クロロの大冒険〜田舎の少年が組織に入り”オーラ”を習得、葛藤や紆余曲折を経て大人になり親になり、やがて星を救う物語〜

M3 STUDIO

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組織(ハウス)見習い編

ー 17 ー 組織員ー見習い①

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-   試験の秘密   -



モーリー「さ、今日は合格祝いということで、好きなものをなんでもご馳走しましょう」

クロロ・コン太「やったー!」
両腕を上げてジャンプしたあと、ぐう~と大きな音が…
クロロがぺたんと床にうずくまる。

クロロ「ああー…もう腹に穴が空きそうだ~」

モーリー「それでは、どこかに出かけるよりも、出来合いのものをパパッと買い出しして、この部屋で頂くことにしましょうか」

クロロ「おおっ!!!」
バッと床から顔を上げる。

モーリー「と、その前に…」

モーリーが音楽プレーヤーを取り出し、操作をすると…

コン太「ええっ!!!」

した。

クロロ「す、すげえ!」
コン太「ね、粘土みたい…ど、どうなってるんだ?」

モーリー「ふふ。ここに座って少しばかりお待ちくださいね、たくさん買い出しして来ますから」

再び音楽プレーヤーを弄ると、ドアの先には賑やかな繁華街が広がっていた。

そして数分後…
……


クロロ・コン太「おおーーーっ!!!」

大きめのテーブルに溢れんばかりのご馳走がどどど~~~ん!!!と並んだ!
寿司にラーメン、パスタに天ぷら、ハンバーガーにお好み焼き…
まるで祭りかパーティだ。

クロロ「うひょー!!!さ、最高!!!」
コン太「ご、ごくり」

モーリー「さあ、いただくとしましょう!!!」

クロロ「よっしゃー!!!いっただきます!!!」
ガツガツガツ…!!! 「うっ、うめえー!」ガツガツガツ…!!!

コン太「お、おまえ、絶対噛んでないだろ…」



コン太「あ、そうだ、モーリーさん。是非、話の続きを…!」

モーリー「おっと、そうでしたね。では、そうですね…と、について、お話をしましょうか」

人差し指を立て、メガネをきらりと光らせる。

コン太「さ、さっきは実在してる…って言ってましたね」

モーリー「その通り。天狗はインジさんの作品でしたが、アルマジロウスも、宇宙人の面々も、のです」

コン太「い、いや、でも…信じられない…だ、だってどう考えても騒ぎになるのでは…あっ、そ、そうか!オーラの力で現実と変わらないような幻覚を見せていたとか?」

モーリー「ふふ、いえ。紛れもなく実在しているのです。ただし、

コン太「!!!ど、どうやって?」

モーリー「我々はと呼んでいますが、まるで布を被せるように、イミテーションの空間、のです。
忍者の隠れ身の術みたいなイメージをして頂くと分かりやすいでしょうか。
イミテーションとはいえ、完璧なリアル。空間と空間の境界もシームレスで、の上も歩けるし、人が生活することもできます。
オーラによる広大なレイヤーにより、すっぽりとその土地全部を覆って隠しているのです」


コン太「そそ、そんな!」

モーリー「レイヤーが敷かれている空間は複数層になり、レイヤーの中にいても、外の空間となんら変わりはありません。
レイヤーの中へは特定の入り口からしか入れません。レイヤーにもよりますが、レイヤーの中から外へはすぐに出ることができます。つまり、なんです。
今回の受験者の方も1人、アーリ国コミュニティ・エリアのレイヤー外に出てしまって、戻れずに失格になった方がいましたがーー」

………
……


気がついたら、コミュニティ・エリアの外れに来ていた。
目の前には砂漠地帯が広がり、サボテンのような植物や、背の低い岩場が点在していた。

軍曹「この辺でいいだろう・・・エリアからも随分離れ・・・て!?」
軍曹が振り返ると、視界の遥か彼方まで、広大な砂漠地帯が広がっていた。

軍曹「そ、そんな馬鹿な・・・!!!」
軍曹が急いで元来た方角へと戻る。しかし、どこまで行っても砂漠のままだ。
明らかにおかしい。歩いてきた距離よりも多く戻っているはずだが、何もないのだ。

軍曹「そ、そうだっ!GPSで座標を確認しよう!」
現在地を確認して驚愕した!

先ほど、緯度経度を控えた位置とほぼ同じところに立っていたのだ!

