LARGO:ReBOOT~追放先の異常事態が、世界の根幹を揺るがす~

ターキン

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―第1章:リベルタス騒乱―

第12話:協力関係

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 ――ラルゴが力なく地面に倒れる。
 それと同時に、一つの声が響き渡った。

 「――きゅうせいしゅ……さぁんじょぉ!!」

 薄暗い坑道の大広間には場違いな、甲高い女の声。
 それはまるで、見計らっていたかのように突然現れた。

 しなやかな女性のシルエットをぴっちりと包んだ、光沢を放つ白黒のスーツ。
 そして顔全体を覆う、無機質なフルフェイスの兜。
 それらは時折、ぼんやりとした蛍光色の輝きを放っている。

 「黒鉄さん、今助けますからね!」
 
 言葉と同時に、女は腰から取り出した注射器をラルゴの右腕に勢いよく突き刺した。
 すると、ラルゴを蝕んでいた血管のような魔力痕が収まり、ひび割れていた皮膚が徐々に元通りになっていく。
 
 「さあ、私が来たからにはもう安心ですよ!」
 「……」
 
 女はラルゴを揺さぶり起こそうとするが、帰ってくる反応は無い。

「えーと……私ちょっと手遅れでしたかね?」
 
 そう独り言を呟く女の前方で、大きな衝撃音と共に岩壁が弾けた。
 巻き起こる土煙の中から、フードの男が息を切らしながら姿を現す。

「テメェ……やってくれた……なぁ……?」

 男は倒れたラルゴと、それを抱き抱える奇怪な姿の女を前に目を丸くした。

「なんだァ? てめェ……」

 戸惑いながらも長刀を構える男に対し、女は瞬時に大見得を切る。
 身体を抱えられていたラルゴが、ずるりと地面に滑り落ちた。

「何を隠そう、私こそが!」

 そこまで言って、女は時が止まったかのように静止した。
 僅かな静寂。
 対する男も、呆れて構えを緩めていた。

 「……ってまだ駄目なんでした――! はぁ~……先生がいないと私ほんとダメですね!」

 女はひとりでに呟きながら身体をくねらせている。

「なんなんだ……女? こいつの仲間か?」
「仲間ッ…………そ、そうなんでしょうかねぇ!? エヘヘ、実際窮地救っちゃってますし!? ってまだ救えてない!? ど、どうしよう!」

 そう慌てふためく女を前に、男は青筋を立てた。

「馬鹿にしてんのかテメェ!」 
 
 男は握る長刀に風の魔力を渦巻かせ、力強く飛び上がった。

「……迎撃ッ! 」
 
 すると、女は先ほどまでの挙動不審ぶりが嘘のように姿勢を正し、両腕を前に構える。
 女の前腕を覆う二つの無機質なグローブが、蛍光色の輝きを放った。
 同時に指先から発せられた魔力が、瞬く間に雲の様相を呈した。

「撃ち払え――ライウン!!」
 
 男の視界を覆いつくした魔力は暗雲と化し、雷鳴を轟かせた。
 同時に奔る雷撃が男を貫く。

「うぐわぁっ!」
 
 男は電流に身悶えながら、再び岩壁に叩きつけられた。
 
 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇  

 立ち込める暗雲は去り、視界が晴れる。
 男が激しく息を切らしながら岩壁にもたれかかる。
 そこには、先ほどまで対峙していた二人の姿はない。
 残っていたのは、あたり一面に散らかった骨や木片の痕。
 そして……黒鉄の大盾があった。

 「何だったんだ……奴らは?」
 
 そう呟くと、奥から一人の女の声が聞こえてくる。

「何があったんですか!? ザイール!」

 紫のツインテールを振り乱し、わき目も降らずに倒れた男に駆け寄る。
 その女は、ノトスギルドの受付嬢レイジーだった。

「やられたぜ、まさかこんなところに訪問者が来るとはな……」
「あなたともあろう者が……一体どんな使い手だったんで――」

 レイジーの視線が、残されていた大盾に注がれる。

「あれはラルゴさ……いや、黒鉄のラルゴの……」
「黒鉄の……ラルゴ?」
「ええ。 そういえば話していませんでしたね。 彼は――」

 ザイールは一通りラルゴの情報をレイジーから引き出した。

「ラルゴか……次会う時は必ず……うぐ!」

 言葉を発すると同時に、ザイールは左腕を抑え見悶えた。
 
「ザイール!? 傷が深そうです、すぐに博士に見てもらわないと」
「ごほっ……心配してくれるのは嬉しいが、このくらいなんてことねぇよ……」
「言動と行動が見合ってませんが……」
「ちょっと休めば治る……それより、あの女は一体なんだったんだ?」
「女? ラルゴさ……の他に女がいたんですか? どんな?」
「どんな……見慣れない格好をしていたからなんとも……無機質な兜にピッチリした服装だとしか……あと、胸はまあまああったな」
「……真面目に聞いているのですが」

 そう呟くレイジーの視線には呆れと怒りが同居している。

「と言われてもだな、そうとしか言えねぇんだ。 ここに来る時に鉢合わせなかったのか?」
「残念ながら私は裏から来たので。 にしても、ここに来て彼に新たな協力者ですか……」
 
 レイジーは遠い目をしながら地面を見つめている。
 すると、その静寂を打ち破るかのようにザイールが問いを投げかけた。

「ところで、お前はどうしてここに? まさか俺にわざわざ会いに来てくれたとか」
「ではないですね。 冒険者達の次の行動方針がわかりましたので、それを伝えに来ただけです」
「そうかい、いつもご苦労なこった」

 そう言われるレイジーは、どこか力なく空を見つめている。

「既にノトスの金級達は、私に対し疑いの目を向け始めています。 これ以上は、私からできることは何もないかもしれません……」

 一瞬黙って、レイジーは力なく口を開いた。
 
「私はもう……用済みでしょうか?」

 そう言うレイジーの頭を、ザイールは優しく撫でる。
 
「心配すんな。何があっても、お前は俺が命を懸けて守るからよ」
「……あてにしています」
「心配するな、お前は強い。受付嬢の仕事がなくたって、他にいくらでも出来ることがある」
「私はあまり表舞台には出たくないのですが」
「まあそうはならないだろうよ。 全部あいつらがうまくやるだろうからな」

 吹き込む風。
 辺りを照らしていた松明が風と共に消える。
 暗闇の中、二人は寄り添いながらゆっくりと歩き出した。
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