訳あり能力者 妖能の彩華 (彩華は謎の組織からの依頼により、ドラゴン等と対決をする。)

ヨシオ ヤマモト

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3C 湖底の怪獣騒動

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 C-1  初めてのパーティ エミリア救助
 C-2  湖底の怪獣 湖の怪獣騒動
 C-3  反乱軍の捕虜 瞬間移動でアフリカへ  捕虜救助  迫撃砲で撃たれる
 C-4  アメリカ主義 外人と戦闘
 C-5  彩華目的の喧嘩 中学時代の彩華


 C-1  初めてのパーティ

「山雅さん、アメリカへ行けませんか?」
八月の初め、PP出版の山丘から電話が掛かった。 
「今頃に、何が有るんですか?」 
「解説書の講習と、ついでに、パーティへ出席して貰いたいのですが?」
「それは、何のパーティでしょうか?」
山丘によると、その出版社の著者の中から、適当に選んでいると言う。
そう言えば少し前、その出版社でプログラム解説書を出版した。著書の歳が若いのも選ばれた理由だろうか?
「助手を連れて行っても良いでしょうか?  同級生の女性ですが?」
「じゃ、その方も、パーティに出席して貰えませんか?  ちょうど良い機会ですし。」 
祥生は、彩華に事情を話した。彩華は、そんな話なら大丈夫と言う。秘密の仕事と違って、本当の事を両親にも話せる。
「それは、二週間後だね?  早い目に日時を確定してね?」
「もう直ぐメールが来る。来たら連絡する。」
結局、アメリカへ行くのは七月の中半になった。講習とパーティは一日で済むが、往復の時間を含めると、三日間は必要だ。彩華にも、その旨話して置いた。

今二人は、ニューヨーク行きの飛行機の中である。
「どう考えても、15時間は長いよね?  往復なら30時間だよ。」
「まあ、三日間は我慢をしてくれるかな?」
「愚痴を言っても仕方がないのは、分かって居るんだけど、退屈で。」
空港に着くと、PP 出版の栗栖真奈美が、出迎えていた。
「わざわざ出迎え、有り難う御座います。」
「案内するのも、私の仕事ですから。明日の午前に講習が有ります。昼過ぎに、パーティ用の服を借りに行きますが、お二人は大丈夫ですか?」
「私達も借りますので、ご一緒させて下さい。」
次の日、講習も済み、パーティ用の服も借りた。少し時間が有ったので、二人は街に出た。
大通りを歩いて居ると、路地の中で騒ぎ声がした。何か揉め事が起こっている。
「あちゃー、お約束だね?  街に出ると喧嘩に出くわす。」 
普通の人間なら警察を呼ぶ。ところが、彩華も祥生も、見過せない性格で有る。 
「君達、何の騒ぎだ?  向こうの通りまで聞こえているよ。」
「お前達には関係が無い。さっさと行け。」
「それなら、お姉さんを借りて行くわよ。知り合いだからね。」
彩華が、男達に告げる。
「うるさい。嘘を付くな?」 
「恐喝をしている奴に、言われたくないわよ。」
そう言った途端、横の男が殴りかかる。彩華は平然と、それを受けた。 
祥生に殴り掛かる奴も居る。祥生は、そいつを軽く殴った。
「ぎやっ。」
そいつは三米も吹っ飛んだ。右の奴も殴って来たが、同じ様にぶっ飛ぶ。
「彩華、代わって。彩華でも行けそうだ。」
「もう。山雅さんも働きなさいよ。」
文句を言いながらも、彩華と祥生が、位置を代わる。 
「女だと! 舐めやがって。」
横の奴が、彩華に掴み掛った。 彩華は、その手を掴み横に捻る。
そいつは腕の痛さで横に倒れる。 
「くそっ。」
まだ殴って来る奴が居る。その手を、やり過ごした彩華は、足を刈る。
そいつの身体は宙に浮く。
「ぎやっ
今度は組み討ちにくる。彩華は、その手をはねる。今度は腕を取りに来る。彩華は、その腕を取り大内を刈る。その男は後に倒れた。
「引け。」 
そいつ等は、リーダーの声で、路地の奥に消えた。
「お姉さん、大丈夫でしたか?」
「いや、有り難う。助かった。」 
「それでは、気を付けて。」
二人は、返事が聞こえる前に、さっさと、そこを離れた。
「なに、あの子達?  格好が良過ぎ。」