軍曹「な、なぜだーーーーー!」

叫び声は虚しく、砂漠の風にかき消された。


……
………

モーリー「一度出てしまうと、正しい入り口から入らない限りは戻れません。元いた場所まで戻ったつもりでも。何も無い砂漠地帯が広がっているだけです」

コン太「つ、つまり…」

コン太がテーブルの空き皿の上にハンカチをかけた。

コン太「こ、このハンカチがレイヤーであり、ボクたちはこの、つまりコミュニティ・エリアにいた…
一旦レイヤーから出ると…」

ハンカチの上に手を置いた。

コン太「このハンカチの上、つまり砂漠地帯にしか見えない…そういうことでしょうか?」

モーリー「さすが、コン太さん!いい理解です。
この地球上には、いくつかのレイヤーが存在しています。
偶然うっかりと入り口に迷い込む人もいますが、、などと言われ騒ぎになったりしますね」

コン太「そ、そんな…やっぱり騒ぎになるから隠しているのでしょうか」

クロロ「いえば、ガツガツ、ふかし、むしゃむしゃ、何が何でも、もぐもぐ、はふさなきゃいけないものもあるとか…レノンヘモンってたような…」


コン太「おまえ、食いながらしゃべるんじゃない」
クロロの頭をパコンと叩く
コン太「何言ってるかわかんねえよ」

モーリー「でもコン太さんの言うとおり、騒ぎになるから隠す、という理解で概ね良いでしょう。
ではなぜ、組織がわざわざ隠すというようなことをするのか。
…それは組織の存在意義の話になります」



-   組織ハウスについて   -



モーリー「正式名称は。ハウスとか単に組織とか呼ばれます」

………
……


モーリー「例えば今回のような古代生物アルマジロウスに宇宙人、そんなものが大っぴらになると何が起こるでしょう。
政治、経済、科学、医療、テクノロジー…あらゆる分野で…あらゆる社会で、歴史をひっくり返すような大事になります。
騒ぎの裏では様々な利権が動き、世界は大混乱に陥るでしょう。
そうならないため…、つまり組織ハウスは、しています。
世界を正しく、あるべき方向に導く黒子として…」

そういって、モーリーは、ずずずとお茶を啜った。

モーリー「組織のミッションは、様々なクライアントから依頼を受けることもあれば、組織が自発的に対応することもあります。
いずれも、こういった、されています。
アルマジロウスは生存の確認からここまで繁殖に成功した保護種、コミュニティ・エリアは主要国の一部の間で公認のものです。
もちろん、そういった案件には、常に危険がつきまといます。
古代生物や宇宙人の生態細胞や、未知の素材やテクノロジーなんて、それがあると知れば、どんな犠牲を払ってでも手に入れようとする輩も非常に多い…。
組織ハウスは、そんな強欲な連中からとにかく目の敵にされています。
の習得は、ミッションの遂行だけでなく、身を守るためにも必須なのです」

コン太「な、なるほど…で、でもやっぱり、これが現実だってなかなか実感できない…」

モーリー「それはそうですよね、良く分かります。ただ、君たちはこれから組織の一員に加わっていただきます。
今回の試験が取るに足らないことに思えるくらい、様々な経験が待ってることでしょう。
今日はまだ混乱しているかと思いますが、起きていることをあるがままに受け入れ、柔軟に対応してくださいね」

コン太(あ、あるがままに受け入れて…って…そんな言うほど簡単には…。不思議すぎて追いつかない…!!!)

クロロ「おう!がつがつ、大丈夫らいじょうぶ!ごくり。レイヤーかぁ、オレの村にもできたら便利だよなぁー、むしゃむしゃ、ポロポロ」

コン太「こ、このどポジめ…!」

クロロ「ところでさ、このレイヤーヘイヤーって、むしゃむしゃごっくん、モーリーのイマジ…なんとかオーラってやつなのか?」

モーリー「、ですね。いえ。組織員の能力イマジネット・オーラであることは違いないですが、

コン太「えっ?そんなこともあるんですか?」

モーリー「むしろ、その能力は自分のものだと明かすのは得策じゃないんです。
戦闘で使われるような類の能力だと、特に。手の内を明かすのは不利にしかならないですからね。
もっとも私のような、は既知になりがちですが、それでも初めて能力に触れる人には、それが自分の能力だとすぐに知られないようにするのが一般的です」

クロロ「ほえ~難しそうだなあ。おっ、あのチキン、誰も食べないならオレが…ごくり」

モーリー「ど、どうぞ。足りなければ、追加で買って来ますから」

コン太「い、インフラ的なオーラと言いましたけど…モーリーさんの能力は、あのなんでしょうか」

魔法のようなドアに目をやる。地球の裏側にも繋がる摩訶不思議なドアだ…。

モーリーがメガネをきらりと光らせた。

モーリー「私の能力はです。
この白い部屋がハブとなり、距離の制約を越えて2つの地点を結ぶことができます。
能力の名は、「
今回の試験では、レコード・ショップの非常口のドアと、各試験会場を繋げていました」

