マルテナ徒然抄 ~ 100cats 姉妹物語 ~

季徒川 魚影

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(二十四)酷暑のはじまりと、専用『リバー・リゾート』

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 午前中、あまりにも暑いので、早朝、ミエコおばさんの様子を見に行き、エアコンなんかのチェックをしてから、仕入れに行ったんだよね。
「今日も、暑くなりそうですね」
「そうだよ、畑なんて、朝しか行けないよ。今日はね、夏野菜いっぱい持ってって」
 イシイの奥さんと、コメの話になって、一昨年辺りから、増産すべきなんじゃない、という話がJA会員の間で出ていて、そうしてきたんだけど、このところのトランプの圧力で、アメリカ米の輸入圧力がかかってることを、相当心配していたよ。僕は、まさか、自分がカリフォルニア米を食べているとは、口が裂けても言えない、と思ったね。なんか、この雰囲気では、かなりの『反動』、いや、利権の反発が起きるなあ、政権は大丈夫か。農政族が動き出すな。
 朝食は蕎麦にした。冷たいやつ。
 その後、昨日の今日で、陸上部が気になったので、中学校まで様子を観に行ったよ。この暑さでは、効率よく練習しないと、体調を崩すからね。
「カツマタくん、どう、昨日の練習で、足痛くなったりしてない」
「あ、大丈夫です」
「冷やした」
「冷やしました。それと、ウサミとマッサージも少し」
「そ、その調子だね」
 僕は、練習量を減らして、とにかく短時間で集中してやることを伝え、余った時間で、筋トレを、日陰でやるように言い、ハルヤマ先生には、校舎で日陰になって筋トレ出来そうな場所を確認してもらったよ。そしたら、理科室前の廊下が風通しもよく良いらしい、ということが判明。使わせてもらうように交渉してもらい、オッケーということに。
 とにかく、無理しないように伝えたのと、明日の日曜は部活ないけど、家でも、筋トレはできるので、それも一つの重要なトレーニングだということを釘さして、帰ることに。
 闇雲に走り込むのは、やっぱ良くなくて、かといって、全く何もしないのも、ダメなんだよね。
 帰って、菜園の様子を見回る。ジョウロを持って。昨日の少しの雨のお陰で、干上がってはいないが、水ナスや、キュウリには、水をやっておいたほうが良いよね。
 まだ、十一時前なので、アパートで休むことに。『嵐が丘』の続きを読む。ぼうちゃんが寄ってくる。暑さも気をつけないといけないけど、エアコンも、あまりよくないよね、ぼうちゃん。
「上の棚に行ったほうが良いんじゃないか、ぼうちゃん。あそこのほうが過ごしやくないか」
 余計なお世話か。そう思ったらいくよね、勝手に。
 猫は自己犠牲を払わないから良いよね。別に犬さんだって、無理はしてないと思うけど、やっぱね、飼い主の躾に従っているわけだし。
 昔、タカヤマさんの現場で、チャウチャウ犬が、暑さで亡くなったことがあったよな。なんで、暑いよって、大騒ぎしなかったんだろうか、あの犬。熱中症だよね、あれ。
 そんなことを考えていて、活字を追えなくなったので、ネットで「猫の暑さ対策」を検索。基本的に、猫は暑さに強く、寒さに弱い傾向にあるけど、やっぱ「長時間の留守番には注意」ってあるじゃん。やばい。長時間外出するときは、ミエコおばさん家に連れて行こうっと。それと、ふたりとも外出するときは、キャリー・バックで連れて行くべきだね。あぶなかったなあ。こう暑いとね。
 もう、昼だね。何食べようか。ぼうちゃんを連れて、おばさん家へ。
「おばさん、お昼なにする。暑くて、食欲ないよね」
「いいや、ぜんぜん」
 ちぇっ、心配して損した。昭和の年寄は元気だねえ。
「じゃあ、カレーでも作るか。豚肉と水ナスの」
「いいじゃん。じゃあ、わたしサラダ作る」
 
