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赤髪編
4 異変
しおりを挟むほとりの部屋でお茶を味わっていると、何者かが突撃してきた。どたどたと廊下を走る音がする。
「おい! イケメン野郎! 居るか⁉」
「んー?」
顔を識別する。確かほとりの、友人の可愛斗(きゅうと)だったか。
「お茶飲む?」
「いらん‼ な、なあ、ほとりは?」
「買い物」
靴のまま上がり込んできた可愛斗が腕を掴んで引っ張ってくる。
「なんだ?」
「ほとりの自転車が‼ 崖の下にあるのはなんでだよ! お前、何か知らないか⁉」
崖、下……?
さぁっと血の気が引いた。
今度は俺が可愛斗の襟を掴むと家を飛び出す。
「ああああああ!」
悲鳴だけを置き去りにし、木から飛び降り道路に着地した。買い物の時、よく通る道だ。
「どこで見た?」
「……あっぢ」
目を回しながらも、可愛斗は指を差す。ガードレールに手をついて身を乗り出してみる。茂みで見えにくいが、ほとりの自転車の一部が見えた。
「……君、これをよく発見できたな」
「ほとりはこんな、ゴミを茂みに捨てる奴じゃない。ほらこれ、ほとりのエコバッグ。道路に落ちてたんだ」
俺はそれを引っ手繰った。まじまじと見つめる。
ひよこが「PIYO」と鳴いているエコバッグ。ほとりが愛用している物だ。
「「……」」
俺たちは互いに顔を見合わせた。
「ガードレールは凹んでないから、ぶつかって崖下に、落ちたわけじゃなさそうだけど。俺! 下から見――」
走り出そうとした可愛斗を小脇に抱えると、ガードレールを跳び越えた。
「てくるあああああああ!」
茂みの枝で傷つかないように可愛斗を庇い、腐葉土の斜面に降り立つ。へし折った枝が降ってきたが手で払いのける。
「ほとり!」
大声を出すも、返事はない。
「ほとり? 俺だ! どこだ? いるんだろ?」
可愛斗も声を張り上げ、茂みの中を探す。
時刻は夕方を過ぎようとしていた。
夏とはいえ、ちんたらしていてはじきに暗くなってしまう。
「どうしよう。警察呼ぶか?」
スマホを持つ可愛斗の指は傷だらけだった。人間が茂みの中を素手でかき分ければこうなる。
「君は帰って手当てしてこい」
「ふざけんな! ほとりの無事が分かるまで呼吸できねぇわ!」
「……ルンバさん、来てくれ」
『お呼びでしょうか。ミチ様』
黒いルンバが背後に現れる。「え、なに?」と、可愛斗はハテナを浮かべて眺めてきた。
「ほとりがどっか行った。この道で何があったか、俺に見せてくれ」
『かしこまりました』
ルンバは崖をうぃーんと登り出す。
俺は可愛斗を抱え、一足飛びで道路に戻った。
「お、お前、何者だよ」
高いところが苦手だったのか、まだ俺にしがみついている。
「名乗らなかったか?」
「そうじゃなくて……!」
『お待たせしました。それでは再現します』
追い付いたルンバがライトをつけ、道路の一部を照らす。
「な、なにが……」
「黙って見ていろ」
光のなか、自転車に乗ったほとりが走ってくる。半透明で透けているので、可愛斗もこれが映像だと分かったようだ。食い入るように見つめる。
ほとりの前に黒い車が停車し、出てきた男たちが、ほとりを……
「「……」」
『以上です? 再生しますか?』
愕然とし、俺と可愛斗は言葉を失った。
ほとりが連れて行かれた。まだ、崖に落ちた映像が映ってくれた方が、幾ばくかマシだったかも知れない。
「ゆ、誘拐⁉ 嘘だろ?」
ほとりが平和な国だと言っていただけあり、可愛斗の狼狽え方は尋常ではなかった。
「け、警察に!」
何度もスマホを落としそうになりながら、警察につなげようとする。
その時、かすかにバイクの音が聞こえた。
速度を出し、人がいるのにまっすぐにこちらに向かってくる。
「……変だな?」
ルンバと可愛斗を掴むと紙一重で避けた。
「うおおっ」
気付いていなかったのか、可愛斗の手からスマホが落ちる。カッとコンクリートの上を跳ねるスマホ。バイクは道路の真ん中で停止すると、俺に向けて銃を構えた。
黒のライダースーツにフルフェイスヘルメットが青瞳に映る。
「――は?」
ドンッ。ドンドンッ。
複数の銃声が、響き渡った。
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