コン太「こ、この…ってことですか…」

粘土みたいに床が変形して出来たテーブルと椅子も、オーラだからこそ成せる…ということか。


モーリー「私の場合は、音楽好きが高じて、世界中のレコード・ショップを巡る旅をしていました。まだ組織に入る前の若かりし頃です。
ただ、世界を旅すると口で行っても、実際は時間も資金もなく、せいぜい、年に数回飛行機に乗れればいい方でした。
しかし、どうしても世界中のショップに訪れたい!何が何でも!
そんな思いが爆発したら、こんな能力になりました」

ポケットから古びた音楽プレーヤーを取り出した。

モーリー「これも実在はしないのです。先ほどのインジさんのコントローラーように、です。
旅をしていた当時、ずっと一緒だった思い出の品です。実物はもうとうの昔に壊れてしまったのですが…。
このプレーヤーで、曲名とその分・秒を指定することで、そのシークバーの位置とそこにメモリーされた空間を繋ぎます。
普段は組織員の身分を隠して、世界中のショップを繋ぎ、買い付けを行っています」

クロロ「ほえー、なんでそんなことができるんだ?」

モーリー「イマジネット・オーラは。好きなものほど強く、心に想いを描ける…。なので趣味趣向とか性格とか、内なる願い等がアウトプットとして、イマジネット・オーラとして発現されるのです。
そういった意味では無限の可能性を秘めています」

コン太「す、すごい!じゃあもう世界中どこへでも行けるんですね!?」

モーリー「いや、なかなかそうも行かないのがオーラの奥深いところなんです。
私の能力の場合は、一度足を運んだ場所しか行けないのです。

クロロ「今は…って?」

モーリー「オーラは、自分自身を信じることで成長します。精神と密接に紐づいてるんですね。
逆をいうと、
本当は、まだ見ぬ場所にも行きたいのですが…まだ自分自身、
自分で自分を制限してしまっています。同時に、でもある。
成功体験、自信、こういったものが、タガを少しずつ外していくのです。だから。ふふ。私も日々、勉強ですよ。
いずれ、自分を100%信じることができる時が来たら、きっと可能になるでしょう…」

クロロ「ふーん、信じるだけなんだろ?なんか簡単そうだけどな」

モーリー「ふふふ、クロロさんは自分を信じることに壁はなさそうですね、成長が早そうで楽しみです」

コン太「ど、どポジならでは、ってことか」

モーリー「こと。それが唯一、オーラを次のレベルに引き上げるんです。難しいんですがね。突拍子もないことであればあるほど、無意識に自信が揺らいでしまう…。本当にそれができると思っているのか…?と自問自答すると、そこで停滞してしまう」

クロロ「まぁ、大丈夫だよ!そんだけ音楽好きならきっと大丈夫だって!」

モーリー「ははは、逆に励まられてしまいましたね!
あっ、音楽に関して、聞きたいことがあればそれは喜んで…」

クロロ「…げげっ!そ、それはもういいかな…」

………
……


コン太「おおーっ!!!まさかこんなベッドまで出来るなんて!」
クロロ「すげーなあ!」

食事が終わり、片付けが済んだ白い部屋には、真っ白い特大サイズのベッドが2台横たわっていた。

モーリー「明日からはまた一段と大変ですからね。8時に起こしますから。ゆっくり疲れを取ってください。では、おやすみなさい」
モーリーが音楽プレーヤーを操作すると、部屋全体がうっすらと暗くなった。

クロロ・コン太「おやすみなさい!」

パタンと、ドアが閉められる。



しんとした静寂が部屋に満ちた。

クロロとコン太はそれぞれのベッドに横になる。

クロロ「なあ、コン太、いろいろあったけどよ。おまえがいてくれたから合格できたよ!ありがとな!」

コン太「お?おう。ボクも…助かったよ。あ、ありがとう」
ポリポリと頭を掻く。

クロロ「よっしゃ!明日からもがんばろうな!」

コン太「そうだな…でもワクワクが三分の一、残りが不安てとこだな…」
ふうっとため息を吐く。

コン太「今回の試験は、ボク1人じゃ到底どうにもならなかったし…。果たしてやっていけるのか…。自分を信じる…か。考えれば考えるほど、ハードルが高い気がしてくる…。オーラ・ドライブってやつにはそれが大事って言ってたよな。今からこんなので上手くい…」

