やっぱり、フランスは嫌いだと思った。 ※普通の日記です

鏡子 (きょうこ)

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名前忘れてた。ごめんなさい。

悔しさを思い出してみよう。

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 怪しい判定はいくつも見てきましたが、これほどの誤審を目の当たりにしたのは初めてです。私の隣に座っていたプロ野球元日本ハム監督の大沢啓二さんが、やにわに椅子から立ち上がり、「おい、どうなっているんだ!? 逆じゃないか」と叫んだことも、今となっては懐かしい思い出です。
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会心の内股すかし
 2000年9月22日、シドニー五輪柔道男子100キロ超級決勝。日本代表の篠原信一選手には、1988年ソウル大会の斉藤仁さん以来の最重量級金メダルの期待がかかっていました。
 相手はフランスのダビド・ドゥイエ選手。オリンピックでは92年バルセロナ大会で銅、96年アトランタ大会で金(いずれも95キロ超級)。シドニーでは五輪連覇を狙っていました。
 篠原選手は青、ドゥイエ選手は白の柔道着で決勝の畳に上がりました。今では見慣れた光景ですが、シドニーは五輪史上初めてカラー柔道着が採用された大会でもありました。
 会場が沸いたのは開始から1分半が過ぎたあたりです。ドゥイエ選手の内股を藤原選手が見事な内股すかしで切り返したのです。
 咄嗟の切り返し技ではありません。篠原選手は、ドゥイエ選手がケン、ケン、ケンで内股を仕掛けてくるクセを読み切っており、3回目のケンに合わせて足を抜き、自らの引き手で相手の左袖を引いたのです。
 背中から引っくり返ったドゥイエ選手を見て、篠原選手はガッツポーズをつくりました。一本だと思ったのです。当然でしょう。
 ところが、審判を見ると主審と2人いる副審のうちのひとりが有効のジェスチャーをしているではありませんか。
「おいおい、なんでだ。今のは一本だぞ! おいおい……」
 一本が有効に変わっただけでもショックなのに、電光掲示板を見たら、あろうことかドゥイエ選手にポイントがついていたのです。
「負ける、負ける、負ける……」
 篠原選手が混乱したのは言うまでもありません。斉藤仁ヘッドコーチから「信一、オマエがポイントをとられているんだ。攻めろ!」と檄が飛びましたが、平常心を取り戻すのは容易ではありません。
「このままじゃヤバイ。負ける、負ける、負ける……。焦れば焦るほど技ってかからないんです。そしてブザー。“あぁ、オレは本当に負けてしまったんだ……”。気が付くと控え室の隅にすっぽりとタオルをかぶった自分がいました」
 篠原選手が表彰台で見せた悔し涙は、多くの人たちの同情を誘いました。かくいう私も、もらい泣きしそうになりました。実力で負けたのなら諦めもつきます。しかし、誤審で金が銀に変わってしまったのです。「オレの人生、返してくれ」と言いたくなるところです。
 後日、篠原選手に涙の意味について聞くと、予期せぬ答えが返ってきました。
「実は2分40秒くらいにドゥイエは指導をとられ、ポイントの上では並んでいるんです。それなのに、自分は慌ててしまった。“これが一本じゃないんだったら、何が一本なんだ。じゃあもう一回投げてやろう”という前向きな気持ちに、なぜなれかなかったのか。それが悔しくて涙が溢れ出てしまったんです。よく柔道に限らず、武道は心技体が大切だと言われます。その中で最も大切なのが心の部分。自分は気持ちを切り換えられなかった。強い心を持てなかった。そんな自分自身に腹が立って、何でだ、何でだと……。それが、あの涙の正体だったと思います」
 先に、シドニーはカラー柔道着が採用された初めての大会だったと述べましたが、採用の理由は「どちらが技をかけたかわかりやすく、誤審が減る」というものでした。皮肉にも結果は逆でした。
 しかし、大会後、ビデオ判定導入の機運が高まり、2005年に国際柔道連盟(IJF)は正式採用を決めました。篠原選手に対する誤審がIJFを動かしたのです。
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