151 / 189
七つの宝に勝るもの
01 新情報
しおりを挟むトゥームの連中にも残りの二種を聞いてみたが心当たりすらないという。現状、行き止まりの壁にぶち当たっている。
何の手掛かりもなく、ナナゴーが洋館に来てからそこそこの日数が流れてしまった。
季節は冬の入り口。
陽光知らずは本領を発揮し、昼夜問わずどえらいブリザードが吹き荒れている。太陽光が届かないこの森は、夏は暑いくせに冬は容赦なく冷える。
エイオットがアラージュの衣装を着てくれなくなったじゃないか。水干にマフラーを身につけ、ほくほくと歩いている姿が可愛い過ぎる。狸ツインズはバルーンズボンにもこもこコート。ムギは大きめの半纏を引きずって生活している。
十億の付与魔法を貼り付けられているナナゴーだけ真っ裸。真夏の姿だ。キャミソールもラリマーが着ていた水着のような服も嫌がって着ない。ペッと放り投げられてしまった。
死んだように情報を集める日々で和んだのが、ごっちんとナナゴーだ。
ナナゴーを手のひらに乗せたい魔王様と、自由なナナゴーの追いかけっこが度々見られた。ごっちんのカリスマも、守護龍を母とする人魚族には届きにくいようで軽くあしらわれている。貴重映像だ。キャットが嫉妬しすぎて、ナナゴーを七輪で焼かないか心配。
それにしてもごっちんが俺の不足分をごっそり稼いできてくれたのには驚いた。シャドーリスの村の近くでモンスターの大量発生が起こったらしい。沼地で発生する、生き物の死体が絡み合ったような不気味な姿をしたモンスター・さまよう屍たち『ヘドラ』だ。「出会いたくない外見」部門で一位に輝いたこともある。
体長百メートル。体重およそ十トン。数は街を覆い尽くすほどだったという。
……せっかく大量発生したヘドラたちもそこでのんきに魔王と右腕と四天王が買い物しているとは、夢にも思っていなかったであろうが。
借金の心配がなくなったので、十億はまたぼちぼち働きながら地道に貯めている。小国を滅ぼして国庫を奪って行ってやろうかと思ったが、アゲハと敵対するのが面倒くさい。
「情報が集まらねぇよ~」
今日も自室にて本に埋まっていると、ノックとほぼ同時に扉が開いた。
「うわっ」
「……ノックしても返事する前に開けるんじゃねぇ」
意味ないだろうが。ノックの。しかも開けといて「うわっ」って何だよキャットく~ん。
皆が厚着している中、冷気使いは快適そうに涼しい顔をしている。
「ちょ、こっち来い!」
執事は嫌そうな顔で手招きしてくる。
「なんだね。用があるならそっちが入ってきたまえ」
構わずに読書を再開する。
「お前の部屋に入りたくないんだよ。変態が移りそうで怖い。単純に不快」
「……」
好き放題言いやがる。
主人は手のひらを上に向けるとくいっと入って来いと手招きする。すると、キャットの身体は突き飛ばされたように部屋に転げ入ってきた。
どさどさと本に埋まる。
それでもキャットは怒るでもなく、本の隙間から腕を出した。
「これ」
「ん?」
二本の指で紙切れを挟んでいる。主人は鬱陶しそうに眉をひそめた。
「それが何だと言うのかね」
本を傷つけないように、キャットはむくっと起き上がる。
「お前……残りの二種を探してたんじゃないのか?」
「きみが積極的に手伝ってくれるとはね。明日世界が終わるのか?」
「いや、早くどっか行ってほしいだけだ。態度変わり過ぎだろお前……」
本が片付いた部屋で、キャットは三枚重ねの座布団の上に座っていた。目の前には高級そうな茶菓子もある。
主人は床であぐらをかいて紙切れを読み込んでいる。
「この情報。どうしたんだい?」
「野良含めて、魔族全員に声をかけた」
さらっとすごいことを言ってる。キャットは珍しそうに茶筅で立てた泡のお茶を飲んでいる。「二種の情報」という嬉しい言葉に日本人のおもてなし心が全開になってしまった。
「声をかけたのはごっちんかな?」
「ああ。何故か魔族はもう自分には従わないと思っていらしたようでな。全員魔界に集まったことにびっくりしておられた」
え、待って。もう城の修復済んだの?
でも城住まいに戻らないということは、ナナゴーが気に入ったのかキャットを一人にしておきたくないのか。
「もしかして、魔族の中にいたりして?」
「魔族」と呼び名を統一しただけで、魔族は本来多数種族の集まり、世界に一つの雑多種族だ。獣人もいれば蟲人もいる。
希望を込めるも、キャットは首を横に振る。
「いや。別に」
「ああそう……。しかし助かる」
「うっすらした目撃情報だから、本当に居るかは知らんぞ」
「構わん。さっそく向かうとしよう。留守は任せる」
キャットはお茶が気に入ったのかちまちまとずっと口をつけている。
「そういえばエイオットが呼んでいたな。話があると」
「おほほほほい」
キ笑を上げながら主人が部屋を出ていく。キャットはもくもくと茶菓子を頬張った。
「うめぇな、これ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~
マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。
王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。
というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。
この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる