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ロッドウルム編
14 ロッドウルムのことを知ろう
しおりを挟む蛇を引っこ抜いた赤髪が対面に座る。
「ふぅ……。ハガキは送ったけど、会いに来てくれるとはね。嬉しいよ、ほとりくん。今日も可愛いね」
手の甲に顔を乗せた、頬杖ならぬ顎杖をついている。
「会いたいわけじゃなかったんですけど」
「君たち似てるよね。(言葉で)ぶん殴ってくるところがさぁ!」
笑顔に青筋を浮かべている。君たちって、俺とミチのこと?
「さっきのボンキュッボン女のこと、知ってんのか? 迷わず撃とうとしてきやがって。絶対やばい奴らだぜ」
指の代わりにデザートスプーンで卿次を差す。
「ああ。あいつらね。俺と真逆の……きつい思想を掲げた連中だよ。地球外生命体を絶対に殺すマンみたいな?」
「でもあいつの仲間? に宇宙生物っぽいのいたじゃん」
口を挟まずに俺も頷く。
「謎が多いんだよね。嫌ってるくせに強い宇宙生物は兵隊にしてしまう。奴らからすれば、ミチくんはなんとしても欲しいだろうよ」
俺はミチを振り返る。電気を流されたときの火傷がきれいさっぱり消えていた。着ている服がボロボロなのを除けば、ただ眠っているだけだ。
「えっ? ルンバさん……すごいんだね」
『ありがとうございます。ほとり様。治療は完了しました。通常モードに戻ります』
床に落ちると、うぃーんと床を掃除し始める。卿次さんは今にも席を立ちそうなほど目を輝かせていた。
「ミチを欲しがるって、何故ですか?」
「……ん? ああ、そうそう。ミチくん。知能高いじゃん? ちょっとズルいほど強いしよ。しかも人間と宇宙生物、両方の言葉が分かる。これは貴重だよ。奴らからすれば、兵器用の宇宙生物の調教が更にはかどるし。おまけに人間に懐く性質も持っている。俺だって欲しいよ……冗談冗談っ‼」
コーヒーカップをぶつけようとしたら慌てて両手を振ってきた。
すとんと座り直す。
「なんという組織なのですか?」
「……ほとりくん。ミチくんの事となると過激だね。……えっと。なんだっけな。何度かやり合ったことあるんだけど。長ったらしいからロッドウルムって勝手に呼んでたな」
「ロッドなんちゃらって?」
アイスを食べ終えた可愛斗がコーヒーを飲む。顔をしかめ、ぼちゃぼちゃを角砂糖を投下していく。また太るぞ。
「どこかの星を統一したことのある宇宙生物の名前、だったかな? あいつらは別に世界統一したがっているわけじゃないけど、手荒な手段を取るところがロッドウルムとそっくりだなって、思って」
「なんで、そんな宇宙生物がいるって知ってんだよ」
卿次はどぼどぼとミルクを注いだコーヒーに口を付ける。
「ガキの頃から調べまくってたからね」
「……ふーん?」
「あの、マリアって宇宙生物は? 知ってますか?」
卿次さんは床を指差す。
「そこの宇宙生物に聞いた方が詳しくない? 宇宙生物のことは宇宙生物、でしょ」
三対の目がルンバさんに向けられる。
「ルンバさん」
『はい』
「ごめんね。掃除中に。こっちきてくれない?」
素直にこっちにきてくれたのだがテーブルの下に入り込んだ。
『なんでしょうか』
そこだと俺たち、テーブルの下を覗き込む体勢なるんだけど……。まあいいか。ルンバさんって、ベッドの下とかちゃぶ台の下の方が落ち着くっぽいし。
人間三人はテーブルの下でしゃがむ。
蛇さんは卿次さんの背中に隠れて覗いている。
「電車に居た。あのマリアって宇宙生物のこと、何か知らない?」
『ああ。私のミチ様を傷つけた命知らずですか。次出会えば頭を消し飛ばしますが、あれの情報が聞きたいのですか?』
どうせすぐ死体になるものの事など知ってどうする? と言うような冷めた口調だった。いつも通りに見えるのに、静かな怒りを感じる。
「……」
可愛斗がこそっとくっついてくる。
「よ、良かったら、教えてほしいな」
『かしこまりました。私が知っている情報ですが。アメンボ型宇宙生物。個体名マリア。荒事を好み、戦争をしている星に移動しては参戦する生物です。星を巻き込む規模の戦争以外は見向きもしませんが、最近地球が荒んでいるのもあり、引き寄せられたのでしょう。マリアの宇宙船は月の裏に隠されています。しばらくアクセスした形跡がないので、地球に来てもう、五十年……といったところでしょうか。非常に強力な宇宙生物です。そちらのクラゲ型生物――個体名エトナに、状況によっては優るでしょう』
「「「……」」」
思ってた数倍の量の情報が出てきた。
卿次さんは顎を撫でる。
「ルンバ、さん、だっけ? エトナのことも知ってるの?」
水中のように漂っている巨大クラゲ。日本人にクリティカルヒットする桜色なのも手伝って、とても美しく感じる。
『かなり凶暴な生き物です。卿次様。怒らせてはいけませんよ?』
「あ、はい」
卿次さんが正座している。
「エトナって、卿次さんが付けた名前なんですか?」
「そうよー? 君らみたいに言葉通じないから、勝手にね」
苦笑している。どこか悲しそうに。
クラゲ……エトナさんからは嫌がってる空気は伝わってこない。いや、エトナさんのこと何も知らないけどさ。
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