クロロ「なーに言ってんだ!」
クロロが笑いながら制した。

コン太「え?」

クロロ「大丈夫だって!心配すんな!」

コン太「な、なにを根拠に」

クロロ「へへ。理由なんてないけど」

コン太「おいっ!おまえ!」

クロロ「まあ、やってみてさ。そっから考えよーぜ!」

コン太「ど、どポジめ…(ああ、こいつはこれだから気楽でいいよな。超絶プラス思考の野郎には不安や心配なんて無縁なんだろうな。こっちはどうしたって、マイナスなイメージがちらついてしまう…。はあ、もうちょっとポジティブに考えなきゃとは思うんだがな…やってみてから考える?いや、考えなしにやるからダメになるんだろ。だから考えなきゃ…いや待てよ。とはいえ、今回は考えるための材料があまりに少ないもんな。組織で何をやるのかも分からないし。オーラとかちんぷんかんだ。その意味だと、やってみてから考える、とは…確かに、それはクロロの言うとおりかもしれんな。まだ何も始まってないんだし…)」

ーー何だか少しモヤが晴れたような気がした。

コン太「よし、そうだな、がんばろうか…っておい!」

くごー!

コン太「て、てめえ…!」

………
……

ぐごー

クロロ「むにゃむにゃ…。レノン…、オレも一歩、近づいたぜ…むにゃむにゃ」

くごー

……
………



…その頃。
我闘山から南に約300km離れた山岳地帯…

インジ「ぐうっ…げほっ!」

口から鮮血が迸る!

体が動かない…全身の急所を突かれ、目玉を動かすだけでやっとだ…。

インジ「!!!…ううっ!」

そして、インジを漆黒の空のような絶望が襲う!
…!


………
……


試験対応が終わり我闘山から飛行中、背中に衝撃が走り、そのまま数十メートル下の岩場に叩きつけられた。

反射的にオーラで防御をしたものの、目の前が一瞬暗くなる。何者かの攻撃を受けたのだと直感した。無論、オーラ能力者の…。

それも高速での飛行中に正確な攻撃を仕掛けられるとなると、相当の手練れだ。

反撃をしようと整える間もなく、視界一面に閃光が瞬き、体が吹っ飛ばされ崖に叩きつけられた。

命の危機…!後先を考えている場合じゃない。全てのオーラを解放した!だ!
しかし、それを持ってしても、敵が数段上手だった。
相手を捉えることもないまま、再びオーラの閃光…拳だった…が降り注ぎ、の反動も相まって、完全に動きを封じられてしまった。

………
……


インジ「き、きさま…何者だ」
精一杯の気力を振り絞って声を上げた。

その時、空を覆っていた雲が晴れ、月明かりがを照らす。

「…ふん、あんなの延長じゃなく、本気の闘いを期待したんだがな…。組織員とはいえ…所詮はこの程度か」

インジ「お、お前は!」

「組織か…俺の求める強さを持つ…より俺の力を高められる集団かと思ったが…」

インジ「!!!」

「期待外れだったようだ」

の冷徹な瞳が青白い月光を反射させる…!

白州「レベルが違う…。そう、

そう言って、掌をインジに向けると、ブワっと光が溢れた!

インジ「ま、まて!やめっ…」

ドンっ!!!!!

白州の掌から大砲のような光弾が放たれ、岩場もろとも周囲をかき消した!!!

白州「………。俺はもっと強く…、高みを目指す。そのためにふさわしい場所を探す」

再び雲が月明かりを隠した…

白州は背を向けると、全身に淡い光を纏い、漆黒の空へを消えていった…

………
……



-   まだ見ぬ新しい世界へ   -



モーリー「さあ、準備ができたようなので、次の場所に向かいましょう!」

ーー8時30分。

クロロとコン太が着替えをしたり顔を洗っている間に()、ベッドが床に吸い込まれ、試験を受けに来た時と同じようなガランとした白い空間に戻っていた。

クロロが大きな伸びをする。

モーリー「ゆっくり寝られましたか?」

クロロ「おう!!!スッキリスッキリ!」

コン太「…(げそー)」

クロロ「あれ?コン太どうした?しょぼくれた顔して!?ぷぷっ、げそげそってしてて、ほんっとひでえ顔だよなぁ」

コン太「おまえのいびきがうるさすぎて寝れなかったんだよ!!!ふざけやがって!!!」

コン太の拳が降り注ぐ。

クロロ「いでっいでっ!ま、待った待った!」

モーリー「ははは、それだけ元気があれば平気でしょう!では早速行きましょうか!」

モーリーが音楽プレーヤーを操作する。
モーリー「ええと、|は…と…」

ーーカチリ

白いドアから乾いた音が鳴った。

モーリー「さあ、準備はいいですか?このドアをくぐったら、新しい世界の入り口です」

クロロ・コン太 (ごくり…!)

