがつべこべ言うのは心外ですね」
「ララァ、でも貴女後ろからよく下着まるだしになるので、恥ずかしくないのですか、女性として」
「サービスと思えばいいじゃないですか、わたくし小尻なので。お姉さまみたいにセクシーな腰つきしていませんから」
彼女らが女性のセクシャルな部分を言い合っていると、シェリーが顔を赤らめて慌てつつ怒りはじめた。
「お、おい、お前ら、そんなことより、さあ、試合を見に来たんだ、そっちのほうに注目しろよ!」
ああ、そうか、シェリーはレズビアンだからな、ムラっと来たのか。意外と性関係には敏感なんだ。僕は昔、日向さんにセクハラまがいな女子アピールしまくられて耐性ついているけど、そっちにぐいぐい行く女性は苦手なんだな。男っぽい行動するのに、珍しい。
で、すぐさま、試合開始の角笛が鳴ったので、僕は試合場に集中する。
両チームとも開始とともに相手へと走りこむ、アシャ同盟は槍戦士二人で中央を固めている、そして鎧を着た女性、まあ、ヴァルキュリアだろうが両翼で固めており、バックラインに三人の男、恐らく遠距離能力者だろう。3-3-2-2でバランスのいいコンパクトな陣形をしている。
対し、オーチカは中央を盾の鎧戦士、両サイドに剣の女騎士と言えるようなヴァルキュリアと違う鎧を着ていて、もしかすると女エインヘリャルかも知れない、ちょっと世界観の違う格好だ。
そして中央にヴァルキュリア2人その後ろに黒いヴァルキュリアが1人。その後ろにバックラインとして、両翼にヴァルキュリア、中央に遠距離エインヘリャルだろう男たちが走りこんでいる。陣形は4-3-3、サッカーで言うとバルサ式の陣形に近いだろう。
僕は不思議に思った、サッカーならともかく、戦闘でヴァルキュリアが中央に固まる必要性がわからない。だから、戦術に詳しいメリッサに聞いてみることにした。
「メリッサ、オーチカの中央の中盤3人をヴァルキュリアで固める理由はなんだい、さっぱりだ」
「近距離可変型陣形だ、中央の盾が真ん中を引き付け、その傍から、中盤のヴァルキュリアがバックラインへと走りこむ、それと同時に前線のエインヘリャルがさっきの楔となったヴァルキュリアのバックスペースに走り、中央のバックラインのエインヘリャルを殲滅する。
そしてオーチカバックラインのヴァルキュリアが相手両翼のヴァルキュリアの相手をする。そうするとアシャ同盟の中盤の両翼ヴァルキュリアが余ることになる。で、実質、ヴァルキュリアを無効化できる。そして最後の中央のエインヘリャルが全体攻撃で補助。
非常に攻撃な戦い方だ。相手を研究している。守り固めたアシャ同盟の良さを消すための戦術だ」
「なるほど、相手陣形を崩すために、ヴァルキュリアを有効活用して、守備的なアシャ同盟を倒すつもりか」
メリッサの予想通り、中央で槍戦士とハンマーを持った盾戦士が衝突した、その後、サイドと空いているところの隙間に楔としてオーチカのヴァルキュリアが走りこむ。その時、アシャ同盟は中盤のヴァルキュリアが相手をしようとするがそのまま突っ切る。
そこに、オーチカの両翼、サイドの女騎士が剣で相手のヴァルキュリアごと斬って、突き進み後方のエインヘリャルを攻撃し始めた。戦闘時間は10分ほどであった、オーチカ共同組の勝利だ。
面食らっていたのがクラリーナだ、あっという間の、オーチカ圧勝だとは思わなかったのだろう。戦術的勝利だ。
「なぜ、このような展開に……」
「あの戦闘を指揮していた黒いヴァルキュリアを見ろ」
クラリーナに対しメリッサが告げる、僕たちは言う通り黒いヴァルキュリアを見つめた。黒に金髪のセミロングのヴァルキュリアで大人っぽい女の色気を感じる。メリッサは静かに目を細めながら宣告した。
「あいつはヴァルキュリア大戦での後半、創造神側のヴァルキュリアの指揮を執っていった、指揮官、アメリーという。そして……、私の上司であり、戦いの師でもある──黒炎のヴァルキュリアだ」
「あいつが!?」
因縁があるだろうエイミアが驚いて反問する。メリッサは、試合場で剣を掲げるアメリーとにらみ合っていた。
「ナオコ、どうしたんだい、闘技大会に興味があるのかい?」
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「ははは……そうか」
信用ないのね、僕。悲しい。娘に嫌われるようなことをしてる自覚はあるからなあ、といっても、クラリーナみたいに気さくに話し合える女性もいないし、メリッサははっきりとした性格なので、ちょっと相談すると、きつい返しが来るので困る時がある。
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選手入場の時間だ、それぞれまちまちの衣装を着ていて、青軍猛虎隊のような、際立った人間もいなさそうだ。よくありそうなエインヘリャルたち、さてこいつらはどういう戦いをするのかな。
「あちらの、槍を構えているのが磊落アシャ同盟。剣が主体なのが、オーチカ共同組ですね。まあ、前の試合を見た限り、戦力は互角といった感じでしょうか、青軍猛虎隊のときは佑月さん苦労なされましたね」
僕は一瞬誰が言ったのかよくわからなかった、クラリーナのように澄んだ高い女性の声じゃなく、甘ったるい、ねっとりした、口調だったので、虚を突かれた気分だ。よく周りを見てみると、そこにはゴスロリ青髪のララァがいた。
「ララァ!?」
皆が口をそろえて、突然出現した、厄介な女性に、驚いた。それをララァは微笑みながらこちらを見渡すと、「げっ……!」と珍しく、低い声でまずいものを見たかのような表情をする。
「ララァ! あなた何をしているのです!」
「ま、まあ、クラリー姉さま、お久しぶりですね、ああ今日も美しい、さすが、赤竜の聖乙女、眩しいですわ」
「クラリー姉さま!?」
僕たち、エイミア以外が二人を見比べる、えっ、どういう関係だ、接点とか見つからなそうだぞ、性格反対だし。クラリーナは怒った口調でララァをとがめた。
「そんなこと言ってもごまかされませんからね、なんで、私に会いに来ないのですか! 貴女には言いたいことが山ほどあります。それに何です、佑月さんに腕組んだりして、彼は妻帯者ですよ! わきまえなさい、はしたない」
「あ、あらー、いやはや、どういたしましょう……?」
「で、佑月さんとどういう関係なんです?」
クラリーナは手紙で僕の資料を読んだと聞いたけど、教会団の刺客ということは伏せられていたのかな、ララァとリリィが戦いを挑んできたのに。
「えーと、なんともうしましょう、愛人とかペットとか言ったら、クラリー姉さまに斬られますね……、まあ怖い」
「そんなでたらめ、私には通じません、貴女ホント昔から嘘つきですから」
「あはは……」
ララァが乾いた笑いを浮かべている、珍しいな、ララァがクラリーナを苦手そうにしているなんて。彼女たちのことを詳しく知っているわけじゃないけど、二人は親しそうだし、なんか因縁があるのかな。
「だいたいなんですかその服装は、ふしだらな。フリフリのミニスカートなど、女性としてVラインは神聖な場所です、下着が見えたらどうするんですか。私みたいに前と後ろだけ隠しなさい」
いや、クラリーナ、君の腰からむっちり太もも丸出しもかなりえっちだぞ。傍にいるときは見ないふりをしているけど、そう言われると意識してしまうから仕方ない。
「あら、それには反論があります。クラリー姉さまのように、わたくし、足が長くありませんので、ミニスカートで長く美しく女性の足を見せているのですよ。それについてお姉さまがつべこべ言うのは心外ですね」
「ララァ、でも貴女後ろからよく下着まるだしになるので、恥ずかしくないのですか、女性として」
「サービスと思えばいいじゃないですか、わたくし小尻なので。お姉さまみたいにセクシーな腰つきしていませんから」
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で、すぐさま、試合開始の角笛が鳴ったので、僕は試合場に集中する。
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対し、オーチカは中央を盾の鎧戦士、両サイドに剣の女騎士と言えるようなヴァルキュリアと違う鎧を着ていて、もしかすると女エインヘリャルかも知れない、ちょっと世界観の違う格好だ。
そして中央にヴァルキュリア2人その後ろに黒いヴァルキュリアが1人。その後ろにバックラインとして、両翼にヴァルキュリア、中央に遠距離エインヘリャルだろう男たちが走りこんでいる。陣形は4-3-3、サッカーで言うとバルサ式の陣形に近いだろう。
僕は不思議に思った、サッカーならともかく、戦闘でヴァルキュリアが中央に固まる必要性がわからない。だから、戦術に詳しいメリッサに聞いてみることにした。
「メリッサ、オーチカの中央の中盤3人をヴァルキュリアで固める理由はなんだい、さっぱりだ」
「近距離可変型陣形だ、中央の盾が真ん中を引き付け、その傍から、中盤のヴァルキュリアがバックラインへと走りこむ、それと同時に前線のエインヘリャルがさっきの楔となったヴァルキュリアのバックスペースに走り、中央のバックラインのエインヘリャルを殲滅する。
そしてオーチカバックラインのヴァルキュリアが相手両翼のヴァルキュリアの相手をする。そうするとアシャ同盟の中盤の両翼ヴァルキュリアが余ることになる。で、実質、ヴァルキュリアを無効化できる。そして最後の中央のエインヘリャルが全体攻撃で補助。
非常に攻撃な戦い方だ。相手を研究している。守り固めたアシャ同盟の良さを消すための戦術だ」
「なるほど、相手陣形を崩すために、ヴァルキュリアを有効活用して、守備的なアシャ同盟を倒すつもりか」
メリッサの予想通り、中央で槍戦士とハンマーを持った盾戦士が衝突した、その後、サイドと空いているところの隙間に楔としてオーチカのヴァルキュリアが走りこむ。その時、アシャ同盟は中盤のヴァルキュリアが相手をしようとするがそのまま突っ切る。
そこに、オーチカの両翼、サイドの女騎士が剣で相手のヴァルキュリアごと斬って、突き進み後方のエインヘリャルを攻撃し始めた。戦闘時間は10分ほどであった、オーチカ共同組の勝利だ。
面食らっていたのがクラリーナだ、あっという間の、オーチカ圧勝だとは思わなかったのだろう。戦術的勝利だ。
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クラリーナに対しメリッサが告げる、僕たちは言う通り黒いヴァルキュリアを見つめた。黒に金髪のセミロングのヴァルキュリアで大人っぽい女の色気を感じる。メリッサは静かに目を細めながら宣告した。
「あいつはヴァルキュリア大戦での後半、創造神側のヴァルキュリアの指揮を執っていった、指揮官、アメリーという。そして……、私の上司であり、戦いの師でもある──黒炎のヴァルキュリアだ」
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