 午後、テナントさんのご機嫌伺いに回ったよ。大家らしいでしょ。何か、不具合なんか無いかどうかね。チェック、チェック。アパートの方も、設置したる『目安箱』を確認。とりあえず、何も入ってなかった。アパートの住人を一軒一軒ノックして歩くにはいかないからね。嫌がられるし。
 思い立って、駐車場への井戸水散水、いわゆる『打ち水』ってやつを実施。まあ、ホースで撒くんですけどね。ついでに、畑にも二回目の散水。このほか、雨水タンクが三個設置されているが、今回は使わない。
 水を撒いているうちに、川に行きたく鳴ったので、出かけることに。ミエコおばさんは行かないらしい。
 毎夏、何度か行くのだが、酒匂川の上流の川音かわおと川。河原が広く、涼むのにはもってこいなのだが、意外に人は少ない。これは習慣の問題で、近頃は、川では遊ばないのが常識なのだ。でも、その御蔭で、僕の特等席に鳴っている。持っていくのは、小さなテントと、クーラーボックス、アウトドア。チェア。
 もちろん、海パンに着替えて、水浴びもする。僕的には、こう暑くては川しか無い。車で三十分くらいで着く距離だからね。僕は、さっさと準備をしてすぐに向かう。
 タカヤマ親方の知り合いの家が常のパーキングだ。勝手に停めて、フロントフラスにメッセージ入りの紙を貼って置けばオーケーなんだよね。まいど、助かります。
 河原は、案の定、人はおらず、渇水状況もちょうどよく、水浴び日和である。
 早速、マットを敷いて、ワンタッチでテントを開き、固定してっと。椅子を出し座る。川の音がするだけで、何となく、すでに涼しい感じ。
 本当は、ビールと行きたいところだが、車なので無理。クラブソーダを取り出して飲む、最高だ。この季節がやてきた。しばらくして、テント内で海パンに着替える。足には、マリンシューズ。水中メガネは必須。この辺は、水深が平均五十センチくらいなので、危険がない。何で、みんな来ないのだろう。昨年は、大学生のような男三人組が来ていた。あと、せいぜい、鮎釣りの人がちらほら程度なんだよね。
 もう、暑くて我慢出来ないので、川に入る。下流からコンクリートブロックの少し深くなったところへアプローチ。水はなかなか冷たい。最初はしゃがんで、水温に慣れさせ、水中メガネを装着。ヨモギの曇り止めは、あとで良いか。泳ぎ出すが、手で川底を這うように進める。それくらいの深さである。気持ちいいぜ―。ハヤや鮎が泳いでいるのが見える。
 このあたりは、ニジマスも居るはず。以前釣ったことがある。コンクリートブロックの横が比較的流れが早く、深くなっている。ヨシノボリを石に張り付きながら、移動している。最高だ。
 五分もしないで、水中メガネが曇りだしたので、曇り止めを施すべく、河原に上がって、ヨモギを探す。石の上で、ヨモギを潰し、川の水に少し浸して、緑色の液体を水中眼鏡の内側にしぼり出す。それをまんべんなく伸ばして、洗い流す。天然の曇り止めだ。
 再度、泳ぐ。
 十分も泳げば十分に涼しい。そしたら、マットの上で日光浴である。
 この場所は、川で泳ぎたいと行った僕を、ユウおじさんが連れ出して、散策して見つけた場所なんだよね。酒匂川本流では、なかなか、泳げる雰囲気の場所はなく、おそらく、注意されるだろうし、ということで支流に来たんだよね。こっちのほうが、水質も良いってことで、ここになった。
 しかし、三十度は超えてるよね。川に来なくてどうする、って感じですよ。もちろん、海でも良いんだが、何か、一人で行く感じじゃないでしょ、海辺は。それに真鶴や湯河原あたりなら、一人で行っても様になるが、小田原港じゃあねえ。やっぱ、近いし、人がいないし、ここだよね。
 ほとんど、貸し切りの『リバー・リゾート』。
 あとで、解ったんだけど、この日、猛暑日だったらしい。
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