モーリーが白いドアノブに手をかけ、ゆっくりと扉を開いた。
夏の朝の透明感のある強い太陽光が、白い部屋に差し込んだ。



コン太「…わ!」
クロロ「はわわー!」

ドアが開いた先は、何やらザワザワとした賑やかな場所の一角のようだった。

コン太「ここは…?|先ほどって言ってましたよね…」

どうやら、レコード・ショップの非常口と白い部屋の出入り口を繋げていたように、関係者以外立ち入り禁止の札が掛けられているドアと空間をリンクさせているようだ。

モーリー「こちらへ」

少し進むと、駅前の広大な空間が視界に広がった。

クロロ「おおっ…!」

煉瓦敷きのテラスが広がり、駅前広場のあちこちに椰子の木が植えられている。
椰子の間を縫うように、カラフルな色のパラソルとテーブルが、花束のように空間を彩っている。

スーツケースを脇に置いた旅行客やツアーの団体、麦わら帽子にサマー・ワンピースを纏った地元の若者たち、スカイ・ブルーの薄手のジャケットを羽織ったビジネスマン…。
様々な人たちが広場を行き交い、雲ひとつない真っ青な空をカモメの群れが横切って行った。

コン太「こ、ここは?」

モーリー「です。後ろの大きな建物がターミナルですね」

振り返ると、白い煉瓦にオレンジ色の屋根で彩られた巨大な建物がそびえていた。


クロロ「ご、ござ?」

コン太「ゴ・ザ…、白煉瓦の街並みとエメラルドグリーンのビーチで有名な、あのリゾート地…ですか?」

モーリー「はい。ま、とりあえずそこの空いてる席にでも座りましょう」

ターコイズのパラソルが立ててある、オープン・カフェの椅子に腰掛けた。

…賑やかな喧騒の中を、初夏の乾いた心地よい風が吹き抜けて行く。



クロロ「へえー、ねえ!いいね、ここが組織ってことか!なんだか、ずいぶんと洒落てるなあ!まっ、とりあえずさ!」

クロロが立ち上がり、よいしょと脚を伸ばす。

クロロ「早速オーラの特訓しよっか!」

腕をぶんぶん振り回し、首や指の関節をポキポキと鳴らす。


コン太「いや、おまえここはどう考えても違うだろ。駅だよ、駅!」

クロロ「駅!?なんだ、そうか。ははーん、わかったぞ、電車で行くってことか。なあ、コン太、だといいよな!」

コン太「ぶっ!電車通勤のわけがあるか!昨日の話を思い出せよ。レイヤーの話を!モーリーさん、この広場の下に組織の本部がある…そういうことですよね?」

モーリー「ははは。それがですね、実は、

クロロ・コン太「ええっ?知らない?」

モーリー「そう。組織の本部は明かされていないんです。『レイヤーで隠されつつ常に移動している』とか『空の上にある』とか『地下や海中にある』とか…まあ、こんな風に言われていますが…本当のところはわかりません…更に言うと、組織の場所どころか、他のチームや組織員のこともほとんど知りません」

クロロ「はえ~。あっそういえば、インジさんだっけ?モーリーとも初対面っつってたもんな」
コン太「で、でも…それってどうやって…」

モーリー「はい。コン太さん、安心してください。やるべきミッションや指示はが教えてくれますから。君たちの試験の場所も、今日のここに来たのも、が教えてくれたんです」

クロロ「か、かなどらご?」

モーリー「そうです。なんですが…」

その時、モーリーの背中から、手のひらサイズのドラゴンがぴょこんと顔をだした。

コン太「ひえっ!」

モーリー「おっ、まだ居ましたね!ちょうど良かった」
ミニサイズとはいえ、堅牢な鱗に覆われ、ツノや羽も生えており、確かにドラゴンみたいだ。

モーリー「このドラゴがミッションを教えてくれるのです」

コン太「み、ミッションを?」
クロロ「しゃ、しゃべるってことか?」

モーリー「いえ…カナドラゴはカメレオンみたいに普段は擬態して生活しているのですが、その特性を活かして…」

クロロ・コン太「ああっ!!!」

なんと!ドラゴンの体に文字が浮かび上がった!

ズズズ…
ーー 新入り … オーラ・ドライブ … 道場 … ゴ・ザ中央ターミナル … 8:45am … ライアン…ーー

モーリー「こんな感じで指示をくれるんです」

モーリーがカナドラゴの頭を指で撫でると、ぴょんと駅の柱に飛び移り、柱の色に溶け込むように姿を消した。

クロロ「ひえ~、すごいやっちゃな!」

コン太「で、でも、すごい遠回しというか…普通に連絡すればいいのに、って思っちゃいますが…。組織員同士のコミュニケーションもなく、ましてや本部の場所すら隠されているって…」