もうすぐパーティの時間が来る。彩華と祥生は、パーティ会場に向かう。
入り口で真奈美と会い、三人は一緒に入った。既に、かなりの人が集まっている。そこへ、初老の白人が現れた。
「君が、プログラム解説書の山香君か?  君のプログラム解説書は、中々解りやすい。頑張ってくれたまえ。」
そう言いながら、紳士は向こうへ去った。
「あの人は誰、初めてだよな?」
「教育省の長官だよ、少年。そして私の上司。」 
「あれ、街のお姉さん。え、あの人の部下?」
その女性は、エミリアと言って、長官の秘書をしている。このパーティに出席する為、あんな場所に居た。
「さっきは助かった。君達も、このパーティに出て居たんだね?」
「はい、PP 出版の関係者です。こちらは彩華です。よろしくお願い致します。」 
「ご丁寧にどうも。さっきと、えらい違いだね?  少年。」
「この人は役者ですから、ご用心を。」
「彩華、初めての人に、余計な事は言わないでくれるかな?」
「面白い子達だね、君達は?  中国人と思ったけど、日本人だったんだね?」 
「あははは。まあ、よろしくお願いします。僕達は、もう遅いので失礼します。」 
祥生は、プログラム解説を、ホームページに載せている。それが出版社の目にとまった。それで、こんなパーティに参加している。
彩華と祥生は、次の日の便で関空に帰って来た。


 C-2  湖底の怪獣

「山雅さん、妙な事件だよ。湖に怪獣が出るそうだよ。」
「昔の映画に有ったでしょう?  ゴジラだったっけ?」
彩華と彩菜が、そんな風に言う。
「そう言うのが有ったな?  海から現れる怪獣の映画が。」
その湖から、夜になると怪獣が現れる。沢山の人が目撃している。
「大変だ。観光客が、足を齧られた。」
酔っ払いの観光客が、水際で遊んで居た。その内の二人が逃げ遅れた。
その観光客達は、怪物が出ると言うのに、湖岸の砂浜まで下りて居た。
「一人は怪我だけで済んだが、一人が足を齧り取られた。
まさか、自分達が襲われるとは、想像もして居なかったのだろう。
「又一人、怪我人が出た。今度は手を齧られた。」
そんなニュースが、彩華と祥生に届いた。
「胡散臭い話だけど、怪我人が出た以上、調べてみるしか無いよ。」
「何故そんな物騒な所で遊ぶかな?  調査するしか無いか?」
その日は、そんな事を話して別れた。調査は明日の朝から初める。

次の日、彩華たち三人は、その湖の湖岸に居た。取り敢えず、湖岸で怪獣が現れるのを待つ。彩華は、湖全体を妖能視で俯瞰している。
「出た。あれじゃ無い?」
その湖全体を、水蒸気が覆い、ぼんやりとしか見えないが、形は怪獣だ。
彩華は再び、双眼鏡でその怪獣を見た。
「あれ、形は怪獣だけど、そんなに大きくは無いよ。」
「明日、ダイビングの道具を借りて、湖底を調べよう。」
「もし、襲われたら、どうするのよ。」
彩菜が心配そうに言う。
「その時は、妖能の瞬間移動で逃げる。」
「そうだった。瞬間移動が有った。忘れるところだった。」

三人は今、怪獣が出た辺りの湖底に居る。
「この辺りだったね?  何か見えるかな?」
「この辺りは、異常に温かいね?」
「多分温泉だ。火山の活動が活発になったんだろうな?」
この湖の近くに火山が有った。温泉街も有る。そこに来て居た観光客達が目撃をした。
観光客の一人が、足を噛り取られた。もう一人は手を囓られた。
「あっ何か来た。足を舐められた。」
彩華が大騒ぎをしている。湖底に居るので、直接の声ではないが、音波通信で繋がっている。
「恐竜の子孫が、この暖かさで異常繁殖をしたのかな?」
「もう少し調べて見よう。何か居るかも知れない。」
その時、何かうごめく生物を、彩菜が見つけた。その中の一匹が、彩華の足を舐めたのだ。
「あれは何?  大きいトカゲの様な物が、たくさん居る。」
「あれが怪獣の子供だ。大きいのが親だろう。」
大きい物で、人間の二倍から三倍は有る。 地球の生物としては大きい。
彩菜は、湖底の写真を撮っている。フラッシュを浴びた、トカゲ様の怪物達が動き出した。
「襲われる前に、上に上がろうよ。水の中の戦闘は鬱陶しいよ。」
「ゴジラ程大きくは無い様だけど、怪獣に間違いないな?」
彩華と祥生の感想だ。
「あんなのが居ると、夏の水泳は禁止だね?」
「足を失くした人も、手を失くした人も居る。そんな事では済まないだろうな?」