夏の太陽を反射させ、モーリーのメガネがきらりと光った。

モーリー「…あまりに特殊能力者が多いため、と言われていますね。
一度力を持ってしまうと、更なる力を手に入れようとする者が現れます…。
そういった者が集まり集団の力が大きくなると、厄介ですからね。クーデターを起こしかねない。
そうならないように分散させている。…というのが私の見解です。
また実際に、組織を離反する者は一定数いるようですが、裏切り者に内情を知られているとまずかったりますしね…。
とか」

クロロ・コン太「?」

モーリー「はは、いろいろあるようです。いずれにせよ、組織員同士の接点は最低限、本部の場所も明かさない、というのが上層部のリスク・マネジメントのようです」

モーリーがやれやれというように首を振った。

モーリー「なので、君たちも基本的には、少人数のチームに属すことになるでしょう。私のような便利屋的な能力者は単独ソロが多いのですが」

クロロ「ほえ~、まあ、なんか分からんけど、頑張れってことだな!」

コン太「おまえ…(呆れ) 」


モーリーが時計をちらっと見た。
モーリー「さて。そろそろカナドラゴのメッセージにあった、8:45になりますね。どうやらがいらっしゃるようですが…」

クロロ「ライアン?誰?」

モーリー「のお一人です」

コン太「か、幹部って…」

その時、ズ太い声が、駅前広場に響き渡った!

「おい!モーリー、なんだ、盛り上がってんじゃねーか!」



-   幹部・ライアン   -



コン太「あわわっ!」

そこには、身長190cmはあろうと思われる筋肉質の長身、オールバックで襟足を伸ばしたオレンジがかった赤髪、虎のような眼光、そしてリゾート地に全く似つかわしくない、漆黒のを纏った男が立っていた。

モーリー「ら、ライアンさん!ご無沙汰しております」
モーリーが焦って頭を下げた。いつの間に近くに来たのか…全くもできなかった。

モーリー「一応、新人は一目見ておこうと思ってな」

クロロとコン太をギラリと睨みつけた。
で、でかいし怖い!近くにいるだけで、逃げ出したくなるくらいの威圧感。とんでもない迫力だ。

ライアン「ふん。びびってるか。まあまだガキだな」

空いていた椅子にドシンと腰を下ろし、脚を組んだ。

ライアン「これからオーラ・ドライブの訓練だろ?おい」
射抜くような目でクロロとコン太を睨む。

クロロ「ううっ!!!」
コン太「は、はははい!」

ライアン「俺から一言アドバイスだ。てめえらが真っ先にやんのは、オーラ・ドライブをすぐにマスターすること。オーラ・ドライブができなければ話にもならん。鉄砲玉としてもいらん。オーラ・ドライブってのはなあ…」
太い首をボキリと鳴らす。

ライアン「このあとで聞け。そんで自分だけのを編み出せ。イマジネット・オーラはなんでもありだ。そう、なんでもな。目に見えるもの。見えないもの。触れるもの。そうでないもの。だ。…イマジネット・オーラってのはなあ…」


ライアンがクロロとコン太に向かって、手を差し出した。
まるで握手をするかのように…

クロロ・コン太「???」

ビッ!!!

一瞬後!!!!

クロロ・コン太「!!!」

間髪入れず、!!!

ドンっ!!!!!

更に!!!

放たれた銃弾が!!!

ギュンっ!!!!!!!

二つの弾丸が、クロロとコン太の頭めがけて突き刺さる!!!

しかし!!!
眉間に当たる数ミリ手前で、銃弾がした!!!



クロロ・コン太「・・・・・」
この一瞬の出来事に、クロロもコン太も顔中冷や汗が流れ、何も反応出来ず、息を止めたまま、目を見開いている…。


ライアン「ふん、イマジネット・オーラってのはこういうことだ。言っている意味がわかんねえと思うがな。じゃあ、モーリー、あとはやっとけや」

嵐のような一幕だった。

モーリー「ち、ちなみに二人はライアンさんの管轄に…?」

ライアン「いや、こいつらは…」

だぜ」

モーリー「!!!」

いつの間にか、ライアンの後ろに、サングラスをしたブラック・スーツの逞しい男。金髪のミディアム・ヘアが風になびいている。

ライアン「おっ。いやがったか」

「ははは。こんなところでって、激レアだな」

幹部…!?

ライアン「ちっ。狙われたらどうすんだ」

「狙うって、俺らをか?はは。そりゃあいい。そんな命知らずがいたら見てみてえな」

ライアン「ふん、違いねえか。んじゃ、俺は面通ししたからよ。用は済んだ。行くぜ」

ライアンがずしずしと去っていく。

サングラスの男がクロロに近づいて声をかける。
「ん?どうした?お、サングラスしてたからわからなかったか?俺だよ俺」

クロロが我に返ったように、飛び上がる。

クロロ「あ!ま、まさか…その声は…」
男がサングラスを取り、透き通った緑色の瞳がのぞいた。

クロロ「レノンにいちゃん!!!」

レノン「よっ。久しぶりだな!」
ブラック・スーツの腰に手を当て、にやりと微笑んだ。

レノン「クロロ、そして、コン太って言ったか?合格おめでとう!」
コン太があわわ!とギクシャクしながら頭を下げる。

クロロも顔いっぱいを笑顔にしてレノンに駆け寄った。

クロロ「はは!にいちゃん!変わってないな!コン太、前に言ってた、オレの村で一緒だったレノンにいちゃんだ!」

コン太「ああっ!は、はじめまして!(そ、そういえば…!同じ村の組織員がいる…そ、そんなこと言ってたかも…!てっきりだと思い込んでたが、ま、まさか幹部とは…!や、やばいやばい)」

クロロ「へへ。どうだ、合格したぜ!なあ、これからレノンにいちゃんと一緒に冒険できんだろ!?楽しみだ!」

レノンがふっと笑って首を振った。

レノン「はは。いや、そうしたいところだが、俺はもう幹部だからな…現場の仕事からはもう外されてんだ、残念だがな」

クロロ「ええっ!そっかぁ、まっ、しゃーないか」
悪いな、とクロロの肩にポンと手をやった。

クロロ「んで、カンブっていま何やってんだ?」

レノン「を探してんだ」

クロロ「…火の鳥?何だそれ?」

レノン「まっ、そのうち分かるかもな。でもよ、元気そうな面が見れてよかったぜ。なかなか会えねえかもしれんが、俺の管轄下のどっかのチームに入ってもらうからな!しっかりオーラを磨いておけよ。またな」

クロロ「えっ!もう行くのか?」

レノン「悪いな…いろいろと忙しいんだよ」
そう言って、サングラスを掛け直すと、人混みに消えて行った…。



モーリー「あ、あの、クロロさんって。レノンさんとお知り合いだったんですね…!?」

クロロ「あれ?言わなかったっけ?」
コン太「おまえ!ボクだって聞いてないぞ!幹部の人と仲良しなら先に言えよ!」

クロロ「さっきからカンブって言ってるけど…何それ?」

モーリーとコン太がずっこけた。

モーリー「か、幹部とは…つまり、この組織でめちゃんこ偉い人の内の1人です。更にレノンさんは、最年少で幹部になったお人。一番の出世頭です。チームリーダー以下の組織員が会える相手ではない…」

クロロ「ほえ~やっぱすげえんだなっ!!出世ってことは、つまりボスってことなのかな?」

モーリー「い、いや出世頭と、はついてるけどボスではないのですが…そうですね。私の知っている範囲になりますが、組織の構成について触れましょうか」



-   組織の構成   -



モーリー「先程言いました通り、組織の詳しいことは分かりません。私はそんな立場ではないので…」
クロロ「あっ、そういえばさ。さっきレノンにいちゃんが言ってたってのは?」

モーリーが首を横に振る。
モーリー「残念ながら存じ上げていません。何かしらの案件のコードネームなのでしょうが…」
クロロ「ふ~ん…そっかあ。…モーリーってもしかして…下っ端?」

モーリー「(グサリ!!!)ど、どストレートですね…!!!ちょっと傷つきましたが…。まあその通りです」

コン太「おい、クロロ!おまえ、思ってても口に出して良いことと悪いことがあるだろう!ボクだってそう思っててもな…あっ!」

モーリーがち~んと沈んでいる…

コン太「あ、あはは。ご、ごめんなさい」

………
……


無邪気に傷つけられたモーリーが語った、組織の構成については以下である。



幹部ーー
先ほどのレノンさん、ライアンさんを含め何人かいらっしゃるようです。
残念ながら、私は先ほどのお二人しか知りません…。

ライアンさんはあんな感じで新入りの面通しといって必ず現れます。私のときもそうだったので。いや、全く同じで…銃を突きつけられましたよ。組織員通しの繋がりはないと言いましたけど、ライアンさんは別ですかね…。おそらく組織では一番有名ではないかと思います。

レノンさん。私はレノンさんの管轄下にいるので、もちろん知ってます。会社でいうと上司の上司の上司…、まあ役員みたいなものでしょうか。

そして幹部の管轄下に複数のチームが存在します。
チームの役割はバラエティに富んでます。

まで…

そんなチームの構成ですが…

リーダー
実働部隊を束ねる隊長です。君たちもいずれかのチームに属することになるでしょうが(発現する能力にもよります)、リーダーの指示や判断に従ってミッションをこなします。