その数日後、組織から電話が掛かった。
「この間の事件ですが、怪我した人も有り、怪獸を一掃したい様です。」
「あれは、新種の様ですが、全滅させて良いんでしょうか?」
「初っ端から、人類に害を及ぼしたんですから、仕方が有りません。」
「クレームさえ来なければ、退治する事は可能だと思われますが?」
その自治体としては、大騒ぎしないで、いつの間にか居なくなっていた。と言う話にしたいらしい。
「まあ、あれは危険だから、消滅させよう。明日に行くよ。」
「可哀想だけど、仕方が無いか?  怪獣の子が小さい内に片付けよう。」

「山雅さん、左半分を頼むわね? 私が右半分を消去する。」
彩華が、祥生に方針を言う。
「じゃ、私が漏れた奴等だね?」
彩菜も言う。
「彩菜、妖力を使って。能力の範囲が、基礎能力より大分広いわよ。」
「分かった!やって見る。」
「やるよ。3、2、1、良し!行くぞ。」
それから三人は、逃げ回る怪獣を、追い回した。
「山雅さん、そちらに逃げたよ。」
中には向かってくる奴も居たが、妖力で消滅させる。
「彩菜、そっちへ行ったよ。」
「彩華ねえちゃん、そっちへ逃げた。頼むわよ。」
「山雅さん、上に逃げた。
何やかやと言いながら、作戦は終わった。目に見える範囲は消滅させた。
彩華が妖力を使って、海獣の残骸を掃除する。彩華は、湖全体を妖視で眺める。
「大丈夫、残っていないよ。」
それでも、当分の間は目撃情報を注視する。


 C-3  反乱軍の捕虜

彩華が家に帰った時、組織から電話が有った。最近は、携帯電話に直接かかる。携帯電話のセキュリティが上がり、それが可能になった。 
今は、組織からの連絡は彩華が受ける。祥生は、プログラム解説書を出版している為、忙しいのだ。
「アフリカで、反乱が起きています。何人かの人が、反乱軍の捕虜になりました。」 
「軍は動けないんですか?」
軍を動かす事は可能だが、捕虜を盾に取られる。その為、こちらへ依頼が有った。
「軍が動かせば、捕虜が殺されます。」 
「そうですよね?」
「実はその中に、政府の高官が居りまして、高額の保証金を請求される可能性が有ります。正体が知られる前に、救出をお願いしたいのです。」
どちらが悪いのかは分からないが、この捕虜の状態は解消するしか無い。
彩華は、すぐさま祥生に連絡を入れた。 
「今度はちょっと遠いよ。アフリカ中央部の国らしい。」
「遠いな?  それでは、アフリカ支部から、行った事にして置こう。」
「そんな所に、支部は有ったかな?」
「もちろん、そんな物は無いよ。適当な時間に、瞬間で飛ぶ。」
彩華は彩菜に連絡をする。彩菜も行けると言う。ほどなく彩菜も現れた。
彩華は組織に連絡を入れた。アフリカ支部から行くと言って置く。
この作戦は極秘である。行動の時間も隠しているので瞬間移動が使える。