サブリーダー
副隊長です。いるチームといないチームもあるようです。

組織員(メンバー)
これが君たちに当たりますね。オーラ・ドライブ、イマジネット・オーラを駆使して、ミッションの遂行にあたります。

今挙げたのは一例で、チームごとに構成はもちろん、構成人数も様々です。またチームに属さず、私のように単独ソロのメンバーもいます。

どれくらいのチームがいて、どんなミッションを担っているかが、ブラック・ボックスですね。

そして。

ボスーー
はっきり言って、名前も知りませんし、お会いしたこともありせん。というか、幹部より上に他にどんな役割があるかも分からないのです。


……
………

モーリー「と、まあこんなところですね。私の持ってる情報は」

クロロ「ふーん、なんだか全然わかんねえが、まあレノンにいちゃんはすげえってことなんだな~」

コン太「おまえ………。あっ!モーリーさん、ボクはざっと理解出来ましたからお気になさらず」

モーリー「はは(もう、ちょっと自信が無くなっちゃいましたが)、
では、この後の流れについて説明しましょうか」

モーリーがメガネを、チャっと掛け直す。

モーリー「度々、会話でも出てきましたが、でオーラ・ドライブを叩き込んでいただきます」

クロロ「ど、道場…!」

畳敷の重厚な空間が目に浮かぶ。しかし、周りを見渡してもそれらしき建物は見当たらない。


コン太「例のレイヤー能力で隠されている…そういうことですよね?」

モーリー「ふふ。まあ、そんなところです。場所はこの後で案内しましょう。そして、特訓の期間ですが…」

モーリーがごそごそとポケットを探った。

モーリー「はい。これを」

モーリーの手には2つのが!


鈍いグレイのピースと虹色に光る宝石のようなピースを細い糸のような繊維が繋ぎ、羽根のような装飾がアクセントになっている…。

クロロ「うほっ!かっけえな!くれるのか?」

コン太「こ、これは?なんとなくが…」

モーリー「さすがはコン太さん。これは、。そして、オーラ総量を判定するアイテムです。どこかで見たという感覚はその通り!これは、ビッグフットキャットのヒゲ、アルマジロウスの鎧、虹色キューブ、天狗の羽、つまり、で作られたものです」

クロロ「ひえー!アイテム集めって、そういうことだったのか!」

モーリー「このバングルは一度身に付けたら、外せません。とても強靭で、物理的な負荷がかかっても傷を付けることすら難しい…。ただし、オーラを吸収する性質を持っています。そして、

コン太「な、なんと!」

モーリー「一定のオーラ量…つまり実戦に耐えうるイチ組織員として足るオーラの量、ということです。これが焼き切れたら、初めてと認められるのです」



クロロとコン太にバングルを取り付けた。

モーリー「さあ、全ての準備が整いました!道場へ、案内しましょう。私もそろそろ開店の準備もしなくてはならないですし」

モーリーが椅子から立ち上がり、巨大なターミナルの方へと歩いていく。

土産物や旅行雑貨を売る店、飲食店、書店や弁当屋が所狭しと立ち並ぶ通路を抜けると、広大なホールのような空間に出た。

ホールには巨大な電光掲示板が、出発する汽車のナンバーと時刻を目まぐるしく切り替えて、掲示板の下に並ぶ改札ゲートからは、ひっきりなしに人が行き交っている。

人混みを掻き分けながら、先へ先へと進んでいく…。


モーリー「さあ、到着しました」

人の流れに逆らいながら辿り着いた先は、が立ち並ぶ一角だった。

モーリー「…一度道場にはいったら、認められるまでは出てこれません。オーラ・ドライブの特訓が終わったらまたお迎えにあがります」

そうして、エリアの隅、トランクを預けるような、大型ロッカーの前に立った。

コン太「ここが…」
クロロ「…ってことか」

試験を経験する前だったら、全く意味が分からなかっただろう。
何しろ、目の前にあるのはなんの変哲もないコインロッカーだ。

モーリー「成長した君たちに会えるのを、楽しみに待ってますよ」

キイ…と、金属製のドアが開けられた。

クロロ・コン太「!!!」

ロッカーの中には奥深いトンネルが広がっている!!!

モーリー「では、がんばってください。終わったらまたお迎えにあがります」

クロロ「よーし、よしっ!コン太、行こうぜ!」
コン太「(ごくり)お、おう!」

ロッカーの中に体を滑り込ませた。

クロロ「モーリー、ありがとう!んじゃ、行ってくる!」

いよいよだ!

このトンネルを抜けた先…まだ見ぬ景色が待っている…!

オーラ・ドライブ、イマジネット・オーラ…そしてその試練を乗り越えた先に広がる新世界…!!!



ついに新章開幕!
クロロとコン太の新たな冒険が、今、はじまる!
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