「彩華、現地の近くで、人の居ない所を探してくれ。瞬間移動で飛ぶ。」
彩華は、妖体を送って現地を探る。その辺りは、密林地帯になっており、適当な場所は幾らも有った。三人は密林の中に転移をし、SSS の現地事務所に寄った。
「ここから、どのくらいの距離が有りますか?」
「七キロは有りますので、近く迄ジープで送ります。」
この辺りは、小さな街を軍隊が覆っている感じだ。
目的地は、軍の中である。 夕方から動いて、夜中に幾らか近づけた。
それでも、まだ300米は残っている。 
「服で誤魔化せるのは、ここ迄だね?」 
「ここ迄来られたのは、上出来だけど、今からが大変だ。」
今迄は、現地の服で誤魔化せたが、これからは、建物に隠れながら、進むしかない。 助けに来たのを、気付かせる訳にはいかない。それが分かれば、その捕虜達を盾に取られる。
「これからは、暗視ゴーグルを付けて、暗闇を動く。」 
「捕虜になっているのは、この辺りと聞いたけど。」
「この警戒態勢だと、あのビルだけど、妖視で見てみるわ。」 
「ちょっと待って。」
「隣の部屋の画像も要るね?」
瞬間移動の為には、位置と画像が必要だ。
普通の場合、祥生は、単純な能力しか使かわない。特殊能力は彩華達に任せている。彼女達の経験にもなるからだ。
「山雅さん、場所が分かった。一階の部屋に居る。画像はこれ。」 
「彩華、先に人質を確保して。僕と彩菜は陽動をする。」
「今、相手方の奴は居ない様だね?  取り敢えず、人質を確保する。」
彩華は、人質の隣の部屋に跳ぶ。その部屋の隣には、数人の人達が捕まっていた。 隣の部屋の鍵は開いていた。隣に移った彩華は、翻訳アプリで話をする。 
「今から逃げますよ。私から離れない様に。それなら命は保証します。」
彩菜と祥生は、同時に隣の部屋に跳び、床下へもぐる。そして、二か所程、床下の基礎壁を抜いた。如何にも、そこから侵入した様に細工する。 
「捕まって居る人は、これで全部ですか?」
「今は全部揃っている。」 
「彩菜、壁に穴を空けて。自然に破った様にね。」
「外へ出るぞ。彩華と彩菜、あの人達を護って。僕は外で戦う」
外には、敵兵が幾らか居るが、まだ気がついて居ない。 瞬間移動で逃げれば簡単なのだが、瞬間に消えたりすれば、大騒動になる。 
「森に逃げるぞ。」 
祥生は先頭になって走る。前に来る奴は、片っ端から放り投げている。 
誰かが、知らせたのだろう。敵兵が、わらわらと現れた。
彩華は保護層を展開する。それは、他保護範囲の内側に、光の遮断層を展開するのだが、あたかも、黒い構造物に見える。
普通の透明な能力で、力押しをすれば、異常な能力と思われるのだが、それが有れば、その構造物の力と認識される。祥生は、より自然に見える様に、外で闘っている。
「ええっい。鬱陶しいな?」
投げたり蹴飛ばしたり、祥生は逃げる道を掃除している。その後に彩華達が続く。 今回は、まだ幸運だった。周囲の兵隊の数が少ない。数分戦って森に逃げ込めた。 人の目が途切れた所で、彩華は保護層を消す。
「まず三人、私の周りに集まって下さい。後の人は、山雅さんの側に行って下さい。」 
六人程度なら、祥生の瞬間機能で移動出来るが、彩華の訓練の為、二つに分けた。
「組織の現場事務所の側まで跳ぶわよ。彩菜、誰も居ないわね?」
「今は大丈夫、誰も居ないよ。」 
彩華が三人運ぶ。残りは祥生が運ぶ。組織のアジト近くに戻った彩華は、人質皆んなの記憶を消去する。瞬間移動は、誰にも知られる訳にはいかないのだ。 
始めから、アジトまで飛べば簡単なのだが、組織にも能力は隠している。安全の為、段階を増やしている。時によっては組織の人間の記憶も消す。

「捕虜に逃げられただと?  今は何処にいる?  マーカーを、付けている筈だが?」
「ここから、三キロ程の所に居ます。」
「そこなら、味方は居ないだろう?  迫撃砲を三発程打ち込んで置け! 当たるかも知れん。」
組織のアジトの近くに飛んでから、彩華が立ち止って、考え込んでいる。
「山雅さん、何かが飛んで来る。こちらを向く悪意を感じた。」
「それは直ぐに消滅する。暫く注意して居て。マーカーを付けられたらしい。組織の拠点に入ったら、服を全部点検して貰おう。」
「山雅さん、向かっていた悪意は消えた。ミサイルか砲弾かは消滅したらしい。」
彩華達には、そんな能力も有る。小銃程度なら基礎保護で対処出来る。
しかし、ミサイル等の大型兵器は、悪意感知の直後に妖能力で消滅する。
「妖能力か? 本当に、何でも有りだね?」
かなりの、ご都合主義なのだが、自分の居る地域には、弾は届かない。
これは、自己保護能力と妖能力の効果だが、自分達には、その物体に対する攻撃力は無い。そうこうして居る内に、一同は組織のアジトに着いた。
彩華は組織に、マーカーの疑いを話して置く。
「マーカーを付けられた恐れが有るので、皆の服を点検して下さい。」
「そんな徴候が有りましたか?」
「先程の居場所の近くへ、迫撃砲を撃たれました。」
「分かりました。服を廃棄して直ぐ移動します。」
その後、服を全て交換して、組織もアジトを畳んで移動した。ついでに彩華達も、駅まで送って貰う。それ以後、三人の姿は消えた。
「時間的には、ムダも含めて二日間か?  あの場所なら上出来だね?」
「今回は、手伝ってくれて助かった。僕だけなら余裕が無かった。」
「瞬間移動なら、捕虜を見つけた所から、飛べるんじゃ無いの?」
「余程、条件の良い時にしか使えない。誰に見られるか分からない。」


 C-4  アメリカ主義

今日も、彩華と祥生は、お茶を飲んでいる。 
「山雅さんは、いつも、あんな仕事をやってるのね?」
「 軍の真ん中へは、そんなに行かないよ。」
「人を助けるのが仕事なら、殆ど忍者みたいな働きだよね?」
彩華が不思議そうに言う。
「瞬間移動が出来ない時は、逃げるのが大変だった。」 
「初めは、瞬間移動が出来なかったの?」
「そんなの、中途からだよ。彩華が、初めから出来たのは不思議だよ。」
祥生が、能力に目覚めたのは小学校四年の頃だった。親父に連れられ、事件現場を渡り歩いて居た頃だ。瞬間移動は中学に入ってから目覚めた。
この仕事も、父親を通して注文が来ていた。 中学の中頃になって、直接に注文が来る様になった。それでも、一人の時は、あまり難しい仕事は出来なかった。 
「山雅さん、そろそろ出ようか?  少し買い物をするわ。」
「差し支え無かったら、付き合おうか?」
「じゃ、お願い。少し北の方になるけど。」

「山香ヨシオ、まだアメリカへ行ってるな?」
山香ヨシオと言う名前は、解説書のペンネームだ。
「アメリカ人に呼ばれたんだから、しようが無いだろうが?」
彩華と祥生は、少し街外れの道を歩いていた。彩菜も一緒に居る。
今日は、街から少し離れた、特殊な道具屋に行っていたのだ。
遅くなったので、急いで居たのだが、その途中で、外人達に捉まった。

今日は、白人に黒人、中東系やらアジア系等、多くの人種が居る。
「おい山香、今日は、負けないぞ。」
「あの時の仲間か?  何か違うな?」
「そんな事はどうでも良い。今日は、飽きさせないぞ。」
何か、前の時とは雰囲気が違う。今度は何の団体だ?
「わざわざ日本迄来て貰って、ご苦労さんだね?」
「山香君、アメリカ迄、出張られると迷惑なんだよ。日本を出ない事を希望する。」
「そう言われても、注文主がアメリカ人だから、どうしようも無い。」
こいつ等は、何の組織だろうか、こんな話は、注文した出版社に言うべきなのだが、そちらには言えない様子だ。
「お前が断れば済む話だろうが?」
「既に、大分出回っている。いまさら遅いよ。」
こいつ等は、誰の為に働いているのだらうか?
「やかましい。子供の癖に、言う事を聞け。」
「あんた等も大人なら、もっと分別を持って欲しいものだ。」
その中の、白人の一人が、祥生の前に立つ。
「聞き分けが無いのなら、少し痛い目を見て貰う。」
そいつは突然、祥生に殴りかかった。祥生は、一度はよける。
「逃げるな?」
そいつは、そう言いつつ蹴りを出す。祥生は腕ではじく。
「いっやー。」
今度は、廻し蹴りが首を襲う。祥生は、それを腕ではね、軸足を払った。そいつは宙に浮く。次は、黒人と中東系の奴が、前に出る。
「彩華、やって見るか?」
「そうだね、一度やって見る。」
高校生らしい女の子が、二人の相手をすると言うので、奴等は怒った。
「女だと?  舐めやがって。一瞬で潰すぞ。」
体重が半分しか無い少女が、相手をすると言うのでは、怒るのも無理は無い。しかし、相手の二人は、彩華の力を知らない。
「頑張って見るので、お手柔くね?」
「直ぐに後悔させてやる。」
中東系の男が、彩華に飛び蹴りを掛けた。彩華の体がスッとよける。
そこへ、黒人の拳が襲う。彩華は素直に手で止め、背負いで放る。別の奴の回し蹴りが来る。彩華はそれも腕で止め、足を掴んで後ろへ放る。
「ほう、中々やるじゃないか?  今度は俺が相手だ。」
後で眺めていた、黒人が前に出る。彩華は、その黒人の攻撃を待つ。
「きぇーい。」
奇妙な気合い声と共に、黒人の体が宙を飛ぶ。その飛び蹴りを彩華の肘が受ける。その瞬間、男の右手が顔を襲う。彩華の右腕が、それを防ぐ。男はそのまま地に落ちる。
「いや、中々の腕だ。今日は退くが、このままでは済まさんぞ。」
奴等のリーダーらしき男の声と共に、奴等は消えた。

「あいつ等は何だったのよ。頻繁にやられると、面倒くさいよ?」
今回の奴等は、アメリカに好意を持っていた。その団体は特定出来ないが、あれで済んだとは思えない。まだ当分、尾を引きそうだ。


 C-5  彩華目的の喧嘩

その戦闘も終り、二人がぶらぶら歩いて居ると、向こうから、柄の悪そうな少年達が歩いて来る。そして、祥生の側に止まる。
「お前、前の奴だな?」 
「前って、いつの事だい?」
「忘れたか?  ほんの一年程前だろうが?」 
「中学の時か、彩華、覚えは有る?」 
「私も知らない。」 
祥生は、大人しそうだが、よく喧嘩をする。人の思惑通りに動かないので、よく衝突をする。しかし、この相手には覚えが無い。 
しかし、同じ日に二回も喧嘩に遭遇した。運が良いのか、悪いのか?
「やっぱり分からない。人を間違ってるんじゃないか?」
「俺の先輩と揉めた時、側に居ただろうが?」 
祥生は、後に居る奴までは覚えていない。元々覚える気も無い。
「悪い。直接の奴しか覚えていない。」 
「そこの女、その時の女だろうが?」 
「えっ、私も関係してるの?  覚えは無いわよ。」 
「今からでも遅くは無い。ちょっと付き合え。」 
どうやら、彩華の方が目的らしい。ところが彩華は覚えていない。 
「あんたなんか知らないわよ。行く訳無いでしょうが?」
「先輩、男の方を頼みます。私は女を連れて行きます。」
先輩と言われた奴が、祥生に向かって来る。適当に、あしらおうと思って居ると、彩華が前に出た。 
「私がやるわよ。山雅さんは下って居て。」
「こいつ、俺に逆らうか?」  
そいつは、祥生の方から彩華の方を向く。そして、彩華を引き寄せようとした。その瞬間、彩華が動いた。その手を捻りながら両足を払った。
そいつは、見事に背中から地に落ちる。今の彩華には、相手の動きが、やたらと遅く見える。彩華は、この感覚を確認したかったのだ。今の彩華は、妖能力を使っていない。基礎能力だけで対応している。
「そこの坊や、私が好みなら、相手をするわよ。」
そいつ等は、慌てて逃げて行った。
「当分、こんな事が増えそうだね?  少し自重しよう。」
「ちょっと手加減をしてやりなよ。」
「山雅さんが言った様に、相手の動きが、やたら良く見えるね?」 
しかし、あいつ等は何者だろう?  何処の組織の尾を引いているのだ?

彩華が、前より強くなったのは、当然の結果である。
保護能力が付くと、身体能力も上がり、当然の結果として、動体視力も良くなる。 元々は、種族保存の能力の為、個人の能力も上がって居るのだ。 種族保護は、本人を護るのが、最小単位になる。

ここで言う能力は、妖体機能が付く前の基礎能力である。種族保存を原点とし、自保護と他保護とがある。何れも人間を護る為の能力である。
